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家を売るときに「雨漏りは10年前に直したから、もう書かなくていいだろう」と考えたことはありませんか。
不動産の売買では、売主が把握している物件の状態を記入する「物件状況報告書(告知書)」という書類を使います。買主はこの書類を読んだうえで、購入するかどうかを判断します。
ところが、いざ記入する段になると、どこまで書けばよいのか手が止まってしまうことがあります。直したこと、はっきり覚えていないこと、聞いた話でしかないこと。判断に迷う項目が次々と出てくるためです。
告知書に何を書く欄があるのか、迷ったときにどういう順番で考えればよいのか、書かなかった場合に何が起こるのか。沖縄県南部で不動産を売る方に向けて、順に見ていきます。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月5日
最終更新日:2026年8月5日
情報確認日:2026年8月5日
この記事の目次
物件状況報告書は、売却する不動産の状態や過去の出来事について、売主が把握している事実を確認・申告して買主へ渡す書類です。「告知書」「告知事項に関する書面」と呼ばれることもあります。
不動産会社は、記入方法を説明したり、記載内容を整理する手伝いをしたりできます。ただし、最終的に記載内容を確認するのは売主側です。売主の記憶や過去の出来事を、不動産会社が推測で補うことはできません。
売主が個人とは限らず、法人が売主の場合や、共有者・相続人が複数いる場合もあります。その場合は、誰がどこまで把握しているかを持ち寄って記入内容を確認していきます。
売買のときに出てくる書類は似た名前が並ぶため、役割を整理しておきます。
| 書類 | 作成する人 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 物件状況報告書(告知書) | 売主 | 雨漏り・シロアリ・過去の出来事など、物件の状態と履歴 |
| 付帯設備表 | 売主 | 給湯器・エアコン・照明など、引き渡す設備の有無と不具合 |
| 重要事項説明書 | 宅地建物取引業者 | 法令上の制限、インフラ、契約条件など調査で分かる事項 |
重要事項説明書は宅地建物取引業法第35条にもとづいて宅地建物取引業者が作成し、宅地建物取引士が説明します(出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」)。一方の物件状況報告書は、調査だけでは分からない、売主側が把握している情報を補うための書類という位置づけです。
物件状況報告書そのものは、書式が法律で定められた書類ではありません。実務では、業界団体などが用意した書式を使うのが一般的です。
とはいえ、書式が任意だからといって軽い書類ということではありません。2020年(令和2年)4月の民法改正で、売主の責任は「隠れた欠陥があったか」ではなく「契約の内容に適合しているか」を基準に判断されるようになりました。
物件状況報告書は、売買契約書や特約とあわせて、当事者がどのような状態の物件を売買すると合意したのかを判断する重要な資料になり得ます。反対に、この書類だけで契約の内容や責任の範囲が確定するわけではありません。記載した内容を、契約書や特約にどう反映するかまでがセットになります。
契約不適合責任そのものの仕組みは、契約不適合責任とは?不動産を売る前に売主が知っておきたい基本と注意点で詳しく説明しています。
書式によって項目は異なりますが、記入を求められる内容は大きく「建物」「土地」「周辺環境」の3つに分かれます。
建物については、次のような欄が設けられていることが一般的です。
土地については、地中や境界に関する欄が中心になります。
生活してみないと分からないことも、記入対象になります。
これらの欄には「有・無・不明」から選ぶ形式が多く、「有」を選んだ場合は具体的な内容を書き添えます。
ここが記入で最もつまずきやすいところです。迷ったときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
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迷ったときの考える順番
書くべきかを考える前に、それが実際に起きたことなのか、自分の推測なのかを分けます。
「たしか台風のときに天井にシミができた」は事実です。「でも大したことはなかったはず」は評価であり、推測です。告知書に書くのは前者の事実であって、程度の判断は買主が行います。
直したから書かなくてよい、という考え方をうかがうことがありますが、扱いとしては逆です。
過去に雨漏りがあって修繕した場合は、「有(過去に発生・修繕済み)」と記入します。いつ、どこを、どのように直したかを書き添えてください。修繕した履歴は、買主にとってマイナス情報であると同時に、手入れをしてきた証拠にもなります。
反対に「なし」と書いたうえで後から修繕跡が見つかると、買主は「隠されていた」と受け取ります。同じ事実でも、伝え方の順番でここまで結果が変わります。
築年数が経っていれば不具合があって当然、だから書かなくてよい、という考え方も見かけます。
しかし、築年数が古いこと自体が売主の責任をなくすわけではありません。判断の基準になるのは築年数ではなく、契約でどう取り決めたかです。古い家の設備を現状のまま引き渡すのであれば、その旨を契約で明確にしておく必要があり、そのためにも状態を正確に伝えることが前提になります。
相続した家や、長く人に貸していた家では、そもそも分からない項目が出てきます。
このとき「たぶん問題ないだろう」と「無」を選ぶのは避けたい対応です。分からないことは「不明」と記入し、なぜ分からないのかを書き添えます。自分は居住していない、相続で取得した、といった事情です。
「不明」と記入することは、不具合があると認めることではありません。ただし、買主の判断や価格、調査を行うかどうか、契約条件に影響する可能性はあります。推測で「無」と書くのではなく、不明である理由を説明したうえで、必要に応じて調査を行うか、契約上の取り決めで扱いを決めていきます。

イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、「修繕済みだから書かなくていいと思っていた」「古い家なので言う必要はないと思っていた」というお話をうかがうことがあります。どちらも売主の方が悪意で隠そうとしたわけではなく、自分なりに線を引いて判断された結果です。ただ、その線引きを売主お一人で決めてしまうと、後から食い違いが出やすくなります。書くかどうかを選別する前に、まず不動産会社へ事実をそのまま伝えていただくことをおすすめしています。
書くか書かないかの判断は、契約内容や過去の裁判例とも関わるため、売主が一人で結論を出す必要はありません。仲村が売主の方へお伝えしているのも、「迷った時点で相談してほしい」という一点です。
不動産会社は、伝えられた事実をもとに、告知書への記載方法や契約書での取り決め方を整理する立場です。法的な争いが見込まれる場合は弁護士へ、土地の境界に関わることは土地家屋調査士へと、相談先も変わります。
迷った事実は伏せずに担当者へ伝え、書き方を一緒に決める。これが結果的に売主自身を守る進め方です。
なお、告知書へ記載しただけで、売主の責任がすべてなくなるわけではありません。既に分かっている不具合は告知書へ記載したうえで、その状態と責任の範囲を売買契約書や特約にも反映しておきます。告知と契約上の取り決めは、セットで考えるものだとお考えください。

記入をためらいやすい項目の一つが、建物内で人が亡くなっていた場合の告知です。ここについては、国土交通省が2021年(令和3年)10月8日に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しています(出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」)。
このガイドラインは居住用不動産を対象に、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上どこまで告知すべきかの解釈を整理したものです。要点は次のとおりです。
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「3年経てば伝えなくてよい」ではありません
「概ね3年」という目安が示されているのは賃貸借取引についてであり、対象も自然死等以外の死、または特殊清掃等が必要になった自然死等です。売買については、期間の目安が示されていません。年数の経過だけを理由に記入しないと判断せず、担当者へ事実を伝えたうえで取り扱いを決めてください。

告げる場合に伝えるのは、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因、特殊清掃等が行われた旨です。亡くなった方やご遺族の名誉・生活の平穏に配慮する必要があるため、氏名・年齢・住所・家族構成や、具体的な死の態様、発見状況までを告げる必要はないとされています。
もう一点、読み方として大切な部分があります。このガイドラインは、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負う告知義務についての一般的な基準として整理されたものです。
ガイドライン自体にも、人の死の告知をめぐって紛争が生じた場合の民事上の責任は、依頼内容や締結される契約の内容などによって個別に判断されるべきものであり、ガイドラインに沿った対応をしたことで民事上の責任を回避できるわけではない、という趣旨が記されています。
「ガイドライン上は告げなくてもよい場合にあたるから、売主の責任も当然になくなる」とは言い切れないということです。判断に迷う事案は、担当者を通じて整理し、必要に応じて弁護士へ相談する場面もあります。
そして、この仕組み全体の出発点は、売主が把握している事実を告知書へ記載することです。売主が伝えなければ、宅地建物取引業者が把握できない事実があります。ただし、告知書に記載がなくても、人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときや、調査の過程で別の経路から事実を把握したときは、宅地建物取引業者による確認や告知が必要になることがあります。
告知書に書かなかった事実が後から判明したとき、何が起きるのかを整理します。
売主が個人の場合、当事者の合意によって契約不適合責任を負わない特約(免責特約)を結ぶこともできます。
ただし民法第572条では、売主は担保責任を負わない特約をしていても、「知りながら告げなかった事実」については責任を免れることができないと定められています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。
契約不適合があった場合、買主は要件を満たせば、次の対応を求めることが考えられます(民法第562条〜第564条)。
これらが常にすべて認められるわけではなく、契約の内容や事案の性質によって、どこまで請求できるかは変わります。ただし、免責特約を結んでいても、知っていて書かなかった不具合については、これらを請求される可能性が残ります。書かずに済ませることの効果は、思ったほど大きくありません。
宅地建物取引業法第47条第1号は、宅地建物取引業者が契約の勧誘などに際して、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げず、または事実と異なることを告げる行為を禁止しています。
これは業者に対する規定ですが、売主から伝わっていなければ、業者が説明できない事実もあります。売主・業者の双方にとって、告知書が情報の起点の一つになっているということです。
種類または品質に関する契約不適合を知った買主は、原則として、知った時から1年以内に売主へその旨を通知する必要があります(民法第566条)。1年以内に必要なのは請求そのものではなく、不適合がある旨の通知です。
ただし、売主が引き渡しの時にその不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合は、この通知期間の制限は適用されません。
なお、具体的な責任期間や手続きは、売買契約の特約でも定められることがあります。実際にいつまで責任を負うのかは、契約書の内容とあわせて確認する必要があります。
いずれにしても、引き渡しから時間が経ってから連絡が来ることもあり、売却代金を使ってしまった後で対応を求められると、売主の負担は重くなります。契約前に事実を共有しておけば、価格や契約条件を決める段階で調整できたことも、引き渡し後には責任の問題として扱われることになります。
全国共通の項目に加えて、沖縄県南部の物件では次の点も確認しておくと記入しやすくなります。
沖縄では台風の通過に伴う暴風雨を受けるため、雨仕舞いや外部の傷みに関する履歴が記入対象になりやすくなります。
鉄筋コンクリート造でも、屋上防水の更新履歴は買主が気にする情報です。工事の見積書や領収書が残っていれば、時期の裏づけになります。
2020年(令和2年)8月28日から、宅地建物取引業法施行規則の改正により、重要事項説明のなかで水防法にもとづく水害ハザードマップ上の物件所在地を説明することが義務づけられています(出典:国土交通省 報道発表資料)。
これは宅地建物取引業者が行う説明ですが、実際に浸水した経験があるかどうかは所有者しか知りません。過去の浸水や冠水の履歴は、告知書に記入します。
その土地の過去の利用状況によっては、井戸や浄化槽、旧建物の基礎などが地中に残っている場合があります。以前どのように使われていた土地なのかを、分かる範囲で確認しておきます。
埋め戻して分からなくなっている場合でも、記憶にある範囲で「有」または「不明」と記入しておきます。解体を検討している場合の考え方は、古家付き土地は解体すべき?南城市で更地にする前に確認したいこともあわせてご覧ください。
隣地との境界標が見当たらない、塀がどちら側のものか分からないといった状況は、土地の告知項目に直結します。境界に関する確認の進め方は、境界が分からない土地は売却できる?南城市の土地売却で確認したい対処法で整理しています。
敷地内に拝所(うがんじゅ)がある場合や、建物内に仏壇(トートーメー)がある場合は、移設・撤去・引き継ぎのいずれにするかを、親族など関係する方と確認しておきます。位置や取り扱いを売買の条件として取り決めることがあるため、把握していることを担当者へ伝えてください。
仏壇の扱いについては、実家を売るとき仏壇(トートーメー)はどうする?沖縄・南城市で確認したい進め方で詳しく扱っています。
記憶だけで書こうとすると、時期があいまいになりがちです。手元にある資料を先に集めておくと、記入が早く正確になります。
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先に探しておきたい書類
保険を使って修理した記録は、被害と修繕の両方を裏づける資料になります。処分せずに残しておくと、告知書の記入に役立ちます。
査定の段階で建物の状態を見てもらうと、記入すべき項目の見当もつきやすくなります。査定の受け方は、不動産の売却査定とは?机上・訪問査定の違いと査定額の見方をご参照ください。
書式が法律で決まった書類ではないため、提出しない形が絶対に不可能というわけではありません。ただし、実務では売買の際に提出を求められるのが通例です。人の死に関する告知についても、国土交通省のガイドラインは告知書等への記載を前提に整理されています。
ここで分けて考えたいのは、告知書を提出しないことと、重要な事実を伝えなくてよいことは別だという点です。告知書という書式を使わない場合でも、契約の判断に重要な事実については、説明や契約上の取り決めが必要になることがあります。告知書を出さなかったからといって、契約不適合責任がなくなるわけではありません。
見れば分かる状態であっても、記入しておくことをおすすめします。「見て分かるはずだから書かなくてよい」という判断は、後から食い違いのもとになります。内覧のときに口頭で伝えたことも、書面に残しておくと双方の記録になります。
建物がない土地の売買でも、土地に関する告知の項目は残ります。地中の埋設物、土壌汚染につながる過去の利用、境界の状況、周辺環境などが対象です。以前に建物が建っていた土地では、解体の時期や、基礎を撤去したかどうかも記入対象になります。
入居者や管理会社から報告を受けていた不具合は、売主が把握している事実として記入します。自分で見ていないから書かない、という整理にはなりません。管理会社に修繕の履歴が残っていることもあるため、売却を決めた段階で記録を取り寄せておくと確実です。
気づいた時点で、すぐに担当者へ連絡してください。契約前であれば記載を追加して差し替えれば済みます。契約後や引き渡し後であっても、黙っているより早く伝えたほうが、対応の選択肢は残ります。時間が経つほど、買主の受け取り方も対応の難しさも変わっていきます。

物件状況報告書について、押さえておきたい点を整理します。
告知書を書くことは、自分の家の弱点を並べる作業のように感じられるかもしれません。ただ、契約前に共有された事実は、価格や契約条件を決める段階で調整できます。伝えられていなかった事実は、引き渡し後に責任の問題として扱われることになります。
事実をそのまま伝えたうえで、どう書くかを一緒に考える。その順番であれば、売主が一人で線引きに悩む必要はありません。
売却全体の進み方は、不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまでで確認できます。
この記事は、2026年8月5日時点の法令・ガイドラインにもとづく一般的な情報です。記入すべき内容や責任の範囲は、物件の状況と契約内容によって異なります。契約や損害賠償など法的な争いに関わる判断は弁護士、境界や越境・土地の面積に関する事項は土地家屋調査士、登記や権利関係の手続きは司法書士へご相談ください。法令やガイドラインは変更される場合があります。
「これは書くべきか」で手が止まっている方へ
物件状況報告書は、売主だけで完成させる書類ではありません。覚えている範囲の事実を伝えていただければ、記載の仕方や契約での取り決め方を一緒に整理します。まだ売ると決めていない段階でも構いません。手元の資料をご用意いただければ、確認しておくべき項目の見当をつけるところからお手伝いします。南城市・八重瀬町・南風原町・与那原町をはじめ、沖縄県南部の不動産についてお気軽にご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
建物の状態や過去の出来事をどう伝えるべきか迷ったときも、事実の整理からご相談いただけます。