

発行者:株式会社イエリテ|2026年9月2日
相続や住み替えで家が空いたあと、売るとも貸すとも決めないまま数年が過ぎ、たまに様子を見に行くだけという状態。こうしたご相談を、当社でもお受けすることがあります。
困るのは、「管理しなければ」と思っていても、何をどこまでやれば足りるのかが分からない点です。草を刈れば済むのか、家の中まで開けるべきなのか、月に何回行けばよいのか。基準がないまま気になり続けるのは、心の負担も小さくありません。
売るか貸すかを決める前の期間にも、建物は傷み、草木は伸びます。ここでは、その期間に確認する場所と、頻度の決め方、自分で通えないときの頼み方を順にご説明します。
この記事の目次
先に結論をまとめます。空き家の管理は、次の3つに分けて考えると抜けが減ります。
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先に結論
このうち行政から指摘を受けやすいのは敷地と建物の外側ですが、資産としての傷み方を左右するのは建物の中です。どちらか一方だけでは足りません。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、県外にお住まいのまま沖縄の実家を所有されている方から、「年に一度の帰省のときに何を見ればよいか」と聞かれることがあります。現地を確認すると、外から見える草木よりも、閉め切った室内の湿気や雨漏りの跡のほうが先に進んでいた、ということもありました。
空き家の管理について、所有者に何も定めがないわけではありません。
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第5条は、空家等の所有者又は管理者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない、と定めています。
これは努力義務であり、管理していないこと自体に罰則が定められているわけではありません。ただし、状態が悪化すると次の段階の措置につながります。
空家法第2条第1項の「空家等」は、居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物などとその敷地を指します。国や地方公共団体が所有するものは除かれます。
たまに荷物を取りに行く程度で、住まいとしても物置以上の使い方としても実質的に使われていない状態が続いていれば、対象になり得ます。「まだ家財が置いてあるから空き家ではない」とは限りません。
国の基本指針では、「常態である」とは建築物等が長期間にわたって使用されていない状態をいい、例えば概ね年間を通して使用実績がないことが1つの基準になると考えられる、とされています。ただし、実際の判断は、建物への人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況、所有者の利用実績の主張などから客観的に行うものとされており、1年使わなければ自動的に該当する、という決まりではありません。
以前は、著しく危険・不衛生といった状態の「特定空家等」(第2条第2項)になって初めて行政の措置が本格化する仕組みでした。
令和5年の改正で、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態の空家等を「管理不全空家等」と位置づけ(第13条第1項)、より早い段階で市町村長が指導できるようになりました。傷みが進んでから対応するのではなく、進む前の段階で声がかかり得る仕組みになった、と理解しておくとよいと思います。

放置した場合に何が起きるかは、段階で決まっています。
管理不全空家等については、市町村長がまず必要な措置をとるよう指導し(空家法第13条第1項)、それでも状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときに、修繕・立木竹の伐採その他の具体的な措置を勧告できます(同条第2項)。第13条に置かれているのは指導と勧告までで、命令や代執行の規定はありません。
特定空家等については、助言又は指導(第22条第1項)、勧告(同条第2項)、命令(同条第3項)と進み、命令に従わない場合などに行政代執行の規定が置かれています(同条第9項)。命令の前には、通知書の交付や意見書の提出、公開による意見の聴取といった手続が定められています(同条第4項から第8項)。
管理不全空家等のまま状態が悪化し、特定空家等に該当することとなった場合は、第22条第1項の助言又は指導から改めて手続が進むことになります。指導や勧告を受けたことが、そのまま命令や代執行につながるわけではありません。
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ここに注意
いきなり家を壊されるという話ではありません。段階ごとに要件と手続が定められており、認定や措置を行うのは市町村長です。連絡が来た時点で、何を求められているのかを確認することが先になります。
費用の面で影響が大きいのは、固定資産税の住宅用地特例です。
地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地の範囲を定めるかっこ書きの中で、空家法第13条第2項の規定により勧告がされた管理不全空家等、および同法第22条第2項の規定により勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地を、除くと定めています。
勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から除外される扱いになります。指導の段階では除外されません。
一方で、固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)の状態を基準に課税されます(地方税法第359条)。そのため、勧告を受けたその日から現在の税額が動くわけではなく、どの年度の税額へ影響するかは勧告の時期との関係で決まります。個別の課税年度と税額は、南城市税務課など課税を担当する窓口へご確認ください。特例が外れたときの税額の考え方は、空き家の固定資産税と住宅用地特例の記事で整理しています。
管理を続ける理由として、税や行政指導より重いのがこちらだと考えています。
民法第717条第1項は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、まずその工作物の占有者が賠償責任を負い、ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないと定めています。同条第2項により、この規定は竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合にも準用されます。
条文を読むと、占有者には「必要な注意をしたとき」という免れる道が書かれている一方、所有者側にはその定めがありません。誰も住んでいない空き家では、所有者と占有者が同じ人になる場合があり、責任が自分に返ってきやすい構造です。
もっとも、被害が出れば必ず所有者が賠償するという意味ではありません。「設置又は保存に瑕疵があること」が前提であり、瑕疵に当たるかどうかは個別の判断になります。台風で飛んだものがすべて瑕疵と評価されるわけでもありません。
現実的な備えは、倒れたり飛んだりすると人や車に届く場所から先に見ることです。道路や隣家に面したブロック塀、割れかけた瓦やスレート、外れかけた雨どい、大きく育った庭木の枝。これらは他の作業より優先してよい部分だと考えています。

現地に行っても、どこを見るか決めていないと、玄関を開けて風を通しただけで帰ることになりがちです。次の4か所を順番に見ると、記録も残しやすくなります。
現地で見た内容は、日付と写真で残しておくと、次に行ったときの比較ができます。県外にお住まいの方であれば、帰省ごとの写真がそのまま記録になります。
「月に1回」「年に何回」といった管理頻度の基準は、空家法にも国の指針にも数値としては置かれていません。求められているのは、周辺へ悪影響を及ぼさない状態を保つことです。頻度は、建物と敷地の条件から決めることになります。
| 材料 | 頻度を増やす方向に働く条件 |
|---|---|
| 建物の状態 | 雨漏りの跡がある、屋根や塀に傷みがある、木造で築年数が経っている |
| 季節 | 草木が伸びる時期、台風シーズンの前後 |
| 隣家や道路との距離 | 塀・樹木・屋根が、隣家や通行人に届く位置にある |
| 到達にかかる時間 | 遠方で、何かあってもすぐ行けない |
このうち遠方であることは、頻度を減らしてよい理由ではなく、1回あたりの確認項目を増やすか、誰かに頼むかを決める理由になります。年に一度しか行けないのであれば、その一度で高所や設備まで見てもらう段取りを組んだほうが、結果として費用も手間も抑えられることがあります。
管理できないまま時間だけが過ぎるより、頼み方を決めるほうが現実的です。依頼先によって、確認しておくことが変わります。
空き家の見回りや通風を有償で代行するサービスがあります。依頼する前に、次の点をご確認ください。
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確認ポイント
賃貸に出す予定のない空き家の見回りは、賃貸住宅管理業法が対象とする「賃貸住宅」の管理業務とは前提が異なります。ただし、同じ事業者が募集や仲介まで受けるのであれば、その業務には別の法律の規制がかかります。サービス内容によって、必要な資格や適用される法律が変わるとお考えください。契約前に、どこまでを誰が行うのかを書面で確かめておくと安心です。
市町村長は、NPO法人や一般社団法人などを、空家等の管理・活用について所有者を支援する「空家等管理活用支援法人」として指定できます(空家法第23条第1項。令和5年の改正で新設)。所有者不明などの特別な事情がなくても、管理や活用の相談先として使える制度です。指定の状況は市区町村ごとに異なります。まずは空き家がある市区町村へ、指定された支援法人があるかをご確認ください。
共有者と連絡が取れない、所有者が分からないなど、通常の管理が成り立たない場合には、所有者不明建物管理命令・管理不全建物管理命令という制度があります。利害関係人の申立てにより、建物の所在地を管轄する地方裁判所が管理人を選任するものです(民法第264条の8・第264条の14。令和5年4月1日施行)。
これは、所有者本人が管理を任せるための制度ではありません。放置された建物について、周囲の側から申立てがなされる場合がある制度だとご理解ください。制度の要件や申立ての可否は、弁護士や司法書士へご確認ください。
現地の作業に比べて後回しにされやすい一方で、影響が長く残るのがこの2つです。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられました(不動産登記法第76条の2)。正当な理由がないのに申請しない場合、10万円以下の過料の対象になり得ます(同法第164条)。令和6年4月1日の施行です。
施行日より前の相続も対象で、法務省の案内では、令和6年4月1日より前に相続したことを知っていて相続登記がされていない不動産について、令和9年3月31日までに申請が必要とされています。
すぐに遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記(同法第76条の3)という簡易な手続で、3年以内の申請義務を果たす方法もあります。ただし、これは自分が相続人であることを申し出る手続で、権利関係を公示する相続登記そのものではありません。法務省の案内でも、不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記が必要とされており、遺産分割が成立した後は、その内容に応じた登記を分割の日から3年以内に行う必要があります。手続の詳細は相続登記の義務化の記事にまとめており、実際の申請は司法書士へご相談ください。
なお、相続登記が終わっていないことは、所有者がいないという意味ではありません。遺産分割が済むまでは、原則として法定相続分の割合で相続人がその不動産を共有している状態になります。そのため、管理や処分には相続人同士の調整が必要になり、時間がたって次の相続が重なるほど、関係する人が増えて調整しにくくなります。登記記録と実際の権利関係を一致させておくことは、将来の売却や賃貸へ進みやすくするうえでも意味があります。
住んでいた家が空き家になると、火災保険の扱いが変わる場合があります。住宅として契約していた保険が、空き家では同じ条件で継続できないこともあります。
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手続き上の注意
保険の扱いは保険会社や商品ごとに異なり、公的な資料で一律に説明できるものではありません。現在加入している保険会社・代理店へ、空き家になった事実を伝えたうえで契約内容をご確認ください。事実を伝えないままにすると、いざというときに想定した補償を受けられないおそれがあります。
沖縄で空き家を管理する場合、台風と草木の伸び方は避けて通れません。沖縄県のウェブサイトでは台風の被害及び対策のページで、雨戸や板などによる窓の補強、周囲の側溝や排水溝の掃除を挙げています。人が住んでいれば台風の前に自然と行う作業ですが、空き家では誰かが意識して行わない限り行われません。
イエリテの実務から
当社が現地を確認する際も、台風シーズンの前後は、屋根材と塀、そして飛ばされそうな屋外の物から見るようにしています。草木については、しばらく訪れていない敷地で、前回の記憶より伸びていたということがありました。年1回の確認では、伸びる時期をまたいでしまうことになります。
南城市では、市が南城市空き家活用事業として、民間の提案を活用した空き家の相談・支援に取り組んでいます。空き家の管理方法や修繕費用、活用方法のほか、相続がまだ済んでいない物件についても相談できると案内されています。担当は市のまちづくり推進課(電話 098-917-5394)です。市の制度や窓口の最新の内容は、市へ直接お問い合わせください。
県外にお住まいで現地へ来られない場合の手続きの進め方は、県外在住の方の不動産手続きの記事でも触れています。
管理は、それ自体が目的ではありません。持ち続ける間の状態を保つための作業であり、費用と手間がかかり続けます。次のような状態になったら、持ち方そのものを一度考える時期だと思います。
そのときの比べ方は、売る・貸す・残すの判断の記事で整理しています。貸せるかどうかを先に知りたい場合は古い家を貸せるかの記事、長く空いた家を売る場合の確認事項は長期間放置した空き家の売却の記事、家財が残っている場合は家財処分の記事をご覧ください。相続した空き家全体の進め方は相続した空き家の記事にまとめています。
決めるのは今でなくても構いません。ただ、決めない期間が長いほど建物は傷みます。「いつまで様子を見るか」だけでも先に決めておくと、管理の負担に区切りがつきます。
空き家の管理は、建物・敷地・書類の3つに分けると整理できます。
次に現地へ行くときは、この記事の4か所を写真に残すところから始めてみてください。
回数そのものを定めた法令はありません。求められているのは、周辺へ悪影響を及ぼさない状態を保つことです。年1回であれば、その1回で高所や設備まで確認できる段取りを組むか、草木が伸びる時期だけ別に手配するといった補い方を考えることになります。
その場で解体が決まるわけではありません。管理不全空家等の場合は、空家法第13条に基づき、まず指導があり、改善されなければ勧告という段階になります。第13条に命令や代執行の規定は置かれていません。その後さらに状態が悪化して特定空家等に該当した場合は、第22条に基づいて助言又は指導から改めて手続が進み、要件を満たせば命令や代執行に至る可能性があります。命令の前には意見を述べる機会も定められています。連絡が来た段階で、何を求められているのかを確認し、期限内に対応を相談することが先になります。
一律の正解はありません。止めれば基本料金は抑えられますが、換気扇や照明が使えず、通水もできなくなります。排水口の封水が切れると、においや虫の侵入につながります。訪問の頻度と、現地で行う作業の内容から決めてください。
自分の敷地内にある樹木であれば、所有者として手入れができます。隣地から越境してきた枝の扱いは別の問題になりますので、状況によっては専門家への確認が必要です。当社へご相談いただければ、まず状況の整理からお手伝いします。
管理のうえでは、家財があること自体より、湿気とにおいがこもる状態が続くことのほうが影響します。ただし、売却や賃貸へ動く段階では片付けが必要になります。進め方は家財処分の記事をご覧ください。
勧告を受けなければ、住宅用地特例が管理を理由に外れることはありません。ただし税額は評価替えなどでも変わります。税額そのものについては空き家の固定資産税の記事と、市の窓口でご確認ください。
この記事は、2026年9月2日時点で確認できる法令・公的資料をもとに、一般的な情報として作成しています。個別の空き家について、行政の措置の対象になるかどうか、登記や保険の取り扱いがどうなるかは、状況によって異なります。登記は司法書士、法的な紛争は弁護士、税務は税理士、行政の措置や制度の運用は市町村の担当課へご確認ください。
建物の傷み方も、通える距離も、家ごとに違います。どこまで管理を続け、どの時点で貸す・売るを考えるかは、現地の状態とご事情を並べてみないと決められない部分が残ります。当社では、空き家の現状で確認しておきたいことを整理し、持ち続ける・貸す・売るという方法を一緒に並べるところからお手伝いしています。売ると決めていない段階でも構いません。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
空き家を売却するか活用するか迷っている方も、現在の状態を確認するところからお気軽にご相談ください。