


実家や倉庫を売ろうとして登記事項証明書を取ったところ、土地は出てくるのに建物が出てこない。そんなときに考えられるのが、建物の登記がされていない「未登記建物」です。
先にお伝えすると、未登記のままでも売買契約を結ぶこと自体はできますが、移転元となる登記記録がないため、通常の中古住宅のようにそのまま所有権移転登記をすることはできません。まず表題登記などの手続きが必要になりますので、実務では、登記を整えてから引き渡すか、建物を解体して土地として引き渡すかを先に検討することが一般的です。
この記事では、未登記かどうかの確認方法と、売却前に取れる選択肢を、不動産登記法・民法・地方税法と法務省・法務局・国税庁・総務省・南城市の資料をもとに整理します。南城市や沖縄県南部で古い建物をお持ちの方が、状況を確認するための材料としてお使いください。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月01日
最終更新日:2026年07月29日
情報確認日:2026年07月29日
この記事の目次
未登記建物とは、法務局に登記の記録がまったくない建物のことです。建物の所在・種類・構造・床面積を記録する「表題登記」がされていない状態を指します。
売買契約そのものは、当事者の合意で成立します。ただし、登記の記録がない建物には移転元となる登記記録がなく、買主名義の登記をする土台がありません。登記をするには、まず表題登記などの手続きが必要になります。

💡
先に結論
売却前に取れる主な方向は、一般的には次の2つです。
このほか、未登記であることを買主へ説明したうえで売買し、買主側で登記の手続きを進める形もあります。どの進め方になるかは、建物の状態や契約内容によって異なります。
建物の登記は、性質の違う2つの登記に分かれています。この違いを知っておくと、必要な手続きが見えてきます。
表題登記は、その建物がどこに・どんな構造で・どれくらいの広さで存在するかを記録するものです。登記記録の「表題部」にあたります。
所有権保存登記は、その建物を最初に誰のものとして記録するかを定めるものです。登記記録の「権利部」にあたり、以後の売買や相続による名義変更(所有権移転登記)は、この保存登記があって初めて可能になります。
未登記建物は、この最初の表題登記からされていない状態です。登記が漏れやすいのは、次のような建物です。
未登記の状態は、法律上は放置してよいものとされていません。
不動産登記法第47条第1項では、新築した建物または表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないと定められています(出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」)。
建物を取り壊したときも同様です。同法第57条では、建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないとされています。
これらの申請義務がある者が正当な理由なく申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとされています(同法第164条第1項)。
i
用語解説:表題登記と所有権保存登記
表題登記は建物の物理的な状況を記録するもので、土地家屋調査士が扱います。所有権保存登記は最初の所有者を記録するもので、司法書士が扱います。
担当する専門家が分かれているのは、記録する内容の性質が違うためです。
「登記されているつもりだった」という思い込みは、書類を並べると解消できます。手元の資料と現地を突き合わせるところから始めます。
確認の手順は次のとおりです。
登記されている建物には、登記事項証明書に家屋番号が記載されます。課税明細書に家屋があるのに家屋番号が空欄になっている場合は、未登記家屋として課税されている可能性があります。
✓
手元に用意しておきたいもの
ここは誤解しやすい部分です。
固定資産税の納税義務者は、地方税法第343条第2項により、登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者とされています(出典:e-Gov法令検索「地方税法」)。
登記簿と課税台帳は別の制度で、登記がない建物も市町村が家屋補充課税台帳へ登録して課税します。つまり、税金を払っていることは、登記されていることの証明にはなりません。
イエリテの実務から
当社へ寄せられたご相談で現地を確認させていただくと、登記の記録には出てこない倉庫や増築部分が敷地内に残っていることがあります。
こうした場合は、当社の判断で進めるのではなく、早い段階で土地家屋調査士や司法書士へおつなぎしています。登記の可否や必要な手続きは、それぞれの専門家が判断する領域です。

未登記の建物をそのまま引き渡すと、買主側で不都合が生じます。売却が進みにくくなる理由を3つに分けて整理します。
民法第177条では、不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ第三者に対抗することができないと定められています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。
売買契約によって所有権を取得しても、登記を備えなければ第三者へ対抗できません。登記が第三者対抗要件とされているため、通常は、登記を備えられる状態を整えてから引き渡します。
金融機関が住宅ローンを実行する際は、対象の不動産に抵当権を設定するのが一般的です。抵当権の設定登記は、登記の記録がなければできません。
そのため、融資の条件として、登記を整えることを求められる場合があります。取り扱いは金融機関によって異なりますので、買主が融資を利用する場合は、条件を個別に確認することになります。
売買契約では、引き渡した目的物が契約の内容に適合していることが求められます。未登記の建物について責任を問われるかどうかは、契約書の内容、事前にどこまで説明したか、登記の手続きと費用をどちらが負担する取り決めだったかなどによって判断されます。売主が負う責任の範囲は「契約不適合責任とは?不動産を売る前に売主が知っておきたい基本と注意点」で整理しています。
未登記であること自体は、隠すべきことではありません。状態を正しく伝えたうえで、登記の手続きと費用を誰が負担するかを契約で決めておくことが大切です。個別の契約における責任の範囲は、契約内容によって異なりますので、弁護士など専門家へご確認ください。
選ぶ方法によって、費用のかかり方も、売却できる相手の幅も変わります。一般的な2つの進め方から順に見ていきます。
建物を残して売る場合の流れです。
資料が残っているかどうかで、手続きの進みやすさは変わります。古い建物ほど資料が失われていることがあり、その場合は代わりの資料をそろえる必要があります。売却全体の段取りは「不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまで」もあわせてご覧ください。
建物に利用価値がない場合の選択肢です。
登記されている建物を取り壊したときは、建物滅失登記を申請します(出典:法務局「建物を取り壊した/建物を新築した」)。一方、もともと登記がない建物には滅失登記という手続きがありませんので、市町村へ家屋の滅失を届け出て、課税台帳から外してもらうことになります。
南城市では、固定資産税に関する様式として「家屋滅失届」「未登記家屋所有権異動届」「相続人代表者指定届 兼 固定資産現所有者申告書」が用意されています(出典:南城市「申請書様式ダウンロード」)。必要書類は南城市役所の税務課へご確認ください。
!
解体を先に決める前に確認したいこと
接道の状況によっては、解体後に建て直せなくなる土地があります。相続した家では、解体の順番によって使える控除が変わることもあります。
費用の性質は、手続きによって異なります。表題登記は土地家屋調査士への報酬が中心で、所有権保存登記には司法書士への報酬のほかに登録免許税がかかります。解体には解体費用がかかります。金額は個別に見積もりを取って比べてください。
登録免許税は、建物の所有権の保存登記について、本則で不動産の価額の1,000分の4とされています(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。一方、建物表題登記のような表示に関する登記は、この税額表に掲げられていません。実際にかかる金額は建物の状況によって異なりますので、依頼先へ個別にご確認ください。
解体するかどうかの判断材料は「古家付き土地は解体すべき?更地にする前に確認したいこと」で詳しく整理しています。
このほか、未登記であることを買主へ説明したうえで売買し、買主側で表題登記などの手続きを進める形もあります。誰がいつ手続きを行い、費用を誰が負担するかは契約内容によって異なります。当社としては、売却の見通しを立てやすくするため、売主側で登記を整えてから引き渡す進め方をおすすめしています。

相続をきっかけに未登記が判明することがあります。この場合は、登記と税の両方で確認する制度が増えます。
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されています(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。不動産登記法第76条の2では、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければならないとされています。制度の全体像は「相続登記の義務化とは?相続した不動産の手続きと期限」で説明しています。
この規定は、所有権の登記名義人がいる不動産、つまり登記記録がある不動産についての制度です。表題登記がない建物には、移転すべき所有権の登記がまだありません。そのため未登記建物では、通常はまず表題登記が必要かどうかの確認から進めることになります。第47条第1項の「表題登記がない建物の所有権を取得した者」として、取得の日から1か月以内の表題登記の申請が関係してきます。
土地は登記されていることが多く、その場合は土地について3年以内の相続登記が必要です。土地と建物で扱いが分かれる点にご注意ください。何代も名義が変わっていない場合の進め方は「亡くなった祖父名義の土地を売りたい|相続登記から売却までの流れ」で整理しています。
税の面では、別の手続きがあります。
登記簿上の所有者が亡くなり、相続登記がされるまでの間について、市町村は条例の定めるところにより、現に所有している者(現所有者)へ氏名・住所などの申告を求めることができるとされています(令和2年度税制改正。出典:総務省「所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応」)。
南城市でも「相続人代表者指定届 兼 固定資産現所有者申告書」の様式が用意されています。相続が発生したときは、登記の手続きとあわせて、市町村への届出が必要かどうかをご確認ください。
未登記建物の対応には、複数の専門家が関わります。役割を知っておくと、相談先を選びやすくなります。
| 相談先 | 担当する範囲 |
|---|---|
| 土地家屋調査士 | 建物の表題登記、滅失登記、測量、境界に関する手続き |
| 司法書士 | 所有権保存登記、所有権移転登記、相続登記 |
| 法務局 | 登記制度や申請方法の相談窓口 |
| 南城市役所 税務課 | 固定資産税、家屋滅失届、未登記家屋所有権異動届、現所有者の申告 |
| 税理士 | 譲渡所得や相続税など、税額の判断と申告 |
| 不動産会社 | 売却の進め方、売り方の比較、必要な専門家への橋渡し |
登記そのものの可否や手続きの内容は、土地家屋調査士・司法書士が判断する領域です。不動産会社が代わりに判断することはできません。
契約を結ぶこと自体は可能です。ただし、移転元となる登記記録がないため、そのまま所有権移転登記をすることはできません。実務では、登記を整えるか、解体するかを先に検討することが一般的です。
未登記であることを買主へ説明したうえで、買主側で登記の手続きを進める形もあります。誰が手続きと費用を負担するかは、契約内容によって異なります。
建物の規模・構造・資料の残り方によって変わりますので、一律の金額はお示しできません。土地家屋調査士へ建物の状況を伝えて、見積もりを取ってください。
表題登記は土地家屋調査士への報酬が中心です。これに続けて所有権保存登記を行う場合は、司法書士への報酬のほかに登録免許税がかかります(本則は不動産の価額の1,000分の4。出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。
書類が残っていない場合でも、代わりの資料で申請できることがあります。固定資産税の課税証明、公共料金の使用開始時期が分かる資料、工事業者の証明などが使われることがあります。
どの資料で足りるかは事案によって異なりますので、土地家屋調査士または管轄の法務局へご確認ください(参考:法務局「不動産登記申請手続」)。
登記がない建物には滅失登記の手続きがありませんが、市町村への届出は必要になります。課税台帳から家屋を外すための手続きです。
南城市では「家屋滅失届」の様式が用意されています。必要書類は南城市役所の税務課へご確認ください。
登記簿と固定資産課税台帳は、別の制度だからです。登記がない建物も、市町村が家屋補充課税台帳へ登録して課税します(地方税法第343条第2項)。
納税通知書が届いていることは、登記されていることの証明にはなりません。
増築によって床面積などが変わったときは、建物表題部の変更の登記が必要です。登記の記録と現況が一致していない状態になります。
売却前に、登記事項証明書の床面積と現況が合っているかをご確認ください。必要な手続きは土地家屋調査士へご相談ください。
相続登記の義務(不動産登記法第76条の2)は、登記記録がある不動産についての制度です。表題登記がない建物には、移転すべき所有権の登記がまだありません。
未登記建物については、第47条第1項の表題登記の申請が関係します。土地が登記されている場合は、土地について3年以内の相続登記が必要です。個別の判断は、司法書士または管轄の法務局へご確認ください。

✓
次に行うこと
登記の状態は、売り方を決める前に確認しておきたい情報です。まずは登記事項証明書と課税明細書を並べて、記録と現況が合っているかを見るところから始めてみてください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。建物の状況や登記の記録は、個別の事情によって異なります。
南城市で「建物が登記されていないかもしれない」とお考えの方へ
売ると決めていない段階のご相談でも構いません。イエリテでは、登記事項証明書と課税明細書、現地の建物を照らし合わせて、記録と現況が合っているかを一緒に確認しています。
登記の手続きが必要な場面では、土地家屋調査士・司法書士など専門家へおつなぎします。県外にお住まいの方からのご相談もお受けしています。南城市および沖縄県南部の不動産について、状況の整理からお気軽にご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
相続した不動産の扱いでお悩みの方は、状況を整理するところからお気軽にご相談ください。