

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月25日
情報確認日:2026年8月25日
辞令が出てから赴任までは、そう長くありません。引っ越しの準備を進めながら、住宅ローンが残っている自宅をどうするかも決めなければならない。人に貸せば家賃は入りますが、戻ってきたときに自分の家に住めなければ意味がありません。
当社にも、転勤が決まった方から「留守の間だけ貸すことはできますか」というご相談をいただいたことがあります。そのときにうかがっていて感じたのは、迷いの中心が家賃の金額ではなく、「期限が来たら本当に戻れるのか」と「住宅ローンは今のままでよいのか」の二つにあるということでした。
この二つは、どちらも貸し出す前に決着をつけておくべきものです。契約してから「実は戻りにくい契約だった」と分かっても、貸主の判断だけで後から定期借家へ切り替えることはできません。逆にいえば、赴任までの短い期間にどこへ何を確認しておくかで、戻ってきたときの状況は変わります。法令と公的な資料をたどりながら、その順番を追っていきます。
この記事の目次
貸すか貸さないかの二択で考えると、判断を誤りやすくなります。実際には「貸す」「売る」「空き家のままにする」の三つがあり、それぞれ得られるものと引き受ける負担が違います。
| 貸す | 売る | 空き家のまま | |
|---|---|---|---|
| 戻って住めるか | 契約の種類による | 住めない | 住める |
| お金の動き | 家賃収入が入る(税金・経費を差し引く前) | 売却代金を住宅ローンの返済に充てる。残債が売却代金を上回る場合は自己資金等が必要になることがある | 収入なし。ローン返済と維持費は続く |
| 手間 | 入居者対応・修繕・管理が続く | 引渡しで終わる | 通風・草刈りなど定期的な管理が必要 |
| 主なリスク | 期限どおりに明け渡してもらえない場合がある | 戻るときに住まいを探し直す | 傷みが進む。管理を怠ると行政の指導・勧告の対象になり得る |
「空き家のままにしておけば、いつでも戻れるから安心」と考えたくなりますが、人が住まない家は傷みが早く進みます。空家等対策の推進に関する特別措置法では、「居住その他の使用がなされていないことが常態である」建物とその敷地を空家等と定めています(2条1項)。そのうち、放置すれば倒壊のおそれがあるなど特定空家等に該当することになりかねないものは管理不全空家等として、市町村長の指導・勧告の対象になり得ます(13条)。勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例から除かれます(地方税法349条の3の2第1項)。
もっとも、定期的に手入れをしている留守宅が直ちにこれに当たるわけではありません。要は、空けておくという選択にも、誰かが定期的に見に行くという前提が付いてくるということです。県外へ移る場合、その担い手を決めないまま出発することになりがちです。
三つを同時に比べようとすると迷います。次の順にたどると、判断が自然に絞られていきます。
イエリテの実務から
ご相談をいただいた際も、この2番目でつまずいている方がいらっしゃいました。家賃の見込みを先に調べてから金融機関へ確認しようとすると、順番が逆になります。先に借入先へ確認しておくと、その後の検討が無駄になりません。

ここが記事の中心です。日本の建物賃貸借では、借りている人の居住が手厚く保護されています。そのため、契約の種類を選び間違えると、期限が来ても明け渡してもらえないことがあります。
一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、期間を2年と決めていても、その2年で自動的に終わるわけではありません。
借地借家法26条1項は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。しかも更新後は「その期間は、定めがないものとする」とされ、期間の定めのない契約になります。通知をした場合でも、期間満了後に借りている人が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ同じ扱いです(26条2項)。
さらに重要なのが28条です。貸主からの更新拒絶の通知や解約の申入れは、貸主・借主双方が建物の使用を必要とする事情のほか、これまでの経過、建物の利用状況および現況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができないと定められています。
「転勤から戻るので自分が住みたい」という事情は、この「建物の使用を必要とする事情」の一つとして考慮される要素です。ただし条文は借主側の事情などとあわせた総合判断を求めており、この事情だけで正当事由が認められると言い切れる公的な資料はありません。普通借家で貸すと、期限どおりに戻れるかどうかが確実ではなくなります。
これに対して、更新のない契約として設計されているのが定期借家契約(定期建物賃貸借)です。
借地借家法38条1項は、期間の定めがある建物賃貸借について、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。契約の内容を記録した電磁的記録によってされた場合も、書面によってされたものとみなされます(38条2項)。
更新がないため、期間が満了すれば契約は終わります。転勤の期間が決まっている方にとって、戻る時期から逆算して契約期間を決められることが、この契約を選ぶ理由になります。
普通借家契約と定期借家契約の制度上の違いは、普通借家契約と定期借家契約の違いの記事でくわしく整理しています。ここでは、転勤という事情から見た選び方に絞って進めます。
古い解説を読むと、「一時使用の賃貸借なら借地借家法の保護が及ばない」という説明を見かけることがあります。借地借家法40条は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には借家に関する規定を適用しないと定めており、条文自体は存在します。
ただし、何をもって「明らか」とするかについて条文上の基準はなく、数年単位の留守宅の賃貸がこれに当たるかは個別の判断になります。当たらないと判断されれば、更新や正当事由の規定がそのまま及びます。期限どおりに戻ることを重視するのであれば、この規定を当てにする組み立てはお勧めしません。
同じく、取壊し予定の建物の賃貸借(39条)も、法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合に限られる制度です。転勤による留守宅の賃貸は、通常この要件を満たしません。
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契約の種類を選ぶときの注意
期限どおりに戻ることを前提にするなら、契約の種類は貸し出す前に決めておく必要があります。いったん普通借家契約で貸してしまうと、貸主の側から契約の種類を変えることはできません。

定期借家契約は、書面を作れば自動的に成立するものではありません。手続きを一つ落とすと、更新がないという肝心の部分が効かなくなります。
借地借家法38条3項は、定期借家契約をしようとするとき、貸主はあらかじめ借主に対し、この契約は更新がなく期間の満了により終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならないと定めています。この書面は、政令で定めるところにより借主の承諾を得て、電磁的方法により提供することもできます(38条4項)。
そして38条5項は、この説明をしなかったときは「契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする」と定めています。無効になるのは契約全体ではなく、更新がないという定めの部分です。つまり手続きを落とすと、更新のある契約として扱われる方向になり、期限が来ても戻れるとは限らない状態になります。
実務上は、契約書とは別の書面を用意し、契約を結ぶ前に交付して説明します。契約書の中に条項として書き込んだだけでは足りないと解されている点に注意が必要です。この説明の義務を負うのは、仲介会社ではなく貸主自身です。国土交通省「定期建物賃貸借 Q&A」は、仲介する宅地建物取引業者が行う重要事項説明とは説明すべき主体が異なるため、重要事項説明で同様の内容を説明しても貸主から借主への事前説明が行われたことにはならないと整理しています。一方で、仲介業者が貸主の代理人としてこの事前説明を行うことは可能とされています。仲介会社へ依頼する場合は、「定期借家で進めたい」と最初に伝えたうえで、38条の事前説明を誰がどの書面で行うかを契約前に確認しておくことが確実です。
契約期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は期間の満了の1年前から6か月前までの間(通知期間)に、借主に対して期間の満了により賃貸借が終了する旨を通知しなければなりません。この通知をしなければ、終了を借主に対抗することができません(借地借家法38条6項)。
うっかり通知期間を過ぎてしまった場合でも、その後に通知をすれば、通知の日から6か月を経過した後は終了を対抗できます(38条6項ただし書)。ただし、その分だけ戻れる時期が後ろにずれます。なお、この通知義務は「期間が一年以上である場合には」と定められているため、期間1年未満の定期借家契約には課されていません。
赴任してから数年後の通知を忘れずに行うのは、意外に難しいものです。管理を委ねる場合は、この通知を誰がいつ行うのかを、賃貸を始める時点で決めておいてください。
なお、期間が満了しても借主が退去しない場合、鍵を交換する、荷物を運び出すといった自力での対応はできません。話し合いで解決しないときは明渡しを求める法的手続きが必要になりますので、その段階では仲介した不動産会社や弁護士へご相談ください。
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定期借家で落としてはいけない手続き
戻る時期が確定していない場合、期間をどう決めるかが悩みどころです。考え方としては次の二つに整理できます。
どちらにも欠点があるため、赴任期間の見通しを勤務先へ確認したうえで決めることが、結局は近道になります。
転勤の期間が予定どおりに進むとは限りません。早く戻ることになる場合もあれば、借りている人が先に出ていく場合もあります。この二つは、法律上まったく違う扱いになっています。
借地借家法38条には、貸主側の中途解約権は定められていません。民法618条は、期間を定めた賃貸借であっても、当事者の一方または双方がその期間内に解約をする権利を留保したときに、期間の定めのない賃貸借の解約の規定(617条)を準用すると定めています。期間内の解約は、あらかじめその権利を留保しているかどうかにかかっている、という構造です。加えて、建物の賃貸借では貸主からの解約の申入れに正当事由が必要とされています(借地借家法28条)。
契約に貸主側の中途解約の特約を置くこと自体はできますが、それを行使できるかどうかは、借地借家法の強行規定との関係を含めて個別に判断されます。「特約を入れておけば、戻りたくなったときに出ていってもらえる」と考えるのは避けてください。
現実的な備えは、期間を決める段階で早めに戻る可能性を織り込んでおくこと、そして早く戻ることになった場合には借主との合意による解約を相談することです。合意ができれば、期間の途中でも終了させられます。
一方、借主側には法律で解約できる場面が用意されています。
借地借家法38条7項の対象は、居住用の定期借家契約のうち床面積200平方メートル未満の建物です。転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき、借主は解約の申入れをすることができます。この場合、賃貸借は申入れの日から1か月を経過することによって終了します。そして38条8項は、6項(終了通知)と7項(借主の中途解約)の規定に反する借主に不利な特約を無効としています。
一般的な戸建て住宅は床面積200平方メートル未満であることがほとんどですから、この規定が及ぶ前提で考えておくのが安全です。つまり、契約期間の分の家賃が最後まで確実に入るとは限りません。家賃収入をローン返済に充てる計画を立てるときは、この点を見込んでおいてください。
契約の種類が決まったら、次は貸し出せる状態を整える段階です。ここで確認を飛ばすと、後から取り返しがつきにくい項目が三つあります。
住宅ローンは、借りた本人やその家族が住む住宅のための融資です。そのため、自宅を賃貸に出すことは、借入先への確認が要る事柄になります。
【フラット35】については、住宅金融支援機構がよくあるご質問「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」で、転勤などのやむを得ない事情により一時的に居住できなくなる場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能であるとし、金融機関の窓口で住所変更に関する手続を行うよう案内しています。あわせて、第三者に賃貸する目的の投資用物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、借入れの全額を一括で返済することを求められる場合がある、とも書かれています。
財形住宅融資はこれとは別の制度で、機構は「(財形住宅融資のみ)転勤などで一時的に住めなくなったとき」で、家族全員が一時的に住めなくなる場合の「留守管理」の手続き(管理人の選任と金融機関への申請、期間は3年以内)についての案内があります。無断で融資住宅を賃貸したり、融資住宅に住まなくなったりすると契約違反となり、融資金の全額を一括で返済することになる旨も明記されています。
一方、民間金融機関の住宅ローンについては、扱いを一般化できる公的な資料がありません。賃貸に出せるかどうか、出せる場合の手続きや金利の扱いは、金融機関ごと・商品ごとの契約や約款によります。ですから、確認する相手は借入先の金融機関です。聞くことは、転勤の間に賃貸へ出せるか、できる場合はどの届出・手続きが必要か、返済条件が変わるか、の三つです。
住宅ローンが残っている家を貸す場合の全体像は、住宅ローンが残っている家を貸せるかの記事で扱っています。
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無断で貸すことは避けてください
住宅金融支援機構の資料は、目的外利用や無断の賃貸が判明した場合に借入れの全額を一括で返済することを求められる場合があるとしています。民間の住宅ローンでも、賃貸の可否と手続きは契約によって定まります。判断に迷う段階でも、まず借入先へ確認してください。
自宅として契約している火災保険は、その建物を人に貸すことで前提が変わる場合があります。ただし、通知が必要かどうか、契約を切り替える必要があるかどうかは、保険会社と商品ごとの約款によって定まるもので、公的な資料で一律に説明できるものではありません。
賃貸に出すことが決まった段階で、加入している保険会社または代理店へ連絡し、現在の契約のままでよいかを確認してください。借主側で加入する家財の保険や借家人賠償責任の扱いもあわせて聞いておくと、入居者募集の条件を決めるときに役立ちます。くわしくは賃貸に出すときの火災保険の切り替えの記事をご覧ください。
家財を置いたまま貸すことは、原則として現実的ではありません。入居者が生活する空間に貸主の私物があると、破損や紛失の責任の所在が曖昧になります。持っていかない家財は、実家や親族宅、トランクルームなどへ移すか、処分するかを赴任前に決めることになります。
そして、県外へ移る場合にいちばん効いてくるのが、誰が現地の対応をするかです。設備が故障した、台風で雨漏りがした、家賃が入金されない——こうした連絡は、赴任先からでは対応しきれません。管理を委託するか、親族に頼むかを、貸し出す前に決めておいてください。管理会社に任せるか自分で管理するかの記事に、判断の材料をまとめています。
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赴任前に決めておくこと
貸すと決めたら、税金の扱いも変わります。ここは判断を左右する部分ですので、貸す前に把握しておいてください。
家賃収入は不動産所得として扱われ、総収入金額から必要経費を差し引いて所得を計算します。必要経費となる主なものは、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費です(国税庁タックスアンサーNo.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」)。
住宅ローンの返済のうち元本部分は必要経費になりません。業務のための借入金の利息は必要経費になり得ます。ここを混同すると、手元に残る金額の見通しがずれます。家賃から住宅ローンの返済額を引いた残りが、そのまま所得になるわけではありません。
国税庁タックスアンサーNo.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」は、転勤の場合の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の扱いを次のように整理しています。
単身赴任の場合は、配偶者や扶養親族などの生計を一にする親族と日常の起居を共にしないときであっても、控除を受けられる取扱いがあります。家屋の取得等の日から6か月以内にこれらの親族が入居し、その後も引き続き居住しているなど一定の条件を満たすときに、本人が居住しているものとして扱われるというものです。この場合、家を賃貸に出すという話にはなりません。
家族全員で転居する場合は、居住の用に供しなくなった日の属する年以降、控除の適用を受けられません。ただし、勤務先からの転任の命令などのやむを得ない事由により転居した場合で、再びその家屋に居住したときは、残存控除期間について再適用を受けられるとされています。
そのうえで注意したいのが、再び住み始めたその年に賃貸に出していた場合の扱いです。同じ資料は、その年においてその家屋を賃貸の用に供していた場合には、その年の翌年以後の適用になると説明しています。つまり、賃貸借契約が終わって戻った年は控除を受けられず、翌年からとなる場合があります。
すでに住宅ローン控除の適用を受けている方が家族全員で転居し、将来再適用を受けるケースでは、その家屋に居住しないこととなる日までに「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を所轄の税務署長へ提出しておく必要があるとされています。提出の期限が転居前である点が、見落とされやすいところです。再び居住した後は、確定申告で計算明細書や年末残高証明書を添えて申告します。
一方、入居した年の12月31日までに家族全員で転居した場合は、同じ資料で別のケースとして整理されており、居住しなくなる日までの手続きは不要とされています。この場合も、再び居住した後に適用を受けるには別の要件と確定申告の手続きがあります。
なお、賃貸期間の長さや取得時期(国外への赴任では取得が平成28年4月1日の前か後か)によって扱いが分かれる部分があります。ご自身のケースで控除がどうなるかは、赴任が決まった時点で所轄の税務署か税理士へご確認ください。「戻れば自動的に控除が復活する」わけではないことだけは、押さえておいてください。
国内の会社に勤めている給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などへ転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。この場合、国内の家を貸して不動産所得があるときは、確定申告が必要になることがあります。手続きとしては、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を納税地を所轄する税務署長へ提出することとされています。出国前に納税管理人を定めたかどうかで、申告の時期が変わります。定めた場合は翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて申告・納税し、定めずに出国した場合は出国の日までに申告することになります(国税庁タックスアンサーNo.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」)。
借主が支払う家賃にも定めがあります。非居住者へ支払う不動産の賃借料は20.42%の税率で源泉徴収の対象になりますが、土地・家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものは、源泉徴収をする必要はないとされています(国税庁タックスアンサーNo.2880「非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」)。借主が法人の場合など、この例外に当たらないときは、家賃から源泉徴収された金額が入金されます。海外赴任が決まっている方は、出国前に所轄の税務署または税理士へご確認ください。
「貸すと固定資産税が上がるのでは」と気にされることがあります。固定資産税の住宅用地特例の対象は、地方税法349条の3の2第1項が「専ら人の居住の用に供する家屋」等の敷地の用に供されている土地と定めており、所有者自身が住んでいることを要件にしていません。入居者が住宅として住んでいる限り、貸したことを理由に特例が外れるものではありません。
逆に注意したいのは空き家のままにする場合です。前述のとおり、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、この特例の対象から除かれます。空き家の固定資産税については空き家の固定資産税の記事で扱っています。
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補足
家賃収入がある年は、確定申告が必要になる場合があります。申告が必要かどうかは、ほかの所得の状況によっても変わりますので、赴任先の所轄税務署または税理士へお尋ねください。
ここまでは全国共通の法令と手続きの話です。実際に貸せるかどうかは、その家がどこにあり、どのような条件かによって変わります。
イエリテの実務から
沖縄県南部では、アパートやマンションに比べると、戸建ての賃貸物件は募集の数が限られます。当社が扱ってきた範囲でも、戸建てを探している方から「なかなか出てこない」という声をうかがうことがあります。転勤や期間限定の勤務で沖縄へ来られる方から、家族で住める戸建ての問い合わせをいただくこともあります。
ただし、これは「南部の戸建てなら必ず借り手がつく」という意味ではありません。那覇市内や那覇市へ通勤しやすい地域と、南城市の中でも集落の奥まった場所とでは、条件が変わります。駐車台数、学校までの距離、通勤経路といった条件で問い合わせの入り方は違ってきます。貸せるかどうかは、その家の条件で判断するしかありません。家賃の目安の立て方は、戸建ての家賃査定の記事で扱っています。
定期借家契約は、貸主にとっては契約上の終了時期を明確にでき、戻る時期を設計しやすいという利点がありますが、借主から見れば「数年後に必ず出ていかなければならない家」です。長く住みたい人にとっては選びにくい条件になります。
そのため、期間を短く区切るほど募集の条件は厳しくなり、家賃を相場より抑えることを検討する場面も出てきます。逆に、赴任先が沖縄県外で数年単位の転勤が見込まれる方にとっては、期限のある物件のほうが都合がよい場合もあります。募集の際に、なぜ期間限定なのか(転勤による留守宅であること)を明示しておくほうが、借りる側にとっても判断しやすくなります。
沖縄で家を空ける以上、台風は避けて通れません。貸している間は入居者が生活しているため日常の管理は行われますが、雨戸やシャッターの操作方法、停電・断水時の対応、被害が出たときの連絡先は、引渡しのときに伝えておく必要があります。海に近い地域では、屋外の金物や設備の傷みが進みやすいことも織り込んでおいてください。台風で被害が出たときの費用負担の考え方は、賃貸物件の台風被害への対応の記事にまとめています。
一律の正解はありません。定期借家契約は期間満了で終わるため、延びる可能性が高いなら、満了時に借主と合意して再契約する余地を残す組み立てが考えられます。ただし再契約は借主の意思次第で、確実ではありません。逆に期間を長めにすると、早く戻ることになったときに、貸主の都合で終わらせられるとは限りません。勤務先へ赴任期間の見通しを確認したうえで、仲介を依頼する不動産会社と相談して決めてください。
必ずとは言えません。借地借家法38条7項により、居住用で床面積200平方メートル未満の建物では、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情で借主が生活の本拠として使えなくなったときは、借主から解約を申し入れることができ、申入れの日から1か月で終了します。この規定に反する借主に不利な特約は無効です(38条8項)。空室になる可能性を見込んだ資金計画にしてください。
貸主の側から一方的に変えることはできません。現在の契約をどう扱うかは、借主との合意が前提になります。また、定期借家制度が始まった2000年(平成12年)3月1日より前から続いている居住用建物の賃貸借については、合意で終了させて同じ建物を引き続き定期借家契約にすることには経過措置があり、当分の間、定期借家制度は適用されないとされています。個別の契約でどこまでできるかは、契約書の内容を確認したうえで、仲介した不動産会社や弁護士へご相談ください。
家賃を取らない場合は、扱いが変わることがあります。家賃を取らずに親族へ使わせる場合は、賃貸借ではなく使用貸借になることがあります。ただし住宅ローンの取扱いは借入先の契約によりますので、親族が住む場合であっても金融機関へ確認してください。【フラット35】は申込者本人または親族が居住する住宅を対象とする融資ですので、賃貸に出す場合とは前提が異なります。ご自身のケースについては借入先へお尋ねください。
戻って住むかどうかが、いちばん大きな分かれ目です。戻る見込みが薄いなら、貸している間も維持費と管理の手間が続き、戻ったときの控除の扱いも整理が必要になります。一方、戻る予定が明確なら、期限を区切って貸すことに意味があります。決めきれない段階では、貸した場合の家賃の目安と、売った場合の価格の目安を両方そろえて比べる方法もあります。
あわせて知っておきたいのが、売る側の期限です。以前住んでいた家を売って居住用財産の3,000万円特別控除を受けるには、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の一つとされています。国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」は、以前住んでいた家屋について「その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません」としており、貸家として使っていた期間があっても、この期限内であれば対象になり得ます。ほかにも要件と適用除外がありますので、戻らない可能性があるなら、この3年の期限も踏まえて売る時期を検討してください。ご自身のケースでの適用可否は、所轄の税務署か税理士へご確認ください。
すぐに通知すれば、その日から6か月を経過した後は終了を主張できます。期間1年以上の定期借家契約では、通知期間(期間満了の1年前から6か月前まで)に通知をしないと、終了を借主に対抗できません。ただし借地借家法38条6項ただし書により、通知期間の経過後に通知をした場合は、その通知の日から6か月を経過した後は終了を対抗できます。戻る時期がずれることになりますので、気づいた時点ですぐに通知してください。
転勤で自宅を空けるときの判断は、次の順にたどると整理できます。
貸すことは、転勤中の住まいの使い道として有力な道です。ただし、家賃が入るという一点だけで選ぶと、戻る時期や税金の扱いで思わぬ制約に行き当たります。貸す・売る・空き家のまま、この三つを同じ材料で比べてから決めることをお勧めします。
本記事は2026年8月25日時点の法令・公的資料にもとづいて作成しています。法令・制度・税制は変更される場合があります。個別の契約内容や税務の取扱いは、契約書の定め、借入先の金融機関の契約、ご家族の状況などによって異なります。契約に関する判断は仲介する不動産会社や弁護士へ、税務の判断は所轄の税務署または税理士へ、住宅ローンの取扱いは借入先の金融機関へ、それぞれご確認ください。本記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。
戻る時期の見込み、住宅ローンの契約条件、そしてその家に期間限定で借り手がつくかどうかは、記事の一般論だけでは決められず、ご家庭ごと・物件ごとに確かめる必要があります。株式会社イエリテでは、南城市・八重瀬町・南風原町・与那原町・豊見城市・糸満市・那覇市エリアの戸建てについて、貸した場合の家賃の目安をお出しするとともに、貸す・売る・そのまま持つという道を整理するところからお手伝いしています。赴任までの時間が限られている段階でも、お気軽にご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。