

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月23日
情報確認日:2026年08月23日
入居者から「解約したいので、〇月末で退去します」という連絡が来たとき、貸主として何を確認し、いつまでに何をすればよいのか、迷う方は少なくありません。
結論からいえば、解約から明渡しまでの流れには、法律で決まっている部分と、契約書や実務の慣行で決まっている部分があります。この2つを分けて理解しておくと、通知を受けたあとに何をすればよいかが整理しやすくなります。
この記事では、解約通知を受けてから明渡し・敷金精算・次の入居者募集までの手順とスケジュールの目安を、戸建て賃貸のオーナー向けに確認していきます。原状回復の負担区分(貸主負担・借主負担の細かい線引き)は、戸建てを貸すときの原状回復は誰の負担?貸主が知っておきたいルールで扱っているため、本記事では概要にとどめます。
この記事の目次
入居者から解約の連絡を受けたら、最初に確認したいのは契約書に定められた予告期間です。法律上の原則と、契約書の特約が異なることがあるためです。
契約書に別段の定めがない場合、期間の定めのない賃貸借契約では、借主からの解約申入れがあった日から3か月が経過すると契約が終了します(民法第617条第1項第2号)。
一方、2年契約などの期間を定めた賃貸借契約では、契約書に「借主は〇か月前に予告して中途解約できる」という条項(中途解約条項)があるかどうかが起点になります(民法第618条)。実務の契約書では、1か月前や2〜3か月前など、民法の原則と異なる予告期間を特約で定めているのが一般的です。契約書に中途解約条項がない場合、期間途中の一方的な解約は原則としてできず、合意解約などの個別の話し合いが必要になります。
「いつ契約が終わるか」は、まず契約書の中途解約条項・予告期間の欄を確認するところから始まります。特約がある場合は、一般に契約の定めによります。契約書が手元にない、または特約の解釈に迷う場合は、契約時の書類一式を確認したうえで、弁護士など専門家へ予告期間の考え方を相談してください。
定期借家契約でも、まず契約書に中途解約条項があるかを確認します。定期借家契約は原則として契約期間中の一方的な解約はできませんが、契約書で借主に有利な中途解約条項(やむを得ない事情がない場合でも解約できる特約など)を定めること自体は可能です。国土交通省の「定期建物賃貸借Q&A」でも、借主に不利益とならない特約として認められています。
契約書に中途解約条項がない場合でも、法律上の中途解約権が認められることがあります。床面積200平方メートル未満の居住用建物には、この例外があります。転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情で生活の本拠として使用することが困難になったときに限り、借主から解約を申し入れることができます。この場合、申入れの日から1か月の経過で契約が終了します(借地借家法第38条第7項)。契約書の条項の有無にかかわらず、この要件を満たせば法定の中途解約権を使えます。
相続で貸家を引き継いだ場合など、契約が普通借家契約か定期借家契約か分からないまま管理を始めているケースもあります。契約書の種類は、明渡し後のスケジュールにも関わるため、早い段階で確認しておきます。
また、定期借家契約の期間が1年以上あり、期間満了によって契約を終える場合は、借主からの解約連絡を待つ場面とは別の期限があります。貸主側から期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終了する旨を通知しなければなりません(借地借家法第38条第6項)。契約期間が1年未満の場合、この通知義務はありません。通知が期限より遅れた場合は、通知の日から6か月を経過するまでは、契約の終了を借主に対抗できません。契約形態そのものの違いや、満了通知の手続きは、普通借家契約と定期借家契約の違いは?戸建てを貸すときの選び方で整理しています。
貸主から契約を終わらせたい場合は、契約が期間の定めのない普通借家契約か、期間の定めのある普通借家契約かで、手続きが異なります。
期間の定めのない普通借家契約では、貸主からの解約申入れは、申入れの日から6か月の経過で契約が終了します(借地借家法第27条)。
期間の定めのある普通借家契約で、期間満了により契約を終わらせたい場合は、貸主から借主へ、期間満了の1年前から6か月前までの間に、更新をしない旨の通知(更新拒絶の通知)をする必要があります(同法第26条第1項)。この通知をしなかった場合や、通知後に借主が使用を続けているのに貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合は、従前と同じ条件で契約が更新されたものとみなされます。ただし、更新後は期間の定めのない賃貸借になります(同条第1項・第2項)。
いずれの場合も、貸主からの解約申入れ・更新拒絶には正当な事由が必要とされています(同法第28条)。借主が一方的に不利にならないよう、これらの規定に反する借主に不利な特約は無効とされています(同法第30条)。定期借家契約の期間満了については、前の段落で確認した38条6項の通知が別途必要です。
貸主都合での退去・更新拒絶は借主都合の解約とは要件が大きく異なるため、検討する場合は正当事由の有無を含めて、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。更新拒絶の通知の期限と正当事由の考え方は、賃貸契約の更新で貸主ができること・できないことで扱っています。
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予告期間のポイント

契約終了日が確定したら、明渡しまでの間にオーナーとして準備することを整理します。ここで意識したいのは、「契約終了日」は法律や契約書で決まる一方、「明渡しの確認方法」や「次の入居者募集の開始時期」は実務の進め方によるという点です。
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明渡しまでに確認すること
立会いで確認した内容をもとに原状回復費用の見積りを取り、敷金精算の内訳をまとめて借主へ提示します。あわせて、次の入居者募集に向けて修繕・クリーニングの内容と時期を決めます。
法律上「明渡しが完了した」といえる時点を直接定義した条文はなく、実務では鍵の返却・残置物の撤去・立会いでの確認をもって明渡しの完了を確認するのが一般的です。この確認の方法自体は法令で決まっているものではないため、契約書や管理会社との取り決めに沿って進めます。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談のなかには、退去日と次の入居者の募集開始のタイミングをどう合わせればよいか迷う貸主の方がいます。明渡し確認や原状回復の見積りには一定の時間がかかるため、退去予定日が分かった時点で、募集開始の目安時期を管理会社や不動産会社とあらかじめ相談しておくと、空室期間の見通しが立てやすくなります。

退去立会いは、借主と一緒に室内・設備・庭などの状態を確認する場です。あとの精算や次の入居者募集に直結するため、次の点を確認します。
鍵は本数を確認したうえで返却してもらいます。エアコン・給湯器などの設備が正常に動くか、入居時の設備表と照らし合わせて確認します。戸建ては庭や外構など確認する範囲が広いため、部屋数の多いマンション・アパートよりも確認項目が増えることがあります。
借主が入居後に取り付けた物置やエアコンなどの附属物は、借主が撤去する義務を負うのが原則です。ただし、建物から分離できない物や、分離に過分な費用がかかる物は対象外です(民法第622条による第599条の準用)。
一方、貸主の同意を得て建物に付加した畳・建具などの「造作」については、話が別です。契約が期間満了または解約の申入れによって終了するとき、借主は貸主に対して、その造作を時価で買い取るよう請求できる場合があります(借地借家法第33条)。ただし、契約書に造作買取請求権を排除する特約があるときは、この権利は認められません。エアコンや物置などの設備が「造作」にあたるかどうかは、設置の経緯(貸主の同意の有無)や設備の性質によって個別に判断されるため、対象物が造作にあたるか、契約書に排除特約があるかを確認し、判断に迷う場合は専門家へ相談してください。
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残置物の無断処分に注意
立会いの時点で残置物が見つかっても、貸主が無断で処分すると、あとから借主との間でトラブルになるおそれがあります。処分してよいかどうかは借主と協議し、連絡が取れない場合や協議が難しい場合は、弁護士へ処分の可否・進め方を相談することをお勧めします。
損傷が見つかった場合は、箇所・状態が分かる写真を残しておきます。この記録は、次の章の敷金精算で、貸主負担・借主負担のどちらにあたるかを説明する材料になります。負担の分け方そのものの基準は、原状回復の負担区分で確認できます。
敷金の返還義務は、契約が終了し、かつ、物件の返還(明渡し)を受けたときに発生します(民法第622条の2第1項第1号)。つまり、契約終了日が来ただけでは返還義務は生じず、明渡しの確認が済んで初めて精算の対象になります。
この敷金の規定(民法第622条の2)は、2020年4月1日施行の改正民法で新たに明文化されたものです。施行日より前に締結された賃貸借契約には、原則として改正前の民法が適用されます(改正法附則第34条第1項)。目安としては、施行日以後に合意更新(契約上の自動更新を含む)された場合は改正後の民法が、借地借家法上の法定更新の場合は改正前の民法が引き続き適用されると整理されています。相続などで古い契約を引き継いだ場合は、契約締結日・更新の経緯を確認したうえで、判断に迷うときは専門家へ相談することをお勧めします。
返還までの具体的な日数は法律で定められていないため、契約書に精算・返還の時期の定めがあれば、それに従います。定めがない場合も、精算に時間がかかりそうなときは、内訳を示しながら早めに連絡を入れておくと、借主とのやり取りがスムーズになります。
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補足:返還期限は法律で定められていません
敷金の返還時期そのものは民法に日数の定めがなく、契約書の取り決めや当事者間のやり取りで決まります。「〇日以内に返す義務がある」という決まりはないため、契約書の記載を確認しておくと安心です。
未払いの家賃や、借主負担と判断できる原状回復費用がある場合、貸主は敷金をその弁済に充てることができます。この場合、借主の側から「敷金を充ててほしい」と請求することはできません(民法第622条の2第2項)。一方、通常の使用でついた傷み(通常損耗・経年変化)まで含めた根拠のない控除はできません。負担の区分そのものについては、原状回復の負担区分を確認してください。
イエリテの実務から
原状回復の範囲について、入居者と意見が合わないというご相談を受けることがあります。立会いの記録と、入居時の状態が分かる写真をそろえたうえで、貸主負担・借主負担の考え方を1つずつ説明すると、話し合いが進みやすくなります。感覚的に「これは借主負担のはず」と伝えるのではなく、根拠を示しながら精算内容を提示することが大切です。
明渡し後、修繕やクリーニングが必要な場合は、その期間だけ次の入居者への引き渡しが遅れます。募集開始のタイミングは、次の要素を踏まえて決めます。
退去予定日が分かった段階で、明渡し後の見込み期間を管理会社や不動産会社と共有しておくと、空室期間を短くする準備を早めに始められます。空室が続く場合の原因の切り分けや募集条件の見直しは、南城市でアパートの空室が続くのはなぜ?家賃を下げる前に確認したい原因の切り分け方でも扱っています。
契約書の予告期間の定めを確認してください。期間の定めのある契約で、中途解約条項に「〇か月前の予告」と定められている場合、その期間を経過するまでは契約が続いているのが原則です。予告期間より早い退去を借主が希望する場合、賃料の扱いなどを話し合いで決める必要があります。契約書に定めがない場合や内容が分からない場合は、弁護士へ契約の解釈を相談することをお勧めします。
法律上の義務ではありませんが、行うことをお勧めします。明渡しの完了時点を法律が直接定義しているわけではないため、実務では立会いによって鍵の返却・残置物の有無・設備や室内の状態を確認するのが一般的です。立会いをせずに済ませると、あとから損傷の原因や時期をめぐって借主との認識が食い違いやすくなります。
明渡しが完了したあと、借主の債務を差し引いた残額を返還する義務が生じます(民法第622条の2第1項)。返還までの具体的な日数は法律では定められていないため、契約書に精算・返還の時期を定めておくと、退去後のやり取りがスムーズです。定めがない場合も、精算に時間がかかる場合は内訳を示しながら早めに連絡を入れておくと、トラブルになりにくくなります。
借主と協議したうえで対応してください。借主が入居後に取り付けた物は、原則として借主が撤去する義務を負います。ただし、貸主が無断で処分すると、あとから損害賠償を求められるなどのトラブルにつながるおそれがあります。連絡が取れない場合や対応に迷う場合は、弁護士へ処分の可否や進め方を相談することをお勧めします。
この記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。解約・退去・明渡しの具体的な進め方や、原状回復・敷金精算の内容は、契約書の内容や個別の事情によって判断が変わります。具体的な対応や法的な争いについては、弁護士など専門家へご確認ください。制度や運用は変わることがあります。
解約通知を受けたあとの対応や、次の入居者募集に向けた相談をお受けしています。まだ退去が決まっていない段階でもご相談いただけます。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。