

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月15日
情報確認日:2026年08月15日
戸建てを貸すと決めたあと、募集条件や家賃相場より先に決めておきたいことがあります。契約の種類です。
当社へのご相談でも、「定期借家は更新できないため、契約期間が終われば必ず退去しなければならない」と受け止められているケースがあります。逆に、普通借家契約であれば、いつでも自分の都合で契約を終えられると思い込んでいる方もいらっしゃいます。どちらも、契約の仕組みを正確に踏まえたものではありません。
普通借家契約と定期借家契約は、「更新できるかどうか」という一点だけで選ぶものではなく、その家を将来どうしたいかによって選び方が変わります。それぞれの仕組みを、条文にもとづいて確認していきます。
この記事の目次
まず全体像を比較します。
| 普通借家契約 | 定期借家契約(定期建物賃貸借) | |
|---|---|---|
| 契約の更新 | 原則あり(貸主が拒むには正当の事由が必要)。法定更新後の期間は定めのないものとなる | 更新なし。期間満了で終了(契約期間が1年以上なら、貸主による終了通知が必要) |
| 契約の方式 | 口頭でも成立し得る | 書面による契約(内容を記録した電磁的記録による契約を含む) |
| 事前説明 | 不要 | 契約締結前に、契約書とは別の書面を交付して説明。借主の承諾があれば、法令に従う電磁的方法による提供も可(定期借家に固有) |
| 契約期間を1年未満とした場合 | 期間の定めのない賃貸借とみなされる | 1年未満でも有効に設定できる |
| 賃料増減請求権と特約 | 一定の期間、賃料を増額しない旨の特約は有効(減額請求権を排除する特約はできない) | 借賃の改定に係る特約がある場合は、賃料増減請求権の規定は適用されず、その特約に従う |
| 貸主からの終了 | 正当の事由がなければ拒めない | 期間満了により当然に終了(1年以上の契約は要通知) |
| 再び住んでもらう方法 | 契約を継続すればよい | 貸主・借主双方の合意があれば、新たな定期借家契約として再契約は可能 |
具体的な特約の有効性は契約文言によって変わるため、賃料改定に関する特約を検討する場合は、契約書の作成前に管理会社や専門家へ確認することをお勧めします。
「更新がない」ことと「二度と住んでもらえない」ことは、同じではありません。 この点は後の見出しで詳しく触れます。
一般的な賃貸借契約の多くは、この普通借家契約にあたります。期間を定めた場合でも、期間満了時に借主が住み続けることを希望すれば、貸主の側から更新を拒むには「正当の事由」が必要です(借地借家法第28条)。
正当の事由の有無は、貸主・借主それぞれが建物を必要とする事情、これまでの契約の経過、建物の利用状況、立退料などの申し出の有無を考慮して判断されます。「自分がいずれ住みたいから」という希望だけでは、当然に契約を終えられるとは限りません。
期間の定めがある契約で、期間満了の1年前から6か月前までの間に、貸主・借主のどちらからも更新しない旨の通知をしなければ、従前と同じ条件で契約を更新したものとみなされます(同法第26条第1項)。この法定更新となった場合、更新後の契約期間は、定めのないものとなります(同項ただし書き)。一方、当事者が合意して更新する場合まで、更新後の期間が必ず定めのないものになるわけではありません。貸主からこの通知をする場合も、第28条の正当の事由が必要です。更新のときに貸主が何を決められて何を決められないかは、賃貸契約の更新で貸主ができること・できないことで整理しています。
また、更新拒絶の通知をしていても、期間満了後に借主が建物の使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ、法定更新となる場合があります(同法第26条第2項)。
なお、期間を1年未満と定めた場合、その契約は期間の定めのない賃貸借とみなされます(同法第29条第1項)。半年など短い期間だけを区切って貸したい場合、普通借家契約では意図した期間で終わらせられません。
将来にわたって長く貸し続けても構わない家であれば、普通借家契約は自然な選択肢です。ただし、法定更新となった普通借家契約は、期間の定めのない契約になります。期間の定めのない普通借家契約で貸主から解約を申し入れる場合は、原則として申入れから6か月を経過して終了し(同法第27条)、正当の事由も必要です(同法第28条)。将来自分や家族が住みたくなっても、正当の事由がなければ、貸主の更新拒絶や解約の申入れによって契約を終了させることはできません。
定期借家契約(定期建物賃貸借)は、契約で定めた期間の満了によって、更新されることなく終了する契約です。借地借家法第38条に、次の要件が定められています。
契約書に「更新なし」と書くだけでは足りません。契約締結前に、別書面の交付または借主の承諾を得た適法な電磁的方法による提供のいずれも行われなかった場合、更新がないとする定めだけが無効となり、通常の更新がある契約として扱われることがあります。事前説明の実施内容は、貸主自身も確認しておきたい部分です。
イエリテの実務から
当社へのご相談では、「定期借家は更新できないため、契約期間が終われば必ず退去しなければならない」と受け止められているケースがあります。契約・手続きを担当するなかで、この受け止め方に出会うことがあります。
定期借家契約に「更新」という手続きはありませんが、期間満了時に貸主・借主の双方が合意すれば、あらためて契約を結び直す「再契約」という形で住み続けてもらうことができます。更新がないことと、二度と住んでもらえないことは別の話です。
私自身がお伝えしているのは、「更新できるかどうか」だけで契約形態を決めるのではなく、その家を将来どうしたいかという目的に合わせて選ぶべきだということです。
再契約は、更新とは法的な性質が異なります。更新は従前の契約が継続するのに対し、再契約は新しい契約として条件を見直す機会にもなります。家賃や契約期間を、そのときの状況に合わせて設定し直せる点は、貸主にとって定期借家契約を選ぶ理由のひとつになります。
再契約も、法的には新たな定期借家契約です。 再契約のときも、契約書等の書面と、更新がなく期間満了で終了する旨の事前説明をあらためて行う必要があります。
定期借家契約は、原則として期間満了で終了します。ただし、契約期間が1年以上の場合、貸主が満了の1年前から6か月前までに終了通知をしなければ、満了による終了を借主に対抗できません。
定期借家契約で契約期間が1年以上の場合、貸主は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了により賃貸借が終了する旨を借主へ通知しなければなりません(借地借家法第38条第6項)。この通知をしないと、期間が満了しても、契約の終了を借主に対抗できません。通知が遅れた場合も、通知の日から6か月を経過するまでは終了を主張できないとされています。契約期間が1年未満の定期借家契約では、この通知は法令上求められていません。
!
注意点
戻る時期を決めて貸す場合は、契約書に期間を明記するだけでなく、期間満了の1年前から6か月前までの通知の時期もあわせてスケジュールに入れておく必要があります。法律上、通知の方法は文書に限定されていませんが、契約で定められた通知方法を確認し、後から内容や通知日を確認できる形で行うと安心です。
床面積200平方メートル未満の居住用建物の定期借家契約には、借主側からの中途解約の規定があります。転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、借主がその建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、借主は解約の申入れをすることができます。申入れの日から1か月を経過することで契約は終了します(同法第38条第7項)。この法定の中途解約権を借主に不利に制限する特約は無効です(同法第38条第8項)。
この法定の中途解約権とは別に、契約で借主からの中途解約を認める条項を置く場合もあります。募集前に、借主が中途解約できる場面と予告期間を、管理会社等と確認しておきましょう。
貸主の予定どおりに期間が満了するとは限らない点は、収支を見込むうえで踏まえておきたいところです。

契約形態は、「その家を将来どうしたいか」を軸に選びます。
💡
判断のポイント
一方で、定期借家契約は、借主にとって「いずれ出ていかなければならない住まい」になります。同じ地域・条件の物件と比べたときに、募集条件面で選ばれにくくなることも考えられます。契約期間や家賃の設定を含めて、募集の見通しとあわせて検討することをお勧めします。
✓
確認ポイント
住宅ローンが残っている家を貸す場合は、契約形態の検討より先に借入先への確認が必要です。詳しくは住宅ローンが残っている家は貸せる?借入先への確認と手続きの進め方をご覧ください。
相続した実家を貸す場合は、名義や3,000万円特別控除の対象になり得るかなど、契約形態以前に確認しておきたい点があります。相続した実家を貸すには?沖縄で戸建て賃貸を始める前に確認したいことで整理しています。
家賃の相場を確認したい場合は、南城市で戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイントと貸す前の確認事項もあわせてご覧ください。
当社では、件数や割合を集計した統計を持っていません。 選ばれる契約形態は、その家を将来どうしたいかという所有者の事情によって変わります。件数の多さではなく、ご自身の予定に合わせて検討することをお勧めします。
必ず安くする必要があるとは限りません。 期限があることを理由に、他の条件で比較されることは考えられますが、金額を下げるかどうかは、地域の相場や物件の条件によって判断が分かれます。
その家を将来どうしたいかによって変わります。 転勤で数年後に戻る予定がある場合はその期間に合わせ、予定が固まっていない場合は、短めの期間にして再契約で調整する方法もあります。契約期間の設計は、不動産会社にご相談ください。
現在の普通借家契約の締結日によって扱いが異なります。 2000年3月1日(定期借家制度の施行日)以後に締結された普通借家契約であれば、その契約を合意解除し、必要な書面・事前説明の要件を満たした新たな定期借家契約を締結することで切り替えられます。一方、2000年3月1日より前に締結された既存の契約を、同じ住宅を引き続き賃貸する形で定期借家契約へ切り替えることはできません。契約の締結日と手続きの進め方は、管理会社または弁護士へご確認ください。
契約書を貸主自身で作成すること自体は可能です。 ただし、定期借家契約では、書面による契約(電磁的記録による契約を含みます)に加えて、契約締結前に、契約書とは別の書面(または借主の承諾を得た適法な電磁的方法)による事前説明が必要です。これは宅地建物取引業者の重要事項説明とは別の手続きで、行わなかった場合は「更新がない」とする定めが無効になります。書式は国土交通省の標準契約書等を参考にできますが、特約の内容や事前説明の進め方は、不動産会社や専門家に確認しながら進めることをお勧めします。普通借家契約であっても、修繕の分担や特約の内容によって後のトラブルにつながることがあります。
この記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。契約内容や個別の判断については、弁護士など専門家へご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。
普通借家契約と定期借家契約のどちらが合うか、将来その家をどうしたいかをうかがいながら一緒に整理します。まだ貸すと決めていない段階でもご相談いただけます。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。