

親が住んでいた家、転居して使わなくなった自宅、相続した土地と建物。手放すのは惜しいけれど、住む予定もない。そんなとき、売るか、貸すか、そのまま持ち続けるかで迷ったまま数年が過ぎてしまうことがあります。
決まらない理由は、どれが正解か分からないからではありません。3つを比べる物差しが、そもそもそろっていないことが多いためです。売却額は一度きりの金額、家賃は毎年の金額、持ち続ける場合は出ていくだけの金額で、単位が違います。単位の違うものを並べて眺めても、比べたことにはなりません。
そこで以下では、3つを同じ土俵に乗せるための数字の出し方、金額を出す前に片づけておく前提、そして「後から変えやすいかどうか」というもう1本の物差しを、この順で見ていきます。南城市・沖縄県南部に不動産をお持ちの方を想定しています。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月29日
情報確認日:2026年8月29日
この記事の目次
売る・貸す・残すを比べるとき、次のような表を作ろうとして手が止まることがあります。
| 進め方 | 手に入るお金 |
|---|---|
| 売る | 売却代金 |
| 貸す | 家賃 |
| 残す | なし |
この表は、比べているようで比べられていません。売却代金は一度だけ入る金額、家賃は毎年入り続ける金額、残す場合は毎年出ていく金額です。時間の単位も、プラスとマイナスの向きもそろっていません。
比べるためには、少なくとも次の2つに分けて数字を出す必要があります。
金額を2種類に分けても、まだ足りません。一度きりの金額と毎年の金額は、同じ期間を置かないと並べられないためです。1年で見るのか、5年で見るのかによって、貸した場合の累計も、持ち続けた場合の累計も変わります。
この期間は、一般的な「3年」「5年」で決めるものではありません。ご自身やご家族が、次にその不動産を使う・売る可能性がある時期から決めます。
期間を決めたら、その同じ期間で次の3つを出します。
ここで気をつけたいことが2つあります。1つは、貸す・残すは期間が終わっても不動産が手元に残るため、累計した金額だけで売却と同じ1つの数字にはならないということです。もう1つは、その残った不動産が将来いくらで売れるかは分からない、ということです。この記事では将来の売却価格を見込みません。
目的は投資の採算計算をすることではなく、同じ期間で見たときに、何が入って何が出ていくのかを目に見える形にするところまでです。そこまで出せば、あとはご家族で優先順位を決められます。
そのうえで、金額以外の物差しをもう1本足します。選んだあとに、どれくらい変えやすいかです。これは記事の後半で扱います。
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先に結論
比べる順番は、①名義・共有・住宅ローンを片づける → ②何年間で比べるかを決める → ③その期間で、売る場合に手元に残る額、貸す場合の現金の出入り、残す場合の支出を別々に出す → ④後から変えやすいかどうかで並べ替える、の4段階です。①が終わらないうちに金額だけを見比べても、判断は動きません。

金額を出す前に確認しておくことがあります。ここが未処理だと、売る・貸す・残すのどれを選んでも、その先へ進めません。
相続した不動産の場合、名義が亡くなった方や、その前の世代のままになっていることがあります。この状態でも、査定を受けることや売却の相談を進めること自体はできます。ただし、亡くなった方の名義のまま、買主へ直接所有権移転登記をすることはできません。売買を完了させる(買主へ名義を移す)には、先に相続人への相続登記を済ませておく必要があります。
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。施行日より前に発生した相続も対象で、2027年(令和9年)3月31日までか、相続を知った日から3年のいずれか遅い日までに申請が求められます(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
期限内に遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで申請義務そのものは果たせます。ただし、これは義務を履行するための手続きであって、売却や抵当権設定をするには別途、通常の相続登記が必要です。詳しくは相続登記の義務化と手続きの期限をご覧ください。
共有になっている不動産は、何をするかによって必要な同意の範囲が変わります。
ここで注意したいのは、「売る」より「貸す」のほうが同意のハードルが低いように見える点です。ただし、借地借家法が適用される通常の建物賃貸借を持分の過半数だけで設定できるかどうかについては、法律の解釈が分かれる論点があります。共有物件を貸すことを検討する場合は、弁護士や司法書士へ、その契約の形で持分の過半数だけで進められるかを確認してください。
共有の全体像は共有名義の不動産は売却できる?全員の同意が必要な場面で扱っています。
住宅ローンを返済中の物件を賃貸に出せるかどうかは、金融機関や商品、契約の内容によって異なります。公的な資料で一律に決まっているものではないため、この記事で「貸せます」「貸せません」と言い切ることはできません。借入先へ、その物件を賃貸に出してよいか、その場合に借入条件がどうなるかを直接確認してください。
税制の面では、住宅ローン控除は、家族とともに居住の用に供しなくなった年以後は適用されません。転任の命令等やむを得ない事由があり、所定の届出をしている場合には、再び住むようになったあとの残存期間について再適用を受けられる場合があります。なお、再入居した年にその家屋を賃貸の用に供していた場合、再適用が受けられるのはその年ではなく翌年以後です(出典:国税庁タックスアンサーNo.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」、令和7年4月1日現在法令等)。
確認の進め方は住宅ローンが残っている家は貸せる?借入先への確認と手続きにまとめています。
売却を検討するとき、最初に知りたくなるのは査定額です。ただし、査定額がそのまま手元に残るわけではありません。比べるときに使う数字は、税金と費用を引いたあとに残る額です。
土地や建物を売ったときの利益(譲渡所得)は、給与など他の所得とは分けて税額を計算します。税率は、売った年の1月1日時点での所有期間によって変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日現在) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
(出典:国税庁タックスアンサーNo.3208「長期譲渡所得の税額の計算」・No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」。いずれも令和7年4月1日現在法令等。所得税にはこのほか復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されます)
相続で取得した不動産の場合、所有期間は相続した日からではなく、亡くなった方が取得した日を引き継ぎます(取得費も同様に引き継ぎます)。相続してすぐに売ったから短期譲渡になる、というわけではありません。
税金の全体像は不動産を売ったときにかかる税金と3,000万円特別控除の基本、費用の内訳は不動産売却にかかる費用の内訳と手取りの考え方で扱っています。
自分が住んでいた家を売る場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。以前住んでいた家屋については、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限り対象となります(出典:国税庁タックスアンサーNo.3302「マイホームを売ったときの特例」、令和7年4月1日現在法令等)。
この特例には、後で効いてくる注意点があります。詳しくは「貸す」と「後から変えやすいかどうか」の項目で触れます。
住宅ローンが残っている物件を売る場合、売却代金はまず金融機関への返済に回ります。手元に残る現金を考えるときは、次のように見ます。
ローンの残債そのものは、売却のためにかかる費用ではありません。もともと負っている借入金であり、売却代金から返済に回るため、手元に残る現金を考えるうえで差し引いて見るという位置づけです。抵当権抹消などの手続きにかかる費用は、諸費用のほうに含まれます。
家賃10万円で貸せるとしても、その12か月分がそのまま増えるわけではありません。ここで分けて考えたいのが、税金を計算するための「不動産所得」と、実際に手元を出入りする現金は別のものだという点です。
貸すことで生じる収入は不動産所得として扱われ、「総収入金額-必要経費=不動産所得の金額」で計算します(出典:国税庁タックスアンサーNo.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」、令和7年4月1日現在法令等)。
必要経費には、その業務にかかる固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが含まれます。一方で、所得税・住民税そのものは必要経費になりません。借入金の返済のうち元本部分も必要経費にはならず、業務のための借入金の利息は必要経費になり得ます。
不動産所得が赤字になったときは、他の黒字の所得金額から差し引くことができます(損益通算)。ただし、必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は、損益通算の対象になりません(出典:国税庁タックスアンサーNo.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」、令和7年4月1日現在法令等)。
比べるときに使いたいのは、税務上の所得ではなく、その年に実際に手元へ残った現金のほうです。両者は次の2点でずれます。
そのため、年間の現金の出入りは、税務上の計算式とは別に、次のように書き出して確認します。これは税務上の所得の計算式ではありません。
なお、ここから所得税・住民税を差し引いた最終的な手残りは、給与など他の所得、各種控除、損益通算の有無によって変わります。税引後にいくら残るかは、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
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年間の現金の出入りを出すときの確認
家賃の決まり方は戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイント、税務の詳細は家賃収入にかかる税金と確定申告の基本をご覧ください。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、査定で出た売却の見込み額と、家賃の見込み額をそのまま並べて「どちらが得か」を決めようとして、判断が止まってしまうことがあります。売却額は税金と費用を引く前の金額、家賃は経費を引く前の金額なので、そのままでは比べられません。ご相談をお受けするときは、売る場合に手元に残る見込みと、貸す場合に1年間で残る見込みを、それぞれ別の数字として出すところから始めています。
そのまま持ち続ける判断も、選び方の一つです。ただし「何もしない」ことと同じではありません。持ち続けるかぎり、次のような支出が続きます。ここは税務上の経費の話ではなく、実際に出ていく現金の話として整理してください。
住宅ローンの返済額は、貸していない自宅・空き家では必要経費にはなりません。それでも現金は出ていくため、持ち続ける場合の年間支出には入れて見ます。
住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を軽くする住宅用地の特例があります。200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は価格の6分の1、それを超える部分は3分の1が課税標準となります(地方税法349条の3の2)。都市計画税が課税される区域・自治体では、都市計画税にも同様の住宅用地の特例があり、こちらは小規模住宅用地が3分の1、それを超える部分が3分の2となります(同法702条の3)。
都市計画税は、市町村が条例で課することができる目的税で、課税されるのは原則として市街化区域内にある土地・家屋です。市街化区域以外でも、条例で定める区域について課税することができます(出典:総務省「都市計画税」)。つまり、都市計画税がかかるかどうかは自治体と区域によって変わります。南城市でご自身の不動産に都市計画税がかかっているかどうかは、毎年届く納税通知書か、南城市の税務課でご確認ください(当社では、2026年8月29日時点で南城市の課税状況を公表資料から確認できませんでした)。
この特例には除外規定があります。空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、住宅用地から除外され、特例の対象外となります。2023年(令和5年)12月13日施行の改正で、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」が新たに設けられ、勧告の対象が広がりました(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法について」)。
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ここに注意
空き家になっただけで住宅用地の特例が外れるわけではありません。特例の対象から除外されるのは、市町村から勧告を受けた場合です。措置は指導・助言から始まり、勧告、命令へと段階的に進みます。管理の状態を保っていれば、直ちにこの段階へ進むものではありません。
詳しくは空き家の固定資産税|住宅用地特例が外れる条件で扱っています。
なお、建物を解体して土地だけになった場合、その土地を手放す方法として相続土地国庫帰属制度があります。相続または相続人への遺贈で取得した土地について、要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度ですが、建物が存する土地は申請できません。担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地なども申請できず、承認された場合には負担金の納付が必要です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。判断の順番は相続した土地を手放したい|相続放棄と国庫帰属制度の違いにまとめています。
金額をそろえたら、もう1本の物差しを足します。その判断を、あとでどれくらい変えられるかです。
「迷っているからとりあえず貸しておく」という考え方は、一見すると安全に見えます。ただし、契約の形によっては、そのあとの判断の幅が狭まります。
一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、契約期間が満了しても自動的には終わりません。期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。
さらに、通知をしたとしても、貸主・借主それぞれの建物の使用を必要とする事情などを考慮して「正当の事由があると認められる場合でなければ」、更新の拒絶はできません(借地借家法28条)。契約期間の途中で解約を申し入れる場合も、申入れから6か月の経過に加えて、同じ正当事由が必要です(27条1項)。
正当事由が認められるかどうかは個別の事情によります。「立退料を払えば必ず明け渡してもらえる」というものではなく、逆に「一度貸したら二度と戻らない」というものでもありません。貸主の都合だけでは終わらせられない仕組みになっている、という理解が実務的です。
将来売る予定や自分で使う予定がある場合には、定期建物賃貸借(定期借家契約)という方法があります。公正証書などの書面(法令上認められる電磁的記録を含みます)によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定められます(借地借家法38条1項・2項)。
ただし、次の手続きを満たしていることが前提です。
また、床面積200平方メートル未満の居住用建物について、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難になった場合、借主の側から中途解約を申し入れられる規定があります(同条7項)。期間満了後に再び貸すかどうかは、当事者の合意によります。
契約類型の選び方は普通借家契約と定期借家契約の違いと選び方、転勤を理由に一時的に貸す場合は転勤の間だけ自宅を貸せる?戻れるかどうかで変わる契約の選び方で詳しく扱っています。
ここが、自分が住んでいた家と、相続した家とで結論が分かれるところです。
自分が以前住んでいた家屋を売る場合の3,000万円特別控除は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件です。この期限内であれば、住まなくなった日以後にどのような用途に使っていてもかまいません(国税庁タックスアンサーNo.3302)。つまり、期限内に売るかぎり、その間に賃貸に出していたことだけを理由に使えなくなるわけではありません。
一方、相続した被相続人の居住用家屋を売る場合の特例(いわゆる相続空き家の特例)は、要件が異なります。「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと」が要件とされており、一度でも貸してしまうと適用を受けられません(出典:国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、令和7年4月1日現在法令等)。
この特例には、ほかにも次のような主な要件があります(すべてを挙げたものではありません)。
なお、令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除額の上限は2,000万円となります。
要件が多く、そもそも対象になる家屋かどうかは個別の確認が必要です。ただ、比べ方の話として押さえておきたいのは、相続した実家を「とりあえず貸す」と、この特例の道が閉じるという点です。売る可能性を残しておきたい場合は、貸し出す前に税理士へ、その家屋が特例の対象になり得るかを確認してください。相続した空き家の全体像は相続した空き家はどうする?売却・活用と3,000万円特別控除で扱っています。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、金額の話より前の段階で止まっていることがあります。名義が前の世代のままで誰が決められるのか分からない、兄弟の間で方針が違う、という状態です。この段階で査定額だけを見ても、比べる材料がそろっていないため判断は動きません。また、「貸しておけばいつでも売れる」と受け取られていることもあります。契約の形によっては、売りたくなったときにすぐには進められないことがあるため、貸し出す前に確認していただくようにしています。
止まりやすい箇所は、金額そのものではなく、その手前にあることが少なくありません。次の3つのうち、どれが決まっていないのかを先に切り分けてください。
3つ目は、法律や税金では決められません。ご家族で優先順位を決めておくと、1つ目・2つ目の確認も進めやすくなります。実家をどうするかで期限が絡む場合は、実家は残す?売る?決める前に確認したい「期限のあること」もあわせてご覧ください。
イエリテの実務から
南城市や沖縄県南部でご相談をお受けしていると、金額の比較だけでは決めきれない事情が出てくることがあります。屋敷や土地が親族のつながりの中で受け継がれてきたもので、名義が前の世代のままになっていたり、親族の間で先に話をしておく必要があったりする場合です。こうした事情がある場合、売る・貸す・残すのどれを選ぶかより先に、誰と何を決めるかを整理するほうが早いことがあります。
沖縄県南部では、県外に住みながら実家や土地を持っている方からのご相談もあります。遠方にいると現地の状態が分かりにくく、判断の材料が集まりにくくなります。手続きの進め方は県外在住でも沖縄の不動産は売却できる?で扱っています。
空き家の扱いについては、南城市にも相談の窓口があります。市の公式サイトに空き家対策等に関するページがあり、生活環境課が担当しています。市の対応や制度の内容は市へ直接ご確認ください。南城市での空き家の扱い全般は南城市の空き家対策|売却・賃貸・管理にまとめています。

比べ始める前に、次の順で確認すると進めやすくなります。
税額の試算は税理士、登記は司法書士、境界は土地家屋調査士が担当します。不動産会社は、売却の見込みや貸した場合の家賃の見込みをお出しし、どの専門家に何を確認すればよいかを整理するところをお手伝いします。
売ること自体はできますが、空室にして引き渡せるかは契約の形によります。入居者がいる状態のまま売ることもできますが、その場合は買主が限られ、価格にも影響しやすくなります。空室にして引き渡したい場合、普通借家契約では、期間を1年と定めても、更新をしない旨の通知と正当事由がなければ終わりません。期間で確実に終わらせたい場合は定期借家契約という方法がありますが、書面での契約と事前の書面交付・説明、期間が1年以上なら終了通知が必要です。加えて、相続した家屋の場合は、貸したことで相続空き家の特例(国税庁タックスアンサーNo.3306)が使えなくなる点にご注意ください。
空き家になっただけで住宅用地の特例が外れるわけではありません。特例の対象から除外されるのは、市町村から特定空家等・管理不全空家等として勧告を受けた場合です(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法について」)。管理の状態が判断に関わるため、草刈りや通気など最低限の管理を続けているかどうかが分かれ目になります。
解体は、税務の要件と一緒に確認したほうが安全です。更地にすると買主の幅が広がる場合がある一方で、解体費用がかかり、住宅用地の特例が外れて土地の固定資産税の負担が変わります。また、相続空き家の特例を使う場合は取り壊して売る方法もあります。順番としては、特例の対象になり得るかを税理士に確認してから決めることをお勧めします。
共有物全体を売却するには共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。自分の持分だけを売ることは法律上できますが、持分だけでは買主が限られます。まずは共有者の間で方針を確認し、まとまらない場合は弁護士へご相談ください。
査定を依頼したから売る義務が生じるものではありません。査定は売却の見込み額をお出しするものです。売る・貸す・残すのどれにするか決めていない段階でも、比べるための数字としてご利用いただけます。
売る・貸す・残すは、一度きりの金額、毎年の金額、毎年の支出という別々の単位を持っています。同じ表に並べる前に、それぞれの数字を分けて出し、そのうえで後から変えやすいかどうかを重ねて考えると、判断の材料がそろいます。
そして、金額を出す前に、名義・共有・住宅ローンという3つの前提を片づけておくことが近道になります。特に相続した家屋については、貸すことで使えなくなる税の特例があり、期限も定められています。迷っているあいだにできることは、決めることではなく、確認しておくことです。
この記事は、2026年8月29日時点で確認できる法令・公的資料をもとに、一般的な情報としてまとめたものです。税額の計算、特例の適用可否、登記や契約の個別の判断は、それぞれの専門家(税理士・司法書士・弁護士・土地家屋調査士)や所管の行政機関へご確認ください。個別の事情によって結論は異なります。
手取りの見込みと毎年の収支は数字で出せますが、どれを優先するか、いつまでに決めるかは、ご家族の事情によって変わります。株式会社イエリテでは、売却の見込みと貸した場合の見通しを別々に整理し、どの専門家へ何を確認すればよいかを一緒に確認するところからお手伝いしています。売ると決めていない段階でもご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。