

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月23日
情報確認日:2026年08月23日
台風が過ぎたあと、所有している賃貸物件の屋根や外壁が傷んでいないか、入居者から連絡が来ていないか気になった経験がある方は少なくないはずです。特に県外に住みながら物件を所有しているオーナーにとっては、現地の状況をすぐに確認できないぶん、何から手をつければよいのか迷いやすい場面です。
当社へ寄せられるご相談でも、台風後にオーナーから被害の相談を受け、現地を確認したところ、屋根材の飛散による破損や雨漏りが見つかったケースがあります。修繕を誰が負担するのか、火災保険はどこまで補償してくれるのか、入居者にはどう連絡すればよいのか、順を追って整理します。
この記事の目次

台風による被害の多くは、屋根材・外壁材・ベランダの設備・アンテナなど、風で飛ばされやすい箇所から発生します。台風シーズンに入る前に、次のような点を点検しておくと、被害そのものを減らせる場合があります。
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台風前チェックポイント
老朽化した部分を放置したまま強風で屋根材や外壁が飛散し、隣家や通行人に損害を与えた場合、所有者が損害賠償の責任を負う場合があります。民法第717条は、建物などの工作物の設置・保存に瑕疵(本来備えているべき安全性を欠いていること)があったことで他人に損害が生じたとき、占有者がまず責任を負い、占有者が損害防止に必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うと定めています。台風そのものは避けられない自然現象ですが、日頃の点検を怠っていたことが「保存の瑕疵」と判断される可能性はあるため、事前点検は被害を減らすだけでなく、オーナー自身の責任リスクを下げることにもつながります。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、台風のあとにオーナーから「屋根や外壁がどうなっているか確認してほしい」というご相談をいただき、現地を確認することがあります。実際にあったのは、屋根材が飛ばされたことによる破損や、そこからの雨漏りです。こうしたご相談を受けるたびに感じるのは、台風が来てから慌てて対応するより、台風シーズン前に屋根や外壁の状態を確認しておくことが大切だということです。当社でも、年に一度を目安に状態を確認しておくことをお勧めしています。
台風が通過したあとは、できるだけ早く現地を確認し、被害の内容を記録しておくことが大切です。管理会社に委託している場合は、報告を受けたうえで写真の追加を依頼するとよいでしょう。
被害箇所は、日付が分かる状態でスマートフォンなどで撮影しておきます。保険金請求や罹災証明書の申請では、被害直後の写真が状況を説明する材料になります。
台風被害では、入居者からの連絡が被害把握の最初のきっかけになることが多くあります。民法第615条は、賃借物に修繕が必要な状態が生じたとき、賃借人(入居者)は遅滞なくその旨を賃貸人(オーナー)へ通知しなければならないと定めています。また、賃借人は善良な管理者の注意をもって賃借物を保存する義務も負っています(民法第400条)。
こうした規定を踏まえ、入居者には次のような対応をあらかじめお願いしておくと、被害の把握と初期対応がスムーズになります。
民法第607条の2は、入居者が修繕の必要をオーナーに通知した、またはオーナーがその必要をすでに知っているにもかかわらず、オーナーが相当の期間内に対応しない場合には、入居者自身が必要な修繕を行えると定めています。被害の拡大を防ぐ必要がある急迫の事情がある場合も同様です。単にオーナーと連絡がつきにくいというだけで修繕できるわけではありません。急迫の事情がない場合は、入居者からの通知(またはオーナーがすでに把握していること)と、オーナーが相当の期間内に対応しないことの両方が要件になります。ブルーシートをかけるなどの応急処置がこれにあたる場面は考えられますが、屋根の上など危険な場所での作業は避け、安全の確保を最優先したうえで、費用の清算方法についても入居者との間で事前に取り決めておくと、あとのトラブルを防ぎやすくなります。
修繕そのものの費用負担については、民法第606条第1項が基本の考え方を示しています。賃貸人(オーナー)は、賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負うのが原則です。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときは、この限りではありません。
台風による損傷は不可抗力によるものであり、通常はこのただし書には当たらないと考えられます。ただし、たとえば入居者が窓や雨戸を閉め忘れて雨水が入り込んだ場合など、入居者側の過失が原因で被害が拡大した部分については、入居者負担となる場合があります。
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先に結論
台風被害の修繕は、原則としてオーナーが負担するという整理になります。一方で、賃貸借契約の中に、一定の修繕をオーナーの負担から外す特約が定められている場合もあります。こうした特約がどこまで有効かは契約内容によって判断が分かれるため、契約書の修繕に関する条項を確認しておくことをお勧めします。
雨漏りや浸水で部屋の一部が使えなくなった場合、家賃の扱いも確認しておきたい点です。民法第611条第1項は、賃借物の一部が使用・収益できなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、使用・収益できなくなった部分の割合に応じて家賃が減額されると定めています。これは入居者からの請求を待たずに生じる効果ですが、具体的な減額割合を算定する基準は条文にはなく、入居者との協議で決めることになります。
さらに、残った部分だけでは入居者が賃借の目的を達成できないほどの被害である場合、入居者は契約を解除できます(民法第611条第2項)。また、建物の全部が使用・収益できなくなった場合は、賃貸借契約はその時点で当然に終了します(民法第616条の2)。全部が使用できない状態に該当するかどうかは個別の判断になりますが、一部の被害と全部の被害とでは、契約の扱いそのものが異なる点を押さえておく必要があります。
台風による建物損害は、火災保険の「風災」「水災」の補償で対応するのが基本です。日本損害保険協会の案内によると、火災保険(すまいの保険)は台風や暴風による風災、洪水や床上浸水などの水災を補償対象とする商品があります。風災は損害が一定額以上に達するもの、水災は損害額が一定割合以上に達するものを対象とする商品が一般的とされていますが、こうした支払い要件の具体的な水準は保険会社・商品によって異なります。契約している火災保険がどちらを補償しているか、自己負担額(免責金額)がいくらに設定されているかは、契約内容を確認しないと分かりません。
保険料率については、損害保険料率算出機構が「台風や豪雪等の自然災害が発生する頻度や被害の程度などは、地域により異なる」ことから、建物や地域によって保険料率が異なる仕組みになっていると案内しています。沖縄は台風の影響を受けやすい地域であるため、補償内容・自己負担額を含めて契約を確認しておくことが大切です。
保険法第14条は、保険契約者または被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく保険会社へその旨を通知しなければならないと定めています。台風被害に気づいたら、まずこの通知を行うことが基本です。
これとは別に、保険給付を請求する権利そのものは、保険法第95条により、行使できる時から3年間行使しないと時効によって消滅すると定められています。もっとも、これは「3年以内であればいつ連絡してもよい」という意味ではありません。損害を知った時点で遅滞なく通知することが原則であり、時間が経つほど被害と台風との因果関係を説明しづらくなることもあるため、被害を確認したらできるだけ早く保険会社へ連絡することをお勧めします。
台風のあとは、住宅の修理や保険金請求のサポートをうたう業者からの営業が増える時期でもあります。
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注意点
日本損害保険協会は、「自社で工事をしなかった場合は保険金の一定割合を支払ってもらう」といった条件を提示された事例や、成功報酬型の契約後に修理費用が不足したという事例を挙げ、注意を呼びかけています。契約を急がされた場合は、その場で決めず、契約している損害保険会社・代理店へ相談してから判断することをお勧めします。
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補足
入居者が加入する借家人賠償責任保険は、入居者に法律上の賠償責任が発生した場合に働く保険です。純粋な不可抗力による台風被害で入居者に法律上の賠償責任が生じない場合は、この保険が対象となる場面ではなく、オーナー自身の火災保険(風災・水災)の確認が中心になります。一方、前述のとおり入居者側の過失が被害の一因になっている場合は話が別になります。個別商品の支払要件は約款によるため、判断に迷う場合は保険会社へ確認してください。貸し出す前の火災保険の確認については、当社の別記事「自宅を賃貸に出すとき、火災保険はどうする?契約内容の確認と借家人賠償責任保険」でも整理しています。
保険金請求や各種手続きの際に必要になることがあるのが、罹災証明書です。災害対策基本法第90条の2は、市町村長は被災者から申請があったとき、遅滞なく住家の被害状況等を調査し、罹災証明書を交付しなければならないと定めています。
南城市では、次の2種類の証明書を発行しています。
申請に必要なのは印鑑のみとされていますが、スマートフォンで撮影した被害写真を添えると手続きがスムーズに進みます。窓口は南城市役所3階秘書防災課(平日8時30分〜17時15分、電話098-917-0256)です。申請の期限・対象・窓口は南城市の運用であり、近隣市町村では扱いが異なる場合があるため、南城市外の物件を所有している場合は、それぞれの市町村へ確認してください。
日本損害保険協会は、災害時のお知らせ(令和8年6月24日からの大雨に関するお知らせ等)で、「損害保険の保険金等の請求に際しては、地方自治体から交付される罹災証明書の提出は原則不要」と案内しています。ただし、保険会社や手続きの内容によっては提出を求められる場合があり、罹災証明書は保険金請求以外の行政手続き(税の減免など)で必要になることもあるため、必要性は保険会社や各種手続きの窓口へ事前に確認しておくと安心です。

管理会社に委託している場合、台風後の一次対応(入居者からの連絡受付、被害状況の確認、応急処置の手配)は管理会社が担うのが一般的です。ただし、修繕の実施可否や費用負担の判断、保険金請求の手続きは、最終的にオーナーの意思決定が必要になる場面が多くあります。台風前後の連絡体制について、管理委託契約の中でどこまでが管理会社の対応範囲か、事前に確認しておくと、被害発生時に慌てずに済みます。
自主管理の場合は、入居者からの連絡受付から修繕業者の手配、保険会社への連絡までを、オーナー自身で行うことになります。県外に住んでいて現地対応が難しい場合は、被害確認だけを地元の業者に依頼する、管理会社への委託を検討するといった選択肢もあります。管理会社の選び方や、自主管理と管理委託のどちらを選ぶかについては、戸建てを貸すとき管理会社は必要?沖縄で考える自主管理と管理委託の選び方、アパート管理会社の選び方|沖縄で相続したオーナーが確認したい基準で詳しく整理しています。
契約している補償内容によります。風災・水災を補償する火災保険であっても、損害が一定額・一定割合に達しない場合は対象外となる商品もあります。契約内容と自己負担額(免責金額)を保険会社へ確認してください。
日本損害保険協会は、保険金請求に地方自治体の罹災証明書の提出は原則不要と案内しています。ただし、保険会社や手続き内容によって提出を求められる場合もあるため、必要性は保険会社へ確認することをお勧めします。
その場で契約を決めず、いったん持ち帰ることをお勧めします。保険金の一定割合を業者へ支払う条件が付いていたなど、契約内容をめぐるトラブルが報告されています。契約前に、加入している損害保険会社・代理店へ相談してください。
入居者の責めに帰することができない事由であれば、使用できなくなった部分の割合に応じて家賃が減額されます(民法第611条第1項)。減額の具体的な割合は、入居者との協議で決めることになります。建物の全部が使用できない状態になった場合は、賃貸借契約はその時点で当然に終了します(民法第616条の2)。
この記事は、2026年8月23日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。火災保険の契約内容・補償範囲は保険会社・商品によって異なり、罹災証明書の申請条件は市町村によって異なります。具体的な手続きは、契約している保険会社・代理店、および物件所在地の市町村窓口へご確認ください。契約上の権利義務や損害賠償に関する判断は弁護士へご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。
県外にお住まいの方や自主管理の方で、入居者からの連絡受付や被害確認、修繕業者の手配を毎回ご自身で行うのが難しいと感じている場合は、管理会社への委託や現在の管理内容の見直しも選択肢のひとつです。台風対応に限らず、空室・家賃設定・修繕を含めた今の管理状況を整理するところからご相談いただけます。委託するかどうかを決めていない段階でも構いません。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。