

貸すと決めて家賃や募集条件がおおよそ固まると、次に出てくるのが「この物件の募集を、どこに、どう頼めばいいのか」という問題です。1社に絞るのか、何社かに声をかけるのか。そのときいくらかかるのか。ここは判断材料が表に出てきにくい部分です。
当社へ寄せられるご相談でも、費用に関する質問をいただくことがあります。仲介手数料は誰がいくら払うのか、広告料という費用は何なのか、といった内容です。あわせて、「とにかく何社にも声をかけたほうが早く決まるはずだ」というお考えを伺うこともあります。
賃貸の募集にかかる報酬には、法律にもとづく上限があります。一方で、依頼の形(何社に頼むか、どういう契約にするか)については、売買のような法律上の枠組みがありません。この2つは性質が違うので、分けて押さえておくと判断しやすくなります。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月28日
情報確認日:2026年08月28日
この記事の目次
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先に押さえる3点
まず、募集を誰がどう行うかという枠組みを整理します。
自分が所有する物件を自ら貸主として貸す行為は、宅地建物取引業には当たりません。宅地建物取引業法第2条第2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換」と「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介」を業として行うものと定めており、自ら貸す行為は挙げられていないためです。所有する部屋数が多くても、自ら貸主である限り宅地建物取引業の免許は必要ありません。
ただし、免許が要らないことと、何の決まりもないことは別です。契約の内容には借地借家法が関わりますし、募集の広告表示にも別のルールがあります。募集から契約書の作成、入居後の対応まで自分で担うことになる点も含めて考える必要があります。
不動産会社に募集を頼むときの一般的な形が媒介です。会社が入居希望者を探し、条件を調整し、貸主と借主の契約が成立するように間に入ります。契約の当事者はあくまで貸主と借主です。
代理では、不動産会社が貸主の代理人として賃貸借契約を締結します。貸主が遠方にいる場合などに使われる形です。誰が契約書に署名するかが媒介と変わります。
報酬の上限という点では、媒介でも代理でも取引全体で受け取れる金額の上限は同じです。売買では代理の上限が媒介の2倍になりますが、賃貸ではその考え方が当てはまりません。
募集を頼むことと、入居後の管理を任せることは、法律上も別に扱われています。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は「管理業務」を、委託を受けた賃貸住宅の維持保全と、それと併せて行う家賃などの金銭管理と定めており(同法第2条第2項)、入居者募集はこの定義に含まれていません。
そのため、「募集だけを頼む」「募集と入居後の管理をまとめて頼む」のどちらも成り立ちます。管理まで任せる場合は、募集時の費用とは別に管理委託料が設定されることがあります。料金の決め方は契約によって異なるので、募集時に一度だけ発生する費用と、継続して発生する費用を分けて確認してください。管理を任せるかどうかの判断そのものは、戸建てを貸すとき管理会社は必要?自主管理と管理委託の選び方で整理しています。
ここが費用の中心です。
宅地建物取引業者が売買・交換・貸借の代理または媒介で受け取れる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによるとされ、その額を超えて報酬を受け取ることは禁止されています(宅地建物取引業法第46条第1項・第2項)。金額そのものは、宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号。最終改正・令和6年国土交通省告示第949号、令和6年7月1日施行)に書かれています。
貸借の媒介について、告示第四は、依頼者の双方から受け取る報酬の合計額を借賃1か月分の1.1倍に相当する金額以内と定めています。この1.1倍には消費税相当額が含まれます。一方、計算の基礎となる借賃は、消費税相当額を含まない額です。
貸借の代理も、上限は借賃1か月分の1.1倍です。相手方からも報酬を受け取る場合は、その合計額が1.1倍を超えてはならないと定められています(告示第五)。媒介でも代理でも、取引全体で動く報酬の上限は同じということになります。
居住用建物の賃貸借の媒介については、もう一つ制限があります。告示第四は、依頼者の一方から受け取れる報酬の額を、媒介の依頼を受けるに当たってその依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃1か月分の0.55倍に相当する金額以内と定めています。
読み方の注意点が2つあります。
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誤解しやすい点
告示が定めているのは合計の上限と、居住用建物で一方から受け取る額の制限です。貸主と借主の負担割合そのものを法律が決めているわけではありません。貸主負担をどうするかは、上限の範囲内での取り決めの問題です。募集条件を決める段階で、その物件でどうするのかを不動産会社と確認しておくことになります。
なお、この0.55倍の制限は「居住の用に供する建物」の賃貸借に関するものです。店舗や事務所として貸す場合、また土地を貸す場合は、当てはまり方が変わります。
イエリテの実務から
募集の費用について、金額そのものより先に「そもそも誰が払うものなのか」を確認されることがあります。借主が全額払うものだと受け止められていることもあれば、逆に貸主が必ず1か月分を負担すると考えられていることもあります。
当社では、募集条件を組む段階で、仲介手数料をどちらがどれだけ負担する前提の条件なのかを、家賃や敷金・礼金と合わせて確認するようにしています。

賃貸の募集では、仲介手数料とは別に「広告料」「AD」と呼ばれる費用の話が出てくることがあります。
はじめに押さえておきたいのは、「広告料」「AD」という呼び方は法令上の用語ではないという点です。実務でそう呼ばれている費用が、そのまま仲介手数料とは別枠で受け取れる費用になるわけではありません。名称を広告料にすれば報酬の上限を超えて受け取れる、という仕組みでもありません。
報酬告示第十一の①は、宅地建物取引業者は告示第二から第十までの規定によるほか報酬を受けることができないとしたうえで、「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」と定めています。仲介手数料の上限とは別に受け取れる費用が、この広告の料金です。
この規定の範囲について、東京高等裁判所の昭和57年9月28日の判決は、通常必要とされる程度の広告宣伝費用は営業経費として報酬の中に含まれるとしたうえで、別に受け取れるのは「報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金」を意味すると解すべきとしています。あわせて、依頼者から広告を行うことの依頼があり、その費用の負担について事前に依頼者の承諾があった場合に限られるとされています(出典:広告料金の範囲・不動産流通推進センター)。
不動産流通推進センターの相談事例では、通常のホームページ掲載・物件情報サイトへの掲載・業者間の情報サービスへの登録しか行っていないのに、成約時に貸主から賃料1か月分を広告料として受け取るケースが取り上げられています。こうした通常の広告は営業経費として報酬の範囲に含まれるものとされ、貸主からの特別の広告の依頼がないのに広告料名目の金銭を受け取ることは宅地建物取引業法違反に該当する、と整理されています。同事例では、実質的な媒介報酬について広告料・企画料・調査費などと名目を変えれば報酬額の制限に触れないと考えるのは誤りである、とも述べられています(出典:賃借人が礼金として賃貸人に支払う金員を、媒介業者が広告料として受領することの是非・不動産流通推進センター)。
「AD」と呼ばれる費用のすべてが、告示で認められた広告の料金にあたるわけではありません。物件情報サイトへの掲載など通常の募集活動にかかる費用は、報酬の中で負担するものとされています。別に費用の負担を求められたときは、どの広告について、誰の依頼で行うものかを確認してください。
この考え方にもとづくと、広告料として貸主が負担する費用は、依頼にもとづく特別な広告の実費に相当するものとして説明できるかどうかが問われることになります。名目を広告料や業務委託料に置き換えて、実質的に報酬の上限を超える金額を受け取ることは、この枠組みでは想定されていません。
一方で、広告料が何か月分であるかについては、公的な統計や基準を確認できていません。金額の目安を示す公的資料がない以上、相場としての数字を根拠に判断することはできません。募集を依頼するときは、次の点を確認しておくと判断しやすくなります。
依頼する前に、費用の名目・内容・支払い時期を書面で示してもらうのが確実です。口頭の説明だけで進めないほうがよいと考えています。
ここが、ご相談の中で受け止め方の分かれる部分です。
売買では、媒介契約に法律上の枠組みがあります。宅地建物取引業法第34条の2は、媒介契約を結んだときの書面交付、専任媒介契約での有効期間、指定流通機構(レインズ)への登録、業務処理状況の報告などを定めています。
ただし、この第34条の2第1項が対象としているのは「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」です。貸借の媒介は、この条文の対象に入っていません。そのため賃貸では、専任媒介・一般媒介という法律上の区分も、媒介契約書面の交付義務も、指定流通機構への登録義務も、法律上は課されていません。
複数の不動産会社に募集を頼むことを禁じる宅地建物取引業法上の規定もありません。何社に頼むかは、貸主と会社の取り決めによって決まります。
法律上の義務がないことと、書面がなくてよいことは別です。国土交通省は、住宅の標準賃貸借媒介契約書(貸主用)・住宅の標準賃貸借代理契約書(貸主用)などの様式を公表しており、依頼の内容を書面にすることはできます。
重ねて依頼できるかどうかは、契約書の定めによって変わります。媒介として依頼する場合と、代理として依頼する場合とで扱いが異なることもあります。媒介か代理かという形だけでなく、他社へ重ねて依頼できる契約になっているか、貸主自身が見つけた相手と直接契約できるかを、契約書で確認してください。他社への依頼を制限する内容に合意すれば、それは契約上の約束として扱われます。1社に絞る前提の話になっているのかどうかは、依頼の段階で確かめておきたい点です。
当社へ寄せられるご相談では、募集がなかなか決まらないときに、依頼先を増やすことで打開できないかというご質問をいただくことがあります。
当社が募集を受託した範囲では、依頼先の数と反応の量が比例するとは限らないという感触があります。賃貸物件の情報は、依頼を受けた会社から他社へ共有されて紹介される形が成り立つため、1社に頼んだ場合でも他社が入居希望者を見つけてくることはあります。一方で社数が増えると、掲載内容や募集条件が会社ごとにばらついたり、問い合わせへの対応の窓口が分かれたりする面もあります。
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判断のポイント
問い合わせ自体が入っていないのか、内見までは進むのに申し込みに至らないのかによって、確認すべきところは変わります。依頼先を増やすかどうかは、どちらの状態なのかを確かめてから考えるほうが判断しやすくなります。
原因の切り分けについては、アパートの空室が続くのはなぜ?家賃を下げる前に確認したい原因の切り分け方で整理しています。募集条件そのものを見直す場合は、入居者募集の条件はどう決める?募集を始める前に整理したいこともあわせてご確認ください。
空き家になっている家を貸し出す場合には、報酬の特例があります。
令和6年7月1日に施行された告示の改正で、「長期の空家等」の貸借の媒介について、告示第九が設けられました。長期の空家等とは、現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、または将来にわたり供される見込みがない宅地または建物をいうとされています(参考:空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて・高知県)。
該当するかどうかは、貸主から媒介の依頼を受ける時点で判断されます。「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の解説では、少なくとも1年を超えるような期間にわたって居住者が不在となっている戸建ての空き家や分譲マンションの空き室、相続などにより利用されなくなった直後で今後も所有者による利用が見込まれないものが例として挙げられています。1年という数字は法律上の線引きではなく、あくまで示されている例です。
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アパートの空室は対象外とされています
入居者の募集を行っている賃貸集合住宅の空き室は、事業の用に供されているものと解されるため、長期の空家等には該当しないとされています。空室の期間が長くなっても、募集中のアパートやマンションの一室が自動的にこの特例の対象になるわけではありません(参考:長期空家貸借媒介特例について・愛媛県宅地建物取引業協会)。
この特例では、媒介に要する費用を勘案して、依頼者の双方から受け取る報酬の合計額を借賃1か月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲まで受け取ることができるとされています。ただし、借主である依頼者から受け取る報酬の額が、通常の上限(居住用の場合、依頼を受けるに当たって承諾を得ている場合を除き0.55倍)の範囲に収まっている場合に限られます。上乗せできる部分は、実質的に貸主側の負担になる仕組みです。代理の場合も同様に2.2倍以内とされています(告示第十)。
確認しておきたい点がいくつかあります。
相続した家や長く使っていない家をこれから貸す場合は、相続した実家を貸すには?沖縄で戸建て賃貸を始める前に確認したいこともあわせてご覧ください。

募集を依頼する段階で、次の点を決めるか確認しておくと、あとで認識の食い違いが起きにくくなります。
なお、募集広告については宅地建物取引業法第32条が誇大広告等を禁止しており、不動産の表示に関する公正競争規約では、成約済みで取引できない物件の表示などがおとり広告として禁止されています。これらの規定が直接の対象としているのは広告を行う事業者ですが、貸主の側でも、成約したときや募集を止めたときは掲載を落としてもらうよう連絡する、という形で関わることになります。
依頼先を増やすかどうかを考える前に、いまの募集条件で問い合わせが入っているのかどうかを確認してみてください。そこが分かると、次に手を入れる場所が絞られます。
上限の範囲内で仲介手数料の負担をどうするか、広告料を出すかどうか、何社に頼むかは、家賃の見通しや物件の状態、いまの反応の有無によって判断が変わる部分です。南城市・沖縄県南部で家を貸そうとお考えの方に、募集の進め方や条件の整理からご相談をお受けしています。貸すかどうかを決めていない段階でも構いません。
仲介手数料は、原則として賃貸借契約が成立したときに請求権が発生する成功報酬です。国土交通省の資料でも、賃貸借の仲介では賃貸借契約が成立したときに仲介手数料の請求権が発生すると説明されています(出典:民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)・国土交通省)。募集はしたが賃貸借契約が成立しなかった、というだけで通常の仲介手数料が当然に発生するものではありません。一方、依頼者が特別に依頼した広告の料金は仲介手数料とは別の論点で、広告を実施した場合の費用負担は依頼内容と合意内容によります。なお、媒介した会社を外して紹介された相手と直接契約するなど特殊な事情がある場合は、報酬の請求が問題になることがあります。
双方から受け取る合計額の上限(借賃1か月分の1.1倍)は同じです。ただし、依頼者の一方から受け取る額を0.55倍以内とする制限は、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介についてのものです。また、居住用建物を除く賃貸借で、返還されない権利設定の対価(権利金)の授受があるものについては、その額を売買代金とみなして計算できる特例が告示第六に定められています。
法律で義務づけられた掲示です。宅地建物取引業法第46条第4項は、宅地建物取引業者に対し、事務所ごとに公衆の見やすい場所へ報酬の額を掲示することを義務づけています。依頼を検討している会社の事務所で確認できます。
管理戸数によっては、登録が義務づけられていません。賃貸住宅管理業の登録は、管理戸数が国土交通省令で定める規模(200戸)未満の場合には義務づけられていません(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第3条第1項ただし書、同法施行規則第3条)。この登録は管理を受託する事業者の義務であり、貸主に課されるものではありません。
上限額としては下がります。報酬の上限は借賃を基準に計算されるためです。ただし、実際に請求される金額は上限の範囲内での取り決めによります。家賃をいくらに設定するかは手取りに直結するので、戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイントと貸す前の確認事項もあわせてご確認ください。
この記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。報酬の額や費用の負担は、依頼する会社との取り決めや物件の条件によって変わります。契約書の文言や法的な争いについては弁護士へ、税務上の取り扱いについては税理士へご確認ください。制度や運用は変わることがあります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。