

問い合わせは入っているのに、内見の前に話が止まる。理由を聞くと「駐車場が1台しかないので」と返ってくる。南城市や沖縄県南部で家やアパートを貸していると、こうした場面に行き当たることがあります。
駐車場は、家賃や間取りのように後から数字を動かせる条件ではありません。敷地の広さと形で上限が決まり、増やそうとすれば工事や手続きが絡みます。一方で、料金の決め方や契約の分け方は、貸主が選べる部分です。ここを最初に決めておくかどうかで、あとから変えにくい部分が変わってきます。
台数の考え方、料金を家賃に含めるか別にするか、足りないときに何ができるか、入居者から車庫証明の書類を求められたときの対応まで、法令と公的資料で確認しながら順に見ていきます。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月29日
情報確認日:2026年8月29日
この記事の目次
戸建てやアパートを貸すときに「1戸あたり何台」と全国一律で義務づける法律はありません。建築物に駐車施設の設置を求める仕組みとしては駐車場法20条があります。ただしこれは地方公共団体が条例で定めることができるとするもので、対象は駐車場整備地区内・商業地域内・近隣商業地域内などにある、延べ面積2,000㎡以上で条例が定める規模以上の建築物とされています(出典:駐車場法20条1項)。
沖縄県内では那覇市が条例を定めており、共同住宅を含む場合は商業地域・近隣商業地域で延べ面積2,000㎡超が対象として示されています(出典:那覇市「駐車場附置義務・自転車駐輪場の設置について」)。住宅地に建つ一般的な戸建て賃貸や小規模なアパートは、地域と規模のどちらの面からもこの枠組みの対象にはあたりません。
なお、南城市をはじめとする南部の各市町が同種の条例を定めているかどうかは、この記事の作成時点では確認できていません。新築や増築で駐車場を計画する場合は、建築確認の前に市の建築担当課へ確認してください。
つまり、賃貸物件の駐車台数は、法令上の義務ではなく、募集で選ばれるかどうかという市場の条件として決まる部分が大きいということです。
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補足
県内の自動車保有台数の推移は、沖縄県土木建築部が公表しているパンフレット「沖縄県の道路」で確認できます(出典:沖縄県「パンフレット『沖縄県の道路2025』」)。掲載されているのは県全体の数字で、南城市単独の値ではありません。募集する物件で何台必要かは、県の数字ではなく、周辺で実際に募集されている条件から判断します。
台数は「多いほどよい」で決めるものではありません。区画を増やせば、その分だけ庭や物置のスペースは減ります。決める前に、次を確認しておくと判断がぶれにくくなります。
単身者向けの1Kと、子どもがいる世帯が入る3LDKの戸建てとでは、必要台数が変わります。夫婦それぞれが車で通勤する世帯を想定するなら2台、単身であれば1台と来客用の考え方、というように、募集する部屋ごとに置き換えて考えます。
同じ地域・同じ間取りの募集が、駐車場を何台・いくらで出しているかを確認します。台数が周辺より少ない場合、家賃を下げるより先に、駐車場の見せ方や区画の取り方で埋められないかを検討する余地があります。
区画の数だけを増やしても、切り返しが必要で出入りしづらい配置では敬遠されます。前面道路の幅、隣の区画との間隔、門扉や塀の位置を、実際に車を停めて確認しておくと確実です。
自動車の保有者には、道路以外の場所に保管場所を確保する義務があります(出典:自動車の保管場所の確保等に関する法律3条)。沖縄県警察の案内では、保管場所の要件として「自動車の使用の本拠地の位置(申請者の住居地等)から2キロメートル以内」「道路から支障なく出入りできかつ、自動車全体を収容できるもの」「自動車の保有者が自動車の保管場所として使用する権限を有するもの」が挙げられています(出典:沖縄県警察「自動車保管場所(車庫)証明手続き」)。物件から離れた場所を駐車場として案内する場合は、この距離の要件に収まるかを先に確認しておきます。
イエリテの実務から
駐車場が1台しか取れない物件で募集が長引き、当社へご相談をいただいたことがあります。このとき最初に確認したのは家賃ではなく、敷地内にもう1台分のスペースを取れる余地があるか、取れないなら近くに月極駐車場があるかという点でした。募集条件のうち動かせるものが家賃だけになると、下げる以外の手が残りません。当社が扱った範囲での経験であり、駐車台数が家賃を決めるという意味ではありませんが、条件を組み直す順番として先に確認しておく価値のある部分です。

駐車場代の扱いは、金額そのものよりも「どう受け取るか」で影響が出ます。判断の材料は3つあります。
住宅の貸付けは消費税が非課税です。駐車場については、一戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており、かつ自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられている等の場合が示されています。この場合で、家賃とは別に駐車場使用料等を収受していないときは、住宅の貸付けに含まれるものとして非課税になると説明されています(出典:国税庁タックスアンサー No.6226「住宅の貸付け」。令和7年4月1日現在法令等)。
逆にいえば、家賃と別に駐車場使用料を受け取る形にすると、その部分は課税の対象として扱われることになります。ここで注意したいのは、駐車場代を家賃に含めさえすれば自動的に非課税になる、というものではない点です。住宅に当然付随する施設といえるかどうかを、上の条件を満たしているかで判断します。たとえば1台目は全戸へ当然に割り当てて家賃に含め、希望者だけが借りる2台目は別料金にしている場合、その2台目の部分については別途課税関係を確認する必要があります。
なお、課税の対象になることは「必ず納税額が生じる」という意味ではなく、課税対象かどうかという区分の話です。ご自身が納税義務者にあたるかどうかは、課税売上高などによって変わるため、税理士または所轄の税務署へ確認してください。
借地借家法は「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権」と「建物の賃貸借」を対象とする法律です(出典:借地借家法1条)。建物の所有を目的としない駐車場としての土地の賃貸借は、この法律の適用対象には含まれず、民法の賃貸借の規定によることになります。
民法では、期間を定めなかった賃貸借は各当事者がいつでも解約の申入れをでき、土地の賃貸借は申入れから1年、建物の賃貸借は3か月を経過することで終了するとされています(出典:民法617条1項)。これは期間の定めのない賃貸借についての民法上の原則で、すべての駐車場契約がこの1年で終わるという意味ではありません。実際の駐車場契約では、契約期間・解約予告期間・更新の方法を定めていることがあります。期間を定めた契約でも、当事者の一方または双方が期間内に解約する権利を留保したときは617条が準用されます(民法618条)。実際にいつ終わるかは、まず契約書の定めを確認します。
また、駐車場部分が建物賃貸借に付随する一体の契約と評価される場合には、建物の賃貸借との関係を含めた判断が必要になります。どちらにあたるかは契約の内容や実際の使われ方による個別の判断で、契約書を別にすれば必ず切り離せる、というものではありません。判断に迷う場合は弁護士へ確認してください。実務上まず整えておきたいのは、駐車場の区画・台数・料金・使用のルールを、賃貸借契約書または使用細則のどこに書くかを決めておくことです。
家賃に含めると総額が分かりやすくなり、別料金にすると家賃の表示額を抑えられます。どちらが有利かは、比較される周辺物件の出し方によって変わります。
イエリテの実務から
家賃と駐車場料金を分けるかどうかで、当社へご相談をいただくことがあります。このとき誤解されやすいのが、分けても分けなくても入居者が支払う総額は同じだから、どちらでもよいという受け止め方です。実際には、上に挙げたとおり消費税の扱いや、2台目をどう扱うか、途中で使わなくなったときにその区画だけ返してもらえるかといった点で、後の扱いが変わってきます。決め方そのものよりも、決めた内容を契約書に書いておくかどうかで差が出る部分です。

台数を増やす方法は、敷地内で確保する場合と、敷地外を使う場合に分かれます。それぞれ確認する事柄が違います。
まず、その土地が農地でないかを確認します。農地を農地以外にするには都道府県知事等の許可が必要です(出典:農地法4条1項)。市街化区域内の農地については、同項の規定により農業委員会への事前の届出で足りるとされていますが、南城都市計画区域は区域区分を定めていない都市計画区域(非線引き都市計画区域)で、南城市内に市街化区域はありません(沖縄県「南部圏域の都市計画」より)。南城市も、自己所有の農地を自分で転用する場合は農地法4条の許可申請、所有権移転や貸借を伴う転用は同法5条の許可申請として案内しており、駐車場への転用も対象に含めています(出典:南城市「農地の転用(農地法4・5条)」)。南城市内の農地を駐車場にする場合は、まずこの許可手続を南城市農業委員会へ確認してください。登記の地目ではなく現況で判断される点にも注意が必要です。
次に、造成の規模です。切土・盛土・擁壁工事など土地の区画形質の変更を伴う場合、南城市開発事業手続条例にもとづく許可の対象になることがあります。南城市は、1,000㎡(風致地区では500㎡)以上3,000㎡未満の土地における区画形質の変更と、1,000㎡未満でも隣接地との高低差が1m以上生じる区画形質の変更を、市の許可手続の対象として案内しています(南城市「南城市開発事業許可申請について」より)。区画を1台増やすだけで必ず許可が必要になるわけではありませんが、工事の内容を決める前に南城市都市計画課へ確認しておくと、後から計画を変えずに済みます。
次に、道路からの出入り口です。歩道の切下げなど、道路管理者以外の者が道路に関する工事を行う場合は、道路管理者の承認を受ける必要があります(出典:道路法24条)。市道であれば市の道路担当課、県道であれば県の土木事務所が窓口です。
屋根付きのカーポートを設ける場合は、建築物として建蔽率などの制限に関わる可能性があります。この点は個別の判断が必要なため、市の建築担当課または設計者へ確認してください。
近隣に月極駐車場があれば、2台目をそちらで確保する案内ができます。この場合、車庫証明との関係で先ほどの2キロメートル以内という要件に収まるかを確認します。オーナーが借りて入居者へ転貸する形にするか、入居者が直接契約する形にするかで、空室期間中の負担も変わります。
すでに入居している方の区画や料金は、貸主の判断だけで当然に変更できるものではありません。まず契約書に料金の改定や区画の変更についての定めがあるかを確認し、必要な場合は入居者との合意を取って進めます。募集条件の見直しは、原則としてこれから募集する部屋に対して行うものと考えてください。入居者との間で意見が分かれている場合は、進め方を弁護士へ確認してください。
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増やす前に確認すること
駐車場を用意すると、入居後に貸主が対応する場面が出てきます。多いのは書類の発行と、停め方をめぐる相談です。
入居者が車庫証明を取るとき、保管場所が他人の土地・建物であれば、使用する権原を示す書面が必要になります。沖縄県警察の案内では、「自動車保管場所使用承諾証明書あるいは駐車場賃貸借契約書の写し又は駐車場料金の領収書その他駐車場の賃貸借を疎明する書面」とされています。承諾証明書がなければ手続きができない、というわけではなく、契約書の写しなどでも足りる扱いです。
なお軽自動車については、沖縄県警察の案内で、使用の本拠の位置が那覇市や沖縄市の場合に保管場所の届出が必要とされています。対象となる地域は限られているため、入居者から尋ねられた場合は、管轄の警察署または沖縄県警察の案内で確認するようご案内ください。
来客用の区画に長期間停められている、指定した区画と違う場所に停められている、といった相談が生じることがあります。このとき、貸主が車を勝手に移動させたりロックしたりすることには、法的なリスクがあるとされています。私有地であっても、実力で権利を実現することは原則として認められていないためです。この点は個別の事情によって判断が分かれるため、対応に迷う場合は弁護士へ相談してください。
備えとして先にできるのは、契約書や使用細則に、使用できる区画を特定しておくこと、来客用の区画の使い方を決めておくこと、車両の登録番号を届け出てもらうことです。起きてから決めるより、募集条件を組むときに決めておくほうが、対応の根拠がはっきりします。
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注意点
無断駐車への対応は、私有地であっても貸主が自分の判断で車両を動かしてよいことを意味しません。金銭の請求や撤去の可否は事情によって変わるため、貼り紙の文面を含めて弁護士へ相談したうえで進めてください。
一般的には、家賃と同じ不動産所得に含めて扱われます。賃貸物件に付随する駐車場の貸付けによる収入は、土地の貸付けによる所得として整理されるためです(出典:国税庁タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」。令和7年4月1日現在法令等、個人の場合)。ただし貸し方によって所得の区分が変わる場合があり、駐車場を整備した費用をその年の必要経費とするか資本的支出として扱うかも、内容によって判断が分かれます。金額が大きくなる場合は、着工前に税理士へ確認しておくと安全です。
できないわけではありませんが、扱いが変わります。住宅の入居者向けの駐車場とは別の貸付けになるため、消費税の扱いや契約の形が変わります。また、敷地内に外部の車が出入りすることになるため、入居者への説明と、区画の特定をあわせて整理しておく必要があります。
あります。周辺に月極駐車場が確保しやすい地域や、想定する入居者が車を使わない場合には、駐車場なしで募集している物件もあります。ただし、募集の対象がその条件でも問題ない方に限られることになるため、対象を狭めることとセットで判断してください。募集条件全体の組み立て方は、入居者募集の条件はどう決める?募集を始める前に整理したいことで整理しています。
賃貸物件の駐車場について、法律で必要台数が決まっているわけではありません。決めるのは貸主で、判断の材料は想定する入居者・周辺の募集条件・敷地の形です。
料金を家賃に含めるか別にするかは、総額が同じでも扱いが変わります。家賃と別に駐車場使用料を受け取る形は消費税の課税対象として扱われ、契約を分けるかどうかは、その部分の終わらせ方にも関わります。
次に確認していただきたいのは、いま募集している(これから募集する)条件で、駐車場が何台・いくらで・どの区画をという形になっているか、それが契約書のどこに書かれているかです。足りないと分かった場合も、敷地内で増やす、近隣で確保する、対象を絞って募集するという方向があります。
空室が続いている原因の切り分けについては、アパートの空室が続くのはなぜ?家賃を下げる前に確認したい原因の切り分け方もあわせてご覧ください。家賃そのものの決め方は、戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイントと貸す前の確認事項で説明しています。
いずれも2026年8月29日に確認しています。
この記事は一般的な情報の整理であり、個別の案件に対する法務・税務の判断を示すものではありません。制度や運用は変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、所轄の官公庁および税理士・弁護士・土地家屋調査士などの専門家へご確認ください。
駐車場を何台・いくらで出すかは、敷地の形と周辺で募集されている条件を見ないと決められない部分です。増やせるかどうかも、土地の種類や道路との関係によって確認する先が変わります。株式会社イエリテでは、戸建てやアパートの現況と周辺の募集状況をふまえて、駐車場を含めた募集条件を整理するところからご相談を承っています。確認が必要な事柄については、どこへ何を聞くかの整理もあわせてご案内します。貸すかどうかを決めていない段階でも構いません。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。