

管理会社へ賃貸物件を委託していると、管理業務報告書という書類が届きます。封を開けて振込金額だけ確認し、あとはファイルへ綴じている、という方もいます。
けれども報告書は、入金の明細であると同時に、その物件がいま置かれている状態の記録でもあります。滞納が始まっているのか、空室がどれくらい続いているのか、入居者から何が申し出られているのか。手を打つかどうかを決める材料は、この1枚に入っています。
報告書に何が書かれ、どの欄がどんな判断につながるのか。賃貸住宅管理業法が定めている中身と、当社が報告書を作成して説明する側で経験してきたことの両方から見ていきます。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年9月1日
情報確認日:2026年9月1日
この記事の目次

先に結論を書きます。報告書が届いたら、次の4か所を順に見てください。
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報告書で確認する4か所
振込金額は結果です。結果だけを見ていると、原因が動き始めていることに気づけません。
登録を受けた賃貸住宅管理業者が、法の対象となる管理受託契約について行う定期報告は、会社が任意で送っている案内ではありません。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)20条は、賃貸住宅管理業者に対し、管理業務の実施状況などについて定期的に委託者へ報告することを義務づけています(出典:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)。どの契約が対象になるかは条件があり、あとの見出しで整理します。
同法施行規則40条1項は、報告書へ記載する事項として次の3つを定めています(出典:同法施行規則)。
3つ目の苦情に関する欄が法定の記載事項であることは、覚えておく価値があります。入居者からの申し出は、管理会社が処理して終わりにしてよい社内の出来事ではなく、オーナーへ報告される対象として制度上位置づけられているということです。
「管理業務の実施状況」に何が含まれるかについて、国土交通省は賃貸住宅管理業法ポータルサイトで、家賃等の金銭収受状況や維持保全の実施状況などを挙げています。入出金の欄と点検・修繕の欄は、この項目に対応するものと考えられます。
同じ規則40条1項は、報告の時期を「管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごと」および「管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」と定めています。
つまり、法令が求めている最低ラインは年1回です。毎月の報告は法令上の義務ではなく、管理受託契約の定めや管理会社の実務によります。毎月送金明細が届いている場合でも、それが法令上の管理業務報告書なのか、送金の案内なのかは、書面の表題と記載事項で見分けられます。
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ポイント
規則40条1項は、報告書を「交付して説明しなければならない」と定めています。送付して終わりではなく、説明までが管理会社の義務とされています。読んでも分からない欄があれば、説明を求めてよい書面です。
規則40条2項以下は、委託者の承諾を得た場合に、電子メールやウェブ上での閲覧といった電磁的方法で提供できると定めています。承諾を得る前に方法の種類と内容を示す必要があり、委託者が電磁的方法を拒む旨を申し出た場合は用いてはならないとされています(同条7項)。
紙で受け取りたい、という希望は伝えてかまいません。
報告書が来ない場合、直ちに管理会社の違法行為だと決めつけることはできません。法20条の義務が及ぶ範囲には、いくつか条件があるためです。
法2条3項は「賃貸住宅管理業者」を、法3条1項の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者と定義しています。そして法3条1項ただし書は、事業の規模が国土交通省令で定める規模未満のときは登録義務の対象外としており、その規模は施行規則3条で管理戸数200戸とされています。
したがって、管理戸数200戸未満で登録を受けていない会社には、法20条の定期報告義務そのものが及びません。登録を受けていれば、戸数にかかわらず義務の対象です。
登録の有無は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで調べられます。検索できる業種に賃貸住宅管理業者が含まれています。
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用語の区別
登録業者は営業所または事務所ごとに1人以上の「業務管理者」を選任する義務を負います(法12条1項)。これは分譲マンションの管理業に置かれる「管理業務主任者」とは別の制度です。名前が似ているため混同しないでください。
同法附則3条1項は、「第十四条及び第二十条の規定は、この法律の施行前に締結された管理受託契約については、適用しない」と定めています。施行日は2021年6月15日です。
ただし、経過措置がそのまま続くとは限りません。国土交通省の賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方第20条関係は、法施行前に締結された管理受託契約について、法施行後に更新された場合、形式的な変更と認められる場合であっても、更新された後においては賃貸人に対して法20条に基づく報告を行うべきであるとしています。更新前についても、可能な限り早期に報告を行うことが望ましいとされています。
したがって、確認する順番は次のようになります。
相続でアパートを引き継ぎ、親の代からの契約を継続している場合も、契約をどう承継したのか(そのまま引き継いだのか、名義を変えて結び直したのか)と、その後に更新があったかを確認してください。契約が古いというだけで、報告を求められないと考える必要はありません。
法令の義務が及ばない場合でも、報告を求める根拠がなくなるわけではありません。
管理委託契約のうち、委任・準委任に当たる事務については、民法645条や、法律行為でない事務の委託に委任の規定を準用する656条が問題になります。645条は「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない」と定めています。
ただし、管理委託契約の全部が当然にこれらの規定の対象になるわけではありません。契約の法的性質も、報告を求められる範囲も、実際の契約内容によって変わります。求めればどんな内容でも報告してもらえる、というものではない点に注意してください。
あわせて、自分の管理委託契約書に報告の頻度・内容がどう定められているかを確認してください。国土交通省は賃貸住宅標準管理受託契約書(令和3年4月23日公表)を示していますが、これは参考として示された様式であり、使用が義務づけられているものではありません。実際に効力を持つのは、締結した契約書に書かれている条項です。
ここが、当社が報告書を説明していて最も伝わりにくいと感じる部分です。
家賃債務保証会社を利用している場合、入居者が家賃を払わなければ、保証会社が代わりに支払います。オーナーの口座には家賃相当額が入るため、通帳だけを見ていれば何も起きていないように見えます。
保証の基本的な仕組みは、保証人が主債務者の債務不履行時に履行の責任を負い(民法446条1項)、委託を受けた保証人が主債務者に代わって弁済したときは主債務者に対する求償権を取得する(民法459条1項)というものです。保証会社が支払ったからといって、入居者が家賃を支払わなかったという事実がなくなるわけではありません。ただし、実際の権利関係は各社の保証委託契約の内容によって異なるため、どの住戸でどんな処理が行われているかは個別に確認する必要があります。

ここで気をつけたいのは、保証会社名義で入金されていること自体は、滞納の証拠にならないという点です。
家賃債務保証には、保証会社が入居者の口座から家賃を引き落とし、貸主・管理会社へ送金する「集金代行」型の商品があります。日本セーフティーは集金代行方式について「借主様のご入金の有無にかかわらず、信託口より貴社のご指定口座へ直接立替送金いたします」と案内しており、沖縄県内で家賃保証を扱う琉球セーフティーの集金代行サービスも同様の説明をしています。この方式では、入居者がきちんと払っている月でも、オーナーへの送金元は保証会社です。
つまり、見るべきなのは次の違いです。
イエリテの実務から
当社へ寄せられたご相談で、入金は途切れていないという前提で運用されていた物件について、内訳を確認したところ、口座振替ができずに保証会社が立て替えた月が続いていた例がありました。オーナー側は退去の連絡を受けて初めて事情を知る形になりました。入金額だけを見ていると、この状態は報告書の表面から読み取れません。
やっかいなのは、報告書のどこにこれが表れるかを一般化できないことです。規則40条が定める記載事項は先に挙げた3つで、立替や代位弁済の欄を設けるべきという定めはありません。「収納済」とだけ書く様式もあれば、入金の内訳を分けて書く様式もあります。
ですから、次のように確認するのが確実です。
滞納が判明した後の進め方は、家賃滞納が起きたときの対応手順で整理しています。
法16条は、管理業務で受領する家賃・敷金・共益費その他の金銭を、自己の固有財産および他の管理受託契約に係る金銭と分別して管理することを義務づけています。施行規則36条は、その方法として、管理用の口座を固有財産の口座と明確に区分し、かつどの管理受託契約に基づくものかを帳簿により直ちに判別できる状態で管理することを定めています。
物件ごと・オーナーごとの専用口座までは求められておらず、帳簿で判別できる状態であれば足ります。なお、この義務も登録業者に課されるものです。
空室の欄で確認したいのは、現在いくつ空いているかよりも、それぞれの部屋がいつから空いているかです。
募集状況の記載は法定の記載事項ではないため、様式に欄がないこともあります。書かれていなければ、問い合わせ件数と内見件数を管理会社へ確認してください。
内見が入っているのに決まらないのか、そもそも内見が入っていないのかで、打つ手が変わります。前者は室内の状態や条件面、後者は家賃設定や募集の露出の問題である可能性が高くなります。この切り分けはアパートの空室が続く原因で詳しく扱っています。
イエリテの実務から
当社へ寄せられたご相談では、空室期間や募集状況の記載を確認しないまま1年近くが過ぎ、家賃を下げるかどうかの検討自体が遅れていた例がありました。報告書に募集の記録が残っていれば、条件を見直す判断はもっと早い段階でできたと考えられます。
苦情の発生状況と対応状況は、規則40条1項3号が定める法定の記載事項です。件数が少ないからと読み飛ばすと、判断材料を1つ捨てることになります。
見るポイントは3つあります。
水回りの不具合や雨漏りの申し出が続いているなら、アパートの大規模修繕の進め方で扱っている修繕計画の検討時期に入っているかもしれません。騒音やゴミ出しの申し出が繰り返される場合の考え方は、騒音・ゴミ出しトラブルの対応にまとめています。
点検・修繕の欄では、実施された内容と費用が、自分が承諾した範囲と合っているかを確認します。
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注意点
どこまで管理会社の判断で修繕できるかを、法令が一律に定めているわけではありません。少額修繕をいくらまで任せるか、緊急時にどう対応して事後にどう報告するかは、締結した管理委託契約の条項によります。「◯万円以下なら承諾は不要」といった基準が全国共通で決まっているわけではありません。
自分の契約書で次の3点を確認しておくと、報告書の読み方が定まります。
そのうえで、小さな修繕が繰り返されていないかを見てください。1回あたりの金額が小さくても、同じ設備の修繕が何度も出ているなら、部分的な修理を続けるより交換したほうが総額を抑えられる場合があります。修繕費と資本的支出では税務上の扱いも変わるため、判断に迷う場合は税理士へ確認してください(家賃収入の申告全般は家賃収入にかかる税金と確定申告の基本で扱っています)。
沖縄で賃貸物件を持つ場合、台風のあとの記録の残り方が問題になることがあります。
台風による被害は、強風で飛来物が当たった、雨水が吹き込んだ、といった形で発生します。復旧を急ぐ場面では、まず対応が先に進み、記録が後回しになりがちです。火災保険を使う場合、写真・事故の日時・修理見積書などの資料提出を求められることがあります。何が必要かは保険会社・契約内容・事故の内容によって変わるため、被害が分かった時点で保険会社や代理店へ確認してください。
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注意点
年に一度の管理業務報告書は、保険会社への連絡の代わりにはなりません。記録を整理するための資料の一つとして使うものだと考えてください。
そのうえで、報告書の点検・修繕欄に、いつ・どこに・どのような被害があり、どう対応したかが残っているかを確認します。記載が簡略であれば、被害状況の写真を管理会社が保管していないか聞いておくとよいでしょう。台風被害への対応全体は賃貸物件の台風被害への対応で整理しています。
塩害の影響を受けやすい海沿いの物件では、外部階段の手すりや面格子の腐食といった小さな指摘が点検欄に出ることがあります。1回の報告では小さく見えても、記録が積み上がっていれば、修繕を計画的に検討する材料になります。
その場で聞けることを整理しておきます。
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管理会社へ確認したいこと
報告書は交付して説明するところまでが管理会社の義務とされている書面です(規則40条1項)。分からない欄を残したままにする必要はありません。
説明を求めても回答が得られない、報告そのものが行われないという状態が続く場合は、管理の委託先そのものを見直す段階に入ります。アパートの管理会社を変更する手順で、解約から引継ぎまでの流れを扱っています。
管理業務報告書は、賃貸住宅管理業法20条と施行規則40条に基づき、登録業者が委託者へ交付して説明することとされている書面です。記載事項として定められているのは、報告の対象期間・管理業務の実施状況・入居者からの苦情の発生状況と対応状況の3つで、頻度の最低ラインは1年を超えない期間ごとです。
読むときは、振込金額ではなく、入金の内訳・空室の継続期間・苦情の対応状況・修繕の実施内容の4か所を見てください。入金元が保証会社であること自体は珍しくありませんが、それが通常の集金代行なのか、入居者が払わなかったための立替なのかで意味はまったく違います。
次に行うこととして、手元の直近の報告書を開き、この4か所に記載があるかを確認してみてください。記載がなければ、それ自体が管理会社へ聞くべきことです。あわせて、管理委託契約書の報告に関する条項と、修繕の承諾範囲を読み返しておくと、次の報告書からの読み方が変わります。
一律に義務づける法令上の定めは確認できません。賃貸住宅管理業法が交付と説明を義務づけているのは管理会社の側です。取り扱いは管理委託契約や管理会社の運用によります。内容に納得できていない段階であれば、確認したい点を先に質問してから応じても差し支えありません。
契約期間の満了後にも報告書を交付することが定められています。施行規則40条1項は、1年を超えない期間ごとの報告に加えて、管理受託契約の期間の満了後遅滞なく報告書を作成し交付することも定めています。解約によって契約が終了する場合の取り扱いは契約条項にもよるため、解約の申し入れをする段階で、最終の報告と引継ぎ資料の範囲を確認しておくとよいでしょう。
書面の名称ではなく、記載事項で見分けます。報告の対象期間・管理業務の実施状況・苦情の発生状況と対応状況の3つが記載されていれば、規則40条1項が定める記載事項を満たしていることになります。送金額と控除額だけの明細であれば、法令上の報告書とは別のものと考えられます。
契約の形が異なるため、同じとは限りません。サブリースは管理受託とは契約の形が異なり、賃貸住宅管理業法でも別の章で規律されています。管理受託契約を前提とする法20条・規則40条がそのまま当てはまるとは限りません。契約の形がどちらなのかはサブリース(家賃保証)と管理委託の違いで確認してください。
委託先の変更のほかに、自主管理へ戻すという判断もあります。手間と費用の比べ方は相続したアパートは自主管理と管理委託どちらにするかで扱っています。管理会社がどこまでを担う立場なのかはアパート管理会社の仕事内容にまとめています。
この記事は、2026年9月1日時点で確認できる法令・公的資料をもとに作成した一般的な情報です。個別の物件・契約・税務の判断は、契約内容や事情によって変わります。具体的な取り扱いについては、管理委託契約書の内容を確認のうえ、必要に応じて弁護士・税理士・行政の窓口へご相談ください。
報告書の様式や記載の細かさは管理会社によって異なり、自分の物件で何を確認すべきかは契約内容によって変わります。手元の報告書と管理委託契約書をもとに、確認したい点の整理や、管理を今のまま続けるかどうかの検討からお手伝いします。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。