

貸している家の庭が草だらけになっている、隣の家から「枝が伸びてきている」と言われた、退去した部屋の庭が背丈ほどの草に覆われていた。賃貸物件を持っていると、建物そのものよりも敷地の草木で悩む場面が出てきます。
厄介なのは、「草刈りは貸主と借主のどちらがやるのか」を正面から定めた法律の条文がないことです。判断の出発点になるのは賃貸借契約の内容で、契約に書かれていない場合は民法の一般的な考え方から整理していくことになります。契約に何を書いておけばよいのか、越境や退去時にはどう扱われるのか、判断の材料になる法令と実務の考え方をまとめました。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月26日
情報確認日:2026年08月26日
この記事の目次
草刈りの負担を直接定めた法律の条文はありません。ただし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、「戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草」を賃借人の負担となるものの具体例として挙げています。その考え方として、「草取りが適切に行われていない場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断される場合が多いと考えられる」と示されています。
一方で、高木の剪定や危険な木の伐採、アパートの共用部分の管理まで、日常的な草取りと同じように扱えるわけではありません。契約の内容と作業の性質を分けて確認していくことになります。
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基本的な分け方

草刈りをどちらがやるかを正面から定めた条文がない以上、次の順番で考えることになります。
契約書に何も書かれていないまま入居が始まると、誰がやるかで話がまとまらないまま草だけが伸びていきます。当社へ寄せられるご相談でも、庭付きの戸建てで契約書に外構の取り決めがなく、オーナーと入居者の双方から「相手がやるものだと思っていた」とお話をうかがったことがあります。
民法第606条第1項は、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めています。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときは、この限りではありません。
この「修繕」に日常的な草取りが含まれるかどうかを直接定めた条文や公的な解説は確認できませんでした。一般には、雨漏りや設備の故障のように、物件を使えるようにするための修理が想定されています。一方で、庭木が枯れて倒れそうになっている、擁壁際の樹木が構造物を傷めているといった状態は、建物や敷地の保存に関わる問題として貸主側で対応を検討すべき場面といえます。
借主は、物件を返すときまで「善良な管理者の注意」をもって保存する義務を負います(民法第400条)。これを善管注意義務と呼びます。また、民法第616条は第594条第1項を賃貸借に準用しており、借主は「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い」使用・収益しなければならないとされています。
庭付きの戸建てを借りて生活する以上、日常的な草取りや落ち葉の清掃といった手入れは借主が担うものと整理する契約が実務では見られます。ただし、条文上どこまでが借主の義務かは特定されていません。脚立や専門の道具が必要な高木の剪定、業者でなければ難しい伐採まで当然に借主の義務になるとは言えません。
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注意点
用法に反する使い方をされた場合でも、民法第594条第3項(用法違反による解除)は賃貸借に準用されていません。契約を解除できるかどうかは債務不履行の一般的なルールにもとづく判断になるため、草を刈らないことだけを理由に直ちに解除できると考えるのは適切ではありません。

争いを防ぐいちばん確実な方法は、契約書に書いておくことです。書き方としては、次の点を分けて決めておくと運用しやすくなります。
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契約書で決めておく項目
借主が個人で貸主が事業者である契約には、消費者契約法が適用されます。消費者契約法第10条は、法令の任意規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項のうち、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とすると定めています。
したがって、「庭の維持管理は借主負担とする」という特約を置くこと自体は可能ですが、内容によっては無効と判断される場合があります。
もっとも、日常的な草取りについては、前述のとおりガイドラインが賃借人負担の具体例を示しています。この範囲について、対象と作業内容を契約書で具体的に書いておくことは、負担範囲をはっきりさせるうえで意味があります。問題になりやすいのは、そこを超える負担を借主に求める場合です。
国土交通省のガイドラインは、賃借人に通常の原状回復義務を超える負担を課す特約について、次の要件を満たしておく必要があるとしています。
ガイドラインは、将来借主が負担することになる費用がどの程度になるか、単価等を明示しておくことも紛争防止のうえで欠かせないとしています。高木の剪定や大規模な伐採、専門的な造園作業まで借主に負わせるのであれば、日常の草取りとは別の話として、必要性と説明の仕方を慎重に検討することになります。特約の有効性は最終的には個別の判断になるため、契約書の文面に不安がある場合は弁護士へ確認することをお勧めします。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、入居中に草木が伸びたことをきっかけに、隣の敷地や道路側から苦情が入り、オーナーが対応を求められたケースがありました。現地を確認したところ、枝が隣地の駐車場側へ張り出していて、入居者は「自分の管理範囲だと思っていなかった」とのことでした。
契約書に外構の記載がないと、こうした場面で話し合いが振り出しに戻ります。募集を始める前に、庭のある物件かどうかで契約書の内容を分けておくことをお勧めしています。
伸びた枝が隣の敷地へ越えている場合の扱いは、民法第233条に定めがあります。2023年4月1日に施行された改正で、対応の道筋がはっきりしました。
枝については、いきなり切ってよいわけではなく、原則として所有者に切除させるという建て付けです。逆に、自分の物件の木が隣地へ越境している側になった場合、隣家から切除を求められる相手は木の所有者です。庭木がもともと敷地にあるものであれば、土地の所有者であるオーナーが対応を求められる立場になります。入居者が自分で植えた木の場合に誰が責任を負うかは、公的な資料で一般化できる整理が見当たらないため、実際に問題が起きたときは弁護士へ相談してください。
切除にかかる費用の負担についても、第233条に明文はありません。ただし、法務省の民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目についてでは、越境された土地所有者が自ら枝を切り取る場合の費用は、枝が越境して土地所有権を侵害していることなどを踏まえ、基本的には竹木の所有者に請求できると考えられる(民法第703条・第709条)と説明されています。実際に請求できるかどうかは事案によります。なお、同資料は、催告に必要な「相当の期間」について、事案によるとしたうえで基本的には2週間程度と考えられるとしています。
民法第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があったことで他人に損害が生じたとき、その占有者が賠償責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは所有者が賠償しなければならないと定めています。同条第2項は、この規定を竹木の栽植または支持に瑕疵がある場合に準用しています。
賃貸中の物件では、庭を実際に使っているのが入居者、木を所有しているのがオーナーという形になりますが、庭の占有が誰にあるかは契約内容によって変わります。枯れかけた木を放置したまま台風で倒れ、隣家の車を壊したというような事態では、責任の所在が争いになり得ます。倒木のおそれがある木を把握したら、費用負担の話し合いと並行して、まず危険を取り除く判断が必要です。
道路に面した部分も注意が必要です。道路法第43条第2号は、みだりに道路に土石・竹木等の物件を積み、その他道路の構造または交通に支障を及ぼすおそれのある行為をすることを、何人に対しても禁止しています。歩道側へ枝が大きく張り出して通行の妨げになっている場合は、放置したままにしないほうがよい状態です。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)は、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
そのうえで、ガイドラインの別表は「戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草」を、賃借人の負担となるものの具体例として挙げています。考え方としては、「草取りが適切に行われていない場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断される場合が多いと考えられる」と示されています(別表第1・別表第2)。戸建て賃貸で草取りが行われないまま庭が草に覆われた状態については、借主負担と整理する公的な基準がある、ということになります。
ただし、ガイドライン自体に法的な拘束力はありません。ガイドラインも、原状回復の内容や方法は最終的に契約内容や物件の使用の状況によって個別に判断されるものとしています。実際に請求できるかどうかは、次のような材料から判断することになります。
ガイドラインに収録されている裁判例では、庭付き一戸建ての退去にあたり、貸主が高木の剪定費用・除草費用・枯れた松の植替え費用を請求した事案があります(東京簡易裁判所判決 平成21年5月8日)。裁判所は、庭や植栽も建物と一体として賃貸借の目的物に含まれるとしたうえで、次のように判断しました。
請求額のうち借主が負担するとされたのは一部にとどまっています。日常的な草取りと、専門的な知識が必要な剪定・伐採は同じ扱いにならないことがある、という点は押さえておきたいところです。金額や負担割合で折り合いがつかない場合は、弁護士や、少額訴訟・民事調停といった手続きも含めて検討することになります。
イエリテの実務から
退去後の物件を確認したところ、敷地の草が伸び切っていて、次の募集用の写真を撮れる状態ではなかったケースがありました。草を刈って整えるまでに時間がかかり、そのぶん募集開始が遅れます。
原状回復の請求ができるかという論点とは別に、空室期間が延びること自体がオーナーの負担になります。入居時に庭の写真を残しておくと、退去時の話し合いの材料になります。
草が伸びた状態が続くと、「行政から指導されるのではないか」と心配される方がいます。制度の対象範囲を整理しておきます。
空家等対策の推進に関する特別措置法は、「空家等」を、建築物やこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるものとその敷地と定義しています(第2条第1項。国や地方公共団体が所有・管理するものは除かれます)。入居者が生活している賃貸物件は、使用がなされている状態ですので、通常この定義には当たりません。ただし、長期間空室が続き、使用の実態がなくなっていく物件については話が別です。
自治体の条例にも目を向けておきます。たとえば那覇市にはあき地管理の適正化に関する条例があります。あき地の管理者は不良の状態にならないよう常に適正に管理しなければならないと定められ(第3条)、市長は雑草の除去について指導・勧告ができます(第4条)。勧告に従わないときは、期限を定めて必要な措置を命ずることができるとされています(第5条)。ここでいう「あき地」は「住宅地域に所在する土地で、現にあき地の管理者が使用していないもの」と定義されており(第2条)、入居中の賃貸物件の敷地はこの定義には当たらないと読めます。
こうした条例の有無や内容は市町村ごとに異なります。南城市をはじめとする県南部の各市町村について、同種の条例があるかどうかは今回確認できませんでした。所有する物件の所在地で気になる場合は、各市町村の担当課へ問い合わせるか、市町村の例規集で確認してください。
沖縄では、草木の伸びる速さが本土の感覚と異なります。制度上の義務とは別に、行政も環境整備としての草刈りを呼びかけています。
南城市は、ハブ対策に関する市の案内のなかで、「空き地やお墓などを所有、または管理している方は、雑草が伸びすぎないように、こまめに草刈りや清掃をする」ことや、「草刈りやネズミの駆除など敷地内の環境整備を行い、ハブが生息・侵入しにくい環境を整えましょう」と呼びかけています(2026年6月8日更新)。沖縄県もハブについての案内で、隠れ場所やえさとなる小動物を減らす環境整備を挙げています。
南城市は、樹木の伐採・せん定・除草等について対応できる事業者の一覧も公開しています。市は「特定の事業者を推薦・あっせんするものではありません」「施工品質等を保証しません」としており、契約は利用者と事業者の間で行うものとされています。複数の見積りを取ること、追加費用の条件、保険への加入、境界の確認などは、利用する側で確かめるよう案内されています。
これは法律上の義務ではなく行政からの呼びかけですが、入居者の安全に関わる話でもあります。庭のある物件を貸す場合、草刈りの取り決めを「見た目の問題」としてだけでなく、敷地の安全管理の一部として考えておくと、入居者への説明もしやすくなります。
管理を委託している、あるいはこれから委託を考えている場合、草刈りが委託の範囲に含まれているかは契約ごとに異なります。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は、「賃貸住宅の維持保全」を、住宅の居室およびその他の部分について「点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うこと」と定義しています(第2条第2項第1号)。庭や外構がここに含まれるかどうかを明示した資料は確認できませんでしたので、実際にどこまでやってもらえるかは契約書で確かめる必要があります。
同法第13条第1項は、賃貸住宅管理業者が管理受託契約を締結しようとするときは、賃貸人に対し、契約の内容やその履行に関する事項について、契約を締結するまでに書面を交付して説明しなければならないと定めています。管理委託契約を結ぶ前の説明を受ける場面が、確認のタイミングです。
管理委託料に含まれる業務と別費用になる業務の一般的な区分は、アパート管理会社の仕事内容でも整理しています。委託するかどうかの判断そのものは、戸建てを貸すとき管理会社は必要かもあわせてご覧ください。
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判断のポイント
庭の手入れを誰が負担するかは、①契約書にどう書いてあるか、②入居時の庭の状態が記録として残っているか、③日常の手入れか専門業者が必要な作業か、という3点で見え方が変わります。この3つが押さえられていれば、話し合いは進めやすくなります。
トラブルの多くは、取り決めが曖昧なまま時間が経つことから生まれます。次の準備をしておくと、後の話し合いが具体的になります。
契約の種類によって、貸す期間や更新の考え方が変わる点も押さえておくと役立ちます。詳しくは普通借家契約と定期借家契約の違いをご覧ください。室内の原状回復の負担区分については、戸建てを貸すときの原状回復は誰の負担かで整理しています。
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草刈り・庭木管理の業者を自分で探すのが不安な方へ
草刈りや庭木の手入れは、誰に頼むかが決まらずに先送りになりがちです。草刈り・庭木管理の業者選びについて、内容や地域に応じて、イエリテがお付き合いのある事業者をご紹介できる場合があります。
共益費に含めるかどうかは契約の定め方によります。共用部分の清掃や共用灯の電気代などを共益費でまかなう形にしている契約はありますが、草刈りが含まれるかどうかは自動的に決まるものではありません。募集時の条件と契約書の記載を一致させておくと、入居者との認識のずれを防げます。
まず契約書の定めと、伐採に至った経緯を確認してください。庭木は敷地に定着した物であり、借主が自由に処分してよいとは限りません。一方で、倒れそうな木を放置していた事情があった場合など、経緯によって評価は変わります。損害賠償の可否は法的な判断になるため、金額を請求するかどうかを含めて弁護士へ相談することをお勧めします。
義務として定められたものではありませんが、飛散・倒木のリスクを下げる意味はあります。枝葉の飛散防止の効果を公的資料で確認できたわけではないため、「これをすれば被害を防げる」とお伝えすることはできません。ただし、枯れ枝や倒れそうな木を把握している場合は、台風前に対応を検討する価値があります。台風被害が出た後の対応は、賃貸物件の台風被害にどう対応するかで整理しています。
まず貸主として状況を確認したうえで、契約上の分担にもとづいて入居者へ依頼するか、貸主側で手配するかを判断します。苦情を入居者へそのまま伝えるだけでは解決しないことがあります。貸主側で業者を手配する場合、入居中の敷地へ立ち入るときは、原則として入居者の承諾を得て行います。国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)第16条は、貸主は管理上特に必要があるときは、あらかじめ借主の承諾を得て立ち入ることができるとし、借主は正当な理由がある場合を除いてこれを拒否できないとしています。火災の延焼防止など緊急の必要がある場合は、承諾を得ずに立ち入れるとされていますが、通常の草刈りはこれに当たりません。民法第606条第2項でも、賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは賃借人はこれを拒めないとされていますが、いずれも無断で立ち入ってよいという意味ではありません。緊急時を除き、事前の連絡と承諾、日程の調整を基本にしてください。近隣からの苦情への向き合い方は、賃貸経営の騒音・ゴミ出しトラブルへの対応も参考になります。
この記事は、2026年8月26日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。庭・外構の維持管理の負担は、賃貸借契約の内容や物件の状況によって異なります。特約の有効性、損害賠償や契約解除の可否といった法的な判断は弁護士へ、条例の有無や内容は物件所在地の市町村へご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。
草刈りの頻度や範囲、業者の手配を誰がどこまで担うかは、敷地の広さや入居者との取り決め、オーナー様のお住まいの場所によって変わります。アパートをお持ちで、遠方にお住まいの方や自主管理の方で、季節ごとの手配を続けるのが難しいと感じている場合は、管理内容の見直しや管理会社への委託も選択肢のひとつです。今の管理状況を一緒に整理するところからご相談いただけます。委託するかどうかを決めていない段階でも構いません。戸建てを貸している方のご相談も、このページ下部のLINEから承ります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。