

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月23日
情報確認日:2026年08月23日
転勤や相続をきっかけに、これまで住んでいた自宅を貸すことになったとき、契約書や家賃の準備とあわせて、火災保険の内容も確認しておく必要があります。
当社へ寄せられるご相談でも、住宅用の火災保険に入ったまま賃貸に出してしまっていた、何をどう手続きすればよいか分からず問い合わせを受けた、というケースがあります。契約の内容を確認しないまま貸し始めると、いざというときに保険金を受け取れないケースが生じます。
火災保険を「見直す」というと、まったく別の保険に入り直すイメージを持たれるかもしれませんが、実際に問われるのは契約内容の確認と保険会社への連絡です。保険法や民法の規定にもとづいて、賃貸に出す前に確認しておきたいポイントを順に見ていきます。
この記事の目次
まず結論から確認します。火災保険参考純率の物件区分では、住宅物件は「住居としてのみ使用する建物」とされており、所有者が住んでいるか、貸しているかを区別していません。そのため、専用住宅として貸す場合も、この大分類から直ちに外れるとは限りません。
ただし、この参考純率上の区分と、契約している火災保険商品の引受条件・契約条件は別のものです。 所有者本人が住んでいた自宅を第三者へ賃貸する場合に、契約変更や保険会社への通知が必要かどうかは、保険会社・商品ごとの約款によって異なります。「賃貸に出すことは、契約上の用法変更にあたる」と全社共通のルールとして一般化できる公的資料は確認できていません。
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先に結論
専用住宅として貸し続ける場合でも、貸し始める前に、契約している保険会社・代理店へ連絡し、契約内容を確認しておくことが基本です。該当するかどうかを自己判断しないことが、後のトラブルを防ぐ最初の一歩です。
保険法第29条第1項は、契約後に危険(事故が起きる可能性)が増加した場合について、次の条件がそろったときに、保険会社が契約を解除できると定めています。
日本損害保険協会の案内では、建物の用途変更(住宅専用から店舗併用への変更など)が、通知が必要な項目の例として挙げられています。一方、所有者本人の居住から第三者への賃貸へ変わることが、契約上どこまでこの「用途変更」にあたるかは、一次資料からは確認できていません。
該当するかどうかは保険会社・商品ごとの約款によって判断が分かれるため、「賃貸に出すこと自体が当然に通知事項にあたる」と決めつけることも、「関係ないから連絡不要」と判断することも避け、契約している保険会社または代理店へ確認することが基本になります。
通知をしないまま賃貸に出し、その状態で火災などの事故が起きた場合、契約上どうなるのかは、多くの方が気にする点です。
保険法第31条は、危険増加を理由とする契約の解除について、次のように定めています。
賃貸に出したことが、その契約の通知事項・危険増加に該当する場合、連絡しないまま事故が起きて契約を解除されると、事故の時点までさかのぼって保険金が支払われない可能性があります。「気づかないまま忘れていただけ」という事情があっても、重大な過失にあたると判断される可能性はあるため、該当するかどうかも含めて、保険会社へ確認しておくことが大切です。
一方で、通知義務違反があれば必ず保険金が支払われなくなる、というわけでもありません。解除には、賃貸化がその契約の通知事項・危険増加に該当すること、契約上の通知義務の定めがあること、故意・重大な過失による通知の懈怠があることという条件がそろう必要があります。判断が分かれる部分でもあるため、迷った場合は保険会社へ確認しながら進めることをお勧めします。
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注意点
賃貸化に伴う変更が、その契約の通知事項・危険増加に該当する場合、必要な通知を故意または重大な過失で怠ると、契約解除や保険金が支払われない結果につながる場合があります。該当するかは契約している保険会社・代理店へ確認してください。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、「住宅用の保険のまま貸してしまっていた」「賃貸に出すにあたって何をすればよいか分からない」というお問い合わせをいただくことがあります。こうしたご相談には、まず契約している保険会社・代理店へ連絡し、賃貸に出す旨を伝えて契約内容を確認するようご案内しています。保険の確認が後回しになっていたケースがあります。私自身がお伝えしているのは、賃貸借契約の手続きと同じタイミングで、必ず保険内容も確認しておくべきだということです。
自宅を賃貸に出すときに関わる保険は、大きく分けて「建物そのものへの損害に備える保険」と「他人への賠償責任に備える保険」の2種類です。この2つは役割が異なるため、それぞれ確認しておきます。
賃貸住宅では、建物は所有者である貸主が火災保険を契約し、借主は自分の家財について保険をかけるのが基本的な形です。自宅として住んでいたときに家財を含めた契約をしていた場合は、転居に伴って家財補償の要否や、契約者の住所変更などを保険会社へ確認しておく必要があります。
家賃補償や死亡事故時の費用などをカバーする貸主向けの特約がある商品もありますが、内容は保険会社によって異なります。どのような特約があるかは、契約している保険会社に確認してください。
建物の設置や管理に不備があり、それが原因で入居者や第三者にケガをさせたり、物を壊したりした場合、所有者である貸主が損害賠償の責任を負う場合があります。民法第717条は、土地の工作物(建物を含みます)の設置・保存に瑕疵があったことで他人に損害が生じたとき、まず占有者が責任を負い、占有者が損害防止に必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うと定めています。
このような賠償責任に備える保険として、施設所有(管理)者賠償責任保険や、火災保険に付帯できる賠償責任特約があります。個人の貸主が加入できるかどうか、火災保険の特約で対応できるかどうかは商品によって異なるため、保険会社への確認が必要です。
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貸主が確認する2つの保険

賃貸住宅の入居者は、一般的に「借家人賠償責任保険」に加入します。これは、借主が火災や水漏れなどで借りている部屋に損害を与えてしまった場合の、貸主に対する賠償責任に備える保険です。
ここで誤解しやすいのが、「入居者が借家人賠償責任保険に入っていれば、貸主は火災保険に入らなくてよい」という考え方です。借家人賠償責任保険だけでは、貸主所有の建物損害への備えを代替できません。借家人賠償責任保険は、借主に法律上の賠償責任が発生した場合にだけ支払われる保険であり、貸主自身の建物を補償するものではありません。もらい火(近隣からの延焼)や自然災害など、借主に賠償責任が生じない損害には対応できないため、貸主側でも建物の火災保険について補償内容を確認しておくことが重要です。
貸主側では、賃貸借契約の条件として借家人賠償責任保険を含む保険への加入を求めるのが一般的です。募集を依頼する不動産会社・管理会社に、加入の確認方法をあわせて相談しておきましょう。
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補足
借家人賠償責任保険は借主が加入する保険で、貸主の火災保険の代わりにはなりません。貸主自身の建物への備えは、貸主自身の火災保険で行います。
「借主に賠償責任が生じない損害」の代表例が、近隣からの延焼です。ここには、失火ノ責任ニ関スル法律という古くからの法律が関わります。
この法律は、「民法第709条の規定は失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときはこの限りではない」と定めています。つまり、火元に重大な過失がない限り、近隣で発生した火災による延焼被害について、被害を受けた側が火元に損害賠償を求めることはできないのが原則です。この場合、被害を受けた建物の復旧は、自分がかけている火災保険でまかなうことになります。貸主自身が建物の火災保険の補償内容を確認しておきたい理由のひとつが、この点です。
一方、借主の失火によって借りている建物自体が燃えてしまった場合は事情が異なります。失火責任法が適用を除外しているのは民法第709条(不法行為責任)だけで、賃貸借契約にもとづく責任(民法第415条の債務不履行責任、第621条の原状回復義務など)は対象外です。そのため、借主の失火であっても、借主は貸主に対して契約上の責任を負う場合があると考えられています。借家人賠償責任保険は、この場面で意味を持つ保険です。

契約内容の変更は、保険証券や契約更新の案内に記載されている取扱代理店、または契約している保険会社へ連絡して行うのが一般的です。契約期間の途中でも変更の手続きは可能とされています。
具体的な必要書類や、変更にともなう保険料の精算方法は、保険会社・商品ごとに異なります。次の流れを目安に、余裕を持って進めることをお勧めします。
「賃貸募集を始める前」を目安に連絡しておくと、入居者への引き渡しに間に合わせやすくなります。通知義務のある変更に該当する場合は、通知が「遅滞なく」行われたかどうかが契約上の解除・免責の判断にも関わるため、後回しにしないことが重要です。
住宅ローンが残っている自宅を賃貸に出す場合、火災保険に金融機関の質権が設定されていることがあります。この場合、保険契約の変更・解約に金融機関の関与が必要になることも考えられるため、保険会社への確認とあわせて、借入先の金融機関にも相談しておくと安心です。
また、住宅ローン控除を受けている場合、控除の適用には本人がその住宅に居住していることが要件となっているため、賃貸に出すと控除を受けられなくなる場合があります。火災保険の見直しとあわせて、住宅ローン控除への影響も確認しておく必要があります。住宅ローンそのものの手続き(借入先への確認・契約変更・住宅ローン控除への影響)については、住宅ローンが残っている家は貸せる?借入先への確認と手続きの進め方で詳しく整理しています。
必ず上がるとは限りません。契約内容の変更によって保険料が変わるかどうかは、保険会社・商品や、変更する補償内容によって異なります。具体的な金額は、契約している保険会社へ確認してください。
空室期間の扱いは保険会社・商品によって異なります。一般化できる公的な基準はないため、賃貸募集を始める段階で、空室期間の補償についても保険会社へあわせて確認しておくことをお勧めします。
借家人賠償責任保険だけでは、貸主所有の建物損害への備えを代替できません。借家人賠償責任保険は、借主に賠償責任が発生した場合にだけ支払われる保険です。近隣からの延焼など、借主に賠償責任が生じない損害には対応できないため、貸主側でも建物の火災保険の補償内容を確認しておくことが重要です。
賃貸化に伴う変更が、その契約の通知事項に該当する場合は、約款に従って遅滞なく通知する必要があります。賃貸化自体が通知事項にあたるかは保険会社・商品によって異なるため、貸し始める前に保険会社・代理店へ確認してください。目安として、賃貸募集を始める前、遅くとも入居者への引き渡し前までに連絡を済ませておくことをお勧めします。
この記事は、2026年8月23日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。火災保険の契約内容・補償範囲は保険会社・商品によって異なるため、具体的な手続きは契約している保険会社・代理店へご確認ください。契約上の権利義務や損害賠償に関する判断は弁護士へご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。