

入居者から今月分の家賃が振り込まれていない。そう気づいたとき、何から手を付ければよいのか分からず、連絡をためらってしまうことがあります。
家賃滞納への対応は、感情的にならずに、確認する順番を守ることが何よりも大切です。連絡の記録を残さないまま督促を進めると、対応の経緯を後から説明しにくくなったり、保証契約上の報告状況や催告の経緯を確認しにくくなったりする場合があります。滞納が発覚した直後の初動から、保証会社・連帯保証人への対応、長期化した場合の法的手続きまでの流れを、順を追って説明します。
大まかな流れは、入金状況の確認 → 契約書・保証会社の確認 → 入居者への連絡(保証会社利用時は報告も並行)→ 書面での記録・催告 → 長期化した場合の専門家・法的手続きの検討、という順番になります。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月22日
情報確認日:2026年8月22日
この記事の目次

督促の連絡を入れる前に、次の3点を確認してください。ここを飛ばすと、後の対応がすべて手戻りになります。
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確認ポイント
管理会社に委託している場合は、まず管理会社からの報告内容を確認し、督促の窓口が管理会社なのかオーナー自身なのかを整理してください。
督促の連絡は、感情的な言葉を避け、いつまでに、いくらを、どの口座へ振り込んでほしいかを具体的に伝えることが基本です。電話でのやり取りも、日時と内容を簡単にメモしておくと、後で状況を振り返りやすくなります。
督促は、いきなり強い対応から始めるのではなく、段階を踏んで進めます。張り紙や勤務先への連絡、深夜・早朝の電話や訪問など、社会通念を超える方法での督促は、たとえ滞納している入居者に対してであっても、オーナー側が法的責任を問われるおそれがあります。
家賃の振込予定日を数日過ぎた段階では、電話やメール、簡易書留などで連絡し、単純な振込忘れや手違いでないかを確認します。この段階で支払われるケースもあり、まずは事実確認と早期の支払いを促すことが目的です。
連絡をしても支払いがない、または連絡自体が取れない場合は、内容証明郵便で督促状を送ります。内容証明郵便は、いつ・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度です。後に法的手続きへ進む場合、督促の事実を示す記録として役立ちます。督促状には、未払い金額、支払期限、支払先口座、期限までに支払いがない場合は法的手続きを検討する旨を記載するのが一般的です。相手に届いたことも記録したい場合は、配達証明をあわせて付けて送ります。
連帯保証人が付いている契約では、入居者本人への督促と並行して、連帯保証人への連絡も検討します。連帯保証人は、まず主たる債務者(入居者)に請求するよう求める権利(催告の抗弁権)や、主たる債務者の財産に執行するよう求める権利(検索の抗弁権)を持ちません(e-Gov法令検索「民法」第452条・第453条・第454条)。そのため、契約上は連帯保証人へ直接請求することも可能です。
ただし、連帯保証人へ請求する前に、まず入居者本人との話し合いを尽くすことが、その後の関係を考えるうえで現実的な進め方になります。連帯保証人への連絡は、契約書に記載された連絡先へ、滞納の事実と金額を正確に伝えるところから始めてください。

入居者が家賃保証会社(家賃債務保証業者)と契約している場合は、保証会社への連絡が対応の中心になります。契約によっては、滞納発生後の報告や代位弁済の請求について期限が定められており、期限を過ぎると保証対象に影響する場合があります。特定の日数や業界共通のルールがあるわけではないため、滞納に気づいた時点で契約内容を確認し、入居者本人への督促と並行して早めに保証会社へ連絡することが実務上の備えになります。一般的な流れは次のとおりです。
代位弁済を受けた後にあらためて滞納が生じた場合の扱いは、保証契約の範囲や、その都度の報告・代位弁済請求の手続きによって異なります。「以後の滞納はすべて保証会社が回収する」と一律に扱えるわけではないため、代位弁済の対象となる期間・上限額・申請から支払いまでの期間・その後の滞納が生じた場合の手続きを、保証契約書・保証委託契約書・約款・代位弁済の申請要領等で確認してください。
国土交通省は、家賃債務保証業の適正な運営を図るため、一定の要件を満たす事業者を任意で登録する「家賃債務保証業者登録制度」を設けています。登録は義務ではないため、登録していない事業者が直ちに問題があるとは限りませんが、登録の有無は保証会社を選ぶ際の判断材料の一つになります。
家賃保証会社を利用せず、個人(家族や知人など)が連帯保証人になっている契約では、確認しておきたい点があります。
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約は「個人根保証契約」と呼ばれ、賃貸借契約の連帯保証もこれにあたります。2020年4月1日に施行された改正民法により、個人がこの保証人になる場合は、責任を負う上限額(極度額)を書面または電磁的記録で定めなければ、保証契約自体が効力を生じないとされました(e-Gov法令検索「民法」第465条の2)。
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ポイント
2020年4月1日以降に締結された個人根保証契約では、契約書に極度額の記載がなければ、その保証契約自体が無効になっている可能性があります。
ここで注意したいのは、「賃貸借契約の更新」と「保証契約の更新」は別のものだという点です。2020年4月1日より前に締結された保証契約には、原則として改正前の民法が適用されます。賃貸借契約だけが更新された場合に保証責任が更新後の債務まで続くかどうかは、当初の保証契約が更新後の債務も保証する趣旨で締結されていたかなど、保証契約の内容によって判断されます。この場合、極度額の定めがなくても直ちに保証契約が無効になるわけではありません。一方、2020年4月1日以降に保証契約自体を新たに締結したり、合意により更新したりする場合は、改正後の民法が適用され、極度額の定めが必要になります。契約書一式のうち、賃貸借契約書だけでなく保証契約(保証委託契約・連帯保証人の署名欄を含む契約)がいつ、どのような手続きで取り交わされたかを確認してください。判断に迷う場合は弁護士へご確認ください(出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書について(改正民法関係資料)」)。
督促を重ねても支払いがなく、滞納が長期化した場合は、契約解除や法的な回収手続きを検討する段階に移ります。
賃貸借契約は、賃料の支払いが一時的に遅れただけで、直ちに解除できるわけではありません。判例上、賃料の不払いによって貸主と借主の信頼関係が破壊されたと認められる場合に、契約の解除が認められるという考え方が確立しています(信頼関係破壊の法理)。何か月分の滞納があれば解除できるという一律の基準はありません。短期間・一時的な不払いだけで直ちに解除できるとは限らず、滞納の期間・金額、それまでの支払い状況、滞納に至った事情、催告や交渉の経緯などを総合的に考慮して判断されます。
契約を解除する場合、原則として、相当の期間を定めて支払いを催告し、その期間内に支払いがないことが必要です(民法第541条)。特約で無催告解除ができる場合もありますが、特約があれば必ず無催告で解除できるとは限らず、信頼関係破壊の法理による制約を受けることがあります。解除の手続きを誤ると、後に解除の効力そのものが争われる可能性があるため、この段階からは弁護士へ相談することをお勧めします。
未払い家賃の回収そのものを目的とする場合、次のような手続きがあります。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる、簡易裁判所での簡易な訴訟手続き。原則として1回の期日で審理が終わります(民事訴訟法第368条・第370条)。1人につき、同じ簡易裁判所で年間10回まで利用できます。 |
| 支払督促 | 金銭の支払いを求める場合に、簡易裁判所の書記官へ申し立てる手続き(民事訴訟法第382条以下)。支払督促が相手方に送達されてから2週間以内に異議の申立てがなければ、こちらから「仮執行宣言」の申立てを行い、仮執行宣言付きの支払督促が送達されて初めて強制執行を申し立てられる状態になります(同法第386条・第391条)。仮執行宣言付き支払督促にも異議申立ての機会があり、異議がなければ確定判決と同じ効力を持ちます。異議が申し立てられた場合は、いずれの段階でも通常の訴訟手続きに移行します。 |
| 通常訴訟 | 請求額が60万円を超える場合や、明け渡しもあわせて求める場合など、少額訴訟になじまない場合に利用します。 |
未払い家賃の回収と、部屋の明け渡し(契約解除にともなう退去)を同時に求める場合は、少額訴訟や支払督促ではなく、通常の訴訟手続き(建物明渡請求訴訟)によることが一般的です(出典:法務省「少額訴訟手続について」)。
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注意点
滞納が続いていても、オーナーが自分の判断で鍵を交換する、荷物を運び出す、電気やガスを止めるといった実力行使によって入居者を退去させることは、原則として法律上認められていません(自力救済の禁止)。このような対応を行うと、滞納している入居者に対してであっても、オーナー側が損害賠償責任を問われる可能性があります。
入居者が話し合いに応じ、任意に退去・明け渡しをしてくれる場合は、そのまま解約手続きを進められます。一方、解除・退去を求めても入居者から任意の明け渡しが得られない場合は、建物明渡請求訴訟などの裁判手続きを経て、それでも退去しないときは強制執行へ進むことになります。
滞納が起きてからの対応と合わせて、入居前・契約時の備えも重要です。
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次に行うこと
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、家賃滞納が起きた際に、入居者本人との連絡がなかなか取れず、連帯保証人への連絡・交渉が対応の中心になったというケースがあります。連絡先が古い契約書のままになっていたり、連帯保証人が滞納の事実を把握していなかったりすると、そこから状況の説明を始める必要があり、対応に時間がかかりやすくなります。
契約時点で連帯保証人の連絡先を正確に確認し、更新のタイミングで見直しておくことが、いざというときの初動を早める備えになると感じています。
県外に住みながら南城市・沖縄県南部の賃貸物件を所有している場合は、入居者や連帯保証人とのやり取りを管理会社や電話・郵送でのやり取りに頼ることになります。滞納が発生した際に、現地での確認や書類のやり取りが遅れがちになるため、督促の初期段階から記録を残す習慣が、遠方からの対応をしやすくします。
相続でアパートや戸建てを引き継いだ場合、以前のオーナーが結んだ契約書に記載された連帯保証人の情報がそのまま引き継がれていることがあります。名義変更や相続登記の手続きと合わせて、契約書の内容も一度確認しておくと安心です。
一律の基準はありません。判例上、滞納の期間や金額、それまでの支払い状況、滞納に至った事情、催告や交渉の経緯などを総合的に考慮して、貸主と借主の信頼関係が破壊されたと認められる場合に解除が認められるという考え方(信頼関係破壊の法理)がとられています。短期間・一時的な不払いだけで直ちに解除が認められるわけではありません。個別の判断が必要なため、解除を検討する段階では弁護士へご相談ください。
入居者本人への督促に加えて、連帯保証人がいれば連帯保証人への連絡が中心になります。連帯保証人もいない場合は、内容証明郵便での督促、少額訴訟や支払督促といった法的手続きの利用を検討します。
連帯保証人には、支払いを拒む正当な理由がない限り、契約上の保証債務を負う責任があります。連絡しても対応が得られない場合は、内容証明郵便での督促や、法的手続きの利用を検討することになります。個別の状況によって進め方が変わるため、対応が難しい場合は弁護士へご相談ください。
原則として認められません。オーナーが自分の判断で鍵を交換したり、荷物を運び出したりする行為は自力救済にあたります。滞納している入居者に対してであっても、こうした対応を行うとオーナー側が損害賠償責任を問われる可能性があります。入居者が任意に応じない場合、明け渡しを求めるには裁判手続きを経て、必要に応じて強制執行へ進む必要があります。
管理委託契約の内容によります。家賃の集金や督促の範囲・回数が管理料に含まれているか、内容証明郵便の送付や法的手続きへの対応まで含まれているかは、管理会社ごとに異なります。委託している業務の範囲を、契約書で確認してください。
家賃滞納への対応は、感情的な判断を避け、確認と記録を積み重ねる作業です。
滞納が発生した直後の対応が、その後の交渉や法的手続きのしやすさに影響します。契約書の内容と、これまでの入金記録を整理するところから始めてください。
この記事は、2026年8月22日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情によって取り扱いは変わります。契約解除・法的手続きに関する判断は弁護士へ、税務に関する判断は税理士へご確認ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。