


家の前の道が、実は自分や近所の人の名義になっている。売却の話を進めるなかで、はじめてそれを知る方がいます。いわゆる私道に面した土地です。
先にお伝えすると、私道に面した土地や家でも売却はできます。ただし、その道を通行し、必要な工事を行える権利や承諾の根拠を確認できるかどうかで、売却条件や買主の住宅ローン審査が変わることがあります。
この記事では、通行承諾と掘削承諾の違い、確認しておきたい権利の根拠、共有私道や所有者が分からない場合の考え方を、民法・建築基準法と法務省・沖縄県・南城市の資料をもとに整理します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月04日
最終更新日:2026年07月29日
情報確認日:2026年07月29日
この記事の目次
私道に接していること自体が、売却を妨げるわけではありません。実務で止まりやすいのは、次の2つについて、根拠となるものが見当たらないときです。
根拠になりうるものは、承諾書だけではありません。私道の持分、地役権などの登記された権利、過去の売買契約書や覚書、民法上の通行権が成立する可能性、位置指定道路に関する裁判例上の権利なども含まれます。
そのうえで、承諾書は、買主や金融機関へ状況を説明するための重要な資料になります。権利があると考えられる場合でも、書面でそろえておくかどうかで、売却の進み方が変わることがあります。

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先に結論
私道は、個人や法人が所有している土地のうち、道として使われている部分を指す言い方です。一般に「公道」「私道」という言葉は、道路の所有者や管理主体などを区別するために使われています。
一方で、道路の所有者と、建築基準法上の道路かどうかは別の問題です。私道であっても、建築基準法第42条第1項第5号の「位置指定道路」に当たれば、同法上の道路として扱われます。逆に、日常的に通行されていても、同法上の道路ではない通路もあります(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」)。
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用語解説
確認する内容によって、行き先が変わります。
指定道路マップは参考資料です。マップだけで道路種別が確定するわけではないため、売買や建築計画を進める場合は南部土木事務所へご確認ください。

建て替えができるかどうかまで含めて確認したい場合は「再建築不可の土地は売却できる?接道義務と確認の手順」もあわせてご覧ください。
どちらも私道の所有者から得る承諾ですが、対象になる行為が違います。
通行承諾は、人や車が通ることについての承諾です。掘削承諾は、水道管・下水管・ガス管の引き込みや取り替えのために、道の舗装を掘ることについての承諾です。建て替えや水回りの改修に合わせて配管を引き直す場面では、通行の承諾だけでは足りないことがあります。
なお、「通行承諾」「掘削承諾」は、不動産取引の実務で一般的に使われている呼び方です。民法にこの名前の制度が定められているわけではありません。実際に必要となる権利や書面は、私道持分の有無、過去の契約内容、工事の内容、金融機関や水道事業者の取り扱いによって変わります。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができるとされています(民法第210条)。ただし、通行の場所と方法は、必要であり、かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならず、償金を支払う必要があるとも定められています(同法第211条・第212条)。
また、建築基準法第42条第1項第5号の位置指定を受けて現実に開設されている道路については、その通行に日常生活上不可欠の利益を有する者は、特段の事情のない限り、敷地所有者に対して妨害行為の排除や将来の妨害行為の禁止を求めることができるとした最高裁判所の判決(平成9年12月18日)があります(判決文は裁判所「裁判例検索」で確認できます)。
ここで注意したいのは、これらは争いになったときに主張しうる権利であって、買主や金融機関へ示す資料の代わりにはならないという点です。裁判や交渉が必要になれば、時間も費用もかかります。
民法が改正され、2023年(令和5年)4月1日から、ライフラインのための設備について次の定めが置かれました(民法)。
いずれも、無条件に工事ができるという内容ではありません。設備を設置・使用する場所や方法は、他の土地や設備のために損害が最も少ないものを選ぶ必要があり、あらかじめ目的・場所・方法を他の土地の所有者や使用者へ通知しなければならないとされています。損害に対する償金や、設備の維持費の負担についても定めがあります。
つまり、承諾が得られないときの道筋が法律上整えられた一方で、通知や償金などの手続きは残ります。自分の判断で掘り始めてよいという意味ではありません。どの条文が当てはまるか、要件を満たすかは法的な判断になりますので、弁護士へご相談ください。
書面にする場合、後から解釈が分かれやすいのは次のような点です。すべてを必ず入れるものではなく、物件の状況や予定している工事によって、必要な項目は変わります。
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書面で決めておきたいこと
市販のひな型やインターネット上の様式をそのまま使うと、実際の権利関係と合わないことがあります。物件ごとに権利関係や必要な工事が異なりますので、売買条件や実務上の進め方は不動産会社へ、権利関係や書面の法的な効力の判断は弁護士へ確認してください。登記が必要な場合は司法書士、私道の範囲や分筆に関わる場合は土地家屋調査士が担当します。
イエリテの実務から
私道に接する物件のご相談をいただいたとき、当社ではまず前面道路の名義と、水道・下水の引き込み経路を確認するようにしています。この段階で、売主のご認識と登記の内容が違っていることがあります。
私道の所有者はお隣1人だと思っていたところ、登記を確認すると複数の方の共有になっていた、名義人が亡くなっていて相続登記が済んでいなかった、といった場面です。以前から口頭で通行の了承を得ているつもりでも、買主や金融機関へ提示できる書面が残っていないこともあります。通行についての承諾があっても、水道・下水工事の掘削まで含まれていない場合もあります。
いずれも、売却期限を決める前に確認しておくと、条件の調整や買主への説明がしやすくなります。承諾が得られるかどうかは相手方の意向によりますので、当社が結果をお約束できるものではありません。
金融機関は、担保として評価する物件について、敷地への出入りやライフラインの状況を確認します。私道に面した物件では、通行や掘削に関する資料を求められることがあります。取り扱いは金融機関や物件によって異なるため、購入を検討する方は個別に確認することになります。
引き渡しの前後で問題になりやすいのは、次のような場面です。
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手続き上の注意
承諾は、相手方の意向によるものです。必ず取得できるとは限らず、取得までの期間も見通せません。
売却の期限が決まっている場合は、確認を後回しにせず早めに状況を整理してください。そろわない場合は、価格や引き渡し条件の見直し、買主層の想定を変えるなどの検討が必要になります。
私道部分そのものを売買の対象に含めるかどうかも、あらかじめ整理しておく項目です。私道の持分を持っている場合、それを一緒に譲渡するのか、残すのかで、買主が後から通行や掘削で困る可能性が変わります。

私道は、複数の人が共有していることや、細長い部分を隣同士で持ち合っていることがあります。この場合、話をする相手が複数になります。
法務省は「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」(令和4年公表)を公表しており、複数の者が所有する私道で補修工事などを行う場合に必要な所有者の同意について、改正民法をふまえた考え方を事例ごとに整理しています。共有者の一部が所在不明である場合の対応も扱われています。
ただし、これは工事の同意に関する研究報告であり、売買の場面でそのまま使えるものではありません。誰の同意がどこまで必要かは、私道の権利の形(共有か、持ち合いか)や工事の内容によって変わります。
沖縄県では、親族間で土地を共有したまま世代が変わっているケースがあります。私道の共有者に相続が発生していると、まず相続登記の確認から必要になることがあります。共有の不動産を売るときの考え方は「共有名義の不動産は売却できる?全員の同意が必要な場面と進め方」で整理しています。
順番を決めておくと、無駄なやり直しが減ります。案件によって前後することはありますが、次の流れが目安になります。
間口や境界がはっきりしない場合は、測量が必要になることがあります。境界が分からないときの進め方は「境界が分からない土地は売却できる?南城市の土地売却で確認したい対処法」で整理しています。相続登記が済んでいない場合や、共有者との間に争いがある場合は、司法書士・弁護士へつないでください。
私道や他人の土地を通って給水管を引き込む場合、水道事業者の取り扱いによって、土地所有者の承諾書の提出を求められることがあります。取り扱いは事業者ごとに異なります。
南城市では、給水の申し込み・給水装置工事・指定給水装置工事事業者に関することは上下水道部 水道課、公共下水道や排水設備に関することは上下水道部 下水道課が担当しています。あわせて、既存の引き込み管が使える状態か、口径が足りているかも確認しておくと、買主への説明がしやすくなります。
私道は、税金と契約の両面で、通常の宅地とは違う扱いになることがあります。
地方税法第348条第2項第5号では、公共の用に供する道路について固定資産税を課することができないとされています。私道であっても、これに当たると認められれば非課税となる場合があります。
ただし、どのような状態であれば「公共の用に供する道路」と認められるかは、市町村が現況を調査して個別に判断します。幅員や利用状況などの取り扱いは自治体によって異なり、申告を求められることもあります。南城市での判断や手続きは、南城市「非課税の申告について」を参考に、市役所税務課へご確認ください。
宅地建物取引業法第35条第1項第3号では、建物の貸借以外の契約について、私道に関する負担に関する事項を重要事項として説明しなければならないとされています。あわせて同項第2号と同法施行令第3条により、都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限の概要も説明の対象とされています。
売主としては、私道の持分、通行や掘削に関する権利・承諾の状況、私道の維持管理の負担などを整理して伝えることが前提になります。現況を正しく開示したうえで、価格と条件を決めることが基本です。売主が負う責任の範囲は「契約不適合責任とは?不動産を売る前に売主が知っておきたい基本と注意点」で整理しています。
私道が関係する売却では、複数の窓口が関わります。役割を知っておくと、確認の順番を決めやすくなります。
| 相談先 | 担当する範囲 |
|---|---|
| 法務局 | 公図・登記事項証明書の取得、私道の名義・持分・地役権の確認 |
| 沖縄県 南部土木事務所 建築班 | 建築基準法上の道路種別の確認、位置指定道路の確認 |
| 南城市役所 | 市道や道路に関する手続き、都市計画区域の確認、固定資産税の扱い(税務課) |
| 南城市 上下水道部 水道課 | 給水の申し込み、給水装置工事、指定給水装置工事事業者に関する確認 |
| 南城市 上下水道部 下水道課 | 公共下水道、排水設備に関する確認 |
| 弁護士 | 通行権・掘削に関する権利関係の判断、共有者との争い |
| 司法書士 | 私道の名義変更、相続登記 |
| 土地家屋調査士 | 測量、境界の確認、私道部分の分筆 |
| 不動産会社 | 売却の進め方、買主層の整理、専門家への橋渡し |
役割の分かれ目は次のとおりです。道路種別の判断は行政、権利関係の判断は弁護士、登記は司法書士、測量と境界は土地家屋調査士が担います。不動産会社は、売却方法・買主層・価格や条件の整理と、専門家への橋渡しを行います。通行権があるかどうかを不動産会社が判断することはできません。
求められることがあります。実際に通行してきた事実と、買主や金融機関へ示せる資料があることは別です。金融機関が資料の提出を求めることがあり、取り扱いは金融機関や物件によって異なります。
必要になる場面があります。通行と掘削は対象になる行為が違うため、通行の承諾だけでは、配管工事のために道を掘ることまで認められているとはいえません。手元の書面に、設備工事が含まれているかを確認してください。
持分がないことだけで、直ちに売却できなくなるわけではありません。確認するのは、通行と掘削の根拠です。承諾書、登記された地役権、過去の売買契約書や覚書、民法上の通行権が成立する可能性などを順に見ていきます。
ただし、根拠がはっきりしないと買主や金融機関の判断に影響し、価格や売却条件の調整が必要になることがあります。権利があるかどうかの判断は、弁護士へご確認ください。
不要とはいえません。位置指定道路は、その道が建築基準法上の道路として扱われることを意味するもので、私道の所有権や、通行・掘削・配管工事に関する権利関係を定めるものではありません。所有者は引き続き私人です。
本文で触れた最高裁判決のように、通行について権利が認められる場合もありますが、掘削や配管工事まで当然に含まれるわけではありません。実際の工事に必要な手続きは、個別に確認してください。
すぐに売却できなくなるわけではありません。民法第213条の2には、他の土地へ設備を設置したり他人の設備を使用したりしなければ継続的な供給を受けられない場合についての一般的な規定があります。また、第213条の3には、土地の分割や一部譲渡によって同様の状態が生じた場合の特則があります。
ただし、どちらも無条件に工事ができる制度ではなく、要件を満たすかどうかは個別の法的判断が必要です。
あわせて、価格や引き渡し条件、想定する買主層の見直しも検討することになります。
まず登記事項証明書で名義を確認します。相続登記が済んでいるかを確かめてください。所在が分からない共有者がいる場合の対応については、法務省の「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」で工事の同意に関する考え方が整理されています。実際の進め方は、弁護士・司法書士へご相談ください。
かからない場合があります。地方税法第348条第2項第5号により、公共の用に供する道路には固定資産税を課することができないとされています。ただし該当するかどうかは市町村の個別の判断となるため、南城市役所税務課へご確認ください。
一緒に譲渡することを検討するのが基本ですが、状況によります。持分を残すと、買主が後から通行や掘削で困る可能性があります。一方で、私道の範囲や他の共有者との関係によって、扱いを変えた方がよい場合もあります。契約条件の決め方は、個別に確認してください。

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次に行うこと
南城市で「前の道が私道かもしれない」とお考えの方へ
売ると決めていない段階のご相談でも構いません。イエリテでは、前面道路の名義、私道持分、配管経路など、何から確認すればよいかを整理するところからお手伝いしています。
権利関係の判断が必要な場面では、弁護士や司法書士へ確認する順番をご案内します。判断そのものは各専門家が行います。県外にお住まいの方からのご相談もお受けしています。南城市および沖縄県南部の不動産について、状況の整理からお気軽にご相談ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。私道の権利関係や必要な手続きは、個別の事情によって異なります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の土地売却について、地域事情や土地の条件を踏まえてご提案します。