


不動産を売ろうと考えたとき、最初に調べるのは価格だと思います。ただ、査定を依頼する段階から並行して確認しておくと、売り出すまでの見通しを立てやすくなる部分が、価格とは別のところにあります。
先にお伝えすると、売り出す前に確認しておきたいのは「名義」「土地の境界と隣地」「敷地と道路の関係」「お金の見通し」の4つです。とくに名義や境界は確認に時間がかかることがあり、買主が決まってから問題が分かると日程へ影響します。

逆に言えば、この段階で分かっていれば、売り出す時期も価格の考え方も自分で決められます。南城市の土地・戸建てを前提に、この4つをどの順番で、どこへ確認すればよいのかを見ていきます。法令や制度の説明には、確認した公的機関の資料を出典として添えました。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月7日
最終更新日:2026年8月6日
情報確認日:2026年8月6日
この記事の目次
売却前の準備には、着手しやすい順番があります。先に手を付けたいのは、自分だけでは完結しない項目です。
名義の整理には他の相続人や法務局が関わり、境界の確認には隣地の方の立ち会いが必要になることがあります。相手のある手続きは、思い立ってすぐ終わるものではありません。
費用や税金の試算は、必要な資料がそろっていれば比較的進めやすい一方、取得費の資料が見つからない場合や特例の確認が必要な場合は時間がかかることがあります。
| 確認すること | 主に関わる相手 | 時間のかかり方 |
|---|---|---|
| 名義(相続登記・共有・住所変更) | 相続人、法務局、司法書士 | 相続人や書類の状況による |
| 土地の境界・隣地との関係 | 隣地の所有者、土地家屋調査士 | 隣地の方の都合による |
| 敷地と道路の関係 | 行政の窓口 | 窓口での確認が必要 |
| お金の見通し(残債・費用・税金) | 金融機関、税務署・税理士 | 資料の有無・税務判断による |
名義や境界は、相続人や隣地所有者などの都合で時間がかかることがあるため、早めに着手します。その待ち時間に、道路とお金の確認を並行して進めると、全体の見通しを立てやすくなります。

💡
判断のポイント
売ると決めていなくても、名義と境界の状態を知っておくこと自体に意味があります。所有し続ける場合でも、貸す場合でも、同じ確認が必要になるためです。
登記名義が故人のままだったり、以前の住所・氏名のままだったりする場合は、買主への所有権移転登記の前に、売主が登記手続きを進められる状態へ整理する必要があります。ここが準備の出発点です。
登記事項証明書は、所有者本人でなくても法務局で交付を請求できます(不動産登記法第119条第1項)。まずは手元の固定資産税の納税通知書などで所在地と地番を確認し、現在の登記内容を見るところから始めます。
相続した不動産の名義が故人のままの場合、買主への所有権移転登記をする前に、相続登記を済ませる必要があります。決済日に登記をまとめて申請できる場合もありますので、具体的な申請の方法と段取りは司法書士へご確認ください。
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請することが義務づけられ、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象とされています(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
2024年4月1日より前に発生した相続も、義務化の対象です。同日より前に相続したことを知った不動産で相続登記が済んでいないものについては、2027年(令和9年)3月31日までに申請する必要があるとされています(出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。
ここで注意したい制度があります。3年以内の申請が難しい場合に、義務を簡易に果たせる「相続人申告登記」です。戸籍の完全な収集が不要で登録免許税もかからない一方、この申出は不動産の権利関係を公示するものではないため、売却するには別途、相続登記が必要です(出典:法務省「相続人申告登記について」)。
!
注意点
相続人申告登記を済ませたことで「名義の手続きは終わった」と受け取ってしまうと、売買契約の後に相続登記が必要だと分かり、日程に影響することがあります。
義務を果たすための手続きと、売るために必要な手続きは別のものです。
期限や手続きの詳細は「相続登記の義務化とは?手続きと期限」で説明しています。世代をまたいで名義が変わっていない場合は「亡くなった祖父名義の土地を売りたい」もあわせてご覧ください。
共有不動産の全体を売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。共有物に変更を加えるには、他の共有者全員の同意を得なければならないと定められているためです(民法第251条第1項)。
一方、各共有者は、自分の共有持分だけであれば単独で売却できます(民法第206条)。ただし、持分だけの売却は買主が限られ、価格やその後の共有関係にも影響するため、慎重な判断が必要です。
まずは共有者の間で話し合うことが出発点になります。話し合いがまとまらない場合や、権利関係に争いがある場合は、弁護士へご相談ください。進め方は「共有名義の不動産は売却できる?」で整理しています。
引っ越しや結婚で住所・氏名が変わっている場合、売却の前に変更登記が必要です。
住所等の変更登記は2026年(令和8年)4月1日から義務化され、変更日から2年以内の申請が求められます。正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料の対象です(出典:法務省「住所等変更登記の義務化」)。
2026年4月1日より前に住所や氏名が変わっていて、変更登記が済んでいない場合も対象です。この場合は、2028年(令和10年)3月31日までに申請する必要があるとされています(出典:法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」)。
売却する場合は、義務の期限を待つのではなく、買主へ所有権を移す前提として先に手続きをすることになります。
登記の手続きや必要書類、費用については、法務局または司法書士へご確認ください。イエリテがご相談を受けた場合も、登記そのものは司法書士へおつなぎします。
書類の上で問題がなくても、現地に行くと状況が違うことがあります。境界と隣地との関係は、写真や図面だけでは判断できない部分です。
土地の四隅などに境界標(コンクリート杭や金属標)が残っているか、確定測量図が手元にあるかを確認します。長く手を入れていない土地では、境界標が土に埋もれていたり、見当たらなかったりすることがあります。
隣地の所有者と認識が食い違う場合には、法務局の筆界特定制度を使う方法があります。これは土地の所有者として登記されている人などの申請にもとづき、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、もともとあった筆界の位置を明らかにする制度です。新たに境界を決める制度ではありません(出典:法務省「筆界特定制度」)。
申請手数料は対象の土地と隣地の合計価格によって決まり、法務省は合計価格4,000万円の場合に8,000円という例を示しています。手続きの中で測量が必要になった場合は、その費用が別に生じることがあります。
i
境界と筆界は同じではありません
「筆界」は登記された土地の範囲を区切る公的な線で、当事者の合意で動かせるものではありません。一方「所有権界」は、実際に所有権が及ぶ範囲を指します。筆界と所有権界が別の概念であることも、塀や生垣の位置と公的な境界の位置が一致しない理由の一つです。
なお、筆界特定制度は筆界を明らかにする制度であり、所有権の範囲についての争いそのものを解決する制度ではありません。
境界が分からない状態での進め方は「境界が分からない土地は売却できる?」で詳しく説明しています。測量と境界の確定は、土地家屋調査士が扱う分野です。
塀や建物の一部だけでなく、樹木の枝も越境として扱われます。
隣地の竹木の枝が境界線を越えている場合、原則としては竹木の所有者に切ってもらうことになります。2023年(令和5年)4月1日に施行された民法の改正により、竹木の所有者に催告しても相当の期間内に切除されないとき、竹木の所有者やその所在が分からないとき、急迫の事情があるときには、越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることができる仕組みが整備されました(出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」)。
売却の場面では、切るか切らないかよりも、越境の状態を買主へどう伝え、どう取り決めるかが問題になります。越境の事実を書面で確認し合う「越境の覚書」を交わす方法もあります。
イエリテの実務から
南城市内で査定のために現地を確認したところ、隣地から草木が越境していることが分かった土地がありました。所有者ご本人も、しばらく現地へ行っていなかったため気づいていない状態でした。
こうした点は、写真や図面では判断できません。売り出すと決める前に一度現地の状態を見ておくと、買主へ説明する内容と必要な段取りが具体的になります。
建て替えができるかを確認するとき、道路との関係は重要な判断要素です。南城市の土地では、ここが価格や買主の広がりに影響する部分です。
ただし、実際の建築可否は接道だけで決まるものではありません。都市計画上の制限、建物の用途・規模、土地の区域や現況、必要な許認可などによっても変わります。
建築基準法では、建築物の敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと定められています(建築基準法第43条)。
前に道があっても、それが建築基準法上の道路にあたるとは限りません。私道の場合は、通行や掘削について所有者の承諾が必要になることもあります。
接道の確認手順は「再建築不可の土地は売却できる?接道義務と確認の手順」で整理しています。
南城市には、道路と敷地に高低差がある土地もあります。高低差があると、擁壁や造成の状態が買主の検討材料になります。
イエリテの実務から
南城市内で現地を確認した際に、道路の幅や敷地との高低差が、事前に想定していた状態と違っていたことがありました。地図や図面の情報だけでは、道路の実際の使われ方までは分かりません。
査定を依頼するときは、現地を見たうえでの説明かどうかを確認していただくと、価格の根拠が分かりやすくなります。
南城市では、2010年(平成22年)8月10日から「南城都市計画区域」が指定され、特定用途制限地域や風致地区などの制度によるまちづくりが行われています(出典:南城市「南城市の都市計画制度について」)。
なお、沖縄県内で市街化区域と市街化調整区域の区域区分(線引き)が定められているのは那覇広域都市計画区域です(出典:沖縄県「市街化区域と市街化調整区域」)。所有地がどの区域にあり、どの制限を受けるかは、市の都市計画図や担当窓口で個別にご確認ください。市街化調整区域の土地については「市街化調整区域の土地は売れる?」で扱っています。
登記地目が田・畑である土地や、現況が耕作に使われている土地は、農地法上の手続きが必要になる可能性があります。農地法上の農地に当たるかどうかは、登記地目だけでなく現況によって判断されます。農地法上、農地は「耕作の目的に供される土地」と定義されています(農地法第2条第1項)。
手続きは、売買の目的によって分かれます。
許可か届出かを含め、必要な手続きは目的と区域によって異なります。売り出す前に、南城市農業委員会へご確認ください。畑を売る場合の流れは「南城市で農地・畑を売りたいときの流れ|農地法の許可と手続きの進め方」をご覧ください。
価格の話に入る前に、「いくらで売れるか」ではなく「いくら残るか」で考えると、判断がぶれにくくなります。

確認する項目は次の3つです。
ローンが残っている家の売り方は「住宅ローンが残っている家は売れる?」、費用の内訳は「不動産売却にかかる費用の内訳」、税金の考え方は「不動産を売ったときにかかる税金は?」で説明しています。
購入したときの売買契約書などは、実際の取得費を確認する重要な資料です。資料が見つからない場合でも、取得費が必ずゼロになるわけではありません。実際の取得費を確認できない場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費とする方法があります(出典:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」)。ただし、税額や使用できる資料の判断は、税務署または税理士へご確認ください。
✓
売り出す前に手元で確認しておきたいもの
書類の探し方と、見つからない場合の対処は「不動産売却の必要書類一覧」で整理しています。
準備にかかる期間は、名義と境界の状態で大きく変わります。
名義に問題がなく、境界も確定している土地であれば、資料の確認だけで査定へ進めます。一方、相続登記が済んでいない、境界標が見当たらないという状態であれば、そこから時間が必要になります。
かかる期間は、相続人の人数や隣地の方の都合、書類の残り方によって変わるため、一律の目安をお伝えすることはできません。準備が終わるのを待つ必要はありませんので、現在の状態を確認しながら、必要な手続きを洗い出していくとよいと思います。
売り出しの時期に希望がある場合は、その日から逆算して、どの手続きにいつ着手するかを決めます。逆算の順番は不動産売却にかかる期間の目安で整理しています。売却全体の進み方は「不動産売却の流れを6ステップで解説」を、査定の受け方は「不動産の売却査定とは?」をご覧ください。
準備を進めた結果、売らずに貸す、あるいは当面そのまま所有するという判断になることもあります。名義・境界・道路の確認は、売る場合にだけ必要なものではありません。売る場合と貸す場合を比べたいときは「使わない土地の活用方法」も参考になります。
査定の段階では、書類がすべてそろっている必要はありません。手元にある資料をもとに、現在の状態から始められます。
むしろ、名義や境界に不明な点があることを最初に共有していただいたほうが、必要な手続きと時間の見通しを一緒に立てられます。
必ずしもそうとは限りません。測量や解体には費用がかかり、その分が価格に反映されるかどうかは、土地の状態や買主の希望によって変わります。
例えば、建物を解体して更地にするかどうかは、費用と固定資産税の扱いを含めて比べる必要があります。判断材料は「古家付き土地は解体すべき?」で整理しています。
測量で立ち会いをお願いする場合など、必要な場面で伝えることになります。通常、売却予定そのものを隣地所有者へ事前に知らせる一般的な義務はありません。ただし、測量の立ち会い、越境の確認、私道や通路の権利関係などで、隣地の方の協力が必要になる場合があります。
伝える時期や範囲に迷う場合は、境界や通行の確認が必要かどうかを先に整理してから決めても遅くありません。
書類の確認は、離れた場所からでも進められます。登記事項証明書はオンラインでの交付請求もできます。
ただし、境界標の有無や越境、道路との高低差は、現地を見ないと分かりません。県外にお住まいの場合の進め方は「県外在住でも沖縄の不動産は売却できる?」で説明しています。
修繕するかどうかは費用対効果で判断しますが、直さない場合でも買主へ伝える必要があります。知っている不具合を伝えないまま引き渡すと、後の責任問題につながることがあります。
伝える範囲の考え方は「物件状況報告書(告知書)には何を書く?」で扱っています。

準備を進める過程で、売る以外の道が見えてくることもあります。先に状態を把握しておけば、時期も方法も自分で選べます。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。必要な準備や手続きは、物件の状況と売却の条件によって異なります。
法令や制度は変更されることがあります。ご確認の際は、最新の情報をお確かめください。
売却を決めていない段階でも構いません。名義・境界・道路の状態を一緒に確認し、必要な手続きと時間の見通しを整理するところからお手伝いしています。南城市および沖縄県南部の不動産について、現状確認だけのご相談もお受けしています。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の土地売却について、地域事情や土地の条件を踏まえてご提案します。