

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月20日
情報確認日:2026年8月20日
親名義の土地に、子どもが自分名義の家を建てて住んでいる。住み替えを考え始めたときや、親が高齢になってきたときに、「土地は親の名義のままで売れるのか」「親の代のうちに土地と家をどう整理すればよいのか」という疑問に行き当たります。
土地と建物の名義が親子で分かれていても、売却はできます。ただし、名義が1人にまとまっている不動産とは、売り方・税金・事前の確認事項が変わります。何がどう変わるのか、法令と国税庁の資料をもとに確認していきます。
なお、この記事は土地が親名義・建物が子名義という親子間のケースを前提にしています。他人名義の土地に建物がある場合や、土地を使う対価として地代を払っている賃貸借(借地)の場合は、扱いが異なります。
この記事の目次
結論から言うと、現実的な売り方は、親(土地)と子(建物)がそれぞれ売主となり、同じ買主へ土地と建物を同時に売却する形です。売買契約書のうえでは売主が2人になり、代金も土地の分は親へ、建物の分は子へと、名義ごとに受け取ります。

土地と建物を別々に売ることも、理屈のうえでは可能です。ただし、建物だけを売る場合、子が使用貸借で使っている敷地を、そのまま買主へ引き継げるわけではありません。借主は貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物を使用させることができないためです(民法第594条第2項)。建物の買主が敷地を使えるよう、親の承諾を得て利用権をあらためて設定するなどの調整が必要になります。土地だけを売る場合も、新しい土地所有者に対して子が敷地の利用を主張できるかを、個別に確認しておく必要があります。
こうした調整が必要になるぶん、単独での売却は買主が限られ、条件の調整が難しくなることがあります。土地と建物をそろえて売り出せば、買主は通常の中古住宅・土地付き建物として検討できます。名義が分かれていること自体は、売却の支障になりません。査定から引き渡しまでの大きな流れも通常の売却と同じで、不動産売却の流れ(査定から引き渡しまでの6ステップ)のとおり進みます。違いは、契約や登記の場面で親子それぞれの意思確認と書類の準備が必要になる点、そして名義や登記の整理が必要な場合はその工程が前に加わる点です。
売却前に、親から子へ土地を贈与または売買で移し、名義を1人にまとめてから売る進め方もあります。第三者との売買契約は整理しやすくなりますが、その前段階で別の課税や費用が生じます。
同時売却と名義の先行移転のどちらがよいかは、いま生じる税金・費用と、将来売却したときの税金まで合計して比較する必要があります。税理士へ試算を依頼したうえで判断することをお勧めします。
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先に結論
親(土地)と子(建物)がそれぞれ売主となり、同じ買主へ同時に売却する形が基本です。名義を先に移す方法は、贈与税・譲渡所得税・登記費用・取得費の引き継ぎまで含めた比較が必要なため、税理士への確認をはさんでから選びます。

売却や税金の前提として、いま土地をどんな権利で使っているのかを確認しておきます。
親の土地に子が家を建てて、地代も権利金も払わずに使っているのであれば、その関係は、無償で物を借りて使う契約である使用貸借にあたります(民法第593条)。親子間では契約書を交わしていないこともありますが、書面がなくても使用貸借は成立します。なお、土地を使っているのが親族以外の方で、経緯や契約の有無がはっきりしない場合は、権利の性質を確かめるところから始めます。その手順は「土地と建物の所有者が違う土地は売れる?契約書がないときの確認手順」で整理しています。
国税庁は、地代も権利金も支払うことなく土地の貸し借りをすることを土地の使用貸借と説明しています(出典:国税庁「No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき」令和7年4月1日現在法令等)。一方、土地を使う対価として地代を払っている場合は賃貸借となり、建物の所有を目的とする土地の賃借権は借地借家法上の「借地権」として扱われます(借地借家法第2条)。この場合は売却の進め方も税務も別の問題になり、地主の承諾や価格の考え方は「借地権付き建物・底地を売却する方法|地主の承諾と価格の考え方」で整理しています。
注意したいのは、金銭を払っていても、それが土地を使う対価なのか、固定資産税などの実費の負担なのかで扱いが変わる点です。契約書の有無・金額・支払いの名目などから実質を確認する必要があるため、支払いの経緯がある場合は税理士や弁護士へ個別にご確認ください。
使用貸借がいつ終わるかは、期間や使用目的をどう定めたかによって変わります(民法第597条)。また、使用貸借は借主が死亡すると終了すると定められており(民法第597条第3項)、期間も目的も定めていなかった場合には、貸主はいつでも契約を解除できます(民法第598条第2項)。
親子間では取り決めがはっきりしないまま始まっていることもあり、「いつまで使えるか」を後から書面で確認できない場合があります。だからこそ、売却を考え始めたら、親子・家族の間で方針を話し合って一致させておくことが、手続きそのものより先に必要になります。
税金の話は複雑に見えますが、名義人ごとに分けると整理しやすくなります。
「タダで土地を使わせてもらうのは贈与ではないか」と心配される方がいますが、国税庁は、使用貸借により土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱うとしています。子が親の土地を使用貸借で使って家を建てても、借地権相当額の贈与税が課税されることはありません(出典:国税庁「No.4552」)。
売却して利益(譲渡所得)が出た場合、税金は名義人ごとに計算します。土地の利益は親が、建物の利益は子が、それぞれ確定申告する形です。そのため、売買契約では売却代金のうち土地と建物の内訳を明確にしておく必要があります。内訳は親子の都合で自由に決めるのではなく、査定額や固定資産税評価額などの客観的な資料を参考に合理的に設定し、税務上の妥当性を契約前に税理士へ確認してください。譲渡所得の計算のしくみと税率は、不動産を売ったときにかかる税金と3,000万円特別控除の基本で説明しています。
自分が住んでいる家を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。この特例は原則として家屋の所有者(この記事の例では子)のための制度で、売った年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと、親子など特別の関係がある人への売却でないことなどの一般の要件を満たし、確定申告をすることが必要です(出典:国税庁「No.3302」)。特例で税額がゼロになる場合でも、適用には確定申告が必要です。
そのうえで国税庁は、次の3つの要件をすべて満たす場合には、家屋の所有者だけでなく敷地の所有者もこの控除を受けられるとしています(出典:国税庁「No.3311 家屋と敷地の所有者が異なるとき」、租税特別措置法関係通達35-4)。
つまり、親子が同じ家に同居し、生計を一にして暮らしているケースでは、親の土地の利益からも控除できる可能性があります。注意したいのは、控除額は親子別々に3,000万円ずつではなく、家屋の所有者と敷地の所有者を合わせて3,000万円までという点です。控除はまず家屋の所有者(子)の利益から使い、残りがあれば敷地の所有者(親)の利益から差し引きます。
なお、親が売却の時点で別居している場合は、同居の要件を満たさず対象にならないことがあります。ただし、以前は同居して生計を一にしており、子がその家に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合など、従前の状況をもとに判定される余地があります。適用の可否や控除の配分は、税務署または税理士へご確認ください。
住み替えの場合は、もう1つ確認が必要です。この特例を使うと、新居に入居した年やその前後の一定期間は、新居の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)と併用できません(出典:国税庁「No.3302」)。
ただし、この併用制限は3,000万円の特別控除を実際に受ける人について判定します。家屋と敷地の所有者が分かれていて、家屋の所有者(子)には譲渡益が出ず、敷地の所有者(親)だけが上記の取扱いで特別控除を受けるようなケースでは、家屋の所有者が新居の住宅ローン控除を受けられる場合があります(出典:国税庁「家屋と土地の所有者が異なる場合で家屋について譲渡益が算出されないときの居住用財産の譲渡所得の特別控除と住宅借入金等特別控除の関係」)。誰が特別控除を受けるかによって扱いが変わりますので、住み替え先で住宅ローンを組む予定がある場合は、どちらが有利かを含めて、契約前に税務署または税理士へご確認ください。
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注意点
控除は親子合わせて3,000万円までで、適用には一般の要件と確定申告が必要です。親が別居している場合も一律に対象外ではなく、従前の同居・生計の状況と売却の期限をもとにした個別の判定になります。
売却せずに親の相続が発生した場合、その土地は相続税の対象になります。このとき、使用貸借で子に貸している土地は、貸宅地としての低い評価ではなく、自用地(自分で使っている土地)としての評価額で計算されます(出典:国税庁「No.4552」)。これは、使用貸借を理由とする貸宅地としての評価減がない、という意味です。
ただし、これとは別の制度として小規模宅地等の特例があります。亡くなった親や、親と生計を一にしていた親族の居住用の宅地などにあたり、取得者や居住・保有の継続などの要件を満たす場合には、330㎡までの部分について評価額の80%を減額できる場合があります(出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」)。適用できるかどうかは、誰が相続するか、同居や生計の状況などによって変わります。相続税がかかるかどうかは財産全体の額にもよりますので、税理士へご相談ください。
イエリテの実務から
当社が南城市やその周辺で「親名義の土地に自分名義の家を建てて住んでいるが、住み替えを考えている」「親の代のうちに土地と家を整理しておきたい」といったご相談や査定・現地確認をお受けするなかでは、売却の条件の話へ進む前に、名義や登記の状態を確かめる必要のあるケースがあります。売却を思い立ったら、まず次の3点を確認してみてください。
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売却前の確認ポイント
「親の土地」と思っていたら、登記上は亡くなった祖父母の名義のままだった、という状態です。この場合、売却の前に相続登記を済ませる必要があり、相続人の確定や遺産分割協議に時間がかかることがあります。相続登記は義務化されており、放置そのものにもリスクがあります。詳しくは相続登記の義務化と手続き・期限と、祖父名義の土地を売るときの流れをご覧ください。
建物が登記されていない場合は、通常、土地家屋調査士による建物表題登記のあと、司法書士による所有権保存登記などを経て、買主への移転登記の準備をします。増築した部分が登記に反映されていない場合は、建物表題部の変更登記を土地家屋調査士へ相談してください(不動産登記法第47条・第51条)。どの登記が必要かは建物の登記状態によって変わるため、登記記録と現況を専門家に確認してもらいながら工程を決めます。
土地は親のもの、建物は子のもの。実際の売り出しや売買契約には、親子双方の意思が必要です。一方、家族で話し合うための材料づくりとして、概算の査定や初期の相談は、方針が固まる前でも行えます。
また、他の兄弟姉妹がいる場合、親の土地を売ることは将来の相続財産が変わることでもあります。後から「聞いていない」とならないよう、早い段階で家族に話しておくことをお勧めします。
土地の売主である親本人に、契約内容を理解する判断能力があることが前提になります。判断能力が不十分な状態で結んだ契約は、後から無効とされるおそれがあります。症状の程度によっては成年後見制度の利用を検討することになりますが、成年後見人が選任されれば当然に売却できるわけではありません。その不動産が親本人の居住用(現在住んでいる場合のほか、施設入所前に住んでいた場合や、将来戻る可能性がある場合を含みます)にあたるときは、売却に家庭裁判所の許可が必要で、処分の必要性などが審査されます(民法第859条の3。出典:裁判所「居住用不動産の処分についての許可」)。今回のような土地が親本人の居住用にあたるかどうかを含め、司法書士や弁護士へ早めにご相談ください。
土地の代金は土地の名義人である親が受け取るのが原則です。親の取り分を子がそのまま受け取ると、親から子への贈与として贈与税の対象になる場合があります。資金の分け方や渡し方に希望がある場合は、契約前に税理士へご相談ください。
土地の所有者は親ですので、法律上、売却を決めるのは親本人です。兄弟姉妹の同意は売却の要件ではありません。ただし、親の財産をどうするかは将来の相続に関わるため、反対意見を無視して進めると、相続の際の争いにつながりかねません。売却の理由や代金の使いみちを共有し、納得を得ながら進めることをお勧めします。
親名義の土地に子名義の家が建っている不動産は、親子がそれぞれ売主となって土地と建物を同時に売却するのが基本の進め方です。建物や土地を単独で売るには敷地利用の調整が必要になるためです。名義が分かれていること自体は売却の支障になりませんが、税金は名義人ごとに計算されます。3,000万円特別控除が親の土地の利益に及ぶかどうかは、同居・生計・同時売却などの要件と一般の適用要件をあわせた個別の判定になり(別居後の売却でも対象となる余地があります)、適用には確定申告が必要です。
売却の条件を検討する前に、土地と建物の登記の状態、そして親子・家族の方針を確認してください。名義が祖父母のままになっているなど、登記の整理が必要な場合は、売り出しまでに時間がかかります。方針が固まる前でも、概算の査定や相談から始められますので、早めに動き始めることが大切です。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、2026年8月20日時点の法令・制度にもとづいています。税額の計算や特例の適用可否、契約や登記の法的判断は個々の事情によって異なりますので、税務署・税理士・司法書士・弁護士など専門家へご確認ください。
名義や登記の状態の確認から、土地と建物をそろえた売り出しまで、南城市周辺の物件についてご相談いただけます。売却を決めていない段階でも構いません。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の不動産について、お困りごとがあればお気軽にご相談ください。