

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月27日
最終更新日:2026年08月27日
情報確認日:2026年08月27日
査定書を受け取ったあと、最初に迷いやすいのが「この金額のまま売りに出していいのか」という点です。少し高めに出したい気持ちもあれば、早く決めたい気持ちもあり、どちらを取るかで金額が変わります。
先にお伝えすると、売出価格は査定額をそのまま写す作業ではありません。査定額は、その金額での売却を保証するものではなく、不動産会社が示す「意見」です。いくらで売り出すかは、売主が不動産会社と相談しながら決めます。そして、その判断に必要な材料は、相場・売却の期限・物件の個別事情の3つに整理できます。
査定額・売出価格・成約価格の違いから始めて、売主自身で相場を確かめる方法、上乗せ幅の考え方、売り出したあとの見直しのタイミングまでを、宅地建物取引業法と国の公的データにもとづいて確認していきます。南城市で査定を行うなかで実際に確認していることも交えて説明します。
この記事の目次
売出価格を決めるときに押さえておきたい点を、先に整理します。
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先に結論
まず、混同されやすい3つの金額を整理します。
3つは一致することもあれば、ずれることもあります。査定額と売出価格を同じにする売主もいますし、値引き交渉を見込んで売出価格を上に置く売主もいます。成約価格は、そこから交渉によって決まります。
この3つの違いについては、「不動産の売却査定とは?机上・訪問査定の違いと査定額の見方」でも整理しています。本記事では、そのうち「売出価格をいくらに決めるか」に絞って扱います。
査定額をどう受け止めればよいかは、法律上の位置づけを知っておくと判断しやすくなります。
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、次のように定めています。
宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
「前項第二号の価額」とは、媒介契約書面に記載する「当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額」、いわゆる媒介価額のことです。つまり、この規定が直接定めているのは、媒介契約で定める価額について宅建業者が意見を述べる場面の義務です。媒介契約を結ぶ前に行われる無料査定そのものを対象とした規定ではありません。
とはいえ、査定サービスの名称や実施時期にかかわらず、査定額はその金額での売却を保証するものではありません。媒介を依頼する段階では、提示された価額の根拠を確認してください。根拠を示す方法までは法律で定められていないため、書面で渡されることも、口頭で説明されることもあります。売主は「この金額はどの取引事例から算出したのか」「どの点をプラス・マイナスに見ているのか」を聞くことができます。
査定額は、比較に使う取引事例、物件の個別事情の評価、想定する販売期間によって変わります。同じ物件でも会社ごとに金額が異なるのは、この前提の置き方が違うためです。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談のなかには、複数社に査定を依頼したあと、いちばん高い金額を出した会社の数字を基準にして売出価格を考えている、というケースがあります。査定額は「その金額で売れることの約束」ではないため、金額の大小だけで比べると判断を誤ることがあります。当社では、媒介契約の前の査定段階であっても、どの取引事例を使ったのか、その事例と対象の土地・建物で何が違うのかを、あわせてご説明するようにしています。これは法律上の義務とは別に、当社が自主的に行っている進め方です。
複数社の査定を見比べるときは、金額そのものではなく、根拠として示された事例が実際に近い条件かどうかを確認してみてください。
査定額の根拠を判断するには、売主側にも比較の材料があると考えやすくなります。相場は、公的なデータで確認できます。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、不動産の取引価格、地価公示等の価格情報のほか、防災情報や都市計画情報などを見ることができます。地域と種別を指定して、実際の取引価格を検索できます。
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取引価格を見るときの注意
同じ不動産情報ライブラリの中で、価格情報の区分を「成約価格情報」に切り替えると、指定流通機構(レインズ)が保有するデータをもとにした成約情報も確認できます。検索できるのは「土地と建物」(一戸建て)と中古マンション等で、土地単体は成約価格情報の対象ではありません。土地の相場を調べるときは、前の項目の不動産取引価格情報を使います。
2つは由来が違います。不動産取引価格情報は取引当事者から得られた情報にもとづくもの、成約価格情報はレインズに登録された成約データを加工したものです。どちらも個別の取引が特定されないように処理されているため、地区単位の傾向として見るものと考えてください。
国土交通省の地価公示は、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するものです。都道府県地価調査は、毎年7月1日時点における基準地の標準価格を判定するもので、例年秋ごろに公表されます。
どちらも、選ばれた標準地・基準地の更地としての価格です。個別の物件がその単価で売れることを示すものではありませんが、地域全体の価格水準が上がっているのか下がっているのかを見るには役立ちます。
相続税路線価や固定資産税評価額を基準に売出価格を考えたい、というご相談をいただくことがあります。ただし、これらはそれぞれの税額を計算するために定められた評価額で、市場で売買される価格そのものではありません。
国税庁のタックスアンサー「No.4602 土地家屋の評価」では、路線価方式について「路線価が定められている地域の土地を評価する方法です」、倍率方式について「路線価が定められていない地域の土地を評価する方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します」と説明されています。いずれも相続税・贈与税の計算のための評価方法です。
評価額から売出価格を逆算する計算式が紹介されていることもありますが、おおよその水準を知る参考にとどめ、実際の価格は取引事例で確認することをおすすめします。

査定額と相場資料が揃ったら、次の4点を重ねて金額を決めます。
価格と期限は表裏の関係にあります。同じ物件でも、半年かけてよいのか、3か月で決めたいのかで、置ける金額は変わります。買い替えの引き渡し時期、相続に関する手続きの期限、県外からの帰省に合わせた立ち会いの都合など、動かせない予定があるなら、価格より先にそれを決めてください。
期限が決まると、「この期間内に反響がなければ見直す」という判断ができるようになります。期限を決めずに高い価格から始めると、下げる理由も下げるタイミングも自分で決められなくなります。
取引事例と比べて、自分の売出価格がどのくらい上にあるのかを把握しておきます。購入を検討する人は、たいてい複数の物件を並べて見ています。同じ地域・同じくらいの条件の物件が並んだときに、自分の物件が価格順のどこに入るかが、問い合わせの入り方に関わってきます。
売出価格に上乗せをすること自体は、売主の判断としてあり得ます。ただし、上乗せは「高く売るための操作」ではなく、「値引き交渉に応じる余地をいくら残すか」という設計として考えるほうが、あとの判断が楽になります。
上乗せ幅をどれくらいにするかは、物件の条件と、その地域で似た物件がどれくらいの期間で決まっているかによって変わります。全国共通の適正な上乗せ率というものはありません。決めるときは、「この金額から○万円までなら下げてもよい」という下限を、売り出す前に自分の中で決めておくと、交渉が入ったときに迷いにくくなります。
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住宅ローンが残っている場合の下限
引き渡しには抵当権の抹消が必要になるため、住宅ローンが残っている場合の下限は、気持ちの問題ではなく、残債と売却にかかる費用をまかなえるかどうかという制約を受けます。残債を下回る価格でしか売れそうにないときは、値下げを決める前に、金融機関と不動産会社へ相談してください。その場合に何を確認し、不足分をどう用意するかは「オーバーローンの家は売れる?残債に届かないときの不足分の埋め方」で扱っています。
住宅ローンの残債、次の住まいの購入資金、相続人で分ける金額など、「これだけは必要」という金額から売出価格を決めたくなることがあります。
気持ちとしては自然ですが、必要額と市場価格は別の話です。必要額から逆算した価格が相場から離れていると、反響が入らないまま時間だけが過ぎることになります。必要額のほうが相場を上回る場合は、価格を上げるのではなく、売却以外の方法も含めて進め方を検討したほうが現実的です。売却にかかる費用は「不動産売却にかかる費用の内訳|支払うタイミングと手取りの考え方」で整理しています。
なお、早く確実に手放したい場合は、不動産会社が直接買い取る方法もあります。仲介と買取の違いは「不動産の買取と仲介の違い|メリット・注意点と選び方」をご覧ください。
南城市は、玉城・知念・佐敷・大里の旧町村ごとに土地の使われ方が異なり、同じ市内でも取引の傾向が分かれます。南城市のうち都市計画区域に指定されている範囲は南城都市計画区域で、区域区分(市街化区域・市街化調整区域の区分)を定めない、いわゆる非線引き都市計画区域とされています。市の全域が南城都市計画区域というわけではなく、離島部など都市計画区域外の区域もあります。用途地域のほか、特定用途制限地域や風致地区などの指定によって建築できる条件が変わり、指定の状況は土地ごとに異なるため、周辺の宅地の単価をそのまま当てはめられないことがあります。対象の土地がどの区分に入るかは、南城市の地図情報システムや市の都市計画担当窓口で確認できます。
なお、沖縄県で区域区分(市街化区域・市街化調整区域)が定められているのは那覇広域都市計画区域で、南風原町・与那原町・豊見城市・糸満市・八重瀬町の一部などが含まれます。同じ沖縄県南部でも、市町村によって仕組みが違う点に注意してください。市街化調整区域の土地については「市街化調整区域の土地は買っても家を建てられる?沖縄県南部で購入前に確認すること」で整理しています。
当社で査定を行うときには、価格を出す前に次のような点を現地と役所で確認しています。
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価格を出す前に確認していること
これらは、買主が住宅ローンを使って建築する場合に、費用や計画へ影響することがあるため、価格を決める前に把握しておきたい項目です。確認の結果によっては、査定額の前提そのものが変わります。
たとえば、更地に見えても造成が必要な土地では、買主はその費用を織り込んで検討します。売主側が把握していない条件があると、売り出したあとに買主から指摘され、そこから値引き交渉に入ることになります。売り出す前に確認しておくほうが、価格の説明もしやすくなります。
土地の条件については、「土地を買う前に確認すること|沖縄県南部の現地と役所のチェックリスト」で買主側の視点から整理しています。売主にとっては、買主が何を見ているかを知る材料になります。

売出価格は、売り出したあとに変更できます。最初から完璧な金額を当てる必要はありません。
宅地建物取引業法第34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間について「三月を超えることができない」と定めています。同条第4項では、有効期間は「依頼者の申出により、更新することができる」とされています。更新には依頼者からの申し出が必要で、自動的に更新される仕組みではありません。
なお、この期間の上限は専任媒介契約についての定めで、一般媒介契約には法律上の期間の定めがありません。
ここで注意したいのは、3か月はあくまで媒介契約の有効期間の上限であって、価格を3か月維持すべきという意味ではないことです。市場の反応にもとづく適正な見直し時期を法律が定めているわけではありません。価格の見直しは、あらかじめ決めた販売期限と、問い合わせ・内覧・申込みといった実際の反響を見て判断します。契約の満了は、その判断をあらためて整理する機会と考えてください。
媒介契約の種類ごとの違いは、「媒介契約の3種類の違い|専任・専属専任・一般の特徴と選び方」で整理しています。
同法第34条の2第8項は、媒介契約を締結した宅建業者は、売買の申込みがあったときは遅滞なくその旨を依頼者に報告しなければならないと定めています。この申込みの報告は、媒介契約の種類にかかわらず必要とされています。
また同条第9項では、業務の処理状況の報告について、専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上と定められています。これらの規定に反する特約は無効とされています(同条第10項)。
イエリテの実務から
売り出したあとの見直しでは、当社ではこの報告のタイミングに合わせて、問い合わせの件数、内覧の件数、内覧後の反応を整理してお伝えするようにしています。問い合わせ自体が入っていないのか、内覧まで進んでいるのに決まらないのかで、価格を動かすべきかどうかの判断が変わるためです。内覧まで進んでいる場合は、原因が価格以外にあることもあります。
売出価格の変更そのものを制限する規定は、宅地建物取引業法には見当たりません。ただし、媒介契約を結んだ後は、契約上の手順があります。国土交通省が定める標準媒介契約約款では、依頼者が媒介価額を変更しようとするときは宅建業者へ通知することとされ、売却を依頼している場合に価額を引き上げるときは、宅建業者の承諾が必要とされています。宅建業者が承諾を拒否するときは、その根拠を示すこととされています。
引き下げと引き上げで扱いが違う点に注意してください。実際に締結する媒介契約の条項を確認したうえで、価格を変えるときは不動産会社へ相談してください。変更が決まれば、不動産会社が広告やレインズの登録内容を修正して対応します。
一方で、「値下げしました」と旧価格を並べて表示する広告(二重価格表示)については、不動産の表示に関する公正競争規約で、一定の要件を満たす場合を除いて禁止されています。値下げを広告でどう見せるかは、不動産会社が規約に沿って判断する部分です。売主側から旧価格を強調した表示を希望しても、そのまま掲載できるとは限りません。
売出価格を決めるときに、ご相談のなかでお受けする質問を整理しました。
売主は査定額に拘束されないため、希望価格を相談して媒介価額を決めることができます。ただし、査定額との差が大きいほど、購入を検討する人の比較対象から外れやすくなります。上乗せする場合は、いつまで様子を見るかをあわせて決めておくことをおすすめします。
売主の一存で上げられるわけではありません。国土交通省の標準媒介契約約款では、売却を依頼している場合に媒介価額を引き上げるときは、宅建業者の承諾が必要とされています(承諾を拒否するときは、宅建業者が根拠を示すこととされています)。引き下げるときとは扱いが違うため、まず契約内容を確認し、不動産会社へ相談してください。すでに掲載されている価格を見て検討していた人にとっては条件が変わる点も、判断の材料になります。
検索のされ方という点では違いが出ることがあります。購入希望者は物件検索サイトで価格帯を指定して探すことがあるため、価格帯の区切りをまたぐかどうかで、表示される検索結果が変わることがあります。これは法令で決まっているものではなく、検索の仕組み上の話です。気になる場合は、依頼する不動産会社に確認してみてください。
根拠の説明を求めることができます。宅地建物取引業法では、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定められています。説明を求めても根拠が示されない場合は、媒介契約を結ぶ前に他社の意見も聞いてみることをおすすめします。
遠方からでも価格の相談は可能です。現地確認は不動産会社が行い、査定の根拠や周辺の取引事例は資料でお送りできます。売買契約や引き渡しの場面では、来沖するか、代理・郵送での手続きを検討することになります。
売出価格の目安としてそのまま使うことはおすすめしません。課税明細に記載されている評価額は、固定資産税を計算するための評価額です。市場で売買される価格とは目的が異なります。相場は取引事例で確認してください。
売出価格の決め方を整理します。
次に行うこととしては、査定を依頼する前に、対象の土地・建物について把握している条件(接道、区域区分、上下水道、高低差、境界)を整理しておくことをおすすめします。この情報があると、査定額の前提が具体的になり、売出価格の判断もしやすくなります。
売却全体の進み方は「不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまで」で確認できます。
法令・公的資料
その他の参考資料
情報確認日:2026年08月27日
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の売買判断・税務判断を保証するものではありません。法令・制度は改正される場合があります。個別の事情については、必要に応じて税理士・司法書士・弁護士などの専門家、または所管の行政機関へご確認ください。
相場の幅のどこを選ぶか、売却の期限とどう折り合いをつけるかは、物件ごとの判断になります。査定額の根拠と周辺の取引事例をご説明したうえで、売り出す価格と期間の組み立て、売る・そのまま持つといった選択肢の整理からお手伝いします。売却を決めていない段階や、金額を知りたいだけの段階でもご相談いただけます。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
査定だけのご相談でも構いません。現在の状況やご希望を丁寧にお伺いします。