


親から引き継いだ家が、他人の土地の上に建っている。あるいは逆に、先代から貸したままの土地があり、そこには借地人の建物が建っている。どちらも、権利関係を整理しないまま年月が過ぎているというご相談があります。
先にお伝えすると、借地権も底地も、売却すること自体はできます。ただし、自分の名義の土地建物を売る場合と違い、相手方(地主または借地人)との関係が価格や進め方を大きく左右します。
借地上の建物を売りたい借地人の方と、貸している土地を売りたい地主の方とでは、必要な手続きが変わります。この記事では、どちらの立場からも確認できるように、承諾の要否、手放す方法の選択肢、価格の考え方、税金の基本を、借地借家法と国税庁の資料をもとに整理します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月03日
最終更新日:2026年07月29日
情報確認日:2026年07月29日
この記事の目次
借地権とは、建物を所有する目的で土地を借りる権利のことです。底地とは、その借地権が設定されている土地を、地主の側から見た呼び方をいいます。同じ一つの土地に、二人の権利者がいる状態です。

借地権も底地も、法律上は売買の対象になります。ただし、相手方との関係が価格や進め方を左右します。
借地権が土地の賃借権にあたる場合、その譲渡には原則として地主の承諾が必要です(民法第612条。出典:民法(e-Gov法令検索))。一方、底地は借地人の承諾がなくても売却できます。ただし、借地契約の内容や借地人との関係が、価格や買主の判断に大きく影響します。

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先に結論
一つの土地の価値を、借りている側と貸している側で分け合っている状態、と考えると分かりやすくなります。
借地権を持つ側は、建物を建てて土地を使い続けられる代わりに、地代を払います。底地を持つ側は、土地の所有者ではあるものの、契約が続く間は自分で使えず、地代を受け取る立場です。
借地借家法では、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています(第2条第1号。出典:借地借家法(e-Gov法令検索))。目的が駐車場や資材置き場だけの土地の賃貸借は、ここでいう借地権にはあたりません。
現在の借地借家法は、1992年(平成4年)8月1日に施行されました。
施行より前に設定された借地権については、借地借家法の附則に経過措置が置かれており、契約の更新や存続期間などについて、旧借地法の規定が関係する場合があります(附則第3条・第4条ほか)。
ただし、契約日だけで新旧を単純に振り分けられるものではありません。更新の履歴や、現在の契約でどのような条件が定められているかも含めて確認する必要があります。判断に迷う場合は、契約書を手元に用意したうえで弁護士へご相談ください。
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用語解説
借地権には、地上権にあたるものと、土地の賃借権にあたるものがあります。どちらであるかによって譲渡の扱いが異なるため、まず登記事項証明書と借地契約書で、権利の種類を確認してください。
土地の賃借権にあたる場合は、地主の承諾なしに譲り渡すことができません(民法第612条)。無断で譲渡すると、契約を解除される可能性があります。
実務では、建物を第三者へ売る際に、地主へ譲渡承諾を求め、承諾料を支払って承諾を得る形が取られます。承諾料の額は法律で決まっているものではなく、契約内容や当事者間の話し合いによって変わります。
地主が承諾しない場合でも、行き止まりになるとは限りません。
借地借家法第19条第1項は、借地権者が土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず地主が承諾しないときは、裁判所が借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができると定めています。
この手続きは借地非訟事件と呼ばれ、借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所へ申し立てます(同法第41条。制度の概要は裁判所「借地非訟とは」で説明されています)。南城市の土地については、具体的な申立先や窓口の取り扱いを那覇地方裁判所の窓口案内で事前にご確認ください。
なお、この申立てに対しては、地主の側が介入権を行使する制度もあります。裁判所が定める相当の対価で、建物と借地権を地主へ譲渡するよう求めるものです(同法第19条第3項)。要件や結果は事案によって異なるため、申立ての可否や見通しの判断は弁護士へご相談ください。
借地上の建物が、亡くなった親や祖父の名義のままになっているケースがあります。
この状態では、そのまま買主への所有権移転登記を行うことはできません。査定や地主への事前相談と並行して、相続人の確認と相続登記を進める必要があります。
相続で取得した不動産の登記は義務化されており、借地上の建物を相続した場合も、その建物の所有権について相続登記が必要です。
借地権も相続の対象になります。相続による承継と、第三者へ借地権を譲渡する場合の地主の承諾とは、別の問題です。相続後は、地代の支払者や連絡先を明確にするため、地主へ相続が発生したことを伝え、契約名義の取扱いを確認しておくと安心です。借地権が登記されている場合の具体的な登記手続きについては、司法書士へご確認ください。
手続きの内容は「相続登記の義務化とは?南城市で相続した不動産の手続きと期限」で整理しています。
底地を手放す方法は、単に第三者へ売却するだけではありません。借地人への売却、借地権との同時売却、権利の交換など、複数の整理方法があります。

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売却前の確認と、相談時にそろえたい資料
借地権と底地の価値の分け方を考えるとき、目安として使われるのが借地権割合です。
国税庁は、借地権の価額を「借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて求める」としています。借地権割合は借地事情が似ている地域ごとに定められ、路線価図や評価倍率表に表示されています(出典:国税庁 No.4611 借地権の評価)。貸宅地(底地)の価額は「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」で計算します(出典:国税庁 No.4613 貸宅地の評価)。
路線価図では、路線価の数字の後ろにA〜Gの記号が付いており、これが借地権割合を表します。南城市を含む沖縄県内の路線価図は、国税庁 財産評価基準書で誰でも確認できます。
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価格を考えるときの注意
借地権割合は、相続税や贈与税を計算するための評価上の割合です。実際の売買価格が、この割合どおりになるとは限りません。
目安として使い、実際の条件は個別に確認してください。
売買の場面では、次のような条件が価格に影響します。
査定の見方については「不動産の売却査定とは?机上・訪問査定の違いと査定額の見方」も参考になります。
借地権や底地を売って利益が出た場合、譲渡所得として課税の対象になります。計算の枠組みは、土地や建物を売ったときと同じです。
税額の計算に関わる点で、借地権に特有のものが2つあります。
一つは、借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料などは、譲渡費用に含められることです。国税庁は譲渡費用の例としてこれを挙げています(出典:国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの)。
もう一つは取得費です。相続で取得した借地権や底地は、原則として亡くなった方の取得費と取得時期を引き継ぎます(出典:国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期)。借地権の取得時に支払った権利金などがある場合は、その取扱いを含めて取得費を確認してください(参考:国税庁 No.3252 取得費となるもの)。契約書や領収書が残っていないかを、先に探しておくことをおすすめします。
どうしても取得費が分からない場合は、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。実際の取得費がそれを下回るときも同様です(出典:国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)。ただし、これは資料が見つからないときの方法であり、先に5%を使うと決めてしまうと、本来認められる取得費を差し引けなくなる可能性があります。
なお、建物と借地権をまとめて売る場合は、売却代金や取得費を建物分と借地権分に分ける必要が生じることがあります。契約内容や取得経緯によって扱いが異なるため、税理士または税務署へ確認してください。
譲渡所得の全体像は「不動産を売ったときにかかる税金は?譲渡所得税と3,000万円特別控除の基本」で説明しています。実際の税額や特例の適用可否は個別事情によって変わるため、申告にあたっては税理士または所轄の税務署へご確認ください。
借地権や底地の売却では、不動産会社だけで完結しない場面があります。役割を分けて考えると、相談先を選びやすくなります。
相続で引き継いだ借地権や底地は、相続人が複数いると、売却の意思決定そのものに時間がかかります。共有状態での進め方は「共有名義の不動産は売却できる?全員の同意が必要な場面と進め方」で整理しています。
売却全体の段取りを確認したい場合は「不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまで」もあわせてご覧ください。
その一言で確定するわけではありません。借地権が土地の賃借権であり、借地上の建物を第三者へ譲渡する場合には、一定の要件のもとで、裁判所へ承諾に代わる許可を申し立てられる制度があります(借地借家法第19条第1項。出典:借地借家法(e-Gov法令検索))。ただし、許可されるかどうかは事情によって判断が分かれるため、弁護士へご相談ください。
建物だけを切り離して売ることは、実際には難しいと考えられます。建物を買った人は土地を使う権利が必要になるため、借地権の譲渡とセットで扱うのが通常です。借地権が土地の賃借権であれば、地主の承諾についても、建物の譲渡と一体で確認することになります。
決まった計算式はありません。路線価図の借地権割合は目安になりますが、これは相続税評価のための割合です。地代の水準、契約の残り期間、借地人にとっての利用価値などを踏まえ、話し合いで決めていくことになります。
契約内容によって扱いが変わります。定期借地権は更新がなく、期間満了で土地を返す前提の権利です(借地借家法第22条)。残存期間の長さが価値に直結するほか、譲渡について契約書で条件が定められていることがあるため、まず契約書を確認してください。
まず滞納の解消を検討することをおすすめします。地代の不払いは契約解除の理由になり得るため、承諾の交渉にも影響します。金額や経緯によって対応が変わるので、状況の整理から始めてください。

借地権も底地も、手放す道は複数あります。借地人へ売る、地主と一緒に売る、権利を交換する、そのまま第三者へ売る。どれが合うかは、契約の内容と相手方との関係によって変わります。
最初に手を付けるのは、借地契約書を探すことです。契約日、期間、地代、承諾に関する特約が分かれば、取れる選択肢の範囲がはっきりします。契約書が見つからない場合も、登記事項証明書や地代の支払い記録から確認できることがあります。
そのうえで、相手方に売却の意向を伝えるかどうかを判断します。承諾や価格の交渉に不安がある場合は、一人で抱えずに相談先を確保してから進めてください。
この記事は、2026年7月29日時点の法令・公的資料をもとに、一般的な情報を整理したものです。法令・税制は改正されることがあり、個別の事情によって取り扱いが異なります。法的な判断は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士など、それぞれの専門家または所管の窓口へご確認ください。
借地権・底地の売却について、南城市・沖縄県南部でご相談いただけます
借地権や底地の売却を検討するときは、まず借地契約書や登記事項証明書を確認し、現在の権利関係を整理することが大切です。南城市・沖縄県南部の不動産について、売却方法や査定の進め方をご相談いただけます。法的な判断や税務については、弁護士・司法書士・税理士などの専門家への相談もあわせてご検討ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の土地売却について、地域事情や土地の条件を踏まえてご提案します。