

契約更新の時期が近づくと、貸主から「更新料はいくらもらえるのか」「このタイミングで家賃を上げたい」というご相談をいただくことがあります。ところが借地借家法を確認していくと、更新は貸主が主導権を握る場面ではなく、むしろ何もしなければ契約が続く仕組みになっています。
更新でできること・できないことを法律の側から整理すると、更新の連絡をいつ出すか、契約書のどこを見ておくかが変わってきます。
この記事で主に扱うのは、普通借家契約の更新です。定期建物賃貸借(定期借家契約)は更新の仕組みが異なり、適法に成立している場合は原則として期間満了により更新なく終了します。契約類型そのものの違いは普通借家契約と定期借家契約の違いで整理しています。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月29日
情報確認日:2026年8月29日
この記事の目次

期間の定めがある普通借家契約では、期間満了の1年前から6か月前までの間に「更新をしない」または「条件を変更しなければ更新をしない」という通知をしなかったときは、従前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。これを法定更新といいます。
ここで見落としやすいのが、同じ条文のただし書です。法定更新された契約は、期間の定めがないものになります。2年契約がもう2年延びるのではなく、期限のない契約に変わるという点が違います。
通知を期間内に出した場合でも、期間満了後に借主が住み続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかったときは、やはり法定更新となります(同条2項)。通知を出して安心し、その後の対応をしないまま入居が続くと、契約は続いている扱いになります。
そして貸主からの更新拒絶の通知は、後述する「正当事由」がなければそもそもすることができません(同法28条)。通知の期間を守ったかどうかは、入口の要件にすぎません。
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先に確認しておくこと
当社で更新の手続きをお手伝いするなかで、貸主から「更新料は当然もらえるものだと思っていた」とうかがうことがあります。契約書を開いて更新料の条項を探したところ、定めが見当たらなかったというケースもありました。ここは誤解が生じやすいところです。
法律には、更新料を支払わなければならないという定めがありません。更新料は、契約で定めることによって借主が負担する金銭です。契約書に定めがなければ、請求する根拠がありません。
最高裁は平成23年7月15日の判決で、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項について、更新料の額が賃料の額や更新される期間などに照らして高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条によって無効にはならないと判断しました。あわせて、借地借家法30条にいう借主に不利な特約にも当たらないとしています。
判決から押さえておきたいのは、次の点です。
判決が「特段の事情がない限り」という留保を置いている以上、金額を自由に設定してよいという意味ではありません。
先ほどの法定更新(通知をしないまま期間が過ぎた場合など)でも更新料を請求できるかは、契約書の条項が法定更新の場合を含む書き方になっているかどうかで争いになり得る論点です。一次資料だけで一律の結論を示せる部分ではありません。契約書の文言を確認したうえで、判断が分かれそうであれば弁護士へ確認することをお勧めします。
もう一つ、更新の相談でうかがうのが「更新のタイミングなら家賃を上げられる」という受け止め方です。値上げの金額を決めてから、どう伝えるかという段階でご相談をいただくこともあります。実際の仕組みは、少し違います。
家賃が、租税その他の負担の増減、土地建物の価格の変動その他の経済事情の変動、または近傍同種の建物の借賃と比べて不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって借賃の増減を請求することができます(借地借家法32条1項)。
請求できるのであって、通知した金額でそのまま確定するわけではありません。借主が応じれば合意によって変更されますが、応じなければ次の手続きに進みます。
増減額の請求に関する事件について訴えを起こそうとする者は、原則として、まず調停の申立てをしなければなりません(民事調停法24条の2第1項)。調停を経ずに訴えが提起された場合、受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています。ただし、調停に付すことを適当でないと認めるときはこの限りでない、という例外も同条2項に置かれています。
協議が調わない間、増額を求められた借主は、増額を正当とする裁判が確定するまでは相当と認める額を支払えば足ります。裁判が確定して既払額に不足があったときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付けて支払うことになります(借地借家法32条2項)。増額の主張が通った場合でも、その間の家賃がゼロになるわけではなく、後から精算される形です。
32条1項にはただし書があり、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合は、その定めに従うとされています。契約書にこの種の条項が入っていないかは、増額を検討する前に確認しておきたい点です。
| 誤解しやすい理解 | 法律上の仕組み |
|---|---|
| 更新料は当然もらえる | 契約書に定めがあれば請求できる(最高裁は明確な条項を原則有効と判断) |
| 更新時なら家賃を自由に上げられる | 増額を「請求できる」だけ。合意できなければ、原則としてまず調停 |
| 期間が満了すれば契約は終わる | 通知しなければ法定更新。しかも期間の定めのない契約になる |
| 6か月前までに通知すれば断れる | 通知は入口の要件。正当事由がなければ通知自体ができない |
貸主による26条1項の通知や解約の申入れは、次の事情を考慮して正当の事由があると認められる場合でなければ、することができません(借地借家法28条)。
最後の項目が、いわゆる立退料です。条文は「その申出を考慮して」と定めており、立退料を払えば必ず正当事由が認められるという構造ではありません。あくまで判断材料の一つです。
正当事由があるかどうかは、これらの事情を総合して個別に判断されます。自分が住むために必要になった、建物の老朽化が進んでいるといった事情があっても、それだけで結論が決まるものではありません。更新を断る方向で検討する場合は、早い段階で弁護士へ相談し、必要な資料と見通しを確認しておくほうが進めやすくなります。
なお、法定更新後の契約は期間の定めがないものになりますから、終了させるには解約の申入れによることになります。この場合、賃貸借は解約の申入れの日から6か月を経過することによって終了します(同法27条1項)。この解約の申入れにも、28条の正当事由が必要です。
ここでも、6か月が過ぎればそれで手続きが終わるわけではありません。27条2項は26条2項・3項を準用しています。6か月の経過後も借主が建物の使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合の扱いは、期間満了のときと同じ考え方になります。解約を申し入れた後も、その後の使用状況と異議の対応まで確認しておく必要があります。
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更新を断りたい場合の進め方
先に立退料の金額を決めるのではなく、建物を自分で使う必要が生じた事情、建物の傷み具合、これまでの契約の経緯といった材料をそろえてから、弁護士へ見通しを確認します。正当事由は、これらを総合して判断されるためです。
更新は、契約内容を点検できる数少ない機会です。家賃と更新料以外にも、確認しておきたい項目があります。
期間を1年未満とする建物賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。短くしたつもりが、かえって期限のない契約になってしまう形です。
また、賃貸借の存続期間の上限を定める民法604条は、建物の賃貸借には適用されません(借地借家法29条2項)。建物を貸す場合、契約期間に法律上の上限はありません。
個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。2020年4月1日から適用されているルールです。家賃保証会社など法人が保証する場合は、この極度額の規制の対象外です。
ここで区別しておきたいのが、賃貸借契約を更新したことと、保証契約を新たに締結したことは別だという点です。改正法の附則は、施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例によると定めています(民法の一部を改正する法律 附則21条1項)。賃貸借と保証は別個の契約で、経過措置もそれぞれ別に置かれています。
したがって、更新のときに保証契約自体を新たに結び直すのであれば、極度額の定めが必要になります。一方、賃貸借だけを更新し、保証について何も取り交わしていない場合の扱いは、これとは別に考えることになります。
更新すれば保証人から署名をもらい直さないと保証が消えてしまう、というものでも、何もしなくても保証がそのまま続くと言い切れるものでもありません。保証がどこまで及ぶかは、保証契約の文言と、更新のときに保証について何を合意したかによって変わります。実務としては、契約の時期、保証契約書の書き方、更新時に保証人へ何を確認したかを整理したうえで、判断が必要な場面では弁護士や司法書士へ確認することをお勧めします。
更新がない契約にしたい場合、定期建物賃貸借(定期借家契約)という方法があります。書面(またはその内容を記録した電磁的記録)で契約する場合に限り、契約の更新がないこととする旨を定められる契約です(借地借家法38条1項・2項)。あらかじめ書面を交付して説明する義務があり、説明をしなかったときは更新がない旨の定めが無効になります(同条3項・5項)。
ただし、いま結んでいる普通借家契約を定期借家契約へ切り替えるには借主の合意が必要で、更新の場面で貸主の側だけで決められるものではありません。
そして、借主の合意があれば常に切り替えられる、というものでもありません。定期借家の制度が始まった2000年3月1日より前に結ばれた居住用建物の賃貸借については、経過措置が置かれています。当事者が合意でその賃貸借を終了させ、引き続き同じ建物について新たに賃貸借をする場合には、当分の間、借地借家法38条の規定を適用しないとされています(良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法附則3条)。つまり、合意して結び直しても定期借家契約にはできません。
この経過措置の対象は、居住用の建物です。国土交通省の定期建物賃貸借Q&Aは、居住用の建物については当分の間、合意しても定期建物賃貸借契約を結ぶことはできないとしたうえで、居住用以外の建物であれば、従来の借家契約を合意のうえ解除して新たに定期建物賃貸借契約を結ぶことはできる、と説明しています。2000年3月1日以後に結ばれた居住用の契約は、この経過措置の対象ではありません。
長く続いている契約ほど、いつ結ばれたものかが記録から追いにくくなります。切替えを検討する場合は、まず契約書と契約の開始時期を確認し、判断が必要であれば弁護士へ確認することをお勧めします。
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借主に不利な特約は無効になります
借地借家法第3章第1節(26条から29条まで等)の規定に反する特約で、借主に不利なものは無効とされています(同法30条)。「正当事由がなくても更新を拒絶できる」といった条項を契約書に入れても、効力は認められません。

契約期間の満了が近づいたら、次の順で確認していくと整理しやすくなります。
家賃の見直しを検討する段階では、近隣の募集条件と自分の物件の条件を並べて比べる作業が必要になります。判断材料の集め方は戸建ての家賃査定で見るポイント、マンション・アパートの家賃査定で扱っています。
なお、更新のルール自体は借地借家法と民法によるもので、全国共通です。沖縄県や南城市に固有の条例で更新の手続きが変わることは確認されていません。地域によって違いが出るのは、更新料を設定する慣行があるかどうかといった実務の側です。
従前と同じ条件で更新したものとみなされます。更新をしない旨の通知をしていなければ、法定更新となります(借地借家法26条1項)。ただし期間は定めがないものになります。家賃などの条件はそのまま続きますので、契約が切れて借主が不法に住んでいる状態になるわけではありません。
受け取る根拠がなくなることはありません。法定更新でも契約は続いています。更新契約書を取り交わしていないことと、契約が存在しないことは別の話です。
法律で上限が定められているわけではありません。最高裁の判断は、契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、額が賃料や更新期間に照らして高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り無効とはいえない、というものです。具体的な有効性は、賃料額、更新期間、契約内容等との関係で個別に判断されます。
応じる義務が直ちに生じるわけではありません。減額の請求も、増額と同じく借地借家法32条に定められています。話し合いがつかない場合は調停の対象になります。減額の請求を受けた側は、減額を正当とする裁判が確定するまでは相当と認める額の支払を請求できます(同条3項)。
同じではありません。この記事で扱っているのは普通借家契約の更新です。定期建物賃貸借は、書面で契約し、あらかじめ書面を交付して説明するなどの要件を満たして適法に成立している場合、契約の更新がないものとして期間満了により終了します(借地借家法38条1項・3項・5項)。ただし期間が1年以上の場合は、期間満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をしなければ、終了を借主に対抗できません(同条6項)。
条項があれば法定更新が起きない、と一般化できるものではありません。自動更新条項がどのように働くかは、条項の書き方を含む契約内容の解釈の問題になります。契約書の文言を確認したうえで判断する必要があります。
更新の場面で貸主ができることは、法律によって枠が決められています。
最初に手を付けるのは、契約書を開いて満了日と更新に関する条項を確認することです。ここが分かると、いつまでに何を決めればよいかが見えてきます。
この記事は、2026年8月29日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報の整理です。個別の契約における更新料の請求の可否、家賃増額の見通し、更新拒絶の正当事由の有無、定期借家契約への切替えの可否、更新後の保証の範囲は、契約書の内容と契約の時期、個々の事情によって判断が分かれます。具体的な判断が必要な場合は、弁護士など専門家へご相談ください。法令・制度は改正される場合がありますので、手続きの前に最新の情報をご確認ください。
更新の場面で残るのは、契約書の条項がどこまで定めているか、家賃が近隣と比べて不相当といえるか、更新を断る事情が正当事由にあたるかといった、物件ごとの判断です。当社では、契約書と現在の入居条件を一緒に確認し、更新までに決めておくことと、弁護士など専門家へ確認したほうがよいことを整理するところからお手伝いします。アパートを貸していて、管理を自分で行うことに手が回らなくなっている場合は、管理の見直しも選択肢になります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。