

「使っていない土地があるけれど、売るのはまだ考えられない。貸すという方法はあるのだろうか」。南城市で、相続や転居などをきっかけに土地の使い道に迷う方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
土地を人に貸して、その土地の上に建物を建ててもらう契約を「借地契約」といいます。借地契約には、契約が終わったあとも更新が原則となる「普通借地権」と、あらかじめ決めた期間で確実に終わらせる「定期借地権等」があり、この2つは仕組みがまったく異なります。
この記事では、貸す前に確認しておきたい土地の条件、普通借地権と定期借地権等の違い、地代の決め方、契約時に確認しておきたい注意点までを整理します。地目・接道・用途制限などの確認事項や、駐車場・売却なども含めた活用方法全体は、使わない土地の活用方法であわせて比較できます。この記事は、その中の「借地として貸す」という一つの方法を詳しく扱います。
借地契約は、土地の所有者(貸主)が、建物を建てる目的で他人(借地人)に土地を貸し、借地人がその対価として地代を支払う契約です。借地人が土地の上に自分名義の建物を建てて住んだり、事業に使ったりすることを前提にしています。
駐車場として貸す契約(土地の賃貸借)とは性質が異なる点に注意が必要です。建物の所有を目的とする土地の賃貸借には、借地借家法という法律が適用され、駐車場のような建物を伴わない賃貸借には適用されません。同じ「土地を貸す」でも、法律上の扱いがまったく違います。
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注意点|建てられる土地かどうかを先に確認します
借地権の種類や地代を決める前に、まず、その土地に予定する住宅・店舗等が法令上建築・利用できるかを確認します。南城市では、用途地域・特定用途制限地域、接道の状況、風致地区、造成・開発の要否などによって条件が変わります。用途地域の指定があるかどうかは、土地ごとに調べます。調べ方と、指定のない区域で何がかかるかは用途地域とは?南城市で土地・建物を売るときに確認したいことで整理しています。農地法上の「農地」は、登記上の地目ではなく、耕作の目的に供されているかという現況で判断されます。登記地目が田・畑でなくても現況が農地であれば対象になり得るため、住宅・店舗等の敷地として貸す場合は、現況・農用地区域(青地)への該当・農地法第5条の許可や届出の要否を確認しておく必要があります。契約条件を確定する前に、南城市農業委員会や都市計画の窓口へ確認しておくことが大切です。
借地は、売却と違って貸主が「何を建ててもらうか」を条件として決められる契約です。そのかわり、借地人の計画が法令上成り立たなければ契約そのものが動きません。南城市では、平成22年(2010年)8月10日から「南城都市計画区域」が指定されており(出典:南城市「南城市の都市計画制度について」)、次の3点が、貸せるかどうかと、いつから貸せるかを左右します。
用途の制限:南城市は、用途地域の指定に加えて、特定用途制限地域の指定を都市計画課が所管しています(出典:南城市「都市計画課」の分掌事務)。特定用途制限地域は、用途地域が定められていない区域について、建てられない用途を定める都市計画法上の制度です。事業用定期借地権で店舗・倉庫・工場などを建ててもらう計画では、借地人の用途が制限にかかると、予定した建物を建てられず、その用途を前提とした借地計画を進められないことがあります。借地人の用途が固まった段階で、契約条件を確定する前に確認してください。
風致地区:南城市では、風致地区の指定と、風致地区内の建築等の審査・許可も都市計画課が所管しています(出典:同)。風致地区に入っている土地では、建築等に市の許可が必要です。許可が必要な計画では、許可前に着工できないため、借地人が建物を建て始める時期が後ろへずれることがあります。地代の発生日を着工時期などに合わせる場合は、許可に要する期間も見込んで契約開始日・地代発生日を決めておくことが大切です。契約開始日を決める前に、指定の有無を確認してください。
造成の手続き:南城市の案内では、土地の区画形質の変更について、市の許可手続が必要になる規模が示されています。対象は、1,000平方メートル(風致地区では500平方メートル)以上3,000平方メートル未満の土地です。1,000平方メートル未満でも、隣接地との高低差が1メートル以上生じる場合は対象になります。3,000平方メートル以上の一団の土地における開発行為は、沖縄県の許可になります(出典:南城市「開発事業許可申請について」)。風致地区では面積の基準が半分になるため、同じ広さの土地でも手続きの要否が変わります。造成を貸主と借地人のどちらが行い、その費用と期間を地代へどう反映するかは、契約前に決めておく事項です。
現況が農地であれば、さらに農地法の手続きが加わります。土地を貸して借地人に転用してもらう場合は、自己転用の4条ではなく、5条の許可(貸主と借地人が共同で申請します)にあたります。南城市では、農地の転用(農地法4条・5条)について、毎月10日までの申請分をおおむね25日に開かれる農業委員会総会で審議する流れとされています(出典:南城市「農地の転用(農地法4・5条)」)。許可を受けるまでは権利の移動の効力が生じないため、「いつから貸せるか」は、この審議の日程から逆算することになります。借地人が建物の完成時期を急いでいる場合は、この点を先に伝えておくと行き違いが起きにくくなります。
なお、ここで挙げた制度の対象になるかどうかは土地ごとに異なり、指定の内容も変更されることがあります。地番の分かる資料を用意して、南城市都市計画課(電話 098-917-5350)と南城市農業委員会へ、実際の土地についてご確認ください。
借地契約には、大きく分けて「普通借地権」と、法定要件のもとで更新・再築による期間延長・建物買取請求を排除して期間満了で終える「一般定期借地権・事業用定期借地権」、建物の譲渡によって借地権を消滅させる「建物譲渡特約付借地権」があります。一般・事業用定期借地権は期間満了で終える方式、建物譲渡特約付借地権は建物譲渡で借地権を消滅させる別方式であり、仕組みが異なります。この違いを理解しないまま契約すると、想定していなかった形で土地が長期間戻ってこない、あるいは逆に短期間で終了してしまうといった行き違いが起こりえます。
本記事は、住宅・店舗などを継続的に所有する目的で、これから新たに借地権を設定する場合を前提にしています。臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合は、借地借家法第25条により、普通借地権・定期借地権等とは異なる扱いになります。短い契約期間を定めるだけで一時使用になるわけではないため、目的や利用実態を踏まえて専門家に確認してください。また、既存の借地契約は契約時期や条項によって扱いが異なることがあるため、この記事の期間・要件をそのまま当てはめず、契約書の内容を確認してください。
| 項目 | 普通借地権 | 一般定期借地権 | 事業用定期借地権 |
|---|---|---|---|
| 存続期間 | 当初30年以上(更新後は最初20年以上、以後10年以上) | 50年以上 | 10年以上50年未満(専ら事業用建物が目的。居住用は対象外) |
| 契約終了後 | 原則として更新される(法定更新) | 更新されず確実に終了する | 更新されず確実に終了する |
| 更新・再築延長・建物買取請求の扱い | 貸主に「正当事由」がなければ更新拒絶不可。建物買取請求は借地人が行使できる | 特約により3点とも排除される | 30年以上50年未満:公正証書による特約で3点を排除する/10年以上30年未満:法律上これらの規定自体が適用されない |
| 契約方式 | 制限なし(口頭でも成立しうる) | 書面(電磁的記録も可) | いずれの期間帯も公正証書 |
このほかに、設定後30年以上を経過した日に、建物を地主へ相当の対価で譲渡する特約を付ける「建物譲渡特約付借地権」もあります。この方法では、地主が建物を買い取ることで借地権を消滅させます。一般・事業用定期借地権が期間満了で終了させる方式であるのに対し、建物譲渡特約付借地権は建物譲渡によって借地権を消滅させる別の方式です。書面や公正証書は法定要件ではありませんが、長期・高額の契約になるため口頭では進めず、建物譲渡後の使用関係まで書面化しておく必要があります。
借地権消滅後、借地人または建物の賃借人が使用継続を請求すると、原則として請求時点で地主との間に期間の定めのない建物賃貸借が成立したものとみなされます(借地借家法第24条第2項)。ただし、請求したのが借地人本人で、その時点で借地権の残存期間があるときは、期間の定めのない賃貸借ではなく、その残存期間を存続期間とする賃貸借になります。また、地主と借地人または建物賃借人との間であらかじめ定期建物賃貸借(同法第38条)を締結している場合は、その定めが優先します(同法第24条第3項)。建物を取得すればすぐに更地同然で自由に使えるとは限らないため、建物取得後の利用を続けさせるのか、明け渡してもらうのかを、契約時にあらかじめ設計しておく必要があります。一般・事業用定期借地権とは終了の仕組みが異なるため、専門家への確認をおすすめします。
普通借地権の存続期間は当初30年以上で、期間が満了しても、建物が存在する限り借地人が更新を請求すれば、貸主が遅滞なく異議を述べない限り、従前と同じ条件で契約が更新されたものとみなされます(借地借家法第3条・第5条)。契約を更新する場合、その期間は最初の更新で20年以上、それ以降の更新では10年以上となり、合意でより長い期間を定めることもできます(同法第4条)。
普通借地権は法律上、口頭でも成立し得ます。ただし、長期にわたる権利関係になるため、口頭で進めず、借地権の種類・期間・地代改定・再築・譲渡・転貸・明渡し・費用負担を記載した書面で合意しておくことを強くおすすめします。
貸主が更新を拒みたい場合は、「正当事由」がなければ認められません(借地借家法第6条)。正当事由の判断では、双方が土地を必要とする事情、これまでの契約の経過、土地の利用状況に加え、貸主が明渡しの条件として金銭その他の財産上の給付(立退料など)を申し出た場合はその内容も考慮されます。ただし、金銭の申出さえあれば必ず更新拒絶が認められるわけではなく、あくまで他の事情とあわせた総合判断です。正当事由は個別の事情によって判断されるため、「契約期間が終われば必ず土地が戻ってくる」とは限りません。
また、期間満了前に建物が滅失し、貸主の承諾を得て残存期間を超える建物を再築した場合、借地権は原則として承諾日または再築日のいずれか早い日から20年間存続します(残存期間やあらかじめ定めた期間の方が長い場合を除く)。借地人が再築を通知し、貸主が2か月以内に異議を述べなかった場合は承諾があったものとみなされますが、この「みなし承諾」は契約更新後の再築通知には適用されません。更新後に建物が滅失した場合は、この「みなし承諾」の規定が使えないため、貸主が承諾しなければ期間は延長されません。ただし、やむを得ない事情があるにもかかわらず貸主が承諾しないときは、借地人の申立てにより裁判所が承諾に代わる許可を与える制度があります(借地借家法第18条)。一方、貸主の承諾も裁判所の許可も得ずに残存期間を超える建物を再築した場合は、貸主から借地契約の解約を申し入れられることがあります(同法第8条)。通知を受けたとき、また再築を検討するときは放置・自己判断せず、契約内容と時期を専門家に確認してください。普通借地権では、返還の時期を契約当初の年数だけで判断しないことが大切です。
さらに、更新されずに契約が終了した場合でも、借地人は建物を時価で買い取るよう貸主へ請求できる「建物買取請求権」を持ちます(借地借家法第13条)。土地が戻ってきても、建物の買取費用という金銭的な負担が生じる可能性がある点は、見落とされがちなポイントです。
一般定期借地権と事業用定期借地権はいずれも期間満了で終了する借地権ですが、更新等をなくす法的な仕組みは種類・期間によって異なります。ただし、借地関係が終了することと、建物が撤去されて更地で引き渡されることは同じではありません。建物の収去・原状回復の進め方、解体費用の負担、明渡しまでの期限は、契約書で具体的に定めておく必要があります。
一般定期借地権(借地借家法第22条)では、更新をしない・建物の築造による期間延長をしない・建物買取請求をしないという3点をあわせて特約で定めることができます。特約は書面で定めれば足ります(2022年5月の改正法施行以降は、電磁的記録によることもできます)。
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注意点|事業用定期借地権は公正証書が必須です
事業用定期借地権(借地借家法第23条)は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合に限り設定できます。居住用の建物(賃貸住宅を含む)は対象になりません。存続期間30年以上50年未満で設定する場合は、公正証書による特約で、更新をしない・再築による期間延長をしない・建物買取請求をしない旨を定めます。10年以上30年未満で設定する場合は、法定更新や再築による期間延長、建物買取請求などの規定そのものが法律上適用されないため、特約を定めなくても当然に非更新型の借地権になります。いずれの期間帯でも、契約は公正証書によらなければなりません。公正証書によらずに契約した場合、事業用定期借地権としての効力(更新をしない等の特約)が認められず、普通借地権として扱われるおそれがあるとされており、「契約自体が無効になり土地がすぐ戻る」という意味ではない点に注意が必要です。契約の具体的な進め方は、司法書士や弁護士など専門家への確認をおすすめします。
地代の金額に、法律上の決まった計算式はありません。近隣の借地の相場、土地の路線価や固定資産税評価額、土地の利用目的(住宅用か事業用か)などを踏まえて、貸主と借地人の合意で決めるのが基本です。
契約後に地代を見直したい場合は、公租公課(固定資産税など)の増減、地価の変動、近隣の似た土地の地代との不均衡といった事情があれば、貸主・借地人のどちらからでも地代の増額・減額を請求できます(借地借家法第11条)。ただし、一定期間は地代を増額しない旨の特約がある場合は、その特約が優先されます。
イエリテの実務から
当社へ寄せられた相談では、地代の相場感や、普通借地権と定期借地権の違いを誤解しているケースがありました。「一度貸したら、契約期間が終われば当然に土地が返ってくる」と考えていたところ、実際には普通借地権で契約しており、更新を前提とした関係になっていたという例です。契約前に、どちらの借地権で進めるのかを必ず確認しておくことが大切です。
これらは一度契約すると簡単には変更できない事項です。契約書の作成や条項の解釈は、司法書士や弁護士といった専門家が対応する分野になります。不動産会社は、土地活用の選択肢の整理や、専門家への橋渡しをお手伝いします。
土地を借地として貸す方法を検討するときは、まず建物目的で貸せる土地かどうかを確認し、そのうえで「更新が原則の普通借地権」と「期間で確実に終了する定期借地権等」のどちらで進めるかを決めます。
土地を貸すか、売るか、そのまま保有するかで迷う段階でも、選択肢の整理からご相談いただけます。南城市および沖縄県南部の土地について、契約の進め方や専門家への橋渡しも含めてお手伝いします。
契約の種類によります。普通借地権では、貸主に正当事由がない限り契約が更新されるため、必ず戻ってくるとは限りません。更新されずに契約が終了した場合も、借地人から建物買取請求を受けることがあります。確実に借地関係を終わらせたい場合は、更新のない一般定期借地権・事業用定期借地権として契約します。なお、建物譲渡特約付借地権は、更新をしない特約ではなく建物を地主が買い取ることで借地権を消滅させる別の仕組みで、建物取得後も賃貸借関係が続くことがあります。
法律上の決まった計算式はありません。近隣の借地の相場や土地の評価額、利用目的などを踏まえて貸主と借地人の合意で決めます。契約後も、地価の変動などの事情があれば増額・減額を請求できます。
一般定期借地権・事業用定期借地権については、いいえ。一般定期借地権は、存続期間を50年以上としたうえで、「更新をしない」「建物の築造による期間延長をしない」「建物買取請求をしない」という3点の特約を、書面または電磁的記録で定める必要があります。事業用定期借地権は、10年以上30年未満ではこれらの規定自体が法律上適用されないため特約を定めなくても当然に非更新型になりますが、30年以上50年未満では一般定期借地権と同じ3点の特約を定める必要があります。いずれの期間帯でも、契約は公正証書によらなければなりません。事業用定期借地権を公正証書によらずに契約した場合、定期借地権としての効力が認められず、普通借地権として扱われるおそれがあります。建物譲渡特約付借地権は、一般・事業用とは異なり書面や公正証書は法定要件ではありませんが、長期・高額の契約となるため、口頭契約は避け、建物取得後の使用関係まで専門家と確認しておくことをおすすめします。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別のケースによって、契約内容や必要な手続きは異なります。
南城市の土地活用について、借地・売却・駐車場など選択肢の整理からご相談いただけます
「貸すべきか、売るべきか、そのまま持ち続けるべきか」を早めに整理しておくと、今後の判断がしやすくなります。まだ方針を決めていない段階でも構いません。南城市および沖縄県南部の土地について、まずは状況の整理からお手伝いします。契約書の作成や条項の解釈は司法書士・弁護士が専門ですので、必要に応じて専門家への相談もあわせてご案内します。まずはお気軽にお問い合わせください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の不動産について、お困りごとがあればお気軽にご相談ください。