


「兄弟3人の名義になっている土地を売りたい」「相続のときに、とりあえず全員の共有で登記した」。南城市や沖縄県南部で不動産のご相談をいただくなかで、こうしたお話を伺うことがあります。
共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態です。持分3分の1、といった割合で登記されています。
自分の名義が入っているのだから売れるはず、と考えていたところ、不動産会社から「共有者全員の同意が必要です」と言われて戸惑う方もいらっしゃいます。
この記事では、共有名義の不動産を売るときに誰の同意が必要なのか、自分の持分だけを売れるのか、共有者が県外にいる場合や連絡が取れない場合はどうするのか、税金はどう計算するのかを順番に整理します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年07月26日
最終更新日:2026年07月26日
情報確認日:2026年07月26日
この記事の目次
先に結論をお伝えします。共有している不動産の全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。持分の多い人だけで決めることも、代表者1人の判断で契約することもできません。
民法では、共有物に変更を加える行為には共有者全員の同意が必要と定められています(民法第251条第1項。出典:e-Gov法令検索「民法」)。不動産全体を売却することは、この「変更」にあたる行為と解されています。
一方で、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売ることができます。持分は各共有者が持っている権利だからです。ただし、実際に買い手を見つけられるかは別の問題で、この点は後ほど整理します。
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先に結論
不動産全体の売却は全員の同意、自分の持分だけの売却は単独で可能です。ただし持分だけの売却は買い手が限られるため、まずは全員での売却を検討することをお勧めします。
すべての場面で全員の同意が要るわけではありません。共有物の「管理」にあたる行為は、持分の価格に従って過半数で決めることができます(民法第252条第1項)。
たとえば、共有している建物を誰が使うかを決めることや、一定の期間内の賃貸借の設定などが管理にあたります。2023年(令和5年)4月1日施行の改正では、形や役割を大きく変えない範囲の変更(軽微変更)も、持分の過半数で決められることが明確になりました。
売却は、この過半数のルールでは決められません。「売る・売らない」は全員で決める事項と考えてください。
共有名義の売却は、誰が共有者で、それぞれの持分がどれだけあるかを確認するところから始まります。ここが分からないまま話を進めても、必要な同意の範囲が見えません。
名義と持分は、法務局が発行する登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。所有者の氏名・住所と、「持分3分の1」といった割合が記載されています。
固定資産税の納税通知書は、共有者の代表者宛てに1通だけ届くことがあります。通知書が自分に届いているからといって、単独名義とは限りません。
亡くなった方の名義のままになっている不動産は、遺産分割が済むまで相続人全員が共有している状態です。法務省も、遺産は法定相続分の割合で相続人が共有することになり、その管理・処分は相続人同士で決めなければならないと説明しています(出典:法務省「不動産を相続した方へ 〜相続登記・遺産分割を進めましょう〜」)。
この状態では、登記簿上の名義は故人のままでも、実際には相続人全員が関係者です。売却の話を進めるには、まず相続人を確定させ、遺産分割の話し合いをする必要があります。
名義が古いまま放置されている土地については、「亡くなった祖父名義の土地を売りたい」でも整理しています。
相続登記は、名義を故人から相続人へ移すための手続きです。登記が済んだことと、売却できる状態になったことは同じではありません。
相続人3人の共有として登記した場合、その後に売却するときは3人全員の合意と署名・押印が必要になります。登記が終わって一段落したように見えても、売却の場面では改めて全員の足並みをそろえることになります。
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ここに注意
相続登記は、名義を移すための手続きです。共有で登記した場合、売却の場面では改めて共有者全員の合意が必要になります。
イエリテの実務から
相続登記を済ませておけば、その後は自分の判断で売却まで進められると受け止められていることがあります。
共有で登記した場合、売るかどうかを決める段階で共有者全員の合意が必要になります。登記の前に、その不動産を将来どうするかまで話し合っておくと、後の手続きが進めやすくなります。

共有名義を解消したり、売却したりする方法は、大きく4つあります。それぞれ、必要な同意の範囲と得られる金額が変わります。
| 方法 | 必要な同意 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全員で不動産全体を売る | 共有者全員 | 市場価格での売却を目指せる。合意形成に時間がかかることがある |
| 自分の持分だけを売る | 単独で可能 | 買い手が限られ、価格が低くなりやすい |
| 他の共有者に持分を買い取ってもらう | 相手との合意 | 共有を1人にまとめられる。買い取る側に資金が必要 |
| 共有物分割を請求する | 不要(裁判所の手続き) | 話し合いがまとまらない場合の最終手段。時間と費用がかかる |
共有名義の売却で基本となる方法です。共有者全員が売主となって買主と契約し、代金を持分の割合に応じて分けます。
不動産としてまとまった形で売れるため、市場の相場に沿った価格を目指せます。その代わり、価格や引き渡し時期について全員の合意が要ります。
法律上は、自分の持分を単独で売ることができます。ただし、次のような制約があります。
持分だけを買っても、その不動産を自由に使えるわけではありません。買い手が見つかりにくく、不動産全体を売る場合と比べて価格が低くなりやすい傾向があります。
また、他の共有者に知らせないまま第三者へ持分を売ると、その第三者が新たな共有者として加わります。親族間の関係に影響することもあるため、慎重に検討したい方法です。
共有者の1人がその不動産を使い続けたい場合には、その方に持分を買い取ってもらう方法があります。共有者が1人になれば、その後の管理や売却の判断もしやすくなります。
買い取る側にはまとまった資金が必要です。金額の決め方でもめないよう、査定などの客観的な資料をもとに話し合うことをお勧めします。
話し合いがまとまらないときは、各共有者が共有物の分割を請求できます(民法第256条第1項)。協議が調わない場合は、裁判所へ分割を請求することになります(民法第258条第1項)。
裁判所による分割には、土地を物理的に分ける方法(現物分割)、1人が取得して他の共有者へ代金を支払う方法(賠償分割)、競売にかけて代金を分ける方法があります。
ただし、相続で共有になっている状態(遺産共有)は、原則として家庭裁判所の遺産分割の手続きで解決します。共有物分割訴訟とは手続きが異なるため、どちらにあたるかを含めて弁護士へご相談ください。
全員の同意といっても、「売ることに賛成」だけでは足りません。契約の段階になって条件が食い違うと、そこから話が止まってしまいます。
売り出す前に、次の点を共有者の間で確認しておくと進めやすくなります。
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売り出す前の確認ポイント
代表者を決めても、契約や決済の書類には共有者それぞれの署名・押印が必要です。代表者はあくまで連絡の窓口であり、1人ですべてを決められるわけではない点にご注意ください。
共有者が沖縄県外に住んでいる場合でも、売却はできます。ただし、書類のやり取りに日数がかかることを見込んでおく必要があります。
売買の場面では、共有者それぞれについて次のような書類が必要になります。
全員が同じ場所に集まれない場合は、契約書を郵送で順番に回す方法(持ち回り契約)や、決済に立ち会えない方が代理人へ委任する方法をとることがあります。委任状には実印の押印と印鑑証明書の添付を求められます。
イエリテの実務から
共有者が遠方にお住まいの場合、書類の郵送と返送だけで日数がかかります。決済日を決めてから慌てて手配すると、間に合わないこともあります。
売却を検討し始めた段階で、共有者それぞれの現住所と連絡手段、書類を用意できる時期を確認しておくことをお勧めします。仕事や体調の都合で動ける時期が限られる方がいる場合は、早めに共有しておくと日程を組みやすくなります。

共有者の1人と連絡が取れない場合や、返事をもらえない場合でも、方法がないわけではありません。2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法で、次のような裁判所の手続きが設けられています(参考:裁判所「共有に関する事件(非訟事件手続法第三編第一章)」)。
これらは不動産の所在地を管轄する地方裁判所へ申し立てる手続きです。「所在等不明」と認められるには、住民票や戸籍の附票などの公的な記録を調べても所在が分からなかった、という調査の経過が必要とされています。
共有者が認知症などで判断が難しい状態にある場合は、成年後見制度の利用を検討することになります。判断能力が不十分な方の署名・押印をそのまま求めることはできません。
いずれも家庭の事情や共有者の人数によって取れる方法が変わります。この段階まで来たら、弁護士や司法書士へご相談ください。当社でも、状況を整理したうえで相談先をご案内できます。
相続がからむ共有では、期限のある制度がいくつかあります。売る・売らないを決めていない段階でも、期限だけは把握しておくと選択肢が減りません。
相続登記の申請義務は、2024年(令和6年)4月1日から始まっています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内が期限で、2024年4月より前に発生した相続は2027年(令和9年)3月31日までとされています。正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象です(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
遺産分割の10年ルールにも注意が必要です。2023年(令和5年)4月1日施行の改正で、相続開始から10年を過ぎると、原則として具体的相続分による遺産分割を求められなくなりました(民法第904条の3)。施行時にすでに相続開始から5年を超えていた場合は、2028年(令和10年)3月31日までの猶予が設けられています。
相続した空き家の3,000万円特別控除は、2027年(令和9年)12月31日までの譲渡が対象です。2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡では、家屋と敷地を相続や遺贈で取得した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり2,000万円までとなります(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
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期限のある手続き
共有者の間で方針が決まらないまま時間が過ぎると、使えたはずの制度の期限を過ぎてしまうことがあります。売却の判断と並行して、期限のある手続きだけは早めに確認しておくことをお勧めします。
制度の詳しい内容は、次の記事でも整理しています。
共有名義の不動産を売ったときの税金は、共有者それぞれで計算します。売却代金を全体で見るのではなく、自分の持分に対応する金額で考える点が単独名義との違いです。
譲渡所得の計算も、確定申告も、共有者ごとに行います。国税庁も、確定申告書は一人一人が提出するよう案内しています(出典:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」)。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除については、適用を受けられるかどうかを共有者ごとに判定します。共有者全員で3,000万円ではなく、要件を満たす人がそれぞれ最高3,000万円まで控除できます。
ただし、建物は共有ではなく敷地だけを共有している場合、建物の所有者以外の方は原則としてこの特例を使えません。土地だけの持分を持っている共有者がいる場合は、事前に税理士へご確認ください。
費用の分担も決めておきたい部分です。仲介手数料、登記費用、測量費用、解体費用などをどう分けるかを、売り出し前に話し合っておくと、決済のときに慌てずに済みます。
譲渡所得税の基本的な考え方は、「不動産を売ったときにかかる税金は?譲渡所得税と3,000万円特別控除の基本」で整理しています。
沖縄では、先祖代々受け継がれてきた土地が親族間の共有になっていることがあります。相続のたびに持分が細かく分かれ、関係者が世代をまたいで広がっている場合もあります。
共有者の人数が増えるほど、連絡と合意にかかる時間は長くなります。売却を考え始めた段階で、現在の共有者が何人いるのかを確認しておくことをお勧めします。
あわせて、次の点も確認しておくと判断しやすくなります。
親族の間で「あの土地は誰が引き継ぐ」と了解ができていても、登記や書面が整っていなければ売却の手続きは進みません。話し合いの内容を書面に残しておくことも大切です。
不動産全体の売却はできません。全員の同意が必要なためです(民法第251条第1項)。ただし、自分の持分だけを売る、他の共有者に買い取ってもらう、共有物分割を請求するといった方法は残っています。まずは反対している理由を確認し、条件を調整できないかを話し合うところからお勧めします。
将来の手続きが複雑になりやすい点が挙げられます。共有者が亡くなると、その持分は相続人へ引き継がれ、関係者が増えていきます。売却や建て替えのたびに全員の合意が必要になるため、人数が増えるほど話し合いに時間がかかります。管理費用や固定資産税の負担をめぐって、意見が分かれることもあります。
親権者が代理して手続きするのが原則ですが、親権者自身も共有者である場合は注意が必要です。親と子の利益が相反する関係になるため、家庭裁判所へ特別代理人の選任を申し立てる必要があります。該当しそうな場合は、司法書士や弁護士へご確認ください。
査定や相談だけであれば、共有者お一人からでも承ります。いくらで売れそうかが分からないと、共有者の間で話し合いようがない、という場合もあります。金額の目安を持ってから全員で相談したい、という段階でもご利用いただけます。ただし、実際に売り出す際には共有者全員の意思確認が必要です。
代理人への委任や、書類を郵送でやり取りする方法があります。委任状には実印の押印と印鑑証明書の添付を求められることが一般的です。買主や金融機関の意向によって取り扱いが変わることもあるため、早めに担当者へ相談し、必要な書類と日程を確認しておくと安心です。

最初の一歩は、登記事項証明書で共有者と持分を確認することです。そのうえで、共有者それぞれの考えと事情を整理していくと、選べる方法が見えてきます。
ご相談の際は、次のものがあると状況を整理しやすくなります。すべてそろっていなくても構いません。
南城市で、共有名義になっている不動産のご相談
共有者の間で方針が決まっていない段階でも構いません。登記事項証明書を一緒に確認しながら、共有者が何人いるのか、売るとしたらどのくらいの価格が見込めるのか、どの順番で進めればよいのかを整理するところからお手伝いします。
査定はご共有者お一人からでもお申し込みいただけます。共有者との話し合いや、裁判所の手続き、登記、税務など専門家の確認が必要な部分は、内容を整理したうえで弁護士・司法書士・税理士などの相談先をご案内します。南城市および沖縄県南部の不動産について、お気軽にご相談ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。必要な手続きや期間、費用は個別のケースによって異なります。
共有物の分割や共有者との紛争、裁判所の手続きに関する判断は弁護士、相続登記や持分の移転登記は司法書士、譲渡所得や特別控除の判断は税理士、土地の面積・境界に関わる事項は土地家屋調査士が窓口です。法令や制度は変更されることがあるため、手続きの際は最新の情報をお確かめください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
相続した不動産の扱いでお悩みの方は、状況を整理するところからお気軽にご相談ください。