


「実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」「県外に住んでいて、南城市の空き家をどうすればいいか分からない」。相続した家について、こうしたご相談をいただくことがあります。
先にお伝えすると、相続した空き家には期限のある制度がいくつもあります。売却時に使える「空き家の3,000万円特別控除」、そして2024年4月から義務化された相続登記です。どちらも、気づかないうちに期限を過ぎてしまうことがあります。
一方で、「すぐに売らなければいけない」わけでもありません。売る・貸す・使う・持ち続ける。それぞれに向き・不向きがあり、ご家族の事情によって答えは変わります。
この記事では、空き家を放置した場合に起きること、最初に確認したい相続登記、4つの選択肢の比べ方、売却時に使える3,000万円特別控除の要件、解体の判断、そして相談前に準備しておきたい資料までを整理します。ご自身のケースで次に何をすればよいかが見えてくるはずです。
この記事の目次
まず、判断を先送りした場合に何が起きるのかを整理します。不安をあおる意図はありませんが、知らないまま時間が過ぎると選択肢が狭くなることがあるためです。
人が住まなくなった家は、換気がされず湿気がこもりやすくなります。沖縄では、台風による屋根や雨どいの破損、塩害による金属部分のさび、シロアリの被害などが起こることがあります。
傷みが進むと、修繕して貸す・住むという選択肢が取りにくくなり、建物の価値も下がっていきます。
住宅が建っている土地には、固定資産税の負担を軽くする「住宅用地の特例」があります。200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1に、200平方メートルを超える部分は3分の1に軽減されます(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。
ただし、2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家法により、適切な管理がされていない空き家は「管理不全空家等」として市区町村から指導・勧告の対象になりました。勧告を受けると、この住宅用地の特例が受けられなくなります。(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」)
改正前は、倒壊の危険性が高いなど周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空家等」が対象でしたが、改正によって、その手前の段階である「管理不全空家等」も勧告の対象に加わりました。
建物や塀が壊れて他人に損害を与えた場合、所有者が責任を問われる可能性があります。草木が隣地や道路にはみ出せば、近隣への影響も出てきます。
県外にお住まいの場合、草刈りや点検のたびに沖縄へ渡航する負担も続きます。
注意点|「管理不全空家等」は特定空家等の手前の段階です
倒壊しそうな状態でなくても、適切な管理がされていない状態が続けば、勧告を受けて固定資産税の住宅用地特例が使えなくなることがあります。判断の基準は市区町村が定めているため、気になる場合は南城市の担当課にご確認ください。
空き家をどうするか決める前に、必ず確認していただきたいのが不動産の名義です。名義が亡くなった方のままでは、売ることも、担保に入れることもできません。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
また、遺産分割が成立した場合は、その成立した日から3年以内に、内容を踏まえた所有権移転の登記を申請する必要があります。
正当な理由がないのに申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象となることがあります。
見落とされやすいのが、この義務が過去の相続にもさかのぼって適用されるという点です。
2024年4月1日より前に開始した相続でも、相続登記をしていない場合は義務の対象になります。その期限は、2027年(令和9年)3月31日までです(不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月以降の場合は、その日から3年以内)。
「祖父の名義のままになっている」「親が亡くなってから何年も経っている」という土地や家がある場合は、期限が近づいています。
相続人同士の話し合いがまとまらないなど、3年以内に相続登記を申請することが難しい場合には、「相続人申告登記」という簡易な手続きが設けられています。これを申し出ることで、基本的な申請義務を果たしたものとして扱われます(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
ただし、遺産分割が成立した後の追加的な義務については、相続人申告登記では果たせません。あくまで暫定的な手続きである点にご注意ください。
なお、相続登記の手続きそのものは司法書士が専門です。当社では、登記が済んでいない状態からのご相談もお受けし、必要に応じて専門家をご紹介しています。

名義の確認と並行して、その家をどうしたいかを考えていきます。選択肢は大きく4つです。
現金化でき、管理の負担と固定資産税から解放されます。建物付きのまま売る方法と、解体して土地として売る方法があります。後述する3,000万円特別控除が使えれば、税負担を抑えられる可能性があります。
一方で、思い出のある家を手放すことになり、家族の合意が必要です。
家を残したまま収入を得られます。将来、家族が戻って住む可能性を残せる点も利点です。
ただし、貸せる状態にするための修繕費が先にかかります。借主がついた後は、簡単には明け渡してもらえない点にも注意が必要です。
セカンドハウスや親族の住まいとして活用する方法です。ただし、使わないまま所有だけを続けると、実質的には放置と同じ状態になります。
判断を保留する選択です。ただし、固定資産税と管理の手間は続き、建物の傷みも進みます。管理を委託する場合は費用がかかります。
ポイント|「売る」だけが正解ではありません
ご家族の状況、建物の状態、立地によって適した選択肢は変わります。ただし、3,000万円特別控除には相続開始から約3年という期限があるため、「決めないまま時間が過ぎる」ことだけは避けたいところです。まずは選択肢を並べて比べることから始めてください。
相続した家を売って利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して税金がかかります。ここで知っておきたいのが、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例です。
一定の要件を満たすと、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
税金の基本的な仕組みについては、不動産を売ったときにかかる税金は?譲渡所得税と3,000万円特別控除の基本もあわせてご覧ください。
この特例には、次のような要件があります(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
特例そのものの適用期限は、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡とされています。
この日付は、建築基準法の耐震基準が変わった時期に対応しています。それ以前に建てられた家は、現在の耐震基準を満たしていない可能性があるため、耐震改修または取り壊しを促す仕組みになっています。
建物がいつ建てられたかは、登記事項証明書や固定資産税の課税明細で確認できます。まずはここを確認してみてください。
以前は、売主が売却前に耐震改修または取り壊しを済ませておく必要がありました。
2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡については、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなった場合、または家屋の全部の取壊し等が行われた場合も対象になります(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
つまり、買主が引き渡し後に解体や改修を行うケースでも使える可能性があります。売主が先に解体費用を負担しなくてよくなった点は、実務上の大きな変更です。
2024年(令和6年)1月1日以後に行う譲渡で、その家屋と敷地を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除額は2,000万円までとなります。兄弟姉妹で共有している場合は、人数を確認しておきましょう。
亡くなる直前に自宅ではなく老人ホーム等にいた場合でも、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により家屋が使用されなくなったケースでは、一定の要件のもとで対象になります。
「施設に入っていたから使えない」と思い込まず、要件を確認してみてください。
この特例を受けるには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
なかでも、売った不動産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受ける「被相続人居住用家屋等確認書」は、事前の準備が必要な書類です。南城市の不動産であれば、南城市役所での手続きになります。
また、相続税を納めた方が使える「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)」とは、併用できません(出典:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。どちらが有利かは個別の事情によって異なるため、税理士または税務署にご相談ください。
ポイント|3,000万円特別控除で確認したい5点
①昭和56年5月31日以前の建築か ②相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れるか ③相続後に人に貸したり住んだりしていないか ④売却代金が1億円以下か ⑤相続人の数が3人以上か。
この5点は、早い段階で確認しておくと判断しやすくなります。

「古い家だから、壊してから売った方がいいのでは」というご相談をいただくことがあります。判断のポイントを整理します。
解体は、売り方が決まってから判断しても遅くないケースがあります。先に解体してしまうと、税負担が増えるうえに後戻りできません。売却の見通しを立ててから決めることをおすすめします。
なお、建物を解体して土地として売る場合、隣地との境界が問題になることがあります。境界がはっきりしない土地の進め方については、境界が分からない土地を売るには?南城市での確認方法と進め方をご覧ください。
また、実家に畑や農地が付いている場合は、農地法の手続きが別に必要です。詳しくは南城市で農地を売るには?農地法の手続きと進め方をご覧ください。
「手放したくはないが、管理も難しい」という場合、活用という選択肢があります。
貸す場合は、まず「今の状態で借り手がつくか」を確認します。水回りの設備や雨漏りの有無によって、必要な修繕費は大きく変わります。
修繕費を回収できる見込みがあるか、何年で回収できるかを試算したうえで判断してください。修繕費をかけたものの借り手がつかない、という状態は避けたいところです。
建物を解体したうえで、相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」もあります(2023年4月27日開始)。
ただし、建物がある土地は申請できません。また、担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地なども対象外とされています。審査手数料は土地一筆当たり14,000円で、承認された場合は負担金の納付が必要です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の要件」)。
売却できる土地であれば、通常は売却の方が所有者の負担は少なくなります。まずは売れるかどうかを確認してから検討する順番をおすすめします。
相談をスムーズに進めるために、次の資料が手元にあるか確認してみてください。すべて揃っていなくても構いません。
相続した空き家は、複数の分野にまたがります。誰に何を相談すればよいかを整理しておくと、動きやすくなります。
当社は、売却・活用の相談と全体の進め方の整理をお手伝いする立場です。税額の判断や登記の手続きは、それぞれの専門家におつなぎします。

相続した空き家について、押さえておきたい点を整理します。
次の一歩として、登記事項証明書と固定資産税の納税通知書を探し、名義と建築時期を確認してみてください。この2つが分かると、使える制度と選択肢がぐっと絞り込めます。
売却を決めていない段階でも構いません。「そもそも売れるのか」「貸すとしたらどのくらいの費用がかかるのか」を知ることは、判断の材料になります。
マイホームの3,000万円特別控除とは別に、相続した空き家のための特例が設けられています。ただし、昭和56年5月31日以前の建築であること、相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと、売却代金が1億円以下であることなど、要件が異なります(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。ご自身のケースで使えるかは、税理士または税務署にご確認ください。
亡くなった方の名義のままでは、売却はできません。買主へ所有権を移転する前提として、相続登記が必要になります。加えて、2024年4月からは相続登記そのものが義務化されており、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となることがあります(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。売却を考えている場合は、早めに司法書士へご相談ください。
空き家の3,000万円特別控除については、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。この期限を過ぎている場合、この特例は使えません。ただし、譲渡所得の計算では取得費や譲渡費用を差し引くため、そもそも税金がかからないケースもあります。売却自体はいつでも可能です。まずは現状の確認からご相談ください。
共有になっている不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一方で、相続登記の申請義務については、期限内に手続きが難しい場合に「相続人申告登記」という簡易な仕組みがあります。話し合いが進まない場合の対応は個別の事情によって異なるため、司法書士や弁護士にご相談ください。
現地に来られない状態でのご相談も承っています。建物の状況確認や写真の撮影、周辺の状況の報告などは、こちらで対応できる部分があります。ただし、売買契約や決済の際には、書類のやり取りや本人確認が必要になります。進め方については、状況をうかがったうえでご案内します。
住宅用地の特例が適用されなくなるため、土地の固定資産税が上がることがあります。住宅が建っている土地は、200平方メートル以下の部分で課税標準が6分の1に軽減されています(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。ただし、管理がされていない空き家として勧告を受けた場合も、同じくこの特例が受けられなくなります。「解体しなければ安いまま」とは限らない点にご注意ください。具体的な税額は南城市役所の税務担当課にご確認ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別のケースによって、使える特例や必要な手続きは異なります。
相続した空き家について、売却・活用・そのまま保有まで、選択肢の整理からご相談いただけます
「まだ売ると決めたわけではない」「兄弟と相談中」という段階でも構いません。名義の状況、建物の状態、使える制度の期限を一緒に確認するだけでも、次に何をすればよいかが見えてきます。南城市および沖縄県南部の空き家について、まずは現状の整理からお手伝いします。登記は司法書士、税金は税理士が専門ですので、必要に応じて専門家への相談もあわせてご案内します。県外にお住まいの方のご相談も承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。