

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月29日
最終更新日:2026年8月29日
情報確認日:2026年8月29日
兄弟姉妹で実家を相続したものの、売るのか、貸すのか、そのまま残すのかが決まらない。南城市の実家について、こうした状態でご相談をいただくことがあります。
そのなかで、「自分の持分の範囲でなら、他の兄弟に相談しなくても動かせるはずだ」とお考えの方にお会いすることがあります。これは半分は当たっていて、半分は違います。
売る・貸す・壊すのどれを選ぶかによって、必要な同意の範囲は変わります。そして同意のハードルがいちばん高くなりやすいのは、多くの方が「いちばん手軽だ」と感じている貸すという判断です。
この記事の目次
共有している不動産で誰の同意が必要かは、持分をどれだけ持っているかではなく、何をしようとしているかで決まります。
民法は、共有物に対する行為を大きく3つに分けています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。
実家で考えられる行為を当てはめると、次のようになります。
| したいこと | 必要な同意 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 実家を丸ごと売る | 共有者全員の同意 | 変更(処分) |
| 建物を解体する | 共有者全員の同意 | 変更(処分) |
| 普通借家契約で貸す | 共有者全員の同意と考えられる | 後述します |
| 定期借家契約で3年以内貸す | 持分の価格の過半数 | 管理 |
| 草刈り・雨漏りの応急修理 | 単独でできる | 保存 |
| 自分の持分だけを売る | 単独でできる | 自分の権利の処分 |
同じ「貸す」でも、契約の種類によって扱いが変わる点が、この表のなかで最も分かりにくいところです。順番に見ていきます。
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ポイント
持分が2分の1でも、単独では過半数になりません。「過半数」は半分を超えることを指すため、兄弟2人で2分の1ずつという状態では、管理にあたる行為も1人では決められません。

自分の持分を売ること自体は、他の共有者の同意なしにできます。持分は、その人自身が持っている権利だからです。
ここまでは、冒頭で触れた「半分は当たっている」の部分です。問題は、その先にあります。
持分だけを買った人は、その家に自由に住めるわけでも、土地を自由に使えるわけでもありません。買った後も、他の共有者と話し合わなければ何も進められない状態を引き継ぐことになります。そのため買い手はごく限られ、価格も不動産全体を売る場合より低くなりやすい傾向があります。
さらに、他の共有者に知らせないまま第三者へ持分を売ると、その第三者が新しい共有者として親族の中に入ってきます。後から親族間の話し合いがまとまりにくくなることがあります。
イエリテの実務から
南城市の実家について、方針が決まらないままご相談をいただくなかで、「自分の持分の分だけなら、自分の判断で動かせるはずだ」とお考えの方にお会いすることがあります。法律上、持分を売ること自体はご本人の判断でできます。ただ、多くの方が実際に望んでいるのは持分を手放すことではなく、実家そのものをどうするかを決めることです。その場合は、持分の話ではなく、共有者全員での合意が必要になります。
共有名義の売却そのものの進め方は、共有名義の不動産は売却できる?全員の同意が必要な場面と進め方で詳しく説明しています。
売るのは決心がつかないから、ひとまず誰かに貸しておこう。この判断は、手続きとしては最も慎重な確認が必要になる部類に入ります。
2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法では、持分の過半数で設定できる賃借権の期間の上限が明確になりました(民法第252条第4項)。
実家の建物を貸す場合は3年です。これを超える期間の賃貸借は変更にあたる行為として、共有者全員の同意が必要になります。
ここが実務上で最も注意したい部分です。契約期間を3年としても、それだけで過半数の同意で決められるとは限りません。
一般的な賃貸借契約(普通借家契約)には、借地借家法による法定更新の仕組みがあります。期間が満了しても、貸主側に正当の事由がなければ更新を拒むことができません。つまり契約書の期間が3年でも、実際には契約が長く続く可能性があります。
このため、法定更新の適用がある賃貸借については、契約期間が民法第252条第4項の範囲内であっても、変更にあたる行為として共有者全員の同意が必要になるという整理が一般に示されています。
一方、定期借家契約のように法定更新のない契約であれば、期間の満了で確実に終了するため、持分の過半数で決められる範囲と整合すると考えられます。
いずれにしても、貸し出しを検討する段階では共有者全員に話を通しておくほうが、後戻りが少なくなります。
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注意点
賃貸借の形式と必要な同意の範囲の関係は、条文に一対一で書かれた結論ではなく、法律の解釈にあたる部分を含みます。実際に貸し出す契約を結ぶ前に、契約の形式と誰の同意が必要かを弁護士へご確認ください。
同意の問題とは別に、税制面でも影響があります。
相続した空き家を売却するときに使える可能性がある3,000万円の特別控除(被相続人の居住用財産を売ったときの特例)には、「相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと」という要件があります(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
短期間でも人に貸してしまうと、この要件から外れます。後から売る判断に変わったときに、特例を使えなくなる可能性があります。
この特例には、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、対象となる家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであることなど、他にも複数の要件があります。適用の可否は税理士へご確認ください。
要件の全体像は、相続した空き家はどうする?売却・活用の選択肢と3,000万円特別控除にまとめています。
建物を取り壊すことは、共有物そのものをなくす行為です。管理ではなく変更(処分)にあたるため、共有者全員の同意が必要になります。
解体を先に進めてしまうと、後から反対していた共有者との間で問題になることがあります。費用を出した人が単独で決められるものでもありません。
税の面でも確認したい点があります。土地の上に住宅が建っていると、固定資産税の課税標準が軽減される住宅用地の特例が適用されています(地方税法第349条の3の2)。200㎡以下の部分は6分の1、それを超える部分は3分の1です。建物を解体して更地にすると、この軽減の対象から外れます。
ただし、建物を残しておけば安心というわけでもありません。2023年(令和5年)12月13日施行の改正空家等対策の推進に関する特別措置法では、放置すれば特定空家等になるおそれのある建物を「管理不全空家等」として、市町村が指導・勧告できる仕組みが設けられました。勧告を受けると、住宅用地の特例が解除されます(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」)。
解体するかどうかの判断材料は、古家付き土地は解体すべき?南城市で更地にする前に確認したいことで整理しています。
「まだ遺産分割の話し合いをしていないから、共有名義ではない」とお考えの方がいらっしゃいますが、相続が起きた時点で、相続財産は相続人による共有の状態になっています。これを遺産共有と呼びます。
改正民法第898条第2項により、遺産共有の状態にある各相続人の持分は、法定相続分(相続分の指定があるときは指定相続分)を基準に算定することが明記されました。ここまで説明してきた変更・管理・保存の区別は、遺産分割が終わっていない段階でも同じように適用されます。
つまり、話し合いが始まっていない段階でも、実家を売ることや貸すことを1人で決められるわけではありません。
なお、遺産分割が終わるまでの間に賃貸して得た家賃については、遺産とは別の財産として、各相続人が相続分に応じて取得するという整理が示されています。「貸して家賃が入れば、それを分割協議のときにまとめて分ければよい」という前提で話を進めると、認識がずれることがあります。
方針が決まらないまま置いておくと、期限だけが過ぎていきます。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。施行前に相続した不動産についても、2027年(令和9年)3月31日までという経過措置が設けられています(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
売る・貸す・残すが決まっていないことは、登記をしない正当な理由にはなりません。期限に間に合わないときは、相続人が単独で申し出られる相続人申告登記という制度があります。詳しくは相続登記の義務化とは?相続した不動産の手続きと期限をご覧ください。
ここまでを踏まえると、進め方の順番が見えてきます。
売る・貸す・残すのどれを選ぶかを考える前に、共有者が誰で、それぞれが何を望んでいるかを先に確認してください。どの案を選んでも、最終的には共有者の同意が必要になるためです。
先に不動産会社へ相談して査定を取り、話を進めてから共有者に伝えると、「勝手に進められた」という受け止め方をされることがあります。順番が逆になるだけで、まとまるはずの話が止まってしまうことがあります。
イエリテの実務から
南城市の実家についてご相談をいただくとき、私が最初に確認しているのは、価格よりも共有者それぞれのお考えです。売りたい方、住み続けたい方、決めかねている方が混ざっているのが実際のところです。ここを整理しないまま金額の話から入ると、後から差し戻しになることがあります。方針が決まっていない段階でご相談いただいて構いません。
具体的には、次の順番で確認すると進めやすくなります。
意向がそろったあと、売る・貸す・残すの3つを同じ期間で比べる手順は、不動産は売る・貸す・残す、どれを選ぶ?手取りと毎年の負担で比べる判断の順番で整理しています。
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ご相談前に用意しておくと進めやすいもの
共有者と連絡が取れない、話し合いに応じてもらえないという場合には、裁判所の手続きを使う道もあります。所在等が不明な共有者がいる場合の持分の取得や譲渡権限の付与(民法第262条の2、第262条の3)、その共有者以外で管理・変更を決める裁判(民法第251条第2項、第252条第2項)などです。申し立てや見通しの判断は弁護士へご相談ください。

相続した実家で何ができるかは、持分の大きさではなく、何をしようとしているかで決まります。
決められないこと自体は、急いで解決しなければならない問題ではありません。ただ、共有者が誰で、それぞれが何を望んでいるかを確認するところまでは、方針が決まる前でも進められます。
売る・貸す・残すのどれを選ぶかは、ご家族の事情によって変わります。方針が決まっていない段階でも、登記事項証明書を一緒に確認しながら、共有者が何人いるのか、どの判断に誰の同意が必要になるのかを整理するところからお手伝いします。提携税理士への初回の相続相談も無料です。南城市および沖縄県南部の不動産について、お気軽にご相談ください。
そのままでは有効な同意を得られない場合があります。成年後見制度の利用などが必要になることがあり、家庭裁判所の手続きが関わります。手続きの順番と、居住用不動産を売るときに家庭裁判所の許可が必要になる場面は「認知症の親の家は売却できる?成年後見制度の流れと注意点」で整理しています。具体的な進め方は弁護士または司法書士へご相談ください。
共有物から生じる収益は、各共有者が持分に応じて取得するのが原則です。反対していたことを理由に取り分がなくなるわけではありません。分配の方法でもめている場合は弁護士へご相談ください。
住んでいること自体を直ちにやめさせられるとは限りません。共有者は持分に応じて共有物全体を使用できるためです。ただし、自己の持分を超える使用については、他の共有者へ償還する義務があるとされています(民法第249条第2項)。個別の判断は弁護士へご相談ください。
共有物分割請求という手続きがあります(民法第256条、第258条)。共有者間で協議が調わないときは、裁判所に分割を請求できます。現物で分ける方法、1人が取得して他へ代金を支払う方法、売却して代金を分ける方法があります。申し立ては弁護士へご相談ください。
査定のご依頼自体は、共有者お一人からでもお受けできます。ただし実際に売却する段階では全員の同意が必要になるため、査定の結果をどう共有者へ伝えるかを含めてご相談いただくことをおすすめします。
進められます。書類のやり取りや説明はオンラインや郵送でも対応できます。県外にお住まいの方の手続きについては、県外在住でも沖縄の不動産は売却できる?手続きの進め方と必要な準備をご覧ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。必要な手続きや期間、費用は個別のケースによって異なります。
とくに、賃貸借契約の形式と必要な同意の範囲の関係は法律の解釈にあたる部分を含みます。実際の契約前に必ず専門家へご確認ください。共有者との紛争や裁判所の手続き、契約内容の判断は弁護士、相続登記や持分の移転登記は司法書士、特別控除の適用や税額の判断は税理士、土地の面積・境界に関わる事項は土地家屋調査士が窓口です。法令や制度は変更されることがあるため、手続きの際は最新の情報をお確かめください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
相続した不動産の扱いでお悩みの方は、状況を整理するところからお気軽にご相談ください。