

親から引き継いだ家を売ろうとして図面や書類を探したところ、増築した部分が図面に載っていない、あるいは検査済証が見当たらない。そこで初めて「うちの家は違反建築なのではないか」と不安になる方がいらっしゃいます。
当社へ寄せられたご相談のなかにも、検査済証が見つからないことを理由に、その家は違反建築物なので売れないと思い込んでいらっしゃったケースがありました。買主の住宅ローンにどう影響するかまでは、考えが及んでいない状態でした。実際には、検査済証がないことと建築基準法に違反していることは別の話であり、一方で価格や買主の資金計画には影響が出ることがあります。
南城市や沖縄県南部で戸建てや土地建物を所有していて、売却を考えている個人の方を想定し、違反建築物と既存不適格の違いから、売却前に確認する順番、買主側に生じる影響までを順にたどります。売却時にかかる税金や、接道義務を満たさない再建築不可の土地は、この記事では扱いません。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月25日
情報確認日:2026年8月25日
この記事の目次
同じ「今の基準に合っていない建物」でも、法律上の位置づけはまったく違います。ここを取り違えると、必要のない不安を抱えたまま売却を進めることになります。
建築基準法には、法令や条例の規定が施行・適用された際に現に存在していた建築物が、その規定に適合しない場合、その規定は適用しないという定めがあります(出典:建築基準法3条2項)。
建てた当時は適法だったものの、その後の法改正で基準が変わり、現在の基準には合わなくなった建物がこれにあたります。こうした建物を既存不適格建築物と呼びます。現在の基準に合っていないだけで、違法な建物ではありません。
既存不適格建築物を売るときに確認することは「既存不適格建築物は売却できる?沖縄での増改築時の注意点と確認先」で整理しています。
一方、建てた時点で基準に適合していなかった建物や、後から建築確認を受けずに増築して基準に合わなくなった建物は、この適用除外を受けられません。これが違反建築物です。
既存不適格は「そのままなら現行規定を適用しない」という扱いであり、永久に免除されるわけではありません。
建築基準法3条3項は、適用除外が外れる場合を定めています。なかでも売主が知っておきたいのは、改正規定の施行後に増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替の工事に着手した場合です(同項3号)。この場合は、現在の基準に沿って検討することになります。
つまり「昔からある家だから既存不適格で問題ない」と考えて増築を重ねると、その工事をきっかけに違反状態になっていることがあります。
ただし、既存不適格建築物の増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替については、政令で定める範囲内で一定の規定を適用しないという緩和の定めもあります(出典:建築基準法86条の7第1項)。どこまで緩和されるかは政令の範囲によるため、実際の適用は建築士や特定行政庁への確認が必要です。
ここまでは全国共通の建築基準法の話ですが、沖縄には固有の定めがあります。
沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律148条1項は、本土復帰の際に沖縄に存在していた建築物やその敷地、あるいは建築・修繕・模様替の工事中だった建築物やその敷地が、当時の沖縄の建築基準法またはその規則に違反していた場合について、建築基準法3条2項を適用しないと定めています(出典:沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律148条)。
つまり、復帰の時点で当時の法令に違反していた建物は、既存不適格としての扱いを受けられません。「復帰前から建っている古い建物だから既存不適格だろう」と自動的に判断することはできません。
1972年5月15日の前後に建てられた建物では、建築した時点で適法だったかどうかに加えて、復帰の時点で当時の沖縄の法令に適合していたか、その後どのような増改築を経ているかまで含めて、建築士や特定行政庁へ確認することになります。

既存不適格か違反かは、見た目では判断できません。建てた時期の法令、建築確認を受けた記録、その後の増改築の経緯を照らし合わせて判断する必要があります。
判断の材料になるのは、確認済証・検査済証・確認申請の図面・登記事項証明書・固定資産税の課税明細などです。前の見出しのとおり、1972年5月15日前後の建物では、復帰の時点で当時の法令に適合していたかどうかもあわせて確認します。ここは建築士や特定行政庁の窓口の領域であり、不動産会社が確定的に判断できる部分ではありません。
売却相談のなかで、誤解の入り口になりやすいのがこの点です。
建築主は、工事が完了したときに完了検査を申請する義務があり、建築物とその敷地が建築基準関係規定に適合していると認められたときに、検査済証が交付されます(出典:建築基準法7条1項・5項)。
検査済証がない状態は、適合していたことを示す書類がないという状態です。建物の実体が違反であることを、そのまま意味するわけではありません。完了検査を受けていない場合もあれば、書類を紛失している場合もあります。
ただし、完了検査を受けること自体は建築主の義務であり、「検査を受けなくてもよかった」という話ではありません。書類がないことで、後から適合を証明しにくくなるという実際上の不利は残ります。
イエリテの実務から
当社へ寄せられたご相談では、検査済証が見つからないことだけを理由に、その家は違反建築物なので売れないと考えていらっしゃったケースがありました。あわせて、その状態が買主の住宅ローンにどう関わるかは、意識されていませんでした。書類の有無と、法令に適合しているかどうかは、切り分けて確認していきます。
増築した部分を登記していない場合も、「未登記だから違反建築だ」と受け取られることがあります。この二つは別の制度です。
登記は、不動産登記法にもとづく権利と現況の公示の制度です。建物の表題部の登記事項(種類・構造・床面積など)に変更があったときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、変更があった日から1か月以内に変更の登記を申請しなければならないと定められています(出典:不動産登記法51条1項)。増築で床面積が変われば、この申請義務が生じます。
増築部分や建物本体が未登記のままになっている場合の進め方は「南城市で未登記の建物は売却できる?表題登記・解体の進め方と確認の順番」で整理しています。
一方で、登記を済ませたからといって、建築基準法上の違反状態が解消されるわけではありません。登記の整理と、建築基準法上の適合は、それぞれ別に確認する必要があります。
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混同しやすい3つの状態
検査済証がない・未登記である・建築基準法に違反している。この3つは、どれか1つに当てはまっても、ほかの2つに当てはまるとは限りません。まず自分の家がどの状態なのかを切り分けるところから始めます。
「違反だから売れないのではないか」という不安に対しては、まずここが出発点になります。
建築基準法と宅地建物取引業法を確認した範囲では、違反建築物の売買契約自体を禁止したり、無効としたりする規定は見当たりません。建築基準法9条が定めているのは、建物や関係者に対する行政上の措置であり、売買契約の効力を左右する規定ではありません。
ただし、これは「支障なく売れる」という意味ではありません。売主には次に述べる説明の問題があり、買主には資金調達と将来の是正という問題が残ります。売却が禁じられていないことと、通常どおり売れることは別です。
特定行政庁は、違反建築物について、建築主・工事の請負人(下請を含む)・現場管理者のほか、当該建築物もしくは建築物の敷地の所有者・管理者・占有者に対して、工事の停止や、相当の猶予期限を付けて除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができます(出典:建築基準法9条1項)。
名宛人に「所有者」が含まれているため、違反建築物を買った新しい所有者も、命令の対象になり得ます。これは、買主にとって購入をためらう理由になります。
条文は「命ずることができる」という定め方であり、必ず命令が出るというものではありません。実際の運用は行政庁ごとの判断によります。なお、那覇市は、是正命令を受けた場合に公表されることがあると案内しています(出典:那覇市「違反建築物について」)。
売れるかどうかを大きく左右するのは、買主が資金をどう用意できるかです。
フラット35で中古住宅を購入する場合、原則として住宅金融支援機構の技術基準に適合していることを示す適合証明書が必要です。
機構は、この適合証明について「適合証明は、建築基準法への適合を証明するものではありません。また、建築基準法に不適合な場合などは融資の対象とならない場合があります」と説明しています(出典:住宅金融支援機構「中古住宅の物件検査の概要」)。
適合証明と建築基準法の適合は別の判断ですが、建築基準法に適合していない場合に融資の対象外となる可能性があることは、公式に示されています。
民間金融機関が違反建築物にどこまで融資するかは、金融機関や商品ごとに取扱いが異なり、公的資料で一般的な結論を示せる部分ではありません。「一切組めない」とも「問題なく組める」とも言えません。
買主が資金の見通しを立てられるかどうかは、売却の進め方そのものに関わります。買主が実際に相談する金融機関で個別に確認してもらう前提で、売却活動を組み立てることになります。
現金で購入する買主や、買取を行う不動産会社が相手であれば、この論点は小さくなります。売り出す前に、不動産売却の流れと、査定から引き渡しまでの各段階のどこで建物の状態を確認しておくかを決めておくと、途中で条件を組み直す手間を減らせます。
知っている事実を伝えないまま売ることは、後々の紛争につながります。ここは制度の建て付けを分けて理解しておくと迷いません。
宅地建物取引業者は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、重要事項を記載した書面を交付して説明させなければなりません(出典:宅地建物取引業法35条1項)。説明する事項には、建築基準法など法令にもとづく制限の概要が含まれます(同項2号)。
また、宅建業者が、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為は禁止されています(出典:宅地建物取引業法47条1号)。
これらの義務を負うのは宅建業者であり、売主個人の義務そのものではありません。ただし、売主が知っている事実を仲介する会社に伝えなければ、正しい説明はできません。物件の状況について把握していることは、売却を依頼する段階で整理して伝えることになります。書き方に迷ったときの考え方は、物件状況報告書(告知書)には何を書くかで扱っています。
引き渡された物件が、種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主は追完の請求などをすることができます(出典:民法562条1項)。契約不適合責任と呼ばれるもので、売主が知っておきたい基本と注意点で詳しく扱っています。
この責任は、特約で軽くしたり負わないことにしたりできる場面があります。ただし、次の制限があります。
違反状態を知りながら伝えずに売ることは、結果として最も高くつく可能性があります。違反建築物であることが契約不適合にあたるかどうかは、どのような契約内容で売買したかによって判断されます。
自分の家の状態を確かめるところから始めます。順番を決めておくと、無駄な費用と時間を省けます。
まず、次の書類を探します。手元になければ、取得できるものと、取得できないものがあります。
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売却前に集める書類
登記上の床面積と、課税明細の床面積、実際の建物の広さが食い違っていれば、登記されていない増築部分がある可能性があります。
南城市を含む糸満市・豊見城市・南風原町・与那原町・八重瀬町では、建築基準法に関する窓口は沖縄県(南部土木事務所)です。那覇市・浦添市・宜野湾市・沖縄市・うるま市は、それぞれの市が特定行政庁となっています(出典:沖縄県「土木事務所の所管区域(建築基準法関係)」、2024年1月11日更新)。
建築確認を受けた記録の照会や、現在の状態についての相談は、この窓口が入り口になります。窓口では、建築計画概要書の閲覧や、建築確認台帳の記載事項証明書の交付を求められる場合があります。取扱いや必要な手続きは行政庁によって異なるため、訪問する前に電話で確認しておくと確実です。
建物の実際の状態が現行基準にどう当たるかを調べるには、建築士による調査が必要になることもあります。
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制度名が変わっています
検査済証のない建築物について国土交通省が示していた平成26年のガイドラインは、令和7年4月1日をもって「既存建築物の現況調査ガイドライン」へ統合・一本化されています(出典:国土交通省「既存建築物の活用の促進について」)。古い制度名のまま案内している情報も残っているため、確認するときは現行の名称で調べます。

建築基準法上、「建築物」とは土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するものを指します(同法2条1号)。屋根と柱があるカーポートや物置は、この定義に当てはまることがあります。
確認申請については、防火地域および準防火地域外で増築・改築・移転をする場合で、その部分の床面積の合計が10㎡以内であるときは、建築確認の規定を適用しないとされています(出典:建築基準法6条2項)。
ここで注意したいのは、これが確認申請の手続きを免除する規定だという点です。建ぺい率や容積率といった基準そのものへの適合義務がなくなるわけではありません。10㎡以内の増築であっても、建ぺい率を超えていれば基準に適合しない状態になります。
また、この規定は防火地域・準防火地域の外であることが前提です。物件がどの地域に指定されているかは、市町村の都市計画情報や窓口で個別に確認する必要があります。
状態が分かったら、どう売るかを決めます。どれが良いかは、違反の内容・費用・売り急ぐ事情によって変わります。
違反部分を除却する、必要な手続きを踏み直すといった方法で、状態を整えてから売却する進め方です。買主の選択肢が広がり、住宅ローンの制約も小さくなる可能性があります。
一方で、費用と期間がかかります。是正の方法を定めた全国共通の手順書があるわけではなく、特定行政庁への相談と建築士の調査を踏まえて個別に検討することになります。是正すれば必ず適法にできるとは限らない点も、あらかじめ織り込んでおきます。
違反の内容を買主へ正確に開示したうえで、現況のまま売却する進め方です。是正費用はかかりませんが、買主が限られ、価格にも反映されることがあります。
現金購入の買主や、リフォーム・再販を行う事業者が相手になることがあります。この場合も、開示すべき事実を伝える点は変わりません。
老朽化が進んでいる場合は、建物を解体して土地として売る方法もあります。ただし解体費用がかかり、更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税の負担が変わる場合があります。判断材料は、古家付き土地を解体すべきかどうかの考え方で整理しています。
伝えないという選択は、売却後のリスクを残します。宅地建物取引業法上の重要事項説明の義務を負うのは宅建業者ですが、その前提となる事実を持っているのは売主です。また、売主が知りながら告げなかった事実については、担保責任を負わない旨の特約をしていても責任を免れることができません(民法572条)。
契約でどう取り決めたかによって変わります。建築基準法9条1項の措置命令は、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対しても出せる定めになっているため、所有者が変わっていれば新しい所有者が名宛人になり得ます。ただし、売主と買主の間の損害の負担は、事実を開示していたかを含め、契約上の問題として判断されます。
記録上の状態を確認するところから始めます。登記事項証明書と固定資産税の課税明細で、建物の記録を確認します。建築確認の記録は、南城市であれば沖縄県(南部土木事務所)が窓口です。それでも経緯が分からない場合は、現在の建物の状態を建築士に調査してもらう方法があります。相続した不動産では、名義の整理が済んでいるかどうかも同時に確認しておきます。
住宅ローンの制約はなくなりますが、他の論点は残ります。購入後に是正命令の名宛人になり得る点は変わりません。また、買主がその後に建て替えや増改築をしようとしたときに、制約が表面化することもあります。現金購入であっても、事実を開示したうえで条件を決めることになります。
固定資産税の評価と、建築基準法上の適合は別の制度です。未登記の増築部分の課税の扱いを含め、税額については南城市の税務担当窓口へご確認ください。
違反建築物のある不動産の売却で、最初に切り分けたいのは次の3点です。
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先に結論
売る前に進める順番としては、まず手元の書類をそろえ、次に南城市であれば沖縄県(南部土木事務所)や建築士へ状態を確認し、そのうえで是正・現況売却・解体のどれで進めるかを決める、という流れになります。
書類が見つからないことと、建物が違法であることは同じではありません。分からないまま不安を抱えるより、何が分かっていて何が分かっていないのかをはっきりさせることが、売却の条件を決める土台になります。
本記事は2026年8月25日時点の法令・公的資料にもとづいて作成しています。建築基準法をはじめとする法令は改正される場合があります。ある建物が既存不適格建築物にあたるのか違反建築物にあたるのか、どのような是正が可能かといった判断は、建築時期・建築確認の記録・その後の増改築の経緯・所在する区域の指定によって異なり、特定行政庁および建築士による確認が必要です。住宅ローンの取扱いは金融機関・商品によって異なります。登記に関する手続きは土地家屋調査士・司法書士、税務に関する取扱いは税務署または税理士、法的紛争については弁護士へご確認ください。本記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。
建築基準法に適合しているかどうかの判断は建築士や特定行政庁の領域で、当社が確定的に判断できるものではありません。そのうえで、どの書類をどこで集めるか、どの窓口へ何を聞くか、分かった内容を売却条件にどう反映するかは、一緒に整理できます。南城市や沖縄県南部の不動産について、確認の進め方のご案内と、売る・持ち続ける・貸すといった選択肢の整理からお手伝いします。売却を決めていない段階でも構いません。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
査定だけのご相談でも構いません。現在の状況やご希望を丁寧にお伺いします。