

転勤が決まった、実家へ移ることになった、家族が増えて住み替えたい。そうした事情で自宅を離れることになったとき、「売らずに貸しておく」という方法はよく検討されます。
ただ、住宅ローンの返済が残っている家では、貸し出しの前に確認しておくことがあります。住宅ローンは、借りた本人やその家族が住むための資金として貸し出されているためです。順番を間違えると、募集や修繕の準備が無駄になることもあります。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月12日
情報確認日:2026年08月12日
この記事の目次

住宅ローンを返済中の家を貸すときは、募集を始める前に、返済窓口となっている金融機関へ相談してください。
住宅ローンは、契約者本人や家族が居住する住宅の取得資金として提供されている商品です。第三者へ貸すことは、この資金使途と異なる状態になります。連絡せずに貸し始めると、契約違反として扱われる可能性があります。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談でも、借入先の金融機関へ確認しないまま「ローンは払い続けるのだから貸せるはず」とお考えの状態でお越しになるケースがありました。家賃の目安や募集条件をお話しする前に、まず借入先への確認をお願いすることになります。
確認するときは、次の3点を具体的に伝えると話が早く進みます。
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ポイント
借入先へ連絡した結果、必ず一括返済を求められると決まっているわけではありません。返済中のまま賃貸を認められる場合、条件を変更する場合、別の借入れへの切り替えを求められる場合など、取扱いは金融機関と契約内容によって異なります。判断するのは借入先であり、まず事実を伝えて確認することが出発点になります。
金融機関の対応は一律ではありませんが、判断の分かれ目になりやすいのが、居住できなくなった事情と、戻る予定の有無です。
住宅金融支援機構の【フラット35】では、Q&A「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」において、転勤等のやむを得ない事情で一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能であるとされています。この場合も、金融機関での住所変更手続が必要です。
いっぽう同Q&Aは、第三者に賃貸する目的の物件など投資用物件の取得資金に利用するといった目的外利用が判明した場合には、借入れの全額を一括で返済することとなる場合があるとしています。
つまり「一時的に住めなくなった家を貸す」場合と、「賃貸を目的に借入れを使う」場合とでは、扱いが別に整理されています。
民間の住宅ローンは、商品や契約内容によって定めが異なります。届出だけで足りる場合、承諾を得る必要がある場合、賃貸用の借入れへの切り替えを求められる場合などが考えられます。
契約書(金銭消費貸借契約証書)の資金使途や、繰上返済・一括返済に関する条項にどのような定めがあるかを確認したうえで、借入先へ相談してください。契約書の解釈で迷う場合は、その場で自己判断せず、借入先の担当者へ直接確認するのが確実です。
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注意点
借入先へ連絡しないまま貸し出した場合、契約上の資金使途と異なる状態が続きます。借入先への届出や承諾が必要となる場合があるため、伏せたまま進めず、事前に事情を伝えて確認してください。
手続きの手間よりも、後から契約違反を指摘されるほうが、選べる方法は少なくなります。
もうひとつ見落とされやすいのが税金です。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている方が、その家をご本人の居住の用に供しなくなった場合、原則として、住まなくなった年以後は控除を受けられません。
家賃収入が入るいっぽうで、これまで受けていた控除がなくなるため、手取りの見込みが変わります。
転勤でご本人だけが離れ、生計を一にする配偶者や扶養親族などが引き続きその家に住み、事情が解消した後にご本人も再び同居すると認められる場合は、控除を継続できることがあります(No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等/国税庁)。
ただしこれは、家族が住み続けている場合の取扱いです。家族全員で転居して第三者へ貸す場合には当てはまりません。
転勤などのやむを得ない事由で居住しなくなり、その後に再び住むことになった場合は、残りの控除期間について再適用を受けられる仕組みがあります。
すでに住宅ローン控除の適用を受けている方が、転任の命令などのやむを得ない事由で家族とともにその家に住まなくなり、将来の再適用を希望する場合は、居住しなくなる日までに「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」などを、家屋の所在地を所轄する税務署長へ提出します。転居した後に気づいても間に合わない手続きです。
いっぽう、入居した年の12月31日までに家族とともに退去する場合など、事前の手続きが不要となる取扱いもあります。届出の要否は、所轄の税務署または税理士へご確認ください。
なお、再び住み始めた年にその家を賃貸に使用していた場合、再適用は翌年以後になります。控除期間そのものが延長されるわけではない点も、収支を見込むうえで押さえておきたいところです。
適用の可否は個別の事情で変わります。判断や届出の要否は、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
借入先の確認と並行して、実際に手元へいくら残るのかを整理します。家賃からローン返済額を引くだけでは、判断材料としては足りません。
イエリテの実務から
当社が家賃査定で現地を確認する際も、募集前に手を入れる必要がある箇所が見つかることがあります。エアコンや給湯器の状態、雨漏りの有無などです。借入先への確認と同じ段階で現地の状態も見ておくと、貸すかどうかの判断材料が一度に揃います。
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確認ポイント
家賃収入は、原則として所得税の「不動産所得」として、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します(No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)/国税庁)。
ここで注意したいのが、住宅ローンの返済額のうち、元金の返済は必要経費になりませんという点です。必要経費になり得るのは、賃貸している建物などを取得するための借入金の利子の部分で、返済額のうち元本に相当する部分は必要経費になりません(借入金利子/国税庁)。毎月の返済額をそのまま経費として見込むと、税務上の所得と実際の現金の動きがずれます。
火災保険も確認が必要です。自宅として契約している火災保険は、第三者へ賃貸すると建物の使われ方が変わります。日本損害保険協会の解説でも、保険期間の途中で契約内容に変更が生じた場合に保険会社へ知らせる「通知事項」が示されています。
募集を始める前に、保険会社または代理店へ「自宅を第三者に賃貸する予定」と伝え、現在の契約を続けられるか、必要な補償に不足がないかをご確認ください。
家賃をいくらに設定できるかについては、南城市で戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイントと貸す前の確認事項で、査定で見ている項目を整理しています。
貸したあとに自分が戻って住む予定がある場合は、契約の種類が重要になります。一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、期間が満了しても、貸主の側から更新を断るには「正当の事由」が必要です(借地借家法第28条)。「自分が戻りたいから」という理由だけで、当然に契約を終了できるわけではありません。
期間を区切って貸す方法としては、定期建物賃貸借(定期借家契約)があります。公正証書による等、書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないことを定められる仕組みです(同法第38条第1項)。
契約の前には、原則として、更新がなく期間満了により終了することを記載した契約書とは別の書面を交付して説明する必要があります(同法第38条第3項)。借主の承諾を得て、政令で定める方法による電磁的方法で提供できる場合もあります(同条第4項)。この説明をしなかったときは、更新がないとする定めは無効になります(同条第5項。あわせて定期建物賃貸借 Q&A/国土交通省)。
もうひとつ、戻る予定がある場合に欠かせないのが期間満了の通知です。契約期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了により契約が終了する旨を借主へ通知する必要があります。この通知をしないと、期間が満了しても契約の終了を借主へ主張できません。
通知が遅れた場合も、通知の日から6か月を経過するまでは終了を主張できません。戻る時期を決めて貸すときは、契約時に終了通知の時期もあわせて管理しておきます。
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補足
床面積200㎡未満の居住用建物の定期借家契約では、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により、借主がその建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合、借主は1か月前の申入れにより解約できます。貸主の予定どおりに期間が満了するとは限らない点も、収支を見込むときの前提になります。
契約書の文言や説明書面の内容は弁護士へ、募集条件と期間の設定については当社のような不動産会社へ、それぞれ確認しながら進めることをお勧めします。

住宅ローンが残っている家では、貸し出しが認められなかった場合や、収支が合わない場合に、売却を含めて検討することになります。
売却でローンを完済できるかは、想定売却価格だけでなく、仲介手数料、抵当権抹消登記の費用、繰上返済手数料などを差し引いた手取り額と、決済日時点の完済額を比べて確認します。査定額と残債の差だけで判断せず、借入先へ完済額と手続きの期限もあわせて確認してください。この点は住宅ローンが残っている家は売れる?売却の進め方と確認したいことで整理しています。
将来の売却も考えている場合は、税務上の期限もあわせて確認します。自宅として住んでいた家屋は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るなど、一定の要件を満たせば、居住用財産を売ったときの3,000万円の特別控除の対象になり得ます。住まなくなったあとに賃貸へ出していたこと自体で、直ちに対象から外れるわけではありません(No.3302 マイホームを売ったときの特例/国税庁)。ただし、貸している間に期限を過ぎることはあります。ほかにも要件があるため、売却で利益が出そうな場合は、貸す前に税理士または所轄の税務署へご確認ください。
貸す場合は毎月の収入が続くかわりに、修繕や入居者への対応が続きます。売る場合は一度で完了しますが、その後の収入はありません。どちらが良いかは、戻る予定の有無、建物の状態、ご家族の今後の予定によって変わります。
南城市や沖縄県南部では、進学や就職でご家族が本島中南部へ移った後も、いずれ戻る可能性を残しておきたいというご相談があります。そうした場合は、期間を区切って貸す方法と売却の両方を、金額と制約の両面で比べてから決めることをお勧めします。
契約内容によって扱いが異なるため、借入先へご確認ください。家賃を受け取るかどうか、誰が住むかによって判断が変わることがあります。無償で親族に住んでもらう場合でも、契約者本人が住まなくなることに変わりはないため、事前の相談をお勧めします。
金融機関と契約内容によります。賃貸を認めるかわりに条件を変更する場合や、賃貸用の借入れへの切り替えを求める場合があります。金利や返済期間の条件も含めて、借入先へ確認してください。
空き家にすることは第三者へ賃貸することとは異なりますが、住宅ローン上の居住要件や届出の要否は、金融機関と契約内容によって異なります。住まなくなる前に借入先へ確認しておくと安心です。【フラット35】では、返済中に住所や氏名が変わった場合、返済中の金融機関へ必ず届け出ることとされています(住所・氏名等が変わったとき/住宅金融支援機構)。空き家にする前に、住まなくなる理由、予定している期間、戻る予定の有無を借入先へ伝えて確認してください。住まなくなることで住宅ローン控除の取扱いが変わる点も、貸す場合と同じです(No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等/国税庁)。空き家のまま置いておく場合の管理や固定資産税については、空き家の固定資産税はどうなる?軽減が外れる2つの場面と負担の考え方もあわせてご覧ください。
相続した家に住宅ローンが残っていない場合、金融機関への確認は不要です。ただし、名義や相続人の同意の確認は別に必要になります。相続した実家を貸すには?沖縄で戸建て賃貸を始める前に確認したいことで手順を整理しています。
住宅ローンが残っている家を貸せるかどうかは、家賃の相場ではなく、借入先の金融機関の判断と契約内容によって決まります。募集や入居者探しを始める前に、事情と期間を伝えて相談してください。
【フラット35】では、転勤等のやむを得ない事情で一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提とした賃貸が可能とされており、住所変更手続が必要です。民間の住宅ローンは商品ごとに定めが異なるため、契約書の資金使途を確認したうえで借入先へ相談することになります。
あわせて、住宅ローン控除は住まなくなると原則として受けられなくなります。すでに控除の適用を受けている方が、転任の命令などのやむを得ない事情で家族とともに転居し、将来の再適用を希望する場合は、居住しなくなる日までに届出が必要です。入居した年の12月31日までに家族とともに退去する場合などは取扱いが異なるため、届出の要否は所轄の税務署または税理士へご確認ください。
収支では、ローン返済の元金が必要経費にならない点と、火災保険の契約内容を保険会社へ確認する点も押さえておきます。
戻る予定があるなら契約の種類まで含めて設計します。契約期間が1年以上の定期借家契約では、期間満了の1年前から6か月前までの終了通知も必要です。そのうえで売却と比べて判断することをお勧めします。
この記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・契約・税務の判断は、状況によって異なります。住宅ローンの取扱いについては借入先の金融機関へ、税務については税理士または所轄の税務署へ、契約内容や法的な判断については弁護士へご確認ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。