


「相続した土地の隅に、うちの墓があります。この土地は売れるのでしょうか」。南城市や沖縄県南部で土地のご相談をいただくなかで、こうしたご質問を受けることがあります。屋敷の一角に拝所(ウガンジュ)が残っている、畑の中に亀甲墓が建っている、といったご相談もあります。
先にお伝えしたい結論があります。敷地内にお墓や拝所がある土地でも、売却できないと決まっているわけではありません。ただし、通常の土地売却にはない確認と段取りが加わります。
そしてもうひとつ大切な点があります。この件は、不動産の手続きより先に、ご家族や門中(もんちゅう)の意向をまとめておかないと前に進みにくいということです。お墓は法律の手続きだけで動かせるものではなく、関わる方の合意が土台になります。
この記事では、墓地に関する法律上の扱い、沖縄の個人墓地・拝所の位置づけ、移す場合と残す場合それぞれの進め方、売却前に確認したいことを順に整理します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月01日
最終更新日:2026年07月29日
情報確認日:2026年07月29日
この記事の目次
敷地内の墓や拝所をどうするかは、次の順番で進めると話がまとまりやすくなります。
順番が入れ替わると止まりやすくなります。たとえば、承継者や門中の合意が固まらないまま買主を探し始めると、契約の直前で条件を作り直すことになりかねません。

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先に結論
敷地内に墓や拝所がある土地は、「誰が承継しているか」→「移すか残すか」→「役所での確認」→「売却条件」の順に決めます。売り出しの前にこの見通しを立てておくと、落ち着いて進められます。
混乱しやすいところなので、最初に整理します。民法897条は、系譜・祭具・墳墓の所有権について、通常の相続財産とは別に承継すると定めています。指定があればその方が、なければ慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき方が承継し、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めるという仕組みです(出典:e-Gov法令検索「民法」第897条)。
| 対象 | 根拠となる決まり | 誰が関わるか |
|---|---|---|
| 土地そのもの(所有権) | 民法・不動産登記法 | 所有者(相続の場合は相続人全員) |
| お墓(墳墓)・墓地 | 民法897条/墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法) | 祭祀を主宰する方、市町村(許可・台帳) |
| 祭具(位牌・仏具など) | 民法897条 | 祭祀を主宰する方 |
| 拝所 | 性質によって異なる(祭具にあたる部分/土地上の工作物/土地とその利用関係) | 祭祀を主宰する方、門中、土地の所有者 |
土地を所有していることと、その上のお墓を管理する立場は、法律上は別のものです。土地の名義人だからといって、お墓の扱いを一人で決められるとは限りません。

墳墓や祭具は、民法897条による祭祀承継の対象です。遺産分割協議で法定相続分に応じて分けるものではなく、承継する方が引き継ぎます。
一方で拝所は、性質が一つに定まりません。祭具にあたる部分もあれば、土地に固定された工作物として扱われる部分もあり、その土地をどう使ってきたかという利用関係の問題になることもあります。拝所があることをもって、その土地そのものまで当然に祭祀財産になるとは言えません。どう整理するかは、個別の事情を踏まえて判断することになります。
また、承継者の確認やご家族の話し合いは、土地の分け方が決まる前でも始められます。ただし、分筆・売却・墓石の撤去・通路の設定など、土地の処分や現状の変更を伴う場面では、土地の所有者や相続人との調整が別途必要です。お墓の話だけで完結するわけではありません。
仏壇や位牌(トートーメー)も祭具として扱われます。あわせて整理したい方は、実家を売るとき仏壇(トートーメー)はどうするかもご覧ください。
墓埋法は、墓地を「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域」と定義しています。墳墓は「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」です。
そして、墓地を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定められています(出典:e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第10条)。
沖縄県は、墓地・納骨堂・火葬場を経営しようとする者は「県知事又は権限の委譲を受けた市町村長の許可を受けなければなりません」と案内しています。私有地に個人墓を設置する際にも、同様に許可が必要とされています。個人墓が無秩序に散在すると、生活環境の悪化や無縁墳墓による都市計画への障害が発生する、という理由も示されています(出典:沖縄県「墓地等に関すること」)。
沖縄県が公表している墓地等の担当部局一覧(令和4年3月31日現在)では、南城市の担当部局は生活環境課とされています。南城市も、市が墓地の許可業務等を行うための指針として「南城市墓地基本計画」を策定しており、お墓を建てる際には南城市との調整や許可が必要と案内しています(出典:南城市「墓地基本計画」)。
どの手続きが必要かはお墓の状況によって変わります。新設・移設・廃止のいずれを検討する場合も、まずは生活環境課へご相談ください。
気をつけたいのが、古くからあるお墓では、許可の記録や台帳の記載が確認できないことがあるという点です。墓埋法の施行は昭和23年(1948年)で、それ以前から続く墓や、代々受け継がれてきた門中墓もあります。
記録が見当たらないことは、それだけで違法と判断されるものではありません。設置された時期や、これまでどのように使われてきたかを整理したうえで、市に状況を確認するのが先になります。
厚生労働科学研究にもとづく公益社団法人全日本墓園協会「墓地の経営・管理に関するFAQ」でも、個人墓地については祭祀承継者が存在するかを調査し、実態を把握することが重要だと指摘されています。
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役所への確認は、責める目的ではありません
許可や台帳の状況を市に確認するのは、過去を問題にするためではなく、これからの手続き(移す・残す・名義を整える)を正しく進めるために必要な作業です。分からないまま自己判断せず、生活環境課へご相談ください。
お墓を別の場所へ移すことを「改葬」といいます。改葬は、市町村長の許可を受けなければ行えません。市町村長は、許可にあたって改葬許可証を交付するとされています(出典:e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第5条・第8条)。
南城市は、市内のお墓(納骨堂)から別のお墓等にご遺骨を移す際には、改葬許可の手続きが必要と案内しています。市のページでは、次の書類が様式と記入例つきで公開されています(出典:南城市「墓地の改葬について」)。
同ページでは、許可証の発行には1週間程度を要すると案内されています。申請の受付や書類の確認方法については、生活環境課へお問い合わせください。
改葬では、法律で定められた手続きと、ご家庭や地域の慣習にもとづく対応が同時に進みます。混ざると分かりにくくなるため、分けて整理します。
法律で必要になる手続き
宗教上・慣習上の対応(法律上の義務ではありません)
儀礼の内容について、当社が正しい形をお示しできる領域ではありません。門中の年長の方や、地域で相談できる方へお尋ねください。
改葬は、受け入れ先の決定、承諾書の取り付け、申請、儀礼の日取り、石材業者の手配と、複数の段取りが連なります。一方で不動産の売買は、買主が決まってから引き渡しまで数週間から数か月程度で進むことがあります。
引き渡し日までに改葬を終える前提で契約するなら、逆算して余裕のある日程を組む必要があります。決まっていない段階で引き渡し日を先に確定させると、調整が窮屈になります。
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改葬を伴う売却で確認したいこと
移さずに残す、という選択もあります。門中墓のように、簡単には動かせないお墓もあります。この場合、売買の条件として次の3点を決めておく必要があります。

お墓や拝所の部分だけを分筆して手元に残し、それ以外を売却する方法があります。この場合、分筆の前提として測量や境界の確認が必要になります。境界の確認には隣地所有者の立会いが求められることがあり、時間がかかることもあります。
測量・分筆の登記は土地家屋調査士、所有権の移転登記は司法書士の業務です。当社がお手伝いできるのは、売却全体の段取りと専門家へのお取り次ぎまでとなります。境界の確認については、境界が分からない土地の売却で確認したい対処法で詳しく整理しています。
分筆して墓を残しても、そこへ行く道が売却部分を通る形になることがあります。将来にわたってお参りできるようにするには、通行についての取り決めを書面にしておくことが大切です。
口頭の了解だけでは、買主がさらに第三者へ売却した際に、同じ扱いが続く保証がありません。当事者間の合意にとどめるのか、地役権のように登記できる権利を設定するのかによって、その後の効力の及び方が変わります。
将来の第三取得者にも効力を及ぼしたい場合は、登記できる権利の設定も含めて、弁護士や司法書士と検討してください。どの方法が適するかは、土地の形状や当事者の関係によって異なります。
お墓や拝所が敷地内または隣接して残ることは、買主にとって重要な判断材料です。事前の説明を省くと、契約後の行き違いにつながります。
売主には、契約の内容に適合しない状態について責任が生じる場合があります(契約不適合責任の基本と注意点)。年に何回、どの範囲に、誰が立ち入るのかまで含めて、あらかじめ書面で共有しておくほうが安全です。
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買い手が限られる可能性があります
墓や拝所が残る土地は、購入を検討する方が限られることがあります。価格や売却までの期間にも影響し得るため、「移す場合」と「残す場合」の両方について見通しを聞いたうえで判断されることをおすすめします。
沖縄では、屋敷の一角や土地の中に、遺骨を納めていない拝所が残っていることがあります。ヒヌカンを祀っていた場所、屋敷の神を祀る場所、地域で受け継がれてきた御願所などです。
墓埋法が定める墳墓は「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」です。したがって、遺骨や焼骨が納められていないことが確認できる拝所であれば、通常は墓埋法上の墳墓には当たらないと考えられます。
ただし、過去にどう使われてきたか、遺骨が納められていないと確認できるかがはっきりしない場合は、拝所として扱ってよいか自体を判断できません。この場合は、自己判断せず生活環境課へご確認ください。
拝所は、次のように性質が分かれます。どれに当たるかによって、誰と何を決めるかが変わります。
整理すると、拝所があるからといって、その土地までが当然に民法897条の祭祀財産になるわけではありません。一方で、拝所の一部が祭具として承継の対象になることもあります。どこまでが祭祀承継の話で、どこからが土地の所有権の話なのかは、個別に確認が必要です。
祭りごとの作法や、拝所を動かす際の儀礼については、当社が正しい形をお示しできる領域ではありません。門中の年長の方や、地域で相談できる方へお尋ねください。判断に法的な整理が必要な場合は、弁護士へご相談ください。
法律の手続きよりも、実際に時間がかかるのはこの部分です。
お墓や拝所には、土地の名義人以外にも関わる方がいます。県外にお住まいのご兄弟、地元に残るご親族、門中の年長の方など、確認すべき相手が複数になることがあります。関わる方が多いほど、結論が出るまでに時間がかかります。
イエリテの実務から
南城市で敷地内にお墓や拝所がある土地のご相談をお受けした際に、墓地としての許可を受けているのか、市の台帳に載っているのかを、その場では確認できなかったケースがあります。登記や公図を見ても、お墓の存在がそのまま表れているとは限らないためです。
こうした場合、当社はまず市の窓口で状況を確認していただくようご案内しています。あわせてお伝えしているのが、役所での確認と並行して、門中やご家族の意向を先に整理しておいてくださいということです。手続きの道筋が見えても、関わる方の合意がまとまっていなければ、そこで止まってしまうためです。
祭祀の承継者が決まらない場合には、家庭裁判所に承継者を定めてもらう手続きがあります。民法897条2項が、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めると規定しているためです。
親族間の話し合いが難しい状態であれば、弁護士や家庭裁判所の手続き案内へご相談ください。
売り出しの前に、次の5点を確認しておくと、その後の判断がしやすくなります。
名義が先代・先々代のままになっている場合は、亡くなった祖父名義の土地を売るときの流れもあわせてご確認ください。
墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしているものは、相続税がかからない財産とされています。ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものは相続税がかかります(出典:国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」)。
ここで注意したいのが、お墓がある土地なら全体が非課税になる、という意味ではないことです。どの範囲が墓所として扱われるかは、その土地の使われ方などによって判断される場合があります。宅地や畑の一部に墓がある土地では、範囲の考え方が問題になることもあります。
また、墓地部分が固定資産税の課税上どう扱われているかは、毎年届く課税明細書で確認できます。相続税・固定資産税のいずれも、個別の判断は税理士、所轄の税務署、南城市の税務担当課へご確認ください。
移す場合と残す場合で、かかる費用は変わります。金額は条件によって大きく異なるため、見積もりを取って比べてください。
売却できないと決まっているわけではありません。ただし、お墓を移すのか残すのかによって、必要な手続きと売却条件が変わります。移す場合は改葬許可、残す場合は分筆や通行の取り決めが関わります。
現在お墓がある市町村へ改葬許可を申請します。改葬は市町村長の許可を受けなければ行えないと定められています(墓地、埋葬等に関する法律第5条)。南城市内のお墓であれば、市が申請書の様式と記入例を公開しており、許可証の発行には1週間程度を要すると案内されています(南城市「墓地の改葬について」)。
記録が確認できないことは、それだけで違法と判断されるものではありません。登記や公図だけでは、墓地としての許可や台帳の状況は分かりません。設置された時期や使われ方を整理したうえで、南城市生活環境課へ状況を確認するところから始めてください。
遺骨や焼骨が納められていないことが確認できる拝所であれば、通常は墓埋法上の墳墓には当たらないと考えられます。ただし、過去の使用状況や遺骨の有無がはっきりしない場合は判断できません。市へご確認ください。あわせて、門中やご家族への確認も必要です。
土地の所有権と、お墓を承継する立場は別のものです。民法897条により、系譜・祭具・墳墓は相続財産とは別に承継されます。拝所については性質によって扱いが分かれるため、名義人であっても、承継者や門中の意向を確認せずに進めることはおすすめできません。
通行についての取り決めを書面にしておくことが大切です。口頭の了解だけでは、買主がさらに第三者へ売却した際に同じ扱いが続く保証がありません。将来の第三取得者にも効力を及ぼしたい場合は、登記できる権利の設定も含めて、弁護士や司法書士と検討してください。
決めていない段階でもご相談いただけます。お墓や拝所が関わる場合、確認や話し合いに時間がかかることがあるため、早い段階で全体の見通しを立てておくほうが落ち着いて進められます。

本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別のケースによって、判断や手続きの内容は異なります。墓地の許可・台帳・改葬の手続きは南城市生活環境課などの自治体窓口へ、測量・分筆・境界は土地家屋調査士へ、相続登記や所有権の移転登記は司法書士へ、祭祀承継者の指定、祭祀財産の範囲、親族間の紛争、契約条件の法的な設計は弁護士へ、相続税や譲渡所得の判断は税理士または所轄の税務署へご相談ください。宗教上の作法については、門中の年長の方や地域で相談できる方へお尋ねください。法令や制度、自治体の運用は変更されることがあります。
南城市でお墓や拝所のある土地の扱いに迷っている方へ
「まだ売ると決めたわけではない」「門中や親族と話し合っている途中」という段階でも構いません。何をどの順番で確認すればよいか、役所の窓口はどこか、移す場合と残す場合で売却条件がどう変わるかを一緒に整理します。必要に応じて土地家屋調査士・司法書士・弁護士・税理士などの専門家へのお取り次ぎもご案内します。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の土地売却について、地域事情や土地の条件を踏まえてご提案します。