


「土地を売ろうと思って調べたら、名義が亡くなった祖父のままだった」。南城市や沖縄県南部で土地のご相談をいただくなかで、こうしたお話を伺うことがあります。
固定資産税は自分が払っている。草刈りや管理も自分がしている。それでも、法務局の登記簿上の所有者が祖父母やそれ以前の代のままであれば、その土地はご自身の名義ではありません。
名義を変えないまま年月が過ぎると、相続する権利を持つ方が世代をまたいで増えていきます。父もすでに亡くなっている、という場合はなおさらです。
この記事では、次の疑問に順番に答えます。祖父名義のままでも売却できるのか、誰の同意が必要なのか、最初に何を調べればよいのか、売却までにどのくらいの時間と費用がかかるのか、そして相続人と連絡が取れないときはどうすればよいのか。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年07月25日
最終更新日:2026年07月25日
情報確認日:2026年07月25日
この記事の目次
先に結論をお伝えします。名義が祖父のままでも、相続登記で名義を現在の相続人へ移せば、土地は売却できます。
逆にいえば、名義が亡くなった方のままの状態では、買主へ所有権を移す登記ができません。買主が見つかっても、相続登記が終わるまで引き渡しへ進めないということです。
相続登記そのものは司法書士へ依頼する手続きですが、その前段階である「今の名義はどうなっているか」「相続人は誰か」「この土地は売れる状態か」の確認は、登記を待たずに始められます。
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先に結論
売却の順番は、名義の確認 → 相続人の確定 → 相続登記 → 売却です。相続登記が済んでいない段階でも、現状の確認や売却の見通しの相談は進められます。
固定資産税の納税通知書がご自身宛てに届いていると、名義も自分に変わっていると受け止められることがあります。しかし、税金を誰に請求するかという課税上の取り扱いと、法務局の登記簿に記録された所有者は別のものです。
納税通知書が届いていることは、登記の名義がご自身に移った証明にはなりません。名義人が亡くなった後の課税の扱いや必要な届出については、南城市役所の税務課へご確認ください。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、固定資産税を長年ご自身で納めてきたことから、名義もご自身に移っていると考えていらっしゃるケースがあります。
納税と登記は別の手続きです。土地の権利がどうなっているかは、納税通知書ではなく登記簿でご確認ください。
名義の現状は、法務局が発行する登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。所有者の氏名・住所、抵当権などの権利関係が記載されています。
土地の場所や地番が分からない場合は、市役所で名寄帳(固定資産課税台帳)を取ると、その市町村内で名義人が所有している不動産を一覧で確認できます。南城市の固定名寄(課税台帳)証明書は、相続権のあることが確認できる書類(戸籍謄本など)を持参すれば相続人も請求でき、手数料は1通300円です(出典:南城市「固定名寄(課税台帳)証明書」/2026年7月25日確認)。
亡くなった方がどこに不動産を持っていたか分からない場合は、2026年(令和8年)2月2日から始まった所有不動産記録証明制度が使えます。登記名義人の相続人なども請求でき、全国の法務局で書面またはオンラインでの請求が可能です(出典:法務省「所有不動産記録証明制度について」)。
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名義を確認する3つの方法
登記の名義が変わっていなくても、法律上の権利は相続人へ移っています。遺言がなく、相続放棄などもなく、遺産分割の話し合いがまだ済んでいない場合、その土地は相続人が共有している状態です。
法務省も、遺産は「法律で定められた相続分の割合で相続人らが共有することになります。共有状態になった財産の管理・処分は、相続人同士で決めなければならず、不便なことが多くなります」と説明しています(出典:法務省「不動産を相続した方へ 〜相続登記・遺産分割を進めましょう〜」)。
土地全体を通常の条件で売るには、共有している相続人全員の合意が必要です。名義を1人へまとめる場合も、まず全員での話し合い(遺産分割協議)が要ります。

相続登記をしないまま年月が過ぎると、相続人自身が亡くなり、その配偶者や子へ権利が引き継がれます。相続が重なったこの状態を数次相続といいます。
法務省は、遺産分割をしないまま「時間が経つと更に次の世代の相続が発生(数次相続)して権利関係が複雑になってしまいます」としています。
たとえば、祖父が亡くなった時点の相続人が祖母と子3人だったとします。相続登記をしないうちに長男が亡くなると、長男の権利はその配偶者と子へ引き継がれます。
この時点で、話し合いに加わる方は4人から6人に増えています。さらに次の世代でも相続が起きれば、いとこやその子など、これまで会ったことのない方が関係者に加わることもあります。
関係者が10人を超えるケースもあり、そうなると連絡先の把握から必要になります。人数が増えるほど、合意までにかかる時間も長くなります。
法律上は、共有している相続人が自分の持分だけを売ることもできます。ただし、実際に選ぶ方は限られます。
土地の一部の権利を買っても買主は自由に使えないため、買い手が見つかりにくく、土地全体を売る場合に比べて価格が低くなりやすいためです。ほかの相続人に知らせないまま進めると、家族の間で新たな問題を生むこともあります。
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注意点
持分だけの売却は、価格や親族関係への影響が大きい選択です。まずは相続人全員で権利関係を整理し、土地全体として売却する方法から検討することをお勧めします。
イエリテの実務から
古い名義のままの土地について、いつかは整理しようと思いながら年数が過ぎている、というご相談をいただくことがあります。
手続きの負担は、相続人が少ないうちほど軽くなります。売る・売らないを決める前でも、今の名義と相続人の範囲を確認しておくことが、その後の選択肢を広げます。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が法律上の義務になりました。不動産の所有権を相続で取得したことを知った日から3年以内が期限です。
2024年4月より前に発生した相続も対象で、その場合は2027年(令和9年)3月31日までに登記が必要とされています。祖父母の代の相続であっても、この経過措置の対象です(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります。期限に間に合わないときは、自分が相続人であることを法務局へ申し出る相続人申告登記という制度もありますが、これは義務を果たすための手続きで、売却のための相続登記とは別のものです。
制度の詳しい内容は「相続登記の義務化とは?南城市で相続した不動産の手続きと期限」で整理しています。

祖父名義の土地を売るまでには、大きく分けて「現状確認」「相続人の確定」「登記」の3つの段階があります。ここを終えてから、通常の売却手続きに入ります。
登記事項証明書で名義人と権利関係を確認します。あわせて名寄帳で、同じ名義人が持つ他の土地がないかも見ておきます。
古い土地では、地目が農地のままだったり、隣地との境界が確認できていなかったりすることもあります。土地の条件によっては、登記とは別の手続きが加わります。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集め、相続人が誰なのかを確定します。祖父の分だけでなく、その後に亡くなった方の分も必要になります。
相続人が多い場合は、法定相続情報証明制度が役立ちます。戸籍一式と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を法務局へ提出すると、登記官が確認したうえで、認証文の付いた写しを無料で交付してもらえる制度です(出典:法務局「法定相続情報証明制度について」)。
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補足
法定相続情報一覧図の写しは、銀行の払戻しなど他の相続手続きにも使えます。戸籍の束を窓口ごとに出し直す手間を減らせるため、手続きが複数ある場合に便利です。
相続人が確定したら、誰がその土地を取得するかを全員で話し合い、遺産分割協議書にまとめます。その内容にもとづいて、法務局へ相続登記を申請します。
登記が済めば、通常どおり査定や売却へ進められます。売却全体の流れは「不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまで」をご覧ください。
期間は、相続人の人数と書類の集めやすさで大きく変わります。「何か月で終わります」と一律には言えません。
比較的進めやすいのは、次のような場合です。
一方、次のような事情があると長期化しやすくなります。
数次相続では、亡くなった方ごとに出生から死亡までの戸籍をさかのぼるため、書類集めと連絡だけで数か月かかることもあります。役所への郵送請求が重なると、そのぶん日数も伸びます。
そのため、売却の予定がある場合は、買主を探し始める前に、登記簿と相続人の範囲を確認しておくことをお勧めします。順番が逆になると、買主を待たせたまま手続きを進めることになります。
相続登記から売却までにかかる費用は、大きく「書類の取得費用」「登録免許税」「専門家への報酬」に分かれます。
まず、相続人を確定するために次のような書類を集めます。通数が多くなるほど、取得費用も積み上がります。
次に、相続登記の際に納める登録免許税です。相続による所有権移転登記の税率は、原則として不動産の価額の0.4%(1000分の4)です。ただし土地には免税措置があり、次の場合は課されません。いずれも2027年(令和9年)3月31日までの取り扱いです(出典:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)。
祖父から父へ、父から子へと相続が続いているケースでは、中間の父名義にするための登記が1つ目の免税に当たることがあります。免税を受けるには申請書へ根拠条項を記載する必要があるため、司法書士へ依頼する場合も、この措置を使えるか確認しておくと安心です。
このほか、状況に応じて次の費用がかかります。金額は依頼先や案件の内容によって異なるため、事前に見積もりを確認してください。
数次相続では、集める戸籍の範囲も関係者の人数も増えます。そのぶん、通常の相続登記より費用が高くなりやすい点は、あらかじめ見込んでおくと安心です。
相続人が多いほど、全員がすぐに集まるとは限りません。連絡が取れない方がいる場合は、次のように進めます。
ここで、所在が分からない場合と、所在は分かるが話し合いに応じてもらえない場合とでは、その後の手続きが変わります。前者では不在者財産管理人の選任、後者では遺産分割調停など、家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
どちらも個別の事情によって取れる方法が変わるため、この段階まで来たら弁護士や司法書士へご相談ください。放置しても関係者が増えるだけで、状況は解決しません。
古い名義の土地では、登記以外にも確認しておきたい点があります。売却の可否や価格に関わる部分です。
まず、家や墓、位牌(トートーメー)を誰が受け継ぐかという家族の話し合いと、土地の法的な相続は別に整理する必要があります。承継者が決まっていることと、登記や遺産分割が済んでいることは同じではありません。仏壇の扱いについては「実家を売るとき仏壇(トートーメー)はどうする?」で触れています。
土地そのものについては、次の点を確認します。
また、相続人が沖縄県外に住んでいる場合は、書類のやり取りや署名・押印に日数がかかります。親族の間では「あの土地は誰が引き継ぐ」と了解ができていても、書面や登記が整っていなければ、売却の手続きは進められません。
なりません。納税は課税上の手続きであり、登記簿上の所有者を変更するものではありません。名義を移すには相続登記が必要です。
「一代飛ばす」という意味ではありませんが、結果として父名義を経由せずに登記できる場合があります。祖父が亡くなり、その後に父も亡くなっている場合は、祖父から父への相続と、父から現在の相続人への相続という2段階の相続関係を、それぞれ戸籍などで証明する必要があります。そのうえで、遺産分割協議の内容によっては、現在の相続人へ直接登記できることがあります。相続が起きた順番や遺産分割の状況によって扱いが変わるため、司法書士へご確認ください。
貸すこと自体が直ちにできなくなるわけではありませんが、注意が必要です。相続人全員の共有状態では、貸し方によって他の相続人の同意が必要になります。後々のトラブルを避けるためにも、権利関係を整理してから進める方法をお勧めします。
できます。登記が済んでいない段階でも、土地の現状や周辺の取引状況から、売却の見通しをお伝えすることは可能です。登記が必要な部分は司法書士へおつなぎしながら、並行して準備を進められます。

最初の一歩は、登記事項証明書で今の名義を確認することです。そこから、相続人の範囲と必要な手続きが見えてきます。
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ご相談のときにあると助かるもの
南城市で、名義がそのままになっている土地のご相談
相続登記が済んでいない段階でも、売却するかどうか決まっていない段階でも構いません。登記事項証明書や固定資産税の納税通知書を一緒に見ながら、今の名義と相続人の範囲、その土地が売れる状態かどうかを整理するところからお手伝いします。
概算の査定や売却の見通しの確認もできます。相続登記や遺産分割、測量など専門家の確認が必要な部分は内容を整理したうえで、司法書士・弁護士・土地家屋調査士などの相談先をご案内します。上記の書類がすべてそろっていなくても構いません。南城市および沖縄県南部の土地について、お気軽にご相談ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。手続きの内容、期間、費用は個別のケースによって異なります。
相続登記の申請や必要書類は司法書士、遺産分割をめぐる争いや法的な判断は弁護士、税務の判断は税理士、土地の面積・境界に関わる事項は土地家屋調査士、固定資産税の課税や届出の取り扱いは南城市役所(税務課)が窓口です。法令や制度は変更されることがあるため、手続きの際は最新の情報をお確かめください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
相続した不動産の扱いでお悩みの方は、状況を整理するところからお気軽にご相談ください。