


「ブロック塀が隣の敷地に少し入っているようだ」「庭木の枝が隣家の屋根にかかっている」「隣の木の枝がこちらに伸びてきている」。売却を考え始めて現地を見直したときに、こうした点が気になったというご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、越境物がある土地でも、売却を進められる場合があります。ただし、そのまま放置して契約を進めるのは避けたいところで、状況を整理し、買主に正しく伝えることが前提になります。
この記事では、越境物の種類と確認の手順、2023年4月1日に施行された民法改正のルール、売却前にとれる3つの対処法までを整理します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月4日
最終更新日:2026年7月29日
情報確認日:2026年7月29日
この記事の目次
越境物があること自体が、売買を法律上できなくする決まりはありません。実際に、越境を残したまま引き渡す形で取引が成立することもあります。
ただし、買主にとって越境は「将来の費用」や「隣地との関係」に直結する条件です。何も説明しないまま引き渡すと、引き渡し後に問題が表面化し、売主が責任を問われる可能性があります。
越境といっても、こちらから出ているのか、隣から入ってきているのかで、進め方は変わります。次のどれに近いかを確認してみてください。
| 状況 | 基本的な確認・対応 |
|---|---|
| 自分側から隣地へ越境している | 是正するか、覚書を交わすか、買主への説明を検討します。 |
| 隣地側から自分の土地へ越境している | 隣地所有者へ確認し、切除・撤去・覚書について相談します。 |
| 境界自体が分からない | 先に資料の調査、測量、境界の確認を行います。 |
| 隣地所有者と連絡が取れない | 登記の確認、写真での記録、専門家への相談を進めます。 |
どちらの方向の越境かによって、話し合いの相手も、費用を負担する側も変わります。両方が同時に起きていることもあります。
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先に結論
越境があるから売れない、というわけではありません。撤去するか、覚書を交わすか、現況のまま伝えて売るか。この3つのどれを選ぶかを、越境の方向と隣地との関係を踏まえて決めていく流れになります。

越境物とは、隣の土地との境界線を越えて、こちら側または相手側にはみ出している構造物や樹木などのことです。地上だけでなく、上空や地中にも起こります。

境界付近のブロック塀は、確認しておきたい代表的なものです。どちらの所有かがはっきりせず、境界線をまたいで建っていることもあります。
民法229条では、境界線上に設けた境界標・囲障・障壁・溝・堀は、隣り合う土地の所有者の共有に属するものと推定すると定められています(出典:e-Gov法令検索「民法」/2026年7月29日確認)。あくまで「推定」であり、所有関係が別に明らかであればその内容が優先されます。
南城市内の土地を確認していると、境界付近に古いブロック塀や石積みが残っているケースがあります。古い構造物は、いつ、誰が、どの位置に設置したのかを確認できる資料が残っていないこともあります。
庭木の枝が隣地へ伸びている、あるいは隣地の木の枝がこちらへ入ってきている、というケースです。落ち葉や実の落下、日照への影響が話し合いのきっかけになることもあります。
枝と根では、民法上の扱いが異なります。この点は後ほど整理します。
建物の一部が隣地の上空にかかっている場合です。基礎や壁の位置は境界内でも、屋根の先端や雨樋、庇、エアコンの室外機だけがはみ出していることがあります。
上空の越境は足元だけを見ていても気づきにくく、見落とされやすい部分です。
イエリテの実務から
南城市内で現地確認を行った際に、屋根や雨樋、庇、室外機が隣地側の上空にかかっていることを確認したことがあります。敷地に立って足元だけを見ていると気づきにくく、少し離れた位置から建物全体を見上げて初めて分かる状態でした。売却をご検討の段階で、建物の上のほうまで含めて見ておくと、後の話し合いが進めやすくなります。
水道管や排水管が、隣地の地下を通っていることがあります。現地を見ただけでは分からないため、図面や工事の記録、市の担当課での確認が手がかりになります。
なお、他人の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道水などの継続的な供給を受けられない場合について、民法213条の2に、必要な範囲で他人の土地に設備を設置できるという規定が置かれています。ただし、損害が最も少ない方法を選ぶこと、あらかじめ通知すること、土地の損害に対して償金を支払うことなどが定められており、実際の可否は個別の状況によって変わります。
越境に気づいたとき、いきなり隣地へ相談に行く必要はありません。手元でできることから順に進めると、話し合いがまとまりやすくなります。
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ここに注意
手順1と2は、あくまで状況の把握です。境界標や公図があっても、それだけで境界が確定するわけではありません。実際の境界の確認には、資料の調査と現地の測量、隣地との確認が必要になります。
越境そのものが、すぐに大きな問題になるとは限りません。それでも、売却の場面では次のような影響が考えられます。
ブロック塀や建物などによって隣地の一部が長期間使用されているケースでは、占有の状況によって時効取得が争点になる可能性があります。ただし、越境が長期間続いているだけで、直ちに土地の所有権が移るわけではありません。占有の状況・意思・期間などの個別事情によって判断される問題ですので、気になる場合は弁護士にご相談ください。
隣地との関係については、民法に相隣関係の規定があります。2023年4月1日には、改正された規定が施行されました。
民法233条1項では、土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができると定められています(出典:e-Gov法令検索「民法」/2026年7月29日確認)。
つまり、伸びてきた枝を勝手に切ってよいわけではなく、原則は木の所有者に切ってもらう形です。
2023年4月1日施行の改正で、この原則を維持しつつ、次のような場合には自分で切り取ることができるとされました(民法233条3項)。
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用語解説
民法の条文では、樹木や竹をまとめて「竹木(ちくぼく)」と表現しています。庭木も、この竹木に含まれます。
枝と異なり、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができるとされています(民法233条4項)。枝と根で扱いが分かれている点は、間違えやすいところです。

法律上切り取ることができる場合でも、必要な範囲を超えないようにしたいところです。太い根を切ると、木が弱ったり枯れたり、風で倒れやすくなったりして、建物や外構へ影響が出ることも考えられます。
可能であれば、切る前に隣地所有者へひと声かけておくと安心です。木の状態や切り方に迷うときは造園業者や樹木の専門業者へ、隣地との間で意見が分かれるときは弁護士へ相談する方法があります。
民法209条1項では、境界付近の障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査または境界に関する測量、民法233条3項による枝の切取りという目的のために、必要な範囲内で隣地を使用することができると定められています。ただし住家については、居住者の承諾がなければ立ち入ることはできません。
このとき、使用の日時・場所・方法は隣地の所有者や隣地を現に使用している人の損害が最も少ないものを選ぶこと、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知することも定められています(民法209条2項・3項)。さらに、隣地の所有者や隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができるとされています(民法209条4項)。
条文に権利が定められているからといって、無断で自由に立ち入ってよいということではありません。必要な範囲にとどめること、事前に通知すること、損害の少ない方法を選ぶことが前提になります。実際に切る前に、まずは隣地の方へ声をかけ、話し合うところから始めることをお勧めします。
越境が分かった場合の進め方は、一つではありません。土地の状況と隣地との関係によって、選び方が変わります。
塀の作り直しや、枝の剪定、室外機の移設など、越境の状態を解消する方法です。買主にとって条件がはっきりするため、売却は進めやすくなります。
一方で、費用と時間がかかります。境界線をまたぐ古い塀のように、どちらの所有かがはっきりしないものは、撤去そのものについて隣地の方の合意が必要になることがあります。
越境の状態を認め合い、将来どうするかを書面で確認しておく方法です。すぐに撤去しない場合の現実的な選択肢になります。内容は、次の章で整理します。
越境を解消しないまま売却する方法です。売主の費用負担は抑えられますが、買主が越境の状態を承知したうえで購入することが前提になります。
越境の覚書は、隣り合う土地の所有者どうしで取り交わす書面です。決まった様式があるわけではありませんが、次のような点を整理しておくと、後々の判断材料になります。
気をつけたいのは、最後の「承継」の部分です。現在の所有者間で交わした覚書が、売却後の所有者に当然に効力を及ぼすとは限りません。
そのため実務では、売買契約書に承継の義務を記載する、買主から承継を確認する書面を受け取る、新しい所有者と隣地所有者との間であらためて書面を交わす、といった方法を検討することがあります。どの方法をとるか、またその法的な効力や文案については、弁護士にご確認ください。売却全体の進め方とあわせて整理したい場合は、不動産会社を窓口にすることもできます。
越境の状態は、買主が購入を判断するうえで重要な情報です。分かっていることを伝えずに契約を進めることは避けてください。
売主が把握している越境は、買主の購入判断に影響する可能性があります。口頭だけで終わらせず、買主が後から確認できる形で記録に残しておくことが大切です。
越境の内容は、物件状況等報告書、重要事項説明書、売買契約書の特約、覚書、写真や測量図など、状況に応じた書面で伝えます。どの書面にどのように記載するかは、越境の内容や取引条件によって異なりますので、担当する不動産会社と相談しながら決めていく形になります。
引き渡した不動産が契約の内容に適合しないときは、買主から修補などの履行の追完を請求されることがあります(民法562条)。これを契約不適合責任と呼びます。責任の範囲は契約の内容や免責の特約によっても変わるため、一律に決まるものではありません。考え方は、契約不適合責任の基本と売主の注意点で整理しています。
宅地建物取引業法47条1号は、宅地建物取引業者に対する規定です。宅地建物取引業者が、契約の締結について勧誘をするに際して、相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について、故意に事実を告げず、または事実でないことを告げる行為が禁じられています(出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」/2026年7月29日確認)。
つまり、売主から仲介会社へ正確に伝えていただくことが、そのまま買主への適切な説明につながります。分からない点や不確かな点も、そのまま共有していただいて構いません。
話し合いをしようにも、隣地の所有者と連絡が取れないことがあります。県外に住んでいる、相続登記が済んでおらず名義人がすでに亡くなっている、といった事情が背景にあることもあります。
こうした場合でも、できることはあります。
所有者の探索や、法的な手続きが必要になる場合は、司法書士や弁護士など、それぞれの専門家に相談する形になります。
越境の問題は、関わる専門家が分かれます。役割を知っておくと、相談先で迷いにくくなります。
越境の範囲を整理するには、そもそも境界の状況が分かっている必要があります。境界標が見当たらない、公図と現況が合わないといった状態であれば、境界が分からない土地の確認方法と対処法もあわせてご覧ください。

越境物がある土地でも、売却の道が閉ざされているわけではありません。状態を確認し、書面に残し、買主へ正しく伝えることが出発点になります。
次の一歩は、手元の資料の確認と、現地の写真です。塀の位置、庭木の枝、屋根や雨樋、そして分かる範囲で配管の経路まで記録しておくと、隣地との話し合いも、専門家への相談も進めやすくなります。
建物の解体を含めて考える場合は、古家付き土地を解体すべきかどうかの判断も参考になります。売却全体の段取りを知りたい方は、不動産売却の流れ(6ステップ)をご覧ください。
原則は、木の所有者に切ってもらう形になります。民法233条1項にその定めがあります。ただし2023年4月1日施行の改正により、切除を催告しても相当の期間内に切除されないとき、所有者や所在が分からないとき、急迫の事情があるときは、自分で切り取ることができるとされています(民法233条3項/出典:e-Gov法令検索「民法」)。まずは隣地の方への相談から始めることをお勧めします。
根については扱いが異なります。隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができるとされています(民法233条4項)。ただし、切ることで木が弱ったり枯れたりすることもありますので、必要な範囲にとどめ、事前に隣地の方へ伝えておくと安心です。
共有に属するものと推定されます。民法229条では、境界線上に設けた囲障や障壁などは、隣り合う土地の所有者の共有に属するものと推定するとされています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。ただしこれは推定であり、実際の所有関係が別に明らかであればそちらが優先されます。個別の判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。
当然に引き継がれるとは限りません。覚書は、これを交わした当事者間の取り決めであるためです。売買契約書へ承継の義務を記載する、買主から承継を確認する書面を受け取る、新しい所有者と隣地所有者との間であらためて書面を交わすといった方法を検討することがあります。具体的な効力や進め方は、弁護士にご確認ください。
| 資料名 | 発行元 | 確認日 | 記事内での使用箇所 |
|---|---|---|---|
| 民法(第209条・第213条の2・第229条・第233条・第562条) | e-Gov法令検索 | 2026年7月29日 | 隣地使用権と償金、設備設置権、境界線上の囲障の共有推定、枝と根の切除、契約不適合 |
| 宅地建物取引業法(第47条) | e-Gov法令検索 | 2026年7月29日 | 宅地建物取引業者に対する重要な事実の不告知の禁止 |
| 越境した木の枝の切取りルール【2023年4月改正】 | 神戸市 | 2026年7月29日 | 2023年4月1日施行の改正内容の確認 |
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別の土地によって、必要な対応は異なります。
法令や取り扱いは変更されることがあります。ご確認の際は、最新の情報をお確かめください。
越境が気になる土地のご相談について
越境の話は、隣地の方との関係が絡むため、切り出しにくいと感じる方もいらっしゃいます。まだ売ると決めていない段階でも、塀の位置が気になる、庭木が隣にかかっているようだ、といった現状の確認からご相談いただけます。株式会社イエリテは、南城市および沖縄県南部の土地のご相談に対応し、必要に応じて土地家屋調査士や弁護士などの専門家をご案内します。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
南城市や沖縄県南部の土地売却について、地域事情や土地の条件を踏まえてご提案します。