


離婚の話が具体的になってくると、「家をどうするか」が大きな論点になります。預貯金のように半分に分けられないうえ、住宅ローンや名義が絡むためです。
財産分与とは、夫婦が結婚している間に協力して築いた財産を、離婚のときに分け合う手続きのことをいいます(民法第768条)。家や土地も、その対象になります。
ただ、「家は半分ずつ」「協議書に書けばローンの名義も変わる」と受け止められていることがあり、後になって話が止まってしまう場面があります。
この記事では、財産分与で家を分けるときの考え方、売る・住み続けるといった選択肢、住宅ローンと名義の扱い、かかる税金を順番に整理します。2026年(令和8年)4月1日に施行された民法改正で変わった点も含めてご説明します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年07月26日
最終更新日:2026年07月26日
情報確認日:2026年07月26日
この記事の目次
先に結論をお伝えします。財産分与の対象になるのは、婚姻中に夫婦が協力して取得・維持した財産です。その取得・維持について、各当事者の寄与の程度は、異なることが明らかでないときは相等しいものとされます(民法第768条第3項)。
2026年(令和8年)4月1日に施行された改正民法では、家庭裁判所が分与の額と方法を定めるときに考慮する事情も条文に明記されました(出典:法務省「民法等の一部を改正する法律について〔令和8年4月1日施行〕」)。財産の額と寄与の程度に加えて、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮するとされています(出典:裁判所「財産分与請求調停」)。
寄与の程度が等しいとされることと、対象になる財産を機械的に半分ずつ分けることは、同じ意味ではありません。分与の額や方法は、上のような事情も踏まえて決まります。専業主婦・専業主夫として家事や育児を担っていた場合に、収入がないことを理由に寄与が小さいとされるわけではない、という点も、この考え方から導かれます。
ここが誤解されやすい部分です。民法は、夫婦の一方が婚姻前から有する財産と、婚姻中に自己の名で得た財産を、その人の特有財産と定めています(民法第762条第1項)。
ただし、財産分与の場面では、名義だけで対象かどうかが決まるわけではありません。登記や契約上の名義が一方だけであっても、婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持した財産は、財産分与の対象になり得ます。
一方、結婚前から所有していた財産や、婚姻中であっても相続・贈与によって取得した財産は、原則として特有財産として扱われます。名義だけで判断せず、購入資金の出どころや取得・維持の経緯を確認する必要があります。

家について、この整理が必要になりやすいのは次のようなケースです。
こうした事情があると、家の価値のうちどこまでが分与の対象かという整理が必要になります。「土地は特有財産、建物は共有財産」といった形で分けて考えることもあります。
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用語解説
共有財産は、婚姻中に夫婦が協力して取得・維持した財産です。名義がどちらであっても、財産分与の対象になり得ます。
特有財産は、婚姻前から持っていた財産や、婚姻中に相続・贈与で受け取った財産を指し、原則として分与の対象外です。どちらにあたるかは、名義だけでなく取得の経緯で判断されます。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談のなかには、離婚に伴って家を売りたいというお話もあります。その際、財産分与は家の価値を単純に半分ずつ分けるものだと受け止められていることがあります。
実際には、購入資金の出どころや土地の取得経緯によって、分ける対象そのものが変わることがあります。まず家の時価を把握し、あわせて購入時の資金の出どころを整理しておくと、話し合いの前提がそろいやすくなります。金額の分け方そのものについては、弁護士へご相談ください。
話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所へ財産分与を請求できます。この申立てには期限があります。
裁判所の案内では、「離婚した日の翌日から起算して5年を経過したときには、この申立てをすることはできません」とされています。ただし、2026年(令和8年)4月1日より前に離婚した場合は、従来どおり離婚した日の翌日から2年です(出典:裁判所「財産分与請求調停」)。
改正前は一律で2年でした。離婚した時期によって期限が変わるため、ご自身がどちらにあたるかを確認しておいてください。
家は物理的に半分にできないため、次のいずれかの形をとることになります。

| 方法 | 内容 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 売却して代金を分ける | 家を売り、諸費用とローン残債を差し引いた金額を分ける | 売却まで時間がかかる。残債が売却額を上回ると持ち出しが生じる |
| 一方が住み続け、他方へ代償金を払う | 住む側が家を取得し、相手へ相当額を支払う | まとまった資金が必要。ローンと名義の整理が必要 |
| 共有のまま保有する | 名義を変えず、共有状態を続ける | 将来の売却や相続で合意が必要になり、手続きが複雑になりやすい |
現金化してから分けるため、金額をはっきりさせやすい方法です。離婚後に元配偶者と関わりを持ち続けなくてよい点も、選ばれる理由になります。
一方で、売り出してから引き渡しまでには一定の期間がかかります。売却価格から仲介手数料や登記費用などを差し引き、住宅ローンが残っていれば返済に充てたうえで、手元に残る金額を分けることになります。
売却の全体像は「不動産売却の流れを6ステップで解説|査定から引き渡しまで」で整理しています。
子どもの学校や生活環境を変えたくない場合に検討される方法です。住み続ける側が家を取得し、相手の取り分に相当する金額を支払います。
この場合、家の評価額をいくらとみるかが話し合いの軸になります。査定価格は不動産会社によって幅が出ることもあるため、複数の資料をもとに検討することをお勧めします。査定の見方は「不動産の売却査定とは?机上・訪問査定の違いと査定額の見方」をご覧ください。
住宅ローンが残っている場合は、次章で整理する名義と保証の確認が必要になります。
結論を先送りして、名義を変えずに共有のままにしておく形です。当面の負担は少ないものの、将来の手続きが複雑になりやすい点に注意が必要です。
共有名義の不動産を売るには、共有者全員の同意が必要です。離婚後に連絡が取りづらくなったり、どちらかが亡くなって相続人が加わったりすると、話し合いの相手が増えていきます。
共有名義の扱いは「共有名義の不動産は売却できる?全員の同意が必要な場面と進め方」で詳しく整理しています。
住宅ローンの返済中であれば、最初に確認したいのはローン残高と家の時価のどちらが大きいかです。ここで取れる選択肢が変わります。
ローン残高は、金融機関から届く残高証明書や返済予定表で確認できます。時価は、不動産会社の査定で目安をつかめます。
オーバーローンの場合、預貯金などで不足分を補えなければ、通常の売却は難しくなります。金融機関の同意を得て売却する方法(任意売却)もありますが、条件や影響について金融機関へ確認が必要です。
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先に確認しておきたい4点
ここが、離婚と不動産の相談で最も注意していただきたい点です。
離婚協議書や公正証書は、夫婦の間の取り決めです。「今後は妻が返済する」と書いても、それだけで金融機関に対する債務者が入れ替わるわけではありません。
債務者を変えるには、債権者である金融機関の承諾が必要です(免責的債務引受。民法第472条第3項)。承諾を得られるかは、引き受ける側の収入や信用状況などをもとに金融機関が判断します。
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連帯保証人・連帯債務者の注意
家を出たとしても、金融機関との関係が自動的に解消されることはありません。主債務者の返済が滞れば、請求は保証人へ向かいます。
保証から外れるには、金融機関の承諾や、借り換えによる完済などが必要です。可否は金融機関の判断となります。
イエリテの実務から
ご相談のなかで、離婚協議書を交わした時点でローンの名義や保証の問題も片づいた、と受け止められていることがあります。
協議書は当事者間の約束としては有効ですが、金融機関はその当事者ではありません。ローンが残っている家については、話し合いと並行して、早い段階で金融機関へ相談しておくことをお勧めします。名義変更や借り換えができるかどうかで、選べる方法が変わってきます。
財産分与で家の名義を移す場合は、法務局で所有権移転登記を行います。原因は「財産分与」となり、手続きは司法書士が窓口です。
ただし、住宅ローンが残っている家には金融機関の抵当権が設定されています。ローン契約では、所有者を変更する際に金融機関の承諾を求める条項が置かれていることが一般的です。無断で名義を移すと、契約違反として一括返済を求められる可能性があります。
名義を移すのか、借り換えをするのか、それとも売却するのか。ローンが残っている家では、この3つを並行して検討することになります。
税金は「渡す側」と「受け取る側」で扱いが違います。順に確認します。
国税庁は、離婚により相手方から財産をもらった場合、通常は贈与税がかからないと案内しています。夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための給付とみなされるためです(出典:国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」)。
ただし、次の場合は例外とされています。
意外に思われる部分ですが、不動産を財産分与で渡した側に、譲渡所得税が課される場合があります。
国税庁は、財産分与として土地や建物を渡した場合、分与した時の時価で譲渡があったものとして取り扱うと案内しています(出典:国税庁「No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき」)。購入時より値上がりしていれば、その差額に対して税金がかかる可能性があります。
譲渡所得の基本的な計算方法は「不動産を売ったときにかかる税金は?譲渡所得税と3,000万円特別控除の基本」で整理しています。
マイホームを売ったときには、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。この特例には、配偶者や親子など「特別の関係がある人」への譲渡ではないことという要件があります(出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」)。
この要件が問題になるのは、配偶者や元配偶者へ不動産を渡す場合です。婚姻中に配偶者へ渡した場合は、この特例を使えません。離婚が成立した後に元配偶者へ財産分与として渡した場合は、配偶者にあたらないため適用できる余地があります。
一方、一般の第三者へマイホームを売却する場合は、この「特別の関係がある人」の要件は関係しません。離婚の成立前でも、他の要件を満たせば控除を検討できます。
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判断のポイント
家を元配偶者へ財産分与として渡す場合は、離婚届を出す前か後かによって、3,000万円特別控除を使えるかが変わることがあります。
第三者へ売却する場合は、この違いは関係しません。控除を使って税額がゼロになる場合でも、確定申告は必要です。進め方を決める前に税理士へご確認ください。
名義を移す際には、登録免許税がかかります。財産分与を原因とする所有権移転登記の税額は、固定資産税評価額をもとに計算します。
不動産取得税については、財産分与の性質によって取り扱いが分かれるとされています。婚姻中に築いた財産の清算として受け取る場合と、慰謝料や離婚後の扶養として受け取る場合とで、扱いが異なる可能性があります。
沖縄県内の不動産については、財産分与の内容が分かる書類を持参のうえ、沖縄県の県税事務所へ事前にご確認ください(参考:沖縄県「不動産取得税」)。
沖縄では、親や祖父母から受け継いだ土地に住宅を建てているケースがあります。土地が一方の特有財産にあたる場合、建物と土地で財産分与の扱いが変わることがあります。
また、土地の名義が親や祖父母のままになっていることもあります。この場合、離婚の話し合いとは別に、相続登記が必要になります。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から申請が義務化されています。詳しくは「相続登記の義務化とは?南城市で相続した不動産の手続きと期限」をご覧ください。
そのほか、次の点も家の扱いを決める前に確認しておくと判断しやすくなります。
境界が分からない土地については「境界が分からない土地は売却できる?」で整理しています。
離婚した時期によって期限が変わります。2026年(令和8年)4月1日以後に離婚した場合は、離婚した日の翌日から5年以内であれば家庭裁判所へ申立てができます。それより前に離婚した場合は、離婚した日の翌日から2年以内です(裁判所「財産分与請求調停」)。期限が近い場合は、早めに弁護士へご相談ください。
名義がどちらであっても、婚姻中に夫婦で築いた財産であれば分与の対象になります。登記上の名義と、財産分与の対象かどうかは別の問題です。ただし、結婚前から所有していた不動産や、親から相続した不動産は特有財産として扱われることがあります(民法第762条第1項)。個別の判断は弁護士へご確認ください。
売却代金でローンを完済できる見込みがあれば、売却できます。引き渡しのときに残債を返済し、抵当権を抹消する流れになります。売却額が残債に届かない場合は、不足分を用意するか、金融機関と相談することになります。まずはローン残高と査定価格を比べるところから始めてみてください。
第三者へ売り出すことに、離婚成立を待つ必要はありません。マイホームの3,000万円特別控除が使えなくなるのは、配偶者など「特別の関係がある人」へ譲渡した場合です(国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」)。一般の買主へ売却するのであれば、この要件は関係しません。順番が問題になるのは、家を元配偶者へ財産分与として渡す場合です。売却代金の分け方や住宅ローンの扱いも絡みますので、進め方を決める前に税理士へご確認いただくと安心です。
共有名義であれば、法律上は自分の持分だけを売ることができます。ただし、持分だけでは買い手が限られ、価格が低くなりやすい傾向があります。離婚の話し合いにも影響しますので、進める前に弁護士へご相談いただくことをお勧めします。
査定のみのご依頼も承ります。家の時価が分からないままでは、売るか住み続けるかの判断も、代償金の金額の話し合いもできません。売却を決めていない段階でのご相談で構いません。

最初にできることは、家の時価とローン残高を数字で把握することです。この2つがそろうと、売る・住み続ける・借り換えるといった選択肢を具体的に比べられるようになります。
ご相談の際は、次のものがあると状況を整理しやすくなります。すべてそろっていなくても構いません。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。必要な手続きや期間、費用は個別のケースによって異なります。
財産分与の割合や協議・調停に関する判断は弁護士、所有権移転登記は司法書士、譲渡所得や特別控除の判断は税理士、土地の面積・境界に関わる事項は土地家屋調査士が窓口です。住宅ローンの名義変更や借り換えの可否は、契約先の金融機関がご判断ください。法令や制度は変更されることがあるため、手続きの際は最新の情報をお確かめください。
南城市で、離婚に伴う家や土地のご相談
売るかどうかを決めていない段階でも構いません。まずは家の時価を確認し、住宅ローンの残高と比べるところからお手伝いします。売却する場合の手取りの見込みや、一方が住み続ける場合に必要となる金額の目安も、あわせて整理できます。
査定はどちらか一方からのお申し込みでも承ります。財産分与の割合や協議の進め方は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士が窓口となりますので、必要に応じて相談先をご案内します。南城市および沖縄県南部の不動産について、お気軽にご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
離婚に伴う家の扱いでお悩みの方は、時価とローン残高を確認するところからお気軽にご相談ください。