

発行者:株式会社イエリテ|2026年9月2日
住まなくなった家を貸してみようか、と考えたとき、最初に浮かぶのは「そもそもうちの家に借り手がつくのか」という疑問だと思います。人に貸せるほどきれいではない、古いから無理だろう——そう思ってご相談に来られる方がいます。
ところが実際に現地を見ると、建物の見た目より先に効いてくる条件がいくつもあります。車が2台置けるか、前の道から入れるか、部屋の数と広さが借りる人の暮らしに合っているか。そして、そのどれもが「誰に貸すか」を決めないと評価できません。
貸すかどうかを決める前の段階で、所有者ご自身が確認できる物件側の条件を順番に見ていきます。家賃をいくらに設定するか、築年数が古い建物を貸すときの法律上の責任、貸すと決めた後にどこまで直すかは、それぞれ別の記事で扱っているため、必要な場所で案内します。
この記事の目次
戸建て賃貸で借り手がつくかどうかは、内装の状態だけで決まるわけではありません。同じ築年数・同じ広さの家でも、反応の差がはっきり出ることがあります。
借りる側は、その家に住んだときの生活を想像します。車を停められるか、買い物と通勤の動線に乗るか、家族の人数に対して部屋数が合うか。この3つが成り立たない家は、内装をきれいにしても選ばれにくくなります。
逆に言えば、建物の傷みは修繕で埋められる余地がありますが、敷地の形・道路との関係・駐車できる台数は、後から変えることが難しい条件です。先に確認すべきは、変えられない条件のほうです。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、「古いから貸せないと思っていた」という前提でお話が始まることがあります。現地を確認すると、建物の傷みよりも駐車スペースの取り方や前面道路からの出入りのほうが、募集条件に影響していたケースがありました。反対に、室内はきれいでも駐車が1台分しか取れず、想定していた家族向けの募集が難しかったこともあります。
築年数が古い建物を貸すときに貸主が負う責任(民法上の修繕義務や、建物の安全性に関する責任)は、判断の前提として重要ですが、この記事の主題からは外れます。築古の戸建てを賃貸に出す前に確認したいことで扱っていますので、築年数を不安に感じている場合は先にそちらをご覧ください。
なお、住んでいた家を住宅のまま賃貸に出すこと自体は、建築基準法上の用途の変更には当たりません。用途変更の確認申請が必要になるのは、建築物の用途を変更して建築基準法6条1項1号の特殊建築物(別表第一に掲げる用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの)とする場合です(建築基準法87条1項)。一戸建て住宅を一戸建て住宅として貸す限り、この手続が問題になることは通常ありません。シェアハウスや宿泊施設など、住宅とは別の用途で使う場合は、規模によって手続の要否が変わるため、事前に確認が必要です。
ここでいう200平方メートルの基準は、建築基準法上の用途変更の確認申請についてのものです。宿泊施設などに転用する場合は、確認申請が不要な規模であっても、旅館業法や消防法、自治体の制度など別の確認が必要になることがあります。シェアハウスとして貸す場合の用途の扱いも、建物の形態や運用によって判断が分かれるため、計画の段階で建築士や窓口へご確認ください。
物件の条件を見る前に、契約上の確認が1つあります。住宅ローンの返済が残っている場合です。
住宅ローンは自己居住を前提とした商品が多く、賃貸へ切り替えるときの扱いは、金融機関・商品・転居の理由によって異なります。「残っていれば貸せない」とも、「必ず承諾が要る」とも一律には言えません。ただし、無断で貸すと契約違反になる商品はあります。住宅金融支援機構は、財形住宅融資について、転勤などで家族全員が一時的に住めなくなる場合の手続(留守管理)を案内したうえで、無断で融資住宅を賃貸すると契約に違反し、融資金の全額を一括で返済することになると示しています。
家族全員が住まなくなる場合は、住宅ローン控除の扱いにも影響することがあります(同機構の案内でも、留守管理の期間中は住宅借入金等特別控除の対象外になるとされています)。ご自身の契約がどうなるかは、返済中の金融機関と、税務は税理士・税務署へご確認ください。

物件の条件を評価するには、比べる相手が必要です。その相手が「想定する入居者」です。
同じ家でも、単身の方に貸すのか、小さなお子さんのいる家族に貸すのか、高齢のご夫婦に貸すのかで、必要な条件が変わります。部屋数、駐車台数、段差の有無、収納の量。どれも「誰に貸すか」を決めて初めて、足りているかどうかを判断できます。
これを決めずに先に工事を始めると、貸すために必要ではなかった部分にお金を使ってしまうことがあります。直す前に、想定する入居者を決める。この順番が、費用を抑えるうえで最も効きます。
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判断のポイント
「この家は貸せるか」ではなく、「この家は誰になら貸せるか」から考えます。想定する入居者が決まると、駐車台数・部屋数・設備が足りているかを判断でき、直す範囲も自然に絞り込めます。
理想の入居者像を先に決める必要はありません。駐車2台が確保できて、部屋が3つあり、学校まで車で数分という条件の家であれば、そこから自然に「車を2台使う家族世帯」という像が浮かびます。家の条件を並べて、そこに合う暮らし方を考えるほうが現実的です。
決めた想定入居者は、募集条件や家賃の設定にもそのまま使います。家賃の考え方は戸建ての家賃査定で見ているポイントで扱っています。

鉄道の路線が限られる沖縄県南部では、日常の移動に車を使う前提で住まいを探す方がいます。当社が扱った戸建ての募集でも、駐車できる台数は問い合わせの際に確認される条件です。
図面上は2台分のスペースがあっても、前面道路の幅や角度によって、実際には切り返しが必要で使いにくいことがあります。塀や門扉の位置、隣地との境界、電柱の位置も影響します。募集を始める前に、実際に車を停めて出入りしてみることをお勧めします。
イエリテの実務から
現地を確認する際は、駐車スペースの寸法だけでなく、前面道路から車を入れる動きまで見るようにしています。当社が扱った範囲では、寸法上は2台置けても、道路の幅の関係で普通車では出入りしづらい状態になっていた家がありました。この場合は「2台可」とせず、実際に置ける形で募集条件を整理しています。
自動車の保管場所を確保する義務は、自動車の保有者にあります(自動車の保管場所の確保等に関する法律3条)。貸主に保管場所を用意する義務があるわけではありません。ただし、敷地内に駐車場があれば入居者が保管場所を確保しやすくなるため、募集の際は駐車場の有無と台数を明確にしておくことになります。
保管場所の要件(使用の本拠の位置との距離など)は政令で定められており、適用される地域や車種による扱いの違いもあります。入居者から具体的な相談があった場合は、管轄の警察署へ確認をご案内する形が確実です。
住宅と一緒に貸すのか、駐車場だけ別の契約にするのかで、契約の形が変わります。建物の賃貸借と駐車場だけの賃貸借では適用される法律の扱いが異なる場合があるため、別契約にするときは契約書の作り方を不動産会社へ相談してください。
広ければ借り手がつく、というものではありません。
部屋数が多く床面積の大きい家は、その分だけ家賃が上がり、光熱費や掃除の負担も増えます。想定する入居者の人数に対して過大な場合、家賃を抑えても選ばれにくいことがあります。二世帯として使っていた家、増築を重ねた家では、この点を先に確認しておくと判断がしやすくなります。
和室が中心の間取り、仏壇のある部屋、物置になっている増築部分などは、募集上の部屋数としてそのまま数えられないことがあります。仏壇や拝所が残っている場合の扱いは、貸す前に親族と話し合っておく必要がある事柄です。
イエリテの実務から
当社へのご相談では、間取りの広さと想定する入居者が合っていないケースがありました。ご家族が住んでいた頃の使い方をそのまま前提にすると、部屋数は足りているように見えます。実際には、借りる側が使う部屋として数えられない部分が含まれていることがあるため、募集する部屋数は現地で改めて整理しています。
南城市を含む沖縄県南部では、鉄道の駅を基準にした立地評価がそのまま当てはまりません。想定した入居者の暮らしに沿って、次の動線を確認します。単身の方と子育て世帯では、重視する施設が変わります。
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確認ポイント
推測で判断せず、近隣で実際に募集されている戸建て・アパートの条件を見ることをお勧めします。同じ地域でどのくらいの家賃・条件で募集されているかは、公開されている募集情報から確認できます。自分の家の条件だけを眺めるより、比べたほうが早く判断できます。
貸したあとに費用がかかり続ける部分があります。ここを決めずに始めると、後から負担の話でもめる原因になります。
下水道が整備されていない区域では、浄化槽を設置している戸建てがあります。浄化槽の維持管理は、「保守点検」「清掃」「法定検査」の3つに分けて考える必要があります。まとめて年1回で済むものではありません。
回数は型式によって変わるため、設置されている浄化槽の処理方式と、現在結んでいる保守点検の契約内容を確認してください。沖縄県では、保守点検は県に登録された保守点検業者、清掃は市町村の許可を受けた清掃業者、法定検査は指定検査機関が行う形になっており、依頼先が分かれます。
これらの義務を負うのは「浄化槽管理者」です。
浄化槽管理者は、法律上「当該浄化槽の所有者、占有者その他の者で当該浄化槽の管理について権原を有するもの」と定義されています(同法7条1項)。所有者である貸主も、実際に使用する借主も、この定義に当たり得るため、貸主・借主のどちらが負担するかは条文だけでは一義的に決まりません。契約書で、点検・清掃・法定検査の費用を誰が負担するかを明記しておく必要があります。
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注意点
浄化槽の保守点検・清掃と、指定検査機関による法定検査は別の手続です。どちらの費用を誰が負担するかを契約書で決めていないと、入居後に負担の話になることがあります。
賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負います(民法606条1項。借主の責めに帰すべき事由による場合を除きます)。また、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益をすることができなくなり、それが借主の責めに帰することができない事由によるときは、賃料はその部分の割合に応じて減額されます(同法611条1項)。借主からの請求を待たずに減額される仕組みです。
設備を増やせば、その分だけ故障したときに対応が必要な範囲も増えます。エアコンや給湯器を残すのか撤去するのかは、募集のしやすさと維持の手間の両方で考えることになります。
貸す前にどこまで直すかの費用配分は貸す前の修繕範囲の決め方で、退去時の原状回復の負担区分は原状回復の負担区分で扱っています。なお、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインは実務で広く参照されていますが、法的な拘束力を持つものではありません。
入居後の対応を自分で行うか、管理会社へ委託するかも、貸す前に決めておく事柄です。貸主が自分の物件を自分で管理することは、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律にいう「賃貸住宅管理業」(同法2条2項。賃貸人から委託を受けて維持保全等を行う事業)には当たりません。
管理会社へ委託する場合、同法では管理戸数200戸以上の事業者に国土交通大臣への登録が義務付けられています。200戸未満の事業者の登録は任意ですが、登録を受けた場合は戸数にかかわらず同法第2章の規制に服することになります(国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト)。
判断の材料は戸建て賃貸の自主管理と管理委託の比べ方にまとめています。
なお、住まなくなった家を賃貸に出す場合、火災保険の契約内容の見直しが必要になることがあります。住宅用として加入している契約が賃貸中の建物にそのまま適用されるかは、保険会社・商品ごとに条件が異なるため、契約中の保険会社へご確認ください。
物件の条件とは別に、契約の形を先に決めておく必要があります。
期間の定めがある建物賃貸借で、貸主が期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。通知をした場合でも、借主が使用を続けているのに遅滞なく異議を述べなければ、同様に扱われます(同条2項)。
そして、貸主からの更新拒絶の通知や解約の申入れは、双方が建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および現況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができません(同法28条)。これらの規定に反する特約で借主に不利なものは無効です(同法30条)。
正当事由が認められるかどうかは個別の判断になります。「立退料を払えば必ず明け渡してもらえる」と考えるのは避けてください。
契約の更新がない建物賃貸借(定期建物賃貸借)は、公正証書による等書面によって契約をするときに限り定めることができます(同法38条1項。契約内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます〔同条2項〕)。
このとき、貸主はあらかじめ借主に対し、更新がなく期間の満了により契約が終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(同条3項)、この説明をしなかったときは、更新がないこととする旨の定めは無効になります(同条5項)。期間が1年以上の場合は、期間満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知が必要です(同条6項)。この期間を過ぎてから通知した場合でも、普通借家に変わるわけではありませんが、通知の日から6か月を経過するまでは、期間満了による終了を借主に対抗できません(同項ただし書)。
また、床面積200平方メートル未満の居住用建物では、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により借主が生活の本拠として使用することが困難となったときは、借主から解約の申入れができます(同条7項)。定期借家であっても、期間中は必ず貸し続けられるという意味ではありません。
普通借家と定期借家の比べ方は普通借家と定期借家の違いで詳しく扱っています。
確認した結果、想定していた入居者には合わない、という結論になることもあります。その場合に取れる道は次のとおりです。
駐車1台分しか取れないなら、車1台の世帯を想定する。部屋数が多いなら、家族向けとして募集する。家賃を含めた条件を、家の実態に合わせて組み直す方法です。「向いていない家」ではなく、「想定していた入居者と合わない家」であることも少なくありません。
不足している条件のうち、費用をかければ埋められるものだけを直します。ここでも、想定入居者を決めてから範囲を決めます。
貸す以外の道と比べる場合は、実家を売る・貸す・残すの比べ方で比較の考え方を扱っています。相続した家であれば、税制上の取扱いが判断に影響することもあるため、相続した実家を貸すにはもあわせてご覧ください。
なお、空家等対策の推進に関する特別措置法では、空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう空家等の適切な管理に努めるものとされています(同法5条)。貸す・売るのどちらも決めない場合でも、管理の手は必要になります。南城市には空き家活用事業という相談の窓口があります。内容や受付状況は変わることがあるため、市へ直接ご確認ください。
築年数だけで決まるものではありません。駐車場・立地・部屋数などの条件が想定する入居者に合っていれば、募集が成り立つことがあります。ただし、建物の状態によっては貸主が負う責任の面から慎重に判断すべき場合があるため、築古の戸建てを賃貸に出す前に確認したいことをご確認ください。
引渡しの状態を先に決める必要があります。残す家具・設備がある場合、故障したときの対応や撤去の負担を契約書で明確にしておかないと、後から負担の話になります。仏壇や祭祀に関わるものが残っている場合は、募集の前に親族間で扱いを決めておくことをお勧めします。
想定する入居者によります。庭の手入れを負担と感じる方もいるため、草刈りなど維持の分担を募集条件の段階で決めておくと、入居後の行き違いを避けやすくなります。
確実な予測はできません。ただし、同じ地域で実際に募集されている物件の条件と比べることで、条件面で不足している点は事前に把握できます。
宅地建物取引業者が行う広告表示には、業界の自主ルールがあります。景品表示法にもとづく公正競争規約制度のうち、不動産の表示に関する公正競争規約に沿って行われています。所有者ご自身が直接募集する場合、この規約が直接適用される立場ではありませんが、実際の状態と異なる表示は避ける必要があります。表示の具体的なルールは、募集を依頼する不動産会社へご確認ください。
戸建て賃貸に向いているかどうかは、建物のきれいさではなく、変えられない条件と、想定する入居者との組み合わせで決まります。
次に行うことは、現地で駐車の出入りを実際に確かめること、そして近隣で募集されている物件の条件と比べることです。この2つだけでも、判断の材料はかなり集まります。
法令・制度・行政の運用は改正されることがあります。記載内容は2026年9月2日時点で確認したものです。個別の契約内容や法的な判断については、弁護士・司法書士など、それぞれの専門家へご相談ください。
駐車場の使い勝手や部屋数が、どんな入居者に合うのか。どこまで直せば募集が成り立つのか。この部分は、家ごとの条件を見ないと決められません。現地の条件を一緒に整理し、貸す・売る・そのまま持つという選択肢の比べ方までご案内します。貸すと決めていない段階でもご相談いただけます。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。