

「この家、いくらで貸せますか」。使わなくなった戸建てのご相談で、南城市や沖縄県南部でも最初に聞かれることの多い質問です。
お答えする前に、ひとつだけ前提を共有させてください。家賃は建物の価値だけで決まるものではありません。その地域で、その条件の家を借りたい人がどれくらいいるかによって決まります。ご自身が支払ってきたローンの額や、建てたときの費用は、残念ながら家賃の根拠にはなりません。
以下では、実際の家賃査定で何を見ているのか、所有者の想定と現実に差が出やすいのはどこか、そして貸し出す前に整理しておきたい費用と契約の仕組みを順に説明します。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月09日
最終更新日:2026年08月12日
情報確認日:2026年08月12日
この記事の目次
家賃査定の出発点は、周辺で実際に成約している似た条件の物件の家賃です。希望額から逆算するのではなく、地域の相場を確認したうえで、対象の家がその中でどの位置に入るかを見ていきます。
新しく募集する家賃について、計算方法を定めた法律はありません。近隣の募集事例と成約事例、建物の広さや設備、駐車台数といった条件、そしてその地域で戸建てを探している人がどれくらいいるかを踏まえて判断します。
地域全体の家賃水準は、総務省統計局の住宅・土地統計調査で確認できます。令和5年調査には、南城市を含む市・区および人口1万5千人以上の町村について、借家の1か月当たり家賃の推計値があります。ただし、この調査は原則として5年ごとの標本調査で、令和5年調査は2023年10月1日現在の状況です。公表値は地域全体の傾向をつかむためのもので、いま募集されている戸建て1件の家賃を示すものではありません。実際の査定では、統計を背景として押さえたうえで、直近の募集事例と成約事例を優先して確認します。
また、同じ調査の「空き家」や「賃貸用の空き家」の数は、住宅全体を対象とした集計です。いま募集できる戸建て賃貸住宅の数を示すものではありません。この数字から南城市の戸建て賃貸の需要や、貸せるかどうかまで判断することはできません。統計の空き家数と、南城市が実態調査で確認した件数の違いは南城市の空き家対策|市の実態調査360件と統計約1,990戸、数字の違いから売る・貸す・持つを考えるで整理しています。
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先に結論
家賃は「かかった費用」ではなく「借りたい人がいくらまで払うか」で決まります。ローン残債や建築費は、市場家賃の直接の根拠にはなりません。ただし、実際に貸すかどうかを決める収支の判断では、ローン返済額を含めて確認する必要があります。住宅ローンを返済中の場合は、貸し出す前に借入先への確認も必要です(後述します)。

戸建ての家賃査定では、次のような点を確認します。沖縄県南部で戸建てを探す方の事情を踏まえた項目です。
敷地に何台置けるかは、家賃に影響しやすい条件です。同じ間取りでも、1台しか置けない家と2台置ける家では、問い合わせの入り方が変わります。
イエリテの実務から
当社が戸建ての募集を担当したなかでも、駐車台数は入居を検討される方が早い段階で気にされる条件のひとつでした。家賃査定でも、まず敷地に何台置けるかを確認しています。
部屋数が多ければ家賃が上がるとは限りません。その地域で戸建てを探している層の家族構成に合っているかどうかを見ます。
細かく区切られた古い間取りは、部屋数があっても使いにくいことがあります。逆に部屋数が少なくても、家族が集まる広さのある家のほうが好まれる場合があります。査定では、部屋数だけでなく、各室の広さと動線を確認します。
キッチン・浴室・トイレ・洗面と、居室のエアコンの状態を確認します。入居後すぐに毎日使う設備です。ここが古いままだと、内見時の印象だけでなく、入居後の修繕対応の頻度にも関わります。
同じ南城市内でも、エリアによって需要は異なります。学区、勤務先へのアクセス、スーパーや病院までの距離などを確認します。
沖縄の住宅では、塩害や台風の影響を受けやすい部分の状態を確認します。鉄部のさび、外壁やベランダの防水、雨漏りの有無などです。これらは家賃そのものよりも、貸し出し前に必要な工事の判断に関わります。
家賃の金額そのものよりも認識の差が生まれやすいのが、貸し出す前に必要な修繕・設備更新の費用です。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談でも、家賃の金額そのものより、貸し出す前に必要な修繕や設備更新の費用について、当初の想定との差が出ることがありました。家賃の見込みは立っていても、その前に出ていく費用が計算に入っていない場合です。
住んでいた家をそのまま貸そうとする場合、次のような点で判断が必要になります。どこまで直すかを想定家賃から逆算する考え方は、南城市で家を貸す前にどこまで直す?修繕・設備交換・清掃の決め方で詳しく整理しています。
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注意点
国土交通省が公表している指針「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)は、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、借りた当時の状態に戻すことではないと明記しています。
同ガイドラインは、経年変化と通常損耗にあたる部分を賃貸人(貸主)の負担として整理しています。退去時に借主へ全額を請求できる前提で収支を考えると、想定と変わることがあります。
ただし、通常損耗などを借主の負担とする特約が、常に有効になるわけでも、常に無効になるわけでもありません。特約に必要性があり、暴利的でないなど客観的・合理的な理由があること、借主の負担範囲が具体的に示されていること、借主がその内容を認識したうえで合意していることなどが、有効かどうかの判断材料になります(同ガイドラインのQ&A)。特約を設ける場合は、契約書の文言を専門家へご確認ください。なお、このガイドラインは法令ではなく、トラブルを未然に防ぐための指針として示されているものです。

費用の見積もりとあわせて整理しておきたいのが、修繕の責任範囲です。貸主は、借主がその家を使用するために必要な修繕を行う義務を負うのが原則です(民法第606条)。ただし、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は異なります。また、賃借物の一部が、借主の責めに帰することができない事由により使用・収益できなくなったときは、その使用・収益できない割合に応じて、賃料は減額されます(民法第611条第1項)。どの程度の減額となるかは、使えない部分、使えない期間、生活への影響などの個別事情を踏まえて判断します。
そのため、募集を始める前に、設備として引き渡すもの、残す家財、残置物の扱い、故障したときの連絡先と費用の負担を、設備表と契約書で整理しておきます。入居時に借主と写真付きで現況を確認しておくと、退去時の認識の違いを減らせます。この整理の仕方は南城市で家財を残したまま家を貸せる?残置物と設備の違い・契約での決め方で詳しく扱っています。
貸し出しを検討する際は、家賃の金額だけを見ずに、まず税引前の現金収支を確認し、そのうえで税負担を含めた収支も試算します。
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確認ポイント
貸し出し前の修繕・設備更新費は初期費用として別に把握し、管理料、固定資産税、保険料、募集費用、空室による収入減、入居中の修繕費などを見込んだ金額が、税引前・住宅ローン返済前の「運営収支」の目安です。所得税・住民税はこの運営収支には含めません。実際に手元へ残る金額を確認するには、ここから住宅ローンの元金・利息の返済額と、賃貸期間に対応する不動産所得等を基に見込む所得税・住民税を別に確認します。なお、所得税・住民税そのものは不動産所得の必要経費にはなりません。
家賃収入は、原則として所得税の「不動産所得」として、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。必要経費にできるのは、賃貸収入を得るために直接必要で、私的に使う部分と区分できる費用です。建物や設備の取得費、価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする更新費用は、支払った年に全額を必要経費にはせず、原則として減価償却によって各年へ配分します。この減価償却費は現金の支出を伴わない必要経費です。いっぽう、賃貸に対応する借入金の利子は原則として必要経費になり得ますが、住宅ローンの元金返済は必要経費になりません。
つまり、運営収支・ローン返済後の現金収支・税務上の不動産所得は、それぞれ別のものです。貸すかどうかを判断するときは、この3つを分けて確認します。
不動産所得がある方には、家賃収入と経費について帳簿を記帳し、契約書・請求書・領収書などを保存する義務があります。確定申告が必要かどうかとは別に、貸し始めた日から、家賃の入金、修繕費、保険料、固定資産税、借入金の利子が分かる記録を残しておきましょう。
どこまでが必要経費になるか、申告が必要かどうか、帳簿の保存期間や電子データの扱いは、物件と個人の事情によって変わります。貸し出す前に、税理士か所轄の税務署へご確認ください。
火災保険は建物と家財を分けて考え、賃貸住宅では建物は貸主、入居者の家財は入居者が備えるのが基本です。契約内容や必要な連絡・変更手続は保険会社や商品によって異なるため、募集前に保険会社または代理店へ「自宅を第三者に賃貸する予定」と伝え、いまの契約を続けられるか、必要な補償に不足がないかをご確認ください。入居者に求める家財保険や借家人賠償責任補償も、募集条件と契約書で明確にします。
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住宅ローンを返済中の方へ
住宅ローンを返済中の家を貸す場合は、募集を始める前に借入先の金融機関へご確認ください。住宅ローンはご本人やご家族が住むことを前提とした商品で、第三者へ貸すときは事前の届出や承諾を求められることがあります。連絡せずに貸すと、契約違反になる可能性があります。
ただし、その後の取扱いは金融機関と契約内容によって異なります。条件を変更したうえで賃貸を認める場合、別の借入れへの切り替えを求められる場合、転勤などの事情を踏まえて返済中のまま認める場合などがあり、必ず一括返済になる、必ず事業用の借入れへ変更されると決まっているわけではありません。まずは借入先へご相談ください。
あわせて、税務上の影響もご確認ください。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている方が、その家をご本人の居住の用に供しなくなった場合、原則としてその年以後は控除を受けられません。ただし、単身赴任などのやむを得ない事情でご本人だけが離れ、生計を一にする配偶者や扶養親族などが引き続き住み、事情の解消後にご本人が再び同居すると見込まれるなど、一定の要件を満たせば控除を継続できる場合があります。また、ご家族とともに転居して賃貸に出す場合でも、転居前の届出など所定の要件を満たして後に再入居すれば、残存控除期間について再適用を受けられることがあります。再入居した年にその家を賃貸に使用していた場合は、翌年以後の再適用となります。賃貸を始める前に、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
家賃と並んで、貸す前に理解しておきたいのが契約の仕組みです。一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、期間が満了しても、所有者の側から更新を断るには「正当の事由」が必要になります。
借地借家法は、期間の定めがある建物賃貸借について、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。ただし、更新後の契約は「期間の定めがない契約」になります(第26条第1項)。もとの契約が2年であっても、同じ2年間で自動的に更新されるわけではありません。そして、貸主からのその通知や解約の申入れは、双方が建物の使用を必要とする事情などを考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができません(第28条)。
いっぽう、あらかじめ期間を区切って貸す方法として、定期建物賃貸借(定期借家契約)があります。こちらは、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないことを定められる仕組みです(第38条第1項)。契約の内容を記録した電磁的記録によって契約をした場合も、書面によってされたものとみなされます(同条第2項)。
さらに、契約の前に、更新がなく期間満了により終了することを記載した書面を交付して説明する必要があります。この書面は契約書とは別に用意するもので、契約書のなかに同じ内容の条項を入れるだけでは足りません。説明をしなかったときは、更新がないとする定めは無効になります(第38条第3項・第5項)。この事前説明を電磁的方法で提供するには、政令で定める手続に従い、借主の承諾を得る必要があります(同条第4項)。
また、契約期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了により契約が終了する旨を借主へ通知しなければ、その終了を借主へ主張できません。この期間を過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月を経過した後でなければ終了を主張できません(第38条第6項)。
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補足
「数年後に自分が戻って住むかもしれない」「子どもが戻る可能性がある」という場合は、契約の種類の選び方が重要になります。定期建物賃貸借にする場合は、書面の作成方法、事前説明の手順、終了通知の時期に決まりがあるため、契約書の文言や説明書面の内容については弁護士へ、当社のような不動産会社には募集条件と期間の設定について、それぞれ確認しながら進めることをお勧めします。
「貸すと決めたわけではないが、いくらになるか知りたい」という段階でのご相談もあります。家賃査定と売却査定の両方を出したうえで比べたほうが、判断材料は揃います。
貸す場合は毎月の収入が続くかわりに、修繕や入居者対応が続きます。売る場合は一度で完了しますが、その後の収入はありません。どちらが良いかは、ご家族の予定、建物の状態、その土地を将来どうしたいかによって変わります。
相続した家をどうするか迷っている段階の方は、南城市で相続した空き家はどうする?売却・活用の選択肢と3,000万円特別控除や、南城市の実家は残す?売る?決める前に確認したい「期限のあること」もあわせてご覧ください。土地の活用方法を広く比較したい場合は、南城市で使わない土地の活用方法|売却・賃貸・駐車場などの選び方と注意点で整理しています。
募集を始める前に決めておく必要があります。ただし、募集開始後に反応を見て調整することもあります。問い合わせや内見の数が想定より少ない場合は、条件の見直しを検討します。
条件によってはあります。駐車場が複数台分ある、設備を新しくしている、その学区で戸建ての募集が少ないといった場合です。ただし、高い家賃で募集を続けて空室期間が延びると、結果的に受け取る総額が下がることがあります。
契約の条件や状況によります。借地借家法は、租税等の負担の増減、建物価格の変動、近傍同種の建物の借賃との比較などにより家賃が不相当となったときは、当事者が将来に向かって増減を請求できると定めています(第32条第1項)。これは契約後に事情が変わった場合の規定です。ただし、一定期間増額しない特約がある場合はその定めに従います。なお、定期建物賃貸借で借賃の改定に関する特約を設けた場合は、借地借家法第32条は適用されず、まずその特約に従います(同法第38条第9項)。定期借家で改定条項を置く場合は、増額・減額の条件や時期を契約前に確認してください。
なお、「増額を請求できる」ことと、貸主が一方的に新しい家賃へ変更できることは別です。合意に至らない場合、借主は裁判が確定するまで自分が相当と認める額を支払うことができ、最終的な金額は協議や法的手続で決まることがあります。
貸せる場合もありますが、条件の整理が必要です。残す家財の所有関係、故障したときの負担、退去時の扱いを、契約前に決めておく必要があります。
戸建ての家賃は、建物にかけた費用ではなく、その地域でその条件の家を借りたい人がどれだけいるかによって決まります。査定では、駐車台数、間取りと想定する入居者の家族構成の合致、設備の状態、立地、建物の維持状態を確認します。
そのうえで、貸し出す前に必要な修繕・設備更新の費用と、管理料・税金・空室期間を差し引いた収支で判断することをお勧めします。その際は、税引前・ローン返済前の運営収支、ローン返済後に手元へ残る現金、税務上の不動産所得の3つを分けて確認してください。また、普通借家契約では所有者の都合だけで契約を終わらせることが難しいため、将来その家をどうしたいかを踏まえて契約の種類を検討する必要があります。
貸すか売るかを決めていない段階でも、家賃と売却価格の両方を確認したうえで比べることができます。持ち続ける場合も含めて3つを同じ期間で並べる手順は、売る・貸す・残すの比べ方と判断の順番をご覧ください。
この記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・契約・税務の判断は、状況によって異なります。契約内容や法的な判断については弁護士・司法書士へ、税務については税理士へ、住宅ローンの取扱いについては借入先の金融機関へご確認ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。