


「実家を売ることになったのですが、仏壇はどうすればいいでしょうか」。南城市や沖縄県南部で空き家・相続不動産のご相談をいただくなかで、こうしたご質問を受けることがあります。
先にお伝えしたい結論があります。仏壇(トートーメー)は、家や土地とは別の決まりで承継されます。遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」の対象ではなく、法律上は別枠で扱われる財産です。
そして実務の面では、もうひとつ大切な点があります。仏壇の扱いが決まらないまま売却の手続きだけが進むと、引き渡しの直前で慌てることになりやすいということです。
この記事では、仏壇をどうするか迷ったときに、法律上の扱い・沖縄ならではの事情・売却の時系列・実際の移動や処分の進め方を順に整理します。特定の結論をおすすめするものではなく、ご家族で話し合うための材料としてお読みいただければと思います。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年07月24日
最終更新日:2026年07月24日
情報確認日:2026年07月24日
この記事の目次
仏壇の話は、つい「処分するか、持っていくか」という二択で考えがちです。しかし実際には、次の3つをこの順番で決めていくほうが、話がまとまりやすくなります。
順番が入れ替わると、話が止まりやすくなります。たとえば移す先を決めないまま「処分する・しない」を議論すると、感情の話になって結論が出ません。まず「誰が継ぐか」が決まれば、その方の住まいや事情に合わせて、移す先と時期は自然に絞り込めます。
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先に結論
仏壇は不動産の売買手続きとは別の話として、「継ぐ人」→「移す先」→「時期」の順に決めます。売却を急ぐ場合ほど、この話し合いを先に始めておくと落ち着いて進められます。
まず、法律上の位置づけを確認しておきます。ここを知っているだけで、話し合いの前提がかなり整理されます。
民法897条は、系譜・祭具・墳墓の所有権について、相続財産とは別に定めています。祭具には位牌や仏壇が、墳墓にはお墓や墓石が含まれると解されています(出典:e-Gov法令検索「民法」第897条)。
承継者の決まり方は、条文上おおよそ次のとおりです。
この条文からは、話し合いのときに役立つことがいくつか読み取れます。
ひとつめは、仏壇は遺産分割協議の対象ではないということです。預貯金や不動産のように「法定相続分で分ける」ものではなく、承継する方が単独で引き継ぎます。そのため、不動産の分け方が決まらなくても、仏壇の話だけ先に進めることができます。
ふたつめは、承継する方が法定相続人である必要はないという点です。条文は相続人に限定していません。実際に、家庭裁判所が親族関係にない方を承継者と定めた例もあります。
みっつめは、実務でよく行き違いが起きるところです。相続放棄をした方でも、仏壇や位牌を承継することはできます。祭祀財産は相続財産と別枠のため、相続放棄によって承継できなくなるわけではありません。
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補足:「祭祀を主宰する」とは
法要や年中行事を執り行い、位牌・仏壇・お墓を管理していく立場のことを指します。法律上、その方に費用負担の義務が課されているわけではないため、管理費や法要の費用をどうするかは、別途ご家族で話し合っておくと後々の行き違いを防ぎやすくなります。
費用面で気にされる方が多いのが税金です。結論から言えば、日常的に礼拝している仏壇や位牌は、相続税の非課税財産です。
相続税法12条1項2号は、墓所・霊びょう・祭具およびこれらに準ずるものを非課税財産としています。国税庁の基本通達では、この「これらに準ずるもの」に庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具などで日常礼拝の用に供しているものが含まれると示されています(出典:国税庁「相続税法基本通達〔墓所、霊びょう、祭具等関係〕」)。
ただし例外があります。同じ通達では、商品・骨とう品・投資の対象として所有しているものは含まれないとされています。代々受け継いできた仏壇であれば通常は非課税財産に当たりますが、判断に迷う場合は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
なお、不動産を売却したときの税金の考え方は、不動産売却にかかる税金の記事で別に整理しています。
ここまでは全国共通の法律の話です。沖縄で仏壇の話が難しくなりやすいのは、法律とは別に、地域や門中(もんちゅう)に受け継がれてきた考え方があるためです。
沖縄では位牌を「トートーメー」と呼び、その承継について、父方の血筋の男子が継ぐ、長男が優先されるといった考え方が語られることがあります。この考え方の強さは、地域や門中、ご家庭によって大きく異なります。
大切なのは、次の2点を分けて考えることです。
当社は、慣習を否定することも、逆に従うよう申し上げることもいたしません。ご家族が納得して決められることが、いちばん大切だと考えています。
実務の面で申し上げると、仏壇の承継は関わる方が多く、結論が出るまでに時間がかかることがある話し合いです。県外に住むご兄弟、地元に残るご親族、門中の年長の方など、確認すべき相手が複数になることも珍しくありません。
一方、不動産の売買は、買主が決まってから引き渡しまでの期間が数週間から数か月程度で進むことがあります。話し合いに必要な時間と、売買のスケジュールが合わないことがあるのです。
イエリテの実務から
当社へお寄せいただくご相談のなかにも、内覧や引き渡しの前になって、仏壇の移動が必要になったケースがあります。
建物の引き渡しは、原則として家財を撤去した状態で行います。仏壇も家財のひとつとして扱われるため、引き渡し日から逆算して段取りを組む必要があります。ご親族との話し合いや、宗教上の儀礼の日取りが重なると、短い期間で調整することになりがちです。売却をご検討の段階で、あらかじめ方針だけでも決めておいていただくと安心です。

実際に選ばれることが多い方法を整理します。どれが正解ということはなく、ご家族の状況によって適した方法は変わります。
| 方法 | 向いているケース | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 承継する方の住まいへ移す | 県内に引き取れる方がいる | 移設先の間口・階段・設置スペース、運搬の手配 |
| 小さい仏壇へ替えて移す | 県外のマンションなど、置き場所が限られる | 位牌だけを移すのか、仏壇ごと替えるのか。旧仏壇の扱い |
| 寺院・霊園などへ預ける(永代供養など) | 引き取れる方がいない、遠方で管理が難しい | 費用と支払い方法、受け入れの条件、ご親族の同意 |
| 仏壇じまいをする | 承継者が決まらず、他の方法も難しい | 先に儀礼を行うか、ご親族全員に事前に説明したか |
選択肢を比べるときは、費用よりも先に「誰が、どこで、いつまで管理し続けられるか」を確認すると判断しやすくなります。今は引き取れても、10年後・20年後に同じ形で続けられるかどうかまで含めて話し合っておくと、次の世代に同じ悩みを残しにくくなります。
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ご親族への説明を省かないでください
仏壇の扱いは、法律上は承継した方が決められます。しかし、事前の説明がないまま進めると、ご親族との関係に影響が残ることがあります。特に処分や永代供養を選ぶ場合は、決定の前に、関係する方へひと声かけておくことをおすすめします。
不動産の売却は、おおまかに「査定・相談 → 売り出し → 契約 → 引き渡し」と進みます。仏壇については、各段階で確認しておきたいことが異なります。
この段階でしていただきたいのは、承継者を決めることと、方針をご家族で共有することです。ここが決まっていれば、その後の段取りはほぼ自動的に決まっていきます。
まだ売ると決めていない段階でも構いません。むしろ、売却の判断とあわせて相談していただいたほうが、時間に余裕を持って進められます。
仏壇が残ったままでも、内覧を行うことはできます。売却できなくなるわけではありません。
ただし、購入を検討する方によっては受け止め方が異なります。あらかじめ「引き渡しまでに移す予定です」とお伝えしておくことで、余計な不安を与えずに済みます。伝え方は担当者と相談して決めていただければ十分です。
建物の引き渡しは、原則として家財や残置物を撤去した状態で行います。仏壇を残したまま引き渡すことは、通常は想定されていません。
引き渡し日は契約時に決まります。そこから逆算して、儀礼の日取り、運搬の手配、処分の申し込みを組み立てていくことになります。売却全体の流れは不動産売却の流れで詳しく解説しています。
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引き渡し日から逆算して確認すること
方針が決まったら、次は実務です。仏壇を動かす場面では、宗教上の手順と、物としての取り扱いの2つが関わります。
仏壇を移動したり手放したりする前に、僧侶に読経を依頼する「魂抜き」「閉眼供養」と呼ばれる儀礼を行うことがあります。沖縄では、御願(ウグヮン)の形で行われる場合もあります。
この儀礼は宗教上のもので、法律で義務づけられているものではありません。作法・呼び方・依頼先・費用は、宗派や地域、ご家庭によって異なります。当社が正しい形をお示しできる領域ではないため、菩提寺や地域で相談できる方へお尋ねください。費用の目安についても、依頼先に直接ご確認いただくのが確実です。
儀礼を終えたあと、仏壇そのものを処分する場合は、通常の家庭ごみと同じく一般廃棄物として扱われます。お住まいの市町村のルールに従って処分することになります。
南城市の場合、粗大ごみは事前の電話申し込み制です。市の案内によれば、次のとおりとされています(出典:南城市「ごみの出し方」)。
仏具や遺影、写真などは仏壇と分けて考えます。処分の可否や区分は品目によって異なるため、判断に迷うものは申し込みの際にあわせてご確認ください。なお、南城市以外に不動産をお持ちの場合は、その市町村のルールをご確認ください。
仏壇店や供養を扱う専門業者へ引き取りを依頼する方法もあります。費用や対応範囲は事業者によって異なるため、複数に確認して比べることをおすすめします。空き家全体の家財整理とあわせて進める場合は、相続した空き家をどうするかもご覧ください。
ご相談を受けるなかで、気をつけておきたいと感じる場面がいくつかあります。
承継する立場の方が県外にお住まいで、実家の管理はご兄弟や地元のご親族が担っている、という状況があります。この場合、「継ぐ人」と「実際に世話をしている人」が分かれているため、方針の決定に時間がかかりやすくなります。
まず現状の役割を確認し、そのうえで今後どうするかを話し合うと整理しやすくなります。
住宅事情や生活の状況から、どなたも引き取れないことがあります。この場合は、無理に一人へ負担を集めるより、寺院や霊園へ預ける方法を含めて選択肢を並べ、費用の分担まであわせて話し合ったほうが現実的です。
手続きとしては可能でも、後からご親族の間で感情的な行き違いが残ることがあります。不動産の売却は済んでも、ご家族の関係は続きます。事前のひと声を省かないでください。
ご家族の話し合いで承継者が決まらないときは、家庭裁判所に承継者を定めてもらう手続きがあります。民法897条2項が、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めると規定しているためです。
家事調停は、裁判のように勝ち負けを決めるものではなく、話し合いによって解決を図る手続きとされています(出典:裁判所「調停手続一般」)。手続きの選び方や進め方は個別の事情によって異なるため、弁護士や家庭裁判所の手続き案内へご相談ください。
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不動産会社が判断できない領域があります
承継者の指定や親族間の紛争は弁護士、相続登記は司法書士、税務の判断は税理士、宗教上の作法は寺院や地域で相談できる方の領域です。当社がお手伝いできるのは、売却の段取りと全体の整理、そして必要に応じた専門家へのお取り次ぎまでとなります。
法律上、長男に限る決まりはありません。民法897条は、被相続人の指定があればその方、なければ慣習に従って祭祀を主宰すべき方が承継すると定めています(出典:e-Gov法令検索「民法」)。沖縄で語られる承継の考え方は慣習であり、法律が男子や長男に限定しているわけではありません。
できます。仏壇や位牌などの祭祀財産は相続財産とは別に扱われるため、相続放棄をした方でも承継することが可能です。ただし、放棄に伴う他の手続きへの影響については、弁護士や司法書士へご確認ください。
日常的に礼拝しているものであれば、非課税財産です。国税庁の基本通達では、仏壇・位はい・仏具などで日常礼拝の用に供しているものが非課税の対象に含まれるとされています。ただし、商品・骨とう品・投資の対象として所有するものは含まれません(出典:国税庁「相続税法基本通達〔墓所、霊びょう、祭具等関係〕」)。
建物の引き渡しは、原則として家財を撤去した状態で行います。そのため、通常は引き渡しまでに移動または処分をしていただくことになります。事情がある場合は、契約前の段階で担当者へご相談ください。条件を契約内容に反映できるかどうかは、買主との協議次第です。
法律上の義務ではありません。宗派や地域、ご家庭の考え方によって、行うかどうかや呼び方、作法が異なります。判断に迷う場合は、菩提寺や地域で相談できる方へお尋ねください。
売却を決めていない段階でもご相談いただけます。仏壇の扱いはご家族での話し合いに時間がかかることがあるため、むしろ早い段階で全体の見通しを立てておいたほうが、落ち着いて進めやすくなります。

まずしていただきたいのは、ご家族の中で「誰が引き継ぐか」を確認することです。ここが決まると、移す先も、いつ動かすかも、順に決まっていきます。
そして、話し合いに時間がかかりそうだと感じたら、売却の話を進める前にお声がけください。段取りに余裕を持たせることが、いちばんの解決策になることがあります。
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別のケースによって、判断や手続きの内容は異なります。
南城市で実家の売却と仏壇の扱いに迷っている方へ
「まだ売ると決めたわけではない」「親族と話し合っている途中」という段階でも構いません。仏壇や位牌の扱いを含めて、いつまでに何を決めておく必要があるかを一緒に整理し、売る・貸す・そのまま残すといった選択肢を並べてご説明します。宗教上のことや法律上の判断は当社が決められる領域ではありませんので、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家へのお取り次ぎもご案内します。南城市および沖縄県南部の不動産について、お気軽にご相談ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
相続した実家の扱いでお悩みの方は、状況を整理するところからお気軽にご相談ください。