


執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月6日
最終更新日:2026年8月6日
情報確認日:2026年8月6日
親が所有していたアパートを引き継いだものの、家賃の入金、入居者からの連絡、退去後の部屋の手配まで、何をどこまで自分でやるものなのか分からない。管理会社に頼めば楽になりそうだけれど、管理料の分だけ手取りが減るのも気になる。南城市や沖縄県南部のアパートについて、そうしたご相談をいただくことがあります。
自主管理と管理委託は、「安いほう」「楽なほう」で決められるものではありません。管理料を払わずに済んでも、その分の作業と時間はオーナー自身に戻ってきます。逆に委託しても、修繕の判断や大きな出費の決定はオーナーの仕事として残ります。
比べる材料は、費用と手間の両方です。片方だけを見て決めると、後から想定が崩れます。実際に発生する業務を書き出すところから始めましょう。

この記事の目次
まず押さえておきたいのは、「管理」がひとつの作業ではないという点です。アパートの管理は、大きく分けると建物の維持保全と、お金の管理と、入居者への対応の3つに分かれます。
この3つは、必要な知識も、かかる時間帯も違います。清掃は自分でできても、深夜の水漏れ連絡に毎回対応するのは難しい、という組み合わせが起こります。
なお、すべてを委託するか、すべてを自分でやるかの二択ではありません。入居者募集だけを不動産会社に頼み、日常の清掃は自分で行う、といった分け方も実際に行われています。管理会社によって引き受ける範囲は異なるため、契約前に業務の一覧で確認します。
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ポイント
「管理を委託するかどうか」ではなく、「どの作業を誰が担うか」で考えると比べやすくなります。まず作業を書き出し、そのうえで自分でできる範囲を線引きしてください。
管理方法を決める前に、引き継いだ内容の把握が必要です。ここが分からないままだと、自主管理でも委託でも先へ進めません。
相続が起きると、被相続人の財産に属した一切の権利義務は相続人が承継します(民法第896条)。アパートの賃貸借契約も、貸主の立場がそのまま相続人へ引き継がれます。入居者との契約を結び直す必要はありませんが、貸主が誰になったのかを入居者へ伝え、家賃の振込先を整理する作業は発生します。
確認しておきたいのは次の3点です。
敷金は特に注意が必要です。敷金は賃貸借が終了して部屋の返還を受けたときに、未払家賃などを差し引いた残額を返還する義務があります(民法第622条の2)。契約書や敷金の預かり記録が見つからないと、退去時の正確な精算が難しくなります。手元の資料だけで判断せず、通帳や入金履歴、以前の管理会社が保管している資料、入居者が保管している契約書なども確認します。

(出典:e-Gov法令検索「民法」)
イエリテの実務から
当社へ寄せられたご相談のなかに、賃貸アパートを相続したものの、賃貸借契約書そのものが見当たらないというケースがありました。
このとき最初に行ったのは、管理方法を決めることではなく、入金履歴と各部屋の使用状況を照合し、入居者名、契約状況、家賃の支払い状況を一覧にすることでした。連絡先や契約条件は、残っている資料や入居者への確認を通じて整理しています。
手元にある情報が不完全なまま「委託するか自分でやるか」を決めても、判断の土台がありません。まず現状を紙一枚にまとめるという順番を、私自身は大切にしています。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務化されています(2024年4月1日施行)。アパートの敷地と建物も対象です。
名義が被相続人のままでも家賃を受け取ること自体はできますが、登記が済んでいないと、建物の担保設定や売却へ進む段階で手続きが止まります。手続きは司法書士へご相談ください。
詳しくは相続登記の義務化とは?南城市で相続した不動産の手続きと期限をわかりやすく解説にまとめています(出典:法務省「不動産を相続した方へ」)。
費用を比べるときは、毎月の管理料だけを見ないようにします。管理会社へ支払う費用は、月々の管理料と、募集や更新のときに発生する費用に分かれます。
入居者の募集では、契約内容に応じて仲介手数料のほか、募集条件や依頼内容によって別途費用が発生する場合があります。費用の名称、金額、支払条件は、募集を依頼する前に確認してください。仲介手数料と、それ以外の名目の費用は別のものです。
管理料の割合は会社と業務範囲によって異なります。同じ「管理料〇%」でも、清掃や定期点検が含まれる場合と、別料金の場合があります。見積りを取るときは、割合ではなく「その金額に何が含まれるか」を業務の一覧で確認してください。
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注意点
管理料の安さだけで比べると、実際には含まれていない業務が後から別料金で出てきます。金額の比較は、業務範囲をそろえてから行ってください。
管理を任せる方法として、サブリースを提案されることがあります。これは管理の委託ではなく、事業者がアパートを一括で借り上げ、入居者へ転貸する仕組みです。オーナーは事業者から賃料を受け取る形になります。
空室があってもオーナーへ一定の賃料が支払われる契約形態がありますが、その金額や条件が将来にわたって変わらないとは限りません。免責期間(借り上げ開始後などに賃料が支払われない期間)、賃料の改定条項、契約解除の条件は契約ごとに異なります。
このため、サブリースの契約(特定賃貸借契約)については、勧誘時の不当な行為の禁止や、契約締結前の重要事項説明が法律で定められています。提示された賃料の見直し時期と改定方法、契約を終了させるときの条件を、契約書の条項で必ず確認してください。内容の判断に迷う場合は、契約前に弁護士へ相談することをおすすめします。
(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 適正化のための措置」)
家賃収入は不動産所得として所得税の対象になります。不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。賃貸経営に直接必要で、家事上の経費と明確に区分できる管理委託料は、不動産所得の必要経費に算入できます。
ここで誤解しやすいのが、税金との関係です。管理料はオーナーの現金支出です。必要経費に算入することで課税所得が減りますが、支払った管理料と同額の税金が減るわけではありません。実際の税負担への影響は、所得の金額や適用される税率などによって変わります。
ご自身の場合にどの費用が必要経費として認められるかは、税務署または税理士へご確認ください。
(出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」)
これとは別の論点として、貸付けが事業として行われている規模かどうかによる違いがあります。国税庁は、アパートなどについて貸与できる独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋の貸付けではおおむね5棟以上であれば、原則として事業として行われているものとして取り扱うとしています。
事業的規模かどうかで主に扱いが変わるとされているのは、次の項目です。
賃貸経営に直接必要で、家事上の経費と明確に区分できる管理委託料が必要経費に算入できること自体は、この規模の判定とは別の話です。ご自身のアパートが事業的規模に当たるかどうかは、税務署または税理士へご確認ください。
(出典:国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」)
費用の次は手間です。管理料を払わない選択をした場合、その業務は自分の時間で行うことになります。手間を見積もるときは、毎月決まって発生する作業と、いつ来るか分からない作業を分けて数えてください。
毎月ほぼ決まって発生するのは、次のような作業です。
こちらは回数も所要時間も読めるため、自分で対応しやすい部分です。
一方、時期を選べないのが次の作業です。
負担の大きさを決めるのは、毎月の作業量ではなく、この突発的な作業のほうです。県外に住んでいる、平日は仕事がある、という事情がある場合は、ここが現実的に対応できるかどうかが判断の分かれ目になります。

自主管理で対応が難しくなりやすいのが、滞納と退去時の精算です。どちらも、感情的な行き違いが起きやすい場面でもあります。
家賃の滞納が続いた場合でも、オーナーだけの判断で鍵の交換や室内の荷物の搬出を進めず、契約の解除や明渡しを含む対応は弁護士へ相談してください。通常の連絡や督促を超える段階では、どの順番で、どのような書面を出すのかが重要になります。
退去時の原状回復については、まず現在の賃貸借契約書の内容を確認します。そのうえで、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を、一般的な考え方の参考にします。このガイドラインでは、経年変化や通常の使用による損耗の復旧は賃貸人が負担するという考え方が整理されています。
ガイドラインは一般的な基準であり、これだけで個別の負担割合が自動的に決まるものではありません。入居者の負担にできる範囲を誤ると、敷金の精算がそのままトラブルにつながります。
(出典:国土交通省「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」)
イエリテの実務から
家賃の滞納が続いているものの、入居者へ強く言い出せないまま数か月が経ってしまった、というご相談を受けたことがあります。親の代から住んでいる方で、関係を壊したくないという気持ちが先に立っていました。
ここで確認したのは、滞納の金額そのものよりも、保証会社や連帯保証人がついているか、督促の記録が残っているか、という点です。記録がないと、後から法的な手続きへ移る段階で、これまでの経緯や督促の事実を確認しにくくなります。
オーナーがひとりで抱え込むほど、選べる手段は減っていきます。言いにくい相手だからこそ、第三者を間に入れるという考え方も、比較の材料に入れてよいと思います。
沖縄で賃貸アパートを管理する場合、台風の前後に発生する作業を計算に入れておく必要があります。
令和5年(2023年)の住宅・土地統計調査によると、沖縄県内の居住世帯のある住宅に占める非木造住宅の割合は96.5パーセントです。この数値は沖縄県全体の住宅に関するもので、南城市だけの割合や、賃貸住宅だけの割合を示すものではありません。実際の管理では、建物の構造、立地、築年数に応じて、防水、外壁、鉄部などの状態を個別に確認します。
台風のたびに現地を確認できるかどうかは、県外在住のオーナーにとって特に大きな要素です。修繕が必要かどうかの判断だけでなく、確認して「問題なかった」と分かること自体に価値があります。
(出典:沖縄県企画部統計課「令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点」)
ここまでの内容を、判断に使う形に整理します。管理委託の場合でも、どこまで対応してもらえるかは管理委託契約の内容によって異なります。
| 比べる項目 | 自主管理 | 管理委託 |
|---|---|---|
| 毎月の支出 | 管理料はかからない | 契約で定めた管理料を支払う |
| 入居者からの連絡 | オーナーが直接受ける | 契約範囲に応じて管理会社が窓口になる |
| 夜間・休日の対応 | オーナーが対応する | 契約内容による(範囲の確認が必要) |
| 滞納への対応 | オーナーが連絡・督促を行う | 管理会社が通常の連絡や督促を行う。契約解除、明渡請求、争いのある債権回収などは弁護士への相談や法的手続きが必要になる場合がある |
| 業者の手配 | 自分で探して依頼する | 契約範囲に応じて管理会社が修繕業者などを手配する |
| 修繕・大きな支出の決定 | オーナーが決める | オーナーが決める(提案は受けられる) |
| 管理委託料 | 管理委託料の支払いはない | 契約で定めた管理料を支払う。賃貸経営に直接必要で、家事費と明確に区分できる範囲は必要経費に算入できる |
自主管理を続けやすいかどうかは、次の要素に左右されます。
これらのうち一つが当てはまるかどうかで決まるものではありません。複数の要素を並べて、無理なく続けられる形を探してください。
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比べるときの確認項目
判断に迷う場合は、いきなり全部を委託せず、募集と入居者対応だけを任せるところから始める方法もあります。一度決めた形を変えられないわけではありません。
委託を選ぶ場合、契約前に確認しておきたい点があります。賃貸住宅の管理業務には、法律にもとづく登録制度があります。
賃貸住宅管理業法上の「賃貸住宅管理業」とは、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、賃貸住宅の維持保全を行う業務、または維持保全とあわせて家賃・敷金・共益費などの金銭の管理を行う業務を行う事業とされています。金銭の管理だけを行う事業は、この法律上の賃貸住宅管理業には当たりません。
そのうえで、管理戸数200戸以上の事業者には、国土交通大臣への登録が義務付けられています。200戸未満の事業者は義務ではありませんが、国土交通省は任意で登録を受けることを推奨しています。
登録を受けた管理業者には、次のような義務があります。
ただし、登録の有無は、法令上の体制を確認する材料の一つです。登録されているだけで、管理内容や対応品質、空室改善の結果が保証されるものではありません。契約前に、業務範囲、管理料、緊急時の対応、修繕時の連絡方法、報告の頻度、解約の条件を比較してください。
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補足
この登録は「委託を受けて管理業務を行う事業」を対象とするものです。オーナーが自分の所有するアパートを自分で管理する場合は、登録の対象になりません。
管理を委託する会社を選ぶときは、業務範囲と金額だけでなく、地域の賃貸需要をどう見ているか、空室が出たときにどんな募集条件を提案するかも聞いてみてください。
通常の管理委託契約では、空室期間の家賃は発生しません。ただし、家賃保証を組み合わせた契約などもあります。保証の条件、免責期間、賃料の見直し条件は契約によって異なるため、契約書で確認してください。
遺産分割前のアパートは、相続人間の共有状態になります。共有物の管理に関する事項は、民法第252条により、原則として持分の価格に従った過半数で決めます。ただし、管理委託契約の内容や期間、管理会社へ任せる権限によっては、単純な管理行為の範囲を超える可能性があります。管理会社と契約する人、委任する業務の範囲、家賃の受取口座、収入と費用の分配、入居者への連絡窓口を相続人間で整理してください。相続人の意見が一致しない場合や、必要な同意の範囲が分からない場合は、契約前に弁護士へご確認ください。
契約自体は続きますが、連絡は必要です。家賃の振込先、連絡先、緊急時の窓口が変わることを伝えないと、入金の遅れや連絡のつかない状態が起こります。書面で通知し、控えを残しておくと後の確認に使えます。
契約者の名義変更などの手続きが必要になる場合があります。建物の所有者が変わったことを保険会社へ伝え、補償内容と契約者名義の扱いを確認してください。入居者が加入している保険とは別に、オーナー側の建物の保険があります。
契約内容によりますが、変更できる場合があります。解約の予告期間、敷金や入居者情報の引き継ぎ方法、募集を依頼中の部屋の扱いを、現在の契約書で確認してください。引き継ぎの段取りを決めずに解約すると、入居者への対応が途切れます。
管理方法とあわせて考えて構いません。入居者がいる状態のまま売る方法もあり、オーナーチェンジと呼ばれます。ただし買主の層や価格の見方が変わるため、通常の売却とは進め方が異なります。持ち続ける場合の収支と、売った場合の手取りを並べてから判断してください。相続した不動産を残すか手放すかで迷っている段階であれば、実家は残す?売る?決める前に確認したい「期限のあること」【南城市】もあわせてご覧ください。

(情報確認日:2026年8月6日)
この記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。税務・登記・法律に関する最終的な判断は、税理士・司法書士・弁護士などの専門家、または税務署・法務局へご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。