

「相続したアパートの1室、家賃はいくらにすればいいですか」「区分所有のマンションを貸すとき、査定額と自分の希望額が合わない」。南城市や沖縄県南部で賃貸経営に関わる方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
戸建てと同じく、マンション・アパートの家賃も建物にかけた費用ではなく、いまその条件の部屋を借りたい人がどれくらいいるかで決まります。ただし、区分所有のマンションと一棟アパートでは、確認するポイントに違いがあります。管理費・修繕積立金の扱いや、管理規約による使用制限もその一つです。
査定で実際に何を見ているのか、希望額と査定額に差が出やすい理由、そして貸し出す前に確認しておきたい制度上の注意点を取り上げます。
執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年08月22日
最終更新日:2026年08月22日
情報確認日:2026年08月22日
この記事の目次
マンション・アパートの家賃査定も、出発点は周辺で実際に成約している似た条件の部屋の家賃です。新築時の分譲価格や、購入時のローン残債は、家賃の直接の根拠にはなりません。
新しく募集する家賃の計算方法を定めた法律はなく、近隣の募集事例・成約事例、専有面積や設備、バス停や幹線道路からの距離といった条件、そして同じエリアで似た部屋を探している人の数を踏まえて判断します。区分所有のマンションであれば同じ建物内の他の部屋の募集状況、一棟アパートであれば近隣の同規模アパートの空室状況も、あわせて確認します。
地域全体の家賃水準は、総務省統計局の住宅・土地統計調査で確認できます。この調査では、共同住宅を含む建て方別の集計があり、南城市を含む市・区および人口1万5千人以上の町村について、借家の1か月当たり家賃の推計値が示されています。ただし、原則5年ごとの標本調査で、令和5年調査は2023年10月1日現在の状況です。公表値は地域全体の傾向をつかむためのもので、いま募集している1室の家賃を直接示すものではありません。実際の査定では、統計を背景として押さえたうえで、直近の募集事例と成約事例を優先して確認します。
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先に結論
家賃は「かかった費用」ではなく「借りたい人がいくらまで払うか」で決まります。分譲価格やローン残債は、市場家賃の直接の根拠にはなりません。ただし、実際に貸すかどうかを決める収支の判断では、ローンの返済額や管理費・修繕積立金を含めて確認する必要があります。

マンション・アパートの家賃査定では、次のような点を確認します。区分所有のマンションと一棟アパートで、重みの置き方が変わる項目もあります。
専有面積と間取りが、そのエリアで部屋を探している層の暮らし方に合っているかを見ます。単身者向けの需要が中心のエリアで広めのファミリー向け間取りを募集すると、面積のわりに家賃が伸びないことがあります。反対に、ファミリー向けの需要があるエリアで手狭な間取りだと、家賃を抑えても決まりにくいことがあります。
オートロック、宅配ボックス、エレベーターの有無、駐車場・駐輪場の台数、インターネット設備の状況などを確認します。同じ専有面積でも、こうした共用部の設備によって問い合わせの入り方が変わることがあります。キッチン・浴室・トイレ・洗面といった専有部分の設備も、入居後すぐに毎日使う部分のため、状態を確認します。
区分所有のマンションでは、毎月の管理費・修繕積立金の額も査定の材料になります。ただし、これは市場家賃を直接決める要素というより、貸した場合のオーナー側の収支を判断するために確認する固定費です。いっぽう、共用部の清掃状況や修繕状況、エントランスなどの維持状態は、物件の印象や競争力に関わるため査定時に確認します。
入居希望者が比較するのは、募集賃料・共益費・駐車場代など実際の募集条件です。管理費・修繕積立金が高いことを理由に家賃を上乗せしても、周辺相場を超えれば決まりにくくなる可能性があります。
一棟アパートの場合は、共用部(廊下、階段、駐車場、ゴミ置き場など)の維持状態と、外壁・屋上防水などの修繕履歴を確認します。沖縄の建物では、塩害や台風の影響を受けやすい鉄部のさびや、外壁・ベランダの防水の状態も見ています。
同じ南城市内でも、エリアによって求められる条件は異なります。学区、勤務先へのアクセス、スーパーや病院までの距離、バス路線の状況などを確認します。
一棟アパートを複数戸まとめて査定する場合は、現在の入居率や、直近の入退去のペースも確認します。特定の階や向きの部屋だけ空室が続いている場合、その部屋固有の条件(日当たり、騒音、動線など)が影響していることも考えられます。
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査定を依頼する前に準備しておきたい情報

当社へ寄せられる家賃査定のご相談では、査定額とオーナー様の希望される家賃との間に差が出ることがあります。
イエリテの実務から
現地確認とあわせてお話をうかがうと、購入時の分譲価格やローンの返済額を基準に、家賃の希望額を考えていらっしゃる場合があります。しかし、購入時の価格は、いまその部屋を借りたい人がいくら払うかとは別のものです。また、新築時から一定年数が経過している場合、同じエリアに新しく建った競合物件の設備水準や家賃と比べられる立場になっていることも、希望額と相場の差につながる一因です。
当社では、まず近隣の直近の成約事例と、いま同時に募集されている競合物件の条件を確認したうえで、対象の部屋がその中でどの位置に入るかをお伝えするようにしています。そのうえで、設備を更新して家賃を上げる余地があるか、現状のまま相場に合わせて早期に決めるかを、オーナー様と一緒に検討します。
家賃の見込みが立っても、募集を始める前に確認しておきたい制度上の注意点を挙げます。
区分所有のマンションを貸す場合、部屋を借りる入居者(占有者)も、建物や敷地・附属施設の使用方法については、区分所有者が管理規約や集会の決議にもとづいて負う義務と同じ義務を負います(建物の区分所有等に関する法律第46条第2項)。専有部分を住居専用と定めている管理規約であれば、入居者も住居以外の用途では使えません。民泊としての利用を検討する場合も、管理規約で認められているかどうかを、募集前に管理組合または管理会社へ確認する必要があります(民泊には管理規約のほか、住宅宿泊事業法にもとづく届出等も別途必要です)。住宅ローンが残っている場合の借入先への確認とあわせて、貸し出す前に規約のどこを見ておくかは、住宅ローン中の分譲マンションは貸せる?戸建てと違う確認先と毎月の支出で扱っています。貸したあと、入居者の規約違反や共用部分の不具合をどちらの管理会社へ伝えるかは、分譲マンションを貸すと管理会社は二つ?管理組合側と賃貸管理会社の役割の違いで整理しています。
管理会社へ管理を委託する場合は、相手方の登録状況や管理受託契約の内容を確認します。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律にもとづき登録を受けた管理業者には、管理受託契約を結ぶ前の重要事項説明などが義務づけられています。登録義務の基準となる管理戸数200戸以上は、オーナー側の所有戸数ではなく、管理業者側が管理する戸数です。委託したときに管理会社が実際に行う業務の中身と、管理委託料に含まれる業務・別費用になる業務の線引きは、アパート管理会社の仕事内容と管理委託料に含まれる業務で扱っています。
いっぽう、管理会社がオーナーから借り上げて入居者へ転貸する「サブリース(特定賃貸借契約)」の形で契約する場合は、通常の管理受託契約とは別に、契約締結前の重要事項説明や書面交付などのルールが定められています。管理会社の選び方や自主管理との比較は、アパート管理会社の選び方|沖縄で相続したオーナーが確認したい基準と相続したアパートは自主管理と管理委託どちらにする?手間と費用の比べ方でも扱っています。
一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、期間が満了しても、貸主からの更新拒絶や解約の申入れには正当の事由が必要です(借地借家法第28条)。あらかじめ期間を区切って貸す定期建物賃貸借(定期借家契約)という方法もあり、契約の方法や事前説明に決まりがあります(同法第38条)。また、家賃が不相当になった場合は当事者が増減額を請求できます(同法第32条第1項)。マンション・アパートでも同じ借地借家法の規定が適用され、契約の種類ごとの仕組みは南城市で戸建ての家賃はどう決まる?査定で見る5つのポイントと貸す前の確認事項で詳しく説明しています。
購入時の住宅ローンをまだ返済中の部屋を貸す場合は、募集を始める前に借入先の金融機関へ確認が必要です。住宅ローンはご本人やご家族が住むことを前提とした商品のため、無断で第三者へ貸すと契約違反になる可能性があります。また、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)には居住要件があるため、住宅を賃貸に出すと適用できなくなる場合があります。転勤等のやむを得ない事情では、例外の取扱いや、再び居住したときの再適用が認められる場合もあるため、個別の取扱いは税務署または税理士へご確認ください。借入先への確認手順は、住宅ローンが残っている家は貸せる?借入先への確認と手続きの進め方で詳しく説明しています。
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募集前に確認したいこと
「相続したアパートを、このまま経営するか売るか決めていない」という段階でのご相談もあります。家賃査定は、経営を続けるかどうかを判断する材料の一つとして使うこともできます。
すでに空室が続いている場合は、値下げの前に原因を切り分けることも大切です。南城市でアパートの空室が続くのはなぜ?家賃を下げる前に確認したい原因の切り分け方もあわせてご覧ください。アパート経営そのものを続けるか売るかで迷っている場合は、アパート経営を続けるか売るか|南城市で判断するときの視点で整理しています。大規模修繕の時期が近く、その費用も含めて判断したい場合は、アパートの大規模修繕はいつ・いくらかかるか|南城市のオーナーが確認したい進め方と見積りの見方をご参照ください。
依頼できます。一棟アパートだけでなく、区分所有の部屋1室からのご相談も承っています。
一概には言えません。管理費・修繕積立金はオーナー側の収支判断では重要ですが、市場家賃とは分けて考えます。全額を家賃に上乗せすると、周辺の同条件物件と比べて割高な印象になり、空室期間が延びる可能性があります。募集条件が周辺相場に見合っているかを確認したうえで、家賃と初期費用(敷金・礼金など)の設定を検討します。敷金・礼金をいくらに置くかの考え方は敷金・礼金はいくらにする?家を貸すときの決め方と注意点で整理しています。
築年数だけで家賃が下がるとは限りません。周辺の需給や周辺家賃の変化、設備の状態、競合物件の状況によっても変わります。設備更新やリフォームによって家賃を維持・向上できる場合もあるため、周辺の競合物件の設備水準と比較したうえで、更新にかける費用と見込める家賃の差を検討することをお勧めします。いくらまでかけてよいかを回収の見込みから逆算する方法は空室対策に設備を追加すべき?かけた費用を回収できるかの考え方で扱っています。
家賃以外の原因が影響している場合もあります。募集条件や部屋固有の条件(日当たり、動線、騒音など)が影響していることもあるため、値下げの前に原因を切り分けることをお勧めします。
マンション・アパートの家賃も、分譲価格やローン残債ではなく、そのエリアでその条件の部屋を借りたい人がどれだけいるかによって決まります。査定では、専有面積と想定入居者の合致、建物・設備の状態、共用部の維持状態、立地、そして一棟アパートでは稼働状況を確認します。管理費・修繕積立金は市場家賃を直接決める要素ではなく、オーナー側の収支を判断するための固定費として別に確認します。
希望額と査定額に差が出る場合は、購入時の価格や築年数の経過だけでなく、近隣の競合物件の条件と比べて対象の部屋がどの位置に入るかを確認することが判断の材料になります。あわせて、区分所有のマンションでは管理規約による使用制限、管理会社へ委託する場合は賃貸住宅管理業法上の確認事項、普通借家・定期借家の契約の仕組み、そして住宅ローンが残っている場合は借入先への確認も、募集前に確認しておきたい点です。
続けるか売るかを決めていない段階でも、家賃査定を判断材料の一つとして確認することができます。
この記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・契約・税務・管理規約の判断は、状況によって異なります。契約内容や法的な判断については弁護士・司法書士へ、税務については税理士へ、管理規約の解釈については管理組合・管理会社へご確認ください。
査定額や貸し出し前に確認しておきたい点を整理できます。まだ貸すと決めていない段階でも相談できます。一棟アパートのオーナー様は、記事末尾のLINEからもご相談いただけます。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。