

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月17日
情報確認日:2026年8月17日
親や祖父母からアパートを相続し、管理を任せる会社を初めて探すことになった。そんな段階で相談を受けると、管理料の比較表から検討を始めることがあります。ただ、管理料の料率だけを並べても、実際に何をしてもらえるかは分かりません。
結論から言えば、管理会社選びで見るべきものは「料率の安さ」ではなく「業務の範囲」と「募集力の実績」です。同じ料率でも、含まれる業務は会社によって違います。この記事では、初めて管理会社を選ぶオーナーが契約前に確認したい項目を、法令上の登録制度もあわせて整理します。
この記事の目次

アパートの管理を会社へ委託する契約は、法律上は委任・準委任の性質を持つ契約として扱われるのが一般的です。オーナーが入居者と直接賃貸借契約を結び、建物の維持保全や家賃・敷金などの金銭の管理を会社へ委託する形を「管理委託型」といいます。
これに対し、事業者(特定転貸事業者)がオーナーから物件を借り上げて入居者へ転貸する「サブリース(一括借り上げ)」は仕組みが異なります(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第2条第4項・第5項)。サブリースでは、入居者との賃貸借契約の当事者が事業者になり、オーナーへ支払われる賃料の額・改定条件・空室時の扱いは契約ごとに異なります。相談を受ける会社がどちらの形態を提案しているのか、契約書の当事者欄で確認してください。
サブリースを提案された場合は、賃貸住宅管理業の登録の有無だけで判断せず、契約締結前に特定賃貸借契約の重要事項説明書と契約書案を受け取ってください。特定転貸事業者には、登録の有無にかかわらず、契約締結前の重要事項説明・書面交付などの規制が適用されます。オーナーに支払われる賃料と改定条件、事業者からの中途解約・更新拒絶の条件、維持保全の実施方法・費用分担、契約終了時の引継ぎを確認してください。契約が普通借家契約の形をとる場合、オーナー側からの更新拒絶や解約の申入れには、借地借家法上の正当事由が必要になります。解約条項だけでなく、契約の類型もあわせて確認してください。
(出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第2条)
賃貸住宅管理業を営む事業者のうち、自己所有物件の管理を除く管理戸数が200戸以上の事業者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません(同法第3条第1項)。管理戸数が200戸未満の事業者は登録が任意とされているため、登録がないことだけを理由に問題があるとは判断できません。ただし、登録の有無は、その会社がどれだけの規模で賃貸住宅管理を行っているかを確認する材料の一つになります。
登録を受けた賃貸住宅管理業者には、次の義務があります。
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約前の重要事項説明 | 管理受託契約を結ぶ前に、管理業務の内容・実施方法・報酬などを書面で説明する | 法第13条 |
| 契約時の書面交付 | 契約後、対象物件・実施方法・契約期間・報酬・更新や解除の定めなどを記載した書面を交付する | 法第14条 |
| 分別管理 | 受領した家賃・敷金などを、自己の財産や他の契約の金銭と分けて管理する | 法第16条 |
| 定期報告 | 管理業務の実施状況などを、少なくとも年1回以上、委託者へ報告する | 法第20条 |
契約前の重要事項説明は、賃貸人が契約内容を十分に理解したうえで契約を締結できるよう、説明から契約締結までに1週間程度の期間を置くことが望ましいとされています。説明を受けたその場で契約書へ押印を求められた場合は、内容を持ち帰って確認する時間をもらってください。登録の有無を問わず、契約書案・業務仕様書・見積書を事前に受け取って比較することをお勧めします。
登録の有無は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。あわせて、入居者募集の代理・媒介を行う会社には、賃貸住宅管理業の登録とは別に宅地建物取引業の免許が必要です。募集業務を別の会社へ委託する形であれば、その会社名と免許番号もあわせて確認してください。
(出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第3条・第13条・第14条・第16条・第20条、国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 管理業者の業務」)
イエリテの実務から
相続でアパートを引き継ぎ、初めて管理会社を探していたオーナーから相談を受けたことがあります。数社から見積もりを取り寄せ、最も管理料の料率が低い会社に決めかけていましたが、見積書には「入居者募集」の記載がなく、確認すると募集は別料金という説明でした。空室が出るたびに広告料と仲介手数料が別途発生する契約で、年間で見ると料率が高い会社とほとんど差がありませんでした。
このときお伝えしたのは、料率の比較表だけで決めず、見積書に載っている業務と載っていない業務を1件ずつ確認することでした。管理料に含まれる範囲を書面で確認してから比較すると、最初の印象と順位が変わることがあります。
見積書の管理料が家賃の何パーセントかは比べやすい数字です。ただし、同じ料率でも含まれる業務は会社ごとに違います。次の項目が管理料に含まれるのか、別料金なのかを、契約前に書面で確認してください。
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管理料に含まれるか確認する業務
料率が低くても、退去のたびに別途費用が発生する契約であれば、年間の負担は変わります。見積書を並べるときは、想定される年間の入退去件数を掛け合わせた総額で比べることをお勧めします。仲介手数料の上限や広告料がどういう位置づけの費用なのかは「入居者募集の条件はどう決める?南城市で募集を始める前に整理したいこと」で整理しています。
料率や業務範囲とあわせて、契約の条件そのものも比較材料になります。
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契約条件で確認すること
すでに親や祖父母の代から管理契約が続いている場合は、相続を機に新しい会社を探すだけでなく、いまの契約書に相続後の連絡先や契約上の取扱いについて定めがあるかもあわせて確認してください。
空室期間が長引けば、その間の賃料収入が減るため、収支にも影響します。管理会社を選ぶ段階で、次の点を確認してください。
入居率や成約までの期間を比べる場合は、対象期間・対象物件数・物件種別・入居率の算出方法・空室発生から成約までの起算日をそろえて確認してください。条件が異なると、単純な数字の比較にならないことがあります。
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ポイント
入居率や成約までの期間は、会社によって開示の仕方が異なります。具体的な数字を出せない場合は、募集中の他の管理物件を実際に見せてもらい、掲載条件や写真の質を確認する方法もあります。
募集力は、管理料の見積書だけでは分からない部分です。契約前に、実際に管理している別のアパートの募集ページを見せてもらうと、比較しやすくなります。
入居者の家賃債務保証を利用する場合、通常は、保証会社と貸主(オーナー)との間の保証契約、入居者と保証会社との間の保証委託契約の両方で、保証の対象となる費目や請求の手続きが定められます。管理会社が保証会社の窓口になっている場合は、採用している保証会社、保証の対象となる費目、滞納時の請求の起点と必要書類、オーナー側に生じる費用と管理会社の対応範囲を確認してください。管理会社が替わることで、契約している保証会社の取扱いが継続できないことがあります。
退去時の原状回復についても、費用負担の考え方を国土交通省のガイドラインに沿って説明できる会社かどうかを確認します。経年劣化・通常損耗の分はオーナー負担、入居者の故意・過失による損耗は入居者負担とする考え方が示されていますが、実際の負担割合は個々の契約内容や損耗の状況によって判断が分かれることがあります。管理会社が、この考え方をふまえた見積りを出しているかを見てください。
(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」)
南城市周辺のアパートでは、台風の前後の対応速度が管理会社を選ぶ判断材料になります。台風のたびに雨戸・庇・共用部の飛散物を確認する必要があり、塩害を受けやすい立地では鉄部や屋外設備に腐食・劣化のリスクがあります。台風の前後に誰が現地を見るのか、緊急時に何時間で動けるのかは、契約前に具体的に聞いておく項目です。
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注意点
県外にお住まいのまま沖縄のアパートを所有している場合、現地確認を管理会社に頼る場面が増えます。写真つきの報告があるか、報告の頻度、緊急時の連絡手段を、契約前に確認してください。
相続でアパートを引き継いだ直後は、名義の整理が先に必要になることがあります。相続登記は、自己のために相続の開始があったことと、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。2024年4月1日より前に相続で不動産を取得したことを知っていて、まだ登記していない場合は、原則として2027年3月31日までに申請が必要です(不動産の取得を知った日が2024年4月以降であれば、その日から3年以内が期限になります)。遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に、分割内容を踏まえた登記の申請も別途義務づけられています。遺産分割が長引き期限内の申請が難しいときは、相続人申告登記で当初の申請義務を一時的に果たせる場合がありますが、遺産分割成立後の登記義務は相続人申告登記では果たせません。詳しくは相続登記の義務化とは?相続した不動産の手続きと期限をわかりやすく解説で説明しています。相続人が複数いて名義が決まっていない段階では、誰が委託契約の当事者になるのかを整理してから進めてください。
(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)
管理会社への委託そのものを検討している段階であれば、自主管理と管理委託の比較から考える方法もあります。それぞれのメリット・注意点はアパートは自主管理と管理委託どちらがよい?相続したオーナーが判断する基準で整理しています。
すでに管理会社へ委託していて、いまの会社から別の会社へ変更したい場合の手順は、この記事とは別の論点になります。解約通知や引継ぎの進め方はアパートの管理会社は変更できる?解約から引継ぎまでの手順と確認したいことをご確認ください。
相見積もりを取ることをお勧めします。管理料の料率だけでなく、業務の範囲・募集方法・報告の頻度を書面で比較すると、料率だけでは見えなかった差が分かります。
管理戸数の多さだけで判断できるものではありません。管理戸数200戸未満の事業者は登録が任意のため、登録がないことだけで判断せず、業務の範囲・募集の実績・担当者の対応を個別に確認してください。
管理業務の内容・実施方法・報酬・契約期間・解除条件を記載した書面です。登録を受けた賃貸住宅管理業者であれば、契約前の重要事項説明と契約時の書面交付が法律上の義務になっています。口頭の説明だけで契約を進めないでください。
収支の仕組みが異なるため、一概にどちらが有利とは言えません。サブリースは、事業者がオーナーから物件を借りて入居者へ転貸する契約で、オーナーへ支払われる賃料の額や空室時の扱いは契約ごとに異なり、一律に保証されるものではありません。借地借家法の借賃増減請求権により、契約期間中でも賃料の見直しが問題になることがあります。賃料改定・事業者側の解約条件・オーナー側の出口条件は、登録の有無にかかわらず交付される重要事項説明書と契約書で確認してください。管理委託では、入居者との賃貸借契約の当事者は原則としてオーナーであり、空室中は賃料収入が生じません。一方、募集条件や賃貸借契約の更新等を管理会社にどこまで代理させるか、管理受託契約の内容を変更できるかは委任範囲や契約条項によります。オーナーだけで管理受託契約の内容を変更できるとは限らないため、契約期間、変更・更新、解約の手続きを確認してください。2つの違いがどこから生まれるのかは、サブリース(家賃保証)と管理委託の違いは?契約前に確認したいことで、誰が入居者の貸主になるかという点から整理しています。
初めて管理会社を選ぶときは、管理料の料率だけを比べるのではなく、次の順番で確認することをお勧めします。
見積書の数字だけでなく、実際の業務範囲と募集の実績を確認してから決めることが、契約後の後悔を減らします。
この記事は、2026年8月17日時点の法令・公的資料にもとづく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情によって取り扱いは変わります。契約上の権利義務に関する判断は弁護士、登記の判断は司法書士など、それぞれの専門家へご確認ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。