

執筆・発行:株式会社イエリテ
公開日:2026年8月19日
情報確認日:2026年8月19日
外壁の汚れやひび割れが目につくようになった、屋上の防水がそろそろ気になる、工事会社から見積りが届いたが金額が妥当か分からない。築年数が進んだアパートを持っていると、こうした場面で判断を求められます。
賃貸アパートの修繕は、分譲マンションのように管理組合が計画を立てて進めてくれるわけではありません。いつ、どこから手をつけ、いくら用意するかを決めるのは所有者自身です。南城市周辺でアパートを所有している方が、修繕の時期と費用の目安をどう見て、届いた見積りのどこを確認すればよいのか。税務上の扱いも含めて順に見ていきます。
この記事の目次
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この記事で扱う範囲
外壁・屋根・屋上防水・階段や廊下などの共用部といった、建物全体に関わるまとまった修繕を中心に「大規模修繕」として扱います。給排水管や給湯器・エアコンなどの設備交換も、長期の修繕計画に関係する項目としてあわせて説明します。建築基準法で定義されている「大規模の修繕」という用語とは範囲が異なります。
分譲マンションでは、管理組合が区分所有者から修繕積立金を集め、長期修繕計画にもとづいて工事を行う仕組みが一般的です。賃貸アパートにはこうした仕組みがないため、将来の修繕資金は所有者自身が準備することになります。家賃収入の中からどれだけ修繕に回すか、いつ工事を行うかも、所有者の判断です。
国土交通省は、賃貸住宅の所有者・管理業者に向けて国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(2018年公表)を公表し、建物の部位ごとに点検と修繕の時期を把握したうえで、計画的に修繕へ取り組む考え方を示しています。制度上の義務ではありませんが、行き当たりばったりの修繕を避けるための出発点になります。
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ポイント
賃貸アパートの修繕には、修繕積立金の制度も、計画作成の法的な義務もありません。裏を返せば、計画を立てるかどうかで建物の状態にも収支にも差が出ます。
計画を立てるには、部位ごとにいつ頃手を入れることになるのかという時間軸が必要です。国土交通省の計画修繕ガイドブックでは、賃貸住宅の計画修繕について、部位ごとの実施時期の目安が次のように示されています。
| 部位 | 工事の種類 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 屋根 | 塗装・補修 | 11〜15年目 |
| 屋根 | 防水・葺替 | 21〜25年目 |
| 外壁 | 塗装 | 11〜18年目 |
| 外壁 | タイル張り補修 | 12〜18年目 |
| 階段・廊下 | 鉄部塗装 | 4〜10年目 |
| 階段・廊下 | 塗装・防水 | 11〜18年目 |
| 給排水管 | 高圧洗浄 | 5年目 |
| 給排水管 | 取替 | 30年目 |
| 給湯器・エアコン | 交換 | 11〜15年目 |
この年数は、必ずこの時期に工事をするという意味ではありません。建て方、使用している材料、施工の状態、立地、劣化の進み具合、過去の修繕履歴などによって前後する、計画を立てるための一般的な目安です。
年数は点検を始める目安、実際に工事をするかどうかは建物の状態で判断するという順序で使うと、まだ持つ部分に費用をかけたり、傷んでいる部分を見落としたりすることを避けやすくなります。鉄部塗装のように早い時期から周期が来る部位もあるため、まとまった工事の年だけを意識していると、間の対応が抜けやすくなります。

目安の年数が近づいたら、実際の建物を見て判断します。確認したい箇所は次のとおりです。日常的にどこをどの頻度で見て回るかは、賃貸アパートの建物巡回は何を見る?で整理しています。
沖縄県は、建築物の維持管理について「本県は、台風等による塩害の影響を受けやすいことから、コンクリートの劣化や壁面の塗装などを定期的に管理する必要がある」としています(出典:沖縄県「リサイクル実施指針(沖縄県における特定建設資材の分別解体及び再資源化の実施に関する指針)」)。定期的な管理が必要とされている理由が、地域の条件そのものにあるということです。
台風の接近も多く、気象庁の平年値(1991年~2020年の30年平均)では、沖縄地方への台風接近数は年間7.7個とされています(出典:気象庁「台風の平年値」)。これは中心が一定の範囲内に入った台風の数の平年値であり、被害が年に7.7回起きるという意味ではありません。ただし、強風で飛来物が当たる、暴風雨で雨仕舞いの弱い部分から水が入るといったことは、起こりやすい条件だといえます。
鉄筋コンクリート造では、ひび割れなどから内部へ水分と塩分が入り込むと鉄筋が錆び、膨張してコンクリートを押し割る劣化が進みます。国土交通省がコンクリート構造物の塩害について示している点検の着眼点も、鉄筋方向のひび割れ・錆汁・剥離といった外観の変化です(出典:国土交通省「コンクリート橋の塩害に関する特定点検要領(案)」)。海に近い立地では、塩分の影響を受けやすい面から劣化が進むことがあるため、建物全体を一律に見るのではなく、方位や立地によって傷み方が違う前提で点検すると、優先順位をつけやすくなります。台風の直後に、屋上の排水口・防水の端部・鉄部・外階段を見て回ることも、被害の早期発見につながります。
イエリテの実務から
当社へ寄せられるご相談では、外壁の色あせが気になって問い合わせをいただいたものの、現地を確認すると、海側の面だけひび割れや錆の跡が進んでいるというケースがありました。ご本人は道路から見える面しか見ていなかったという状況でした。
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点検で確認したいこと
修繕の判断を後回しにしたときに起きることは、工事費が膨らむことだけではありません。
賃貸借契約では、賃貸人は賃貸物の使用と収益に必要な修繕をする義務を負います(e-Gov法令検索「民法第606条第1項」)。ただし同項には、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になったときはこの限りでない、というただし書があり、あらゆる場合に貸主が修繕義務を負うわけではありません。
雨漏りや設備の故障で部屋の一部が使えなくなり、それが入居者の責任によるものでない場合は、使用できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されます(民法第611条第1項)。修繕の遅れは、家賃収入に直接影響しうるということです。
さらに、劣化が進んでからの工事は、下地の補修範囲が広がって費用が増えたり、工期が延びたりします。募集の面でも、外観や共用部の傷みは内見時の印象に影響します。日常の清掃や共用灯の管理をどう回すかは、アパートの共用部の掃除と共用灯は誰がやるかで扱っています。
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注意点
修繕義務や賃料減額の扱いは、契約内容や不具合の程度、原因によって判断が変わります。入居者から不具合の申し出があったときは、状況の記録と修繕の見通しの共有を早めに行い、判断に迷う内容は契約書を確認したうえで弁護士や管理会社へ相談してください。
費用の規模感をつかむ材料として、国土交通省の計画修繕ガイドブックには、鉄筋コンクリート造・20戸・1LDK〜2DKの賃貸住宅を想定した長期修繕費のモデルが掲載されています。
| 経過年数 | 1戸あたり | 棟全体(20戸) |
|---|---|---|
| 5〜10年目 | 約9万円 | 約170万円 |
| 11〜15年目 | 約55万円 | 約1,090万円 |
| 16〜20年目 | 約23万円 | 約460万円 |
| 21〜25年目 | 約116万円 | 約2,320万円 |
| 26〜30年目 | 約23万円 | 約460万円 |
| 30年間の合計 | 約225万円 | 約4,490万円 |
同じ資料には、鉄筋コンクリート造10戸(1K)で30年間 約177万円/戸、木造10戸(1LDK〜2DK)で30年間 約216万円/戸というモデルも掲載されています。構造・戸数・間取りによって金額は変わります。
これらの金額は、長期の修繕を考えるために示されたモデルケースであり、現在の工事価格を示す相場表ではありません。ガイドブックが公表されたのは2018年で、その後の資材価格や人件費の変動は反映されていません。建物の規模・構造・工法・劣化の状態・足場の掛けやすさ・沖縄という立地条件によっても、実際の見積額は変わります。南城市周辺での実際の金額は、現地を見た見積りで確認するほかありません。
それでも、このRC造20戸のモデルでは11〜15年目と21〜25年目に費用が集中し、30年間の合計が1戸あたり約225万円になるという時間配分が示されています。自分の建物の資金計画を考えるとき、費用がいつ集中しやすいかを把握する材料になります。
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モデルケースの使い方
金額そのものを自分の建物に当てはめるのではなく、費用が集中する時期と全体の規模感をつかむために使います。実額は、現地を確認したうえでの見積りで把握します。
複数の工事会社から見積りを取っても、総額だけでは比較になりません。同じ外壁塗装でも、下地補修をどこまで含むか、塗料の種類、塗る回数によって金額は変わります。次の点がそろっているかを確認すると、比較しやすくなります。
イエリテの実務から
見積書をお持ちになり「この金額が妥当か分からない」とご相談いただくことがあります。内容を一緒に確認すると、下地補修が「一式」で計上されていて、実際の数量が増えたときの扱いが書かれていない、といった点が出てきました。金額の高い・安いより先に、何が含まれているかをそろえて見比べる必要があります。
なお、工事の適否や劣化の程度そのものは、建築士や施工会社の判断領域です。不動産会社は、修繕と収支・募集・売却の見通しをあわせて整理する立場になります。
積立の仕組みがない以上、資金の準備も所有者が組み立てることになります。考え方としては次の3つです。
モデルケースが示すように、費用は特定の時期に集中します。その年に一度に用意するのか、それまでの期間に分けて積み立てるのかで、収支への影響は変わります。
イエリテの実務から
相続でアパートを引き継いだ方から、修繕のご相談をいただくことがあります。これまでの実務では、家賃収入は生活費に充てていて修繕用の積み立てがなく、屋上防水と外壁を同時に行う必要が出てきた段階でご相談に来られたケースがありました。工事の順番と時期をずらして検討することから整理を始めています。
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資金計画の確認ポイント
ここでは、個人でアパートを所有し、不動産所得として申告している場合を前提に説明します。工事にかかった費用が、その年の必要経費(修繕費)になるか、資産として減価償却していく(資本的支出)かは、名目ではなく実質で判定されます。国税庁は判定の考え方を次のように示しています(出典:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」)。
資本的支出とされた金額は、その年に全額を経費にするのではなく、国税庁「No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却」のとおり減価償却によって各年の必要経費に算入していきます。同じ工事でも、区分によってその年の所得と納税額が変わります。実際の判定は工事の内容と資料にもとづく個別判断になるため、見積書・請求書・工事内訳書を用意したうえで、税理士に確認してください。修繕を続けるかどうかを決める前に、償却の残りや建物の書類を確かめておきたい場合は、築古アパートをどうする? 持ち続けるか決める前に確認したい6つのこともあわせてご覧ください。
法人でアパートを所有している場合は、法人税の取扱いによります。判定の考え方は国税庁「No.5402 修繕費とならないものの判定」に示されていますが、上記の所得税の説明をそのまま当てはめず、顧問税理士へ確認してください。

計画修繕は、次の順で進めると整理しやすくなります。
最後の項目は後回しにされやすいのですが、次回の修繕計画の材料になり、将来アパートを売却する場合にも、建物の維持状況を説明する資料になります。過去の工事の記録が残っていないと、点検から積み上げ直すことになります。
相談の際は、レントロール(入居状況の一覧)、直近の収支、過去の修繕記録、届いている見積書を用意しておくと、話が早く進みます。
南城市を所管する沖縄県の定期報告制度では、一般の共同住宅の用途は対象外とされています。沖縄県の案内では、平成28年6月1日の改正により共同住宅の用途に供する建築物は定期報告の対象外となったと示されています(出典:沖縄県「定期報告制度」)。ただし、サービス付き高齢者向け住宅など、就寝用福祉施設に該当する建物は対象となる場合があります。所有する建物が対象になるかどうかは、県の窓口で確認してください。報告義務の有無と、建物を安全に維持する責任は別の話であり、対象外であっても点検を行わなくてよいということにはなりません。
工事をしただけで家賃が減額されるわけではありません。民法第611条第1項の賃料減額は、賃借物の一部が使用・収益できなくなった場合の規定です。足場の設置やベランダの一時的な使用制限がこれに当たるかどうかは、程度によります。行き違いを避けるため、工期・作業時間・生活への影響を事前に書面で知らせ、必要に応じて管理会社や弁護士に相談してください。
大規模修繕をしたという事実だけで、家賃が自動的に上がるわけではありません。建物の賃料については、租税その他の負担の増減、経済事情の変動、近傍同種の建物の賃料との比較によって現在の賃料が不相当となったときに、当事者が将来に向かって増減を請求できる仕組みがあります(e-Gov法令検索「借地借家法第32条第1項」。一定期間増額しない特約がある場合はその定めによります)。実際に賃料を改定できるかは、契約内容・現在の賃料水準・経済事情などによって判断が変わるため、進める前に弁護士や管理会社へ相談してください。修繕の効果は、退去後の募集条件や空室期間の短縮という形で表れるものと考えて計画するほうが現実的です。
あります。修繕費を投じて経営を続けるか、現状のまま売却するかは、収支の見通しや今後の保有方針によって判断が変わります。判断の材料はアパート経営を続けるか売るかの判断基準で整理しています。入居者がいる状態での売却については、オーナーチェンジ物件の売却手順もあわせてご確認ください。
建物の古さだけが原因とは限りません。家賃設定、募集条件、募集の方法など、複数の要因が重なっていることがあります。修繕を決める前に原因を切り分ける方法は、アパートの空室が続く原因と対策で扱っています。
賃貸アパートの修繕は、部位ごとの目安の年数で点検の時期をつかみ、実際に工事をするかどうかは建物の状態で判断するという順序で進めるものです。沖縄県は台風による塩害の影響を受けやすく、県も定期的な管理の必要性を示しています。面ごとの傷み方の違いや、台風後の点検が判断材料になります。
費用は特定の時期に集中します。国土交通省のモデルケースは金額そのものを当てはめるものではありませんが、資金を準備する時間軸を考える材料になります。実額は見積りで確認し、総額ではなく範囲・数量・仕様・追加費用の条件をそろえて比べてください。税務上の修繕費と資本的支出の区分は、その年の納税額に影響するため、資料をそろえて税理士に確認するのが確実です。
まずは、直近の修繕履歴と現在の建物の状態を書き出すところから始めてみてください。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、2026年8月19日時点の法令・制度にもとづいています。個別の税額計算や法的判断、建物の劣化診断については、税理士・弁護士・建築士など専門家にご確認ください。

株式会社イエリテ 代表
沖縄県南城市出身。住宅建築設計や不動産実務の経験を活かし、土地・戸建て・空き家・相続不動産などの売却や活用をサポートしています。お客様一人ひとりの事情に寄り添い、売る・残す・活用するといった選択肢を分かりやすく整理してご提案します。
売却だけでなく、賃貸や管理を含めた活用方法についてもご相談いただけます。